勝のダンジョン講座
巨大な湖を渡ったあと、俺とルナはダンジョンの前で人を待っていた。
誰が来るのか気になったのかルナは俺に質問してきた。
「あの、いったい誰が来るんですか?」
「ん? 友達だよ友達」
俺はそう言いながら来るのを待つ。
しばらくすると、湖の方に俺たちが乗った船がきた。
「おっ、きたな」
あの船に乗ってくると言っていたし間違いないだろう。
俺が船の方を向くと、ルナも船の方を見た。
そこに現れたのは
「おーい、ブルーウッド! きてやったぞ!」
ビクトというプレイヤーだった。
そう、俺の親友のうちの1人、勝である。
「悪いな急に呼び出して」
「いやいいんだ。それで? なんのようだ?」
俺が勝を呼び出したのは他でもない、このダンジョンに今から挑戦するからだ。
だったらそのまま行けばいいじゃないか、そう思っただろう?
うん、俺のさっきまでそう思ってた。
1人ならいいんだよ、それで。
でも今俺は1人じゃないルナがいるのだ。
俺とルナがなぜ一緒に行動しているのか、それはルカが冒険をやってみたい! と言って俺がそれを承諾したからである。
ここで俺は重大なことを忘れていた。
そう、俺はまだ一度もダンジョンに挑戦したことがないのである。
ルナは初めてでもいいと言ってくれたのだが俺もルナもどちらも初挑戦、いくらなんでも危ない、ということです勝を呼び出したのである。
と、ルナには内緒でこっそり教えると「お前なぁ」と呆れた視線を俺に向けながら承諾してくれた。
そしてそのままルナの方を向いて
「えぇっと、ルナでいいのか? 俺はこいつに呼ばれてきたんだけど、一緒にダンジョンに行くことになった」
「え? どういうことですか?」
勝の言葉にルナはそう口にする。
「これから行くダンジョンはこいつもあんたもどちらも初めての場所だ。自分だけならいいんだが連れがいるんだったら流石に危ない目に遭わせるわけには行かない。と、ようやく気づいて急いで俺を呼んだというわけだ」
おい、せっかく内緒にしてたのに全部バラすんじゃねぇよ。
まぁ、悪いのは俺だから何も言えないんだが。
「とまぁ、こういうわけで急遽こいつを呼んだんだ。悪いな」
「あっ、いえ。私のことを気にかけてくれるてるのに文句なんていませんよ」
よかった、急に1人増えることになって申し訳ないけど納得してもらえた。
さてと、これで心残りは無くなった。
ちゃんとダンジョンに潜ったことのある勝がいるんだからな。
「じゃあ、改めてダンジョンに挑戦だ」
「はい!」
俺らがそう意気込んでいるといつのまにかスタスタと勝がダンジョンには言っていた。
「あっ、おい! せっかく意気込んでるのに先行くなよな!」
俺がそういうと勝は
「いや、だって俺もう何回も挑戦してるからあんまりそう熱くなれなくて……」
あっ、それはごめん。
こっちが悪かった。
「とりあえずきてくれよ、早速教えるべきポイントが出てきたからな」
俺とルナは勝に言われるがまま、指さされた場所を見た。
「ダンジョンにはな、モンスターがいる。いや、そりゃまぁいて当然なんだがそうじゃない」
勝の視線の先にはゴブリンがいた。
レベルは……10。
正直言って弱い。
なんならサウザンの森にいるモンスターの方が強いレベルだ。
「……アレ、一体なんでしょう?」
横でルナがそう呟き、詳しくみてみると今までとは違う特徴があった。
「ん? なんだ? アレ」
それは目だった。
目が緑色の光を帯びていたのだ。
ネットで見たゴブリンのスクショではこんなものはなかった。
「ダンジョンにはな、希少だが特殊な技術、アーツを持つやつがいるんだよ」
ほーん、そんなものもいるのか。
「アーツにも種類があってな、青が防御系、赤が攻撃系、緑が移動系って感じなんだ」
ってことは今回は移動系のアーツを持っているやつってことか。
「だったらそのアーツを警戒しておけばいいんだな?」
「まぁ、そうなんだが問題はそうじゃない」
「というと?」
このアーツに気をつける以外何があるんだよ。
「こいつらのもつアーツはな、確率で使えるようになるんだ」
は?
え? なに?
そんなのありなの!?
「ってことはめっちゃ強いアーツを手に入れるチャンス?」
「そういうことだ」
おおっすげぇ!
まだまだアーツっていうやり込み要素があるのか!
こりゃ本当に自分だけの戦闘スタイルができるな。
「浮かれてるところ悪いがそれが大変なんだよ」
そう言いながら勝はゴブリンに接近して素早く剣を振った。
ゴブリンの体力が0になり、倒れた。
これでアーツが!
と、思ったがガイドさんから手に入れました! なんてことは言われなかった。
「この通りその確率が低い。不意打ちで倒すことでアーツがなにか確認できるがそもそもそのアーツが弱い可能性もある」
あー、なるほどな。
ワンチャン手に入れられるけどそれが弱い可能性もあるってことか。
だったら……
「あんま意味なくね? と、思うだろうが本当に強いものは強いんだ。だから欲しいやつはダンジョンのアーツ持ちモンスターを片っ端から倒してる。アーツガチャ、なんて言葉が生まれるほどだ」
……確率で入手、しかも大体が弱い。
確かにガチャだな。
確率がめっちゃ渋い。
「そして何よりアーツを持つのが通常モンスターだけじゃないってところが問題だ」
「どうゆうことですか?」
さっきまでずっと懐から出した紙にメモをとっていたルナがそう質問した。
メモってすごいな、勉強する気満々じゃないか。
「アーツはボスが持っている場合もある、ということだ」
ボスが……アーツを?
「通常でも強いボスにアーツが加わる。仮にそのアーツが強力なものだったら難易度は元のものとは比べ物にならないだろうな」
うわぁ、ボスが特殊な移動や攻撃、防御をしてくるって考えるとかだるすぎる。
「まぁ、そんなことはほぼないから安心しろ」
まぁ、だよな。
そんなものがポンポン出されたらたまらんよ。
「って、ずっと話してるのもなんだしそろそろちゃんと攻略するか」
そうして改めてダンジョン攻略を開始したのだった。
ダンジョンで戦うつもりが説明会に……




