見えない壁が嫌いになった
さて、姉ちゃんにこれからの諸々面倒なことを丸投げすることにしたはいいが何をしよう。
時間的にはまだ2時くらい。
夕飯を食べるにしてもまだ早い。
……ゲームすっか。
「というわけでゲームに戻ってきたはいいのだがこれは一体どういう状況だ?」
existence onlineに再度ログインしたはいい、いいんだがそれ以上に目の前の状況が気になる。
いやぁ、なんで目の前に明らかにヤバそうな狼がいるんですかね。
こいつは鑑定をするまでもなくやばい。
理由は至って単純。
狼の上に緑色のバーが出ているからだ。
ゲーム、モンスターの上に緑色のバーここまで行ったらもうお分かりですよね?
緑色のバー、つまり体力。
そしてそう言ったものが出るのは大概……
『フィールドボス:「白狼」にエンカウントしました』
まぁ、ボスだろうな。
さぁて、とりま最初は安定の鑑定から
ーーーーーー 種族:白狼《希少種》 Lv:25
職業:ーーー
HP 1400/1400
魔力900/900
攻撃力:500
防御力:400
速度:700
[種族スキル]
咆哮 Lv:MAX
威圧 Lv:4
[固有スキル]
雪霧 lv:MAX
蒼雪闘気 lv:MAX
[スキル]
突撃 Lv:MAX
[装備]
ーーー
ーーー
うん、やべえ。
え? あれ、こいつと俺戦うの?
因みに俺のは……
ブルーウッド 種族:星氷竜(人化状態)Lv:2
職業:古竜学者
HP550/550
魔力650/650
攻撃力:25
防御力:100
速度:80
[種族スキル]
星氷魔法 Lv:2
星氷結 Lv:1
飛翔 Lv:1
星氷竜の加護 Lv:2
[スキル]
鑑定 Lv:2
探知 Lv:1
etc……
[装備]
古竜学者の魔術本
古竜学者のフード
いやいや無理だろ。
体力やら攻撃力やら何から何まで違いすぎるぞ!
……ということで
「俺は逃げる!」
プライド? 矜持?
んなもん知ったことか!
俺は勝てないやつと戦おうとするほど馬鹿じゃないんだよ!
俺は方向転換し全力ダッシュであの白狼からの逃亡を試みた。
だが現実は非情なり。
「痛って! なに!? なんだ? 見えない壁……!?」
『ただいまプレイヤーがフィールドボスと戦闘しています』
あぁ、なるほど、なるほどね。
フィールドボスの取り合いにならないようにするための配慮か……
「ふざけんな! こうなったら逃げられねぇじゃないか!」
「グォォォォォォォォォ……」
「あっ」
俺はそうやって思いっきり叫ぶと後ろから獣の唸り声が聞こえてきた。
恐る恐る振り向くとそこには今にも飛びかかってきそうな狼がいた。
ワンチャン狙ったけど壁クソシステムのせいで逃げられない。
こうなっちまったら素早さ700あるあいつから逃げる術はない。
つまり俺は詰んだわけだ。
ふふふ、ふはは、ふははは!
どうせならもういっそ一思いにとでも思ったがそれはなんか気に食わない。
吹っ切れた。
負けたらそれはその時だ。
「どうせ勝てない敵だ、次に会った時にボコせるように予行練習と行こうか!」
さて、そうして対立したのはいいがどうするか。
まじでテンション任せで全く考えてないんだけど。
まぁ、とりあえず
「星氷弾丸」
うーん、そう、そうだよなぁ。
避けちゃうよなぁ、素早さ700っていうバケモンだからな。
だったら……
「飛翔」
俺がそのスキルを発動すると、背中にドラゴンの翼が生え、さらに浮かび上がった。
「うぉぉっ! スッゲェ! 俺まじで空飛んでるよ! いやまぁゲームだけど……」
おうおう狼くん驚いてやがる。
残念、いくら君でもさらに飛んじゃえば関係ないでしょ。
「あれー? お、狼くん一体何をっ!?」
俺が何かと少し体をずらした時だった。
俺の真横に青白い何かが通りかかった。
おいおい流石にこれは最初の街のボスじゃないだろ……
そこには、空に浮いている白狼がいた。
「グォォォォォォォォォッ!!!!」
「!?」
白狼が空に浮いていることを確認した瞬間、狼からものすごい風圧が発生した。
これは……咆哮か!
咆哮でこの風って……
ってそんなこと思ってる場合じゃない、早く移動しないと格好の的だ!
どうするか……攻撃手段は星氷魔法と杖……
レベルアップで魔力全回復で助かったぜ。
回避は飛翔と探知スキルで避けまくる。
こちとら
攻撃受ける=死
なんでね。
探知はソナーのような役割を果たす。
視界の範囲にある場合はモンスターの体が白く発光する。
後ろにいた場合はさよなら人生。
だからこそ常に周りを確認しておく必要がある。
でもそれだけじゃ疲弊して終わり、何もできずに甚振られて終わりだ。
そこでどうするか。
俺の出した結論はこうだった。
「使えるようになった最大技でぶっ飛ばす!」
どうせ誰も見てないからな。
さっき壁に触れた時にチラッと見えた説明に向かうからこっちは一切見えないって書いてあったし。
そんなことを思っていると狼くんがまっすぐこちらに接近。
「待ってたぜ狼くん! くらえ! 星氷波アイスウェーブ」
俺が星氷波をあった瞬間辺りに青白い光が満ちる。
光が収まりはじめに視界に入ったのは、地上に落ちながらもこちらをじっと睨んでいる狼だった。
ブルーウッドが狼くんを相手にしている間
透「おっしゃあ! 片っ端からぶっ飛ばしてやる!」
勝「おい待て! 単身でゴブリンの群れに突っ込んだ
ら!」
透「ぐおっ、か、数が多い……やべ、死ぬ!」
勝「うおぉっ! 防御強化(ディフェンスアシス
ト)! 危ねぇ、間に合った」
透「おっしゃあ、いくぜ!」
勝「魔力が……魔力が尽きる……」