SCENE6 朝焼けは着実に SIDE 勇者:ロメル
それからさらに20日後。
僕と集まった3052人にわたる団員、アデラとロベルト、なぜか泥まみれのセネンは学園の果てしなく続く校庭で集まっていた。
因みに「果てしなく続く」とは比喩ではなく、空間魔術によって北側に向かって本当に果てしなく続いている校庭だ。ところでなぜセネンだけ一戦交えた後のような様相なのだろうか。
「よし、準備は万全だ。皆今までお疲れさん!」
ロベルトは清々しそうにかっと笑うと、
…あろうことか、転移魔法で逃げようとした。
同じ闇属性のアデラがすかさずそれを打ち消して阻害する。
「ロベルトさん…。さすがに最低。逃避方法が見事なクズ。」
ニセタ嬢が心底呆れた、という風に呟いた。
マルティンとソフィア嬢がロベルトの足を逃げないように固定している。
「んだよ俺の仕事なんてもうねえって!疲れたの!放せー!」
「じゃあ誰がオレ達の指揮を執るんだ団長!」
「ここにいるのなんて百人いりゃ一個艦隊ぶっ潰せるような連中ばっかだろうが!俺要らねえだろ!あと団長は俺じゃなくて王女の護衛騎士引き抜いてきたからそいつに聞け!」
「それとこれとは関係ない!お留まりなさい怠けもの!」
「っチッ。あーもーわかったよ!諦めてここに留まるから放せ。」
はは、マルティンはともかくソフィア嬢の拘束も解けないとか俺さすがにモヤシすぎん?やっぱ今からでも野菜と肉食うか?いやめんどくさいな。じゃあいっかエナドリで。
―などとぶつぶつ言っているがとりあえず今は放っておくことにする。今度奴の口に近衛隊の給食を放り込もう。
「引き抜いてきた護衛騎士っていうのは?」
セネンが尋ねた。
「そこにいる宰相令嬢アデラお嬢様がな、幼馴染で親友の王女様におねだりしたのさ。いやぁ、やっぱり持つべきものは権力ある学友。おかげでいい護衛騎士を引き抜けた。」
「もうボクは君に頼まれたことは引き受けない。」
「勝てなくなるけどそれでいいなら。」
「そっ、そうとは言っていない!戦いは別だ!」
「いや、ナバーロの抜擢も今回の戦のためだったんだけど。」
僕はナバーロという名前に聞き覚えがあった。
確か、茶会での一件で最後にこいつが気にしてみていたのは近衛騎士のナバーロではなかったか。
「君ってやつは…!あの時から目をつけていたのか!」
「ったりめえだろ?あんなイった目つきで狸爺見てられるなんざとんだ逸材か野心に満ち溢れた奴かその両方だ。見逃すもんか。」
「しかし、ロベルト。それならなぜ君が長となって率いる体制をとらなかった?その方が軍師としては好都合だろう?」
彼はわずかに視線をそらしていつになく暗い顔をしたように見えた。
「さあな。」
返ってきた言葉も彼らしくない少なさだった。
「まあ細けえことはいいじゃねえか。そろそろ開戦だ。」
すぐに飄々とした態度にもどった彼から、詳しいことはきくことができなかった。
*
ここはあと数時間で戦場になる。
一週間前にロベルトはセルピエンテ・ジェペス及びその親族5名を名指しで『誠実ならぬ政治をみとめた』として抵抗の意思を示した。要求は即刻行政権を手放すことと騎士団とギルド連合を統一した平民会を枢密院に組み込むことだ。
セルピエンテはこれにもちろん反発した。といっても抗議文は透けて見えるように感情的で客観的根拠にかける弱弱しいものだった。
ロベルトはいったいどこまであの人を追い詰めたのやら。
なにはともあれ、まもなくこの学園から約50km離れた山間部で合戦になるだろう。敵軍は摂政の地位を用いて徴収された国王軍約25000の兵。こちらの約8倍以上だ。
そんな中、我らが騎士団長、デセオ・ナバーロが副団長となったロベルトと共に全団員の前に現れたのは、開戦前日に迫った昼頃であった。




