イノシシ狩り
もはや作業となっていたダンジョン攻略がしっかりと攻略と呼べるものになったのは第4層に言ってからだった。
「おいおい、急に敵が強くなったぞ! どういうことだ!?」
第3層の時はまだ余裕あったのにどうして急に……
第1層から2層の時でもそこまで変わらなかったのに。
ということで、なんで? と、勝に聞いてみた。
ダンジョンの階層というのは大きく四つに分かれているらしい。
まずは上層。
これはダンジョンに潜ってまだ浅い部分を表す。
ここで出てくる魔物は適正レベルが足りてれば負けることはほぼないらしい。
とは言っても油断したら余裕で死ぬらしいが。
そして次に中層。
ダンジョンでも浅くも深くもない中途半端な階層。
しかし、モンスターの強さは中途半端ではなく、上層で苦戦しているようだったら速攻で死ぬレベルでモンスターは強化されているらしい。
とは言っても上層で苦戦するようなことがなければレベリングができるので1番人気らしい。
次に深層。
ダンジョンにおいて深い階層。
ここにくるともうモンスターは適正詐欺とも言える強さを誇る。
もし適正レベルまでしかレベルがないのならここにしたら瞬殺されるだろう。
ただ、アーツ持ちなどは深層の方が多いらしく、ダンジョンを余裕で周回できるプレイヤーはアーツガチャをしているらしい。
いやはや中層で絶賛手こずっている俺からしたら何が何だかわからんな。
というかいくら海外で先に発売されていたとしてもいくらなんでも早すぎるだろ!
人間ってすごいなぁ……
とまぁ、よくわからんことを言ってないで目の前の敵を処理じゃ。
「そんで2度目のお出ましですか」
「今回は赤だな」
そう、アーツ持ちに遭遇したのだ。
今回の目の色は赤。
つまりは攻撃のアーツである。
モンスターはイノシシの強化版って感じか。
いやぁ、正直俺は移動のアーツが欲しいから緑がよかった。
まぁ、そんなことも言ってられんか。
「ビクト、赤との経験は?」
「ない、なんせ俺は移動と防御のアーツ持ちしか戦ったことないもんでな」
うげ、勝でも戦ったことないのかよ。
俺がそう心の中で愚痴っているとルナが勝に声をかけた。
「あの、ビクトさん! 防御のアーツ持ちはどんな感じだったんですか? 防御のアーツ持ちなら少しは参考になるかなって思いまして」
「ん? あぁ、なるほど。防御は攻撃を受け流してきて攻撃が入りづらかったな」
攻撃を受け流す?
ってことは攻撃型は攻撃が入りやすくなるって感じなのか?
「とりあえず攻撃に注意しろ! 一応俺と戦った防御は受け流してたから攻撃する時の動きが変わっているかもしれない」
「OK」
「わかりました!」
勝のいう通りに俺たちは攻撃する時の動きに注意しながら戦闘を開始した。
「全体防御強化」
まずは勝によるバフ。
攻撃アーツには防御ってことね。
そんでバフをもらったからには1番防御が高い俺が突っ込む!
近づけば追尾機能もより活躍するからな!
「まずは星氷弾丸」
近距離だったからもちろんヒット!
だがこれだけじゃ倒れない。
「こうなってくるとワンパンできないって結構だるいな」
一応勝のバフ入ってるんだがな。
「ブルォォォォォォォ!」
そんなことを考えているとイノシシ強化が突っ込んできた。
おっと?
これはさっきと同じだなぁ。
単純に攻撃力が上がっているだけなのか?
……と、俺がそんな楽観的な考えをした瞬間イノシシが急に姿を消した。
「は?」
「おい、ブルーウッド! 横だ!」
横?
そう思ってみるとさっきは絶対にいなかったであろうイノシシがいた。
嘘だろお前!?
そんなスピードで動けたのか!?
少なくともさっき戦ってたイノシシはそんなことしなかったぞ?
ってことはあれがアーツか!
「ビクトさん!」
ルナもアーツだと思ったらしく勝にそう言った。
「あぁ、あれがアーツだ。見た感じ一度発動したら方向転換できない突進系攻撃スキルでも途中で方向転換可能になるって感じか?」
はぁ!?
んなもんお前みたいな奴が持っちゃいけないんだよ!
こうなったら攻撃当てられてもダメージが1番通りにくい俺が盾役か。
「おい! あのイノシシはこっちが相手してやる! 隙を見てやれよ!」
「はいよ!」
「わかりました!」
2人とも俺の意図を理解してそう言った。
「ブルォォォ!」
「お前の相手はこっちだっての!」
俺は勝に突進しそうになっていたイノシシの横から星氷弾丸を喰らわす。
「ブォッ!?」
さぁて、これでちょっとは気を引けたかな。
「ブルゥゥゥゥゥッ……」
おうおう、完全に怒ってんなこりゃ。
さてと、ちゃんと惹きつける役はやってやったんだ。
あとは頼むぜ?
「やっぱ人数いるとだいぶ違うな! とどめだ!」
自身のスキルによりバフ盛り盛りな勝の持っている短剣がイノシシの脳天に思いっきり刺さる。
そしてイノシシは断末魔もあげずに倒れた。




