御美苗くんは人気者
学校では学期末テストが終わり、夏休みに向けて話が盛り上がっていた。
「澄海、夏休み海行かない?」
「いいけど、真美は翔太くんと遊びに行かなくていいの?」
真美は中学校から仲良くしている友達。最近、彼氏が出来たのだ。
「翔太も一緒だよ、みんなで行こう!」
「みんなで?」
「そう!翔太の方も一人誘ってもらってるから4人で行こう!」
「うーん…それ、私とそのもう一人の人がお邪魔しちゃってるんじゃ…」
「全然!それに海とかは皆んなで遊んだ方が楽しいでしょう?」
何事も前向きに捉える真美のことだ、本心で言っているので断りずらい。
「……わかった。予定決まったら教えて?」
海は嫌いじゃないし、まぁ私は私で楽しむとしよう……ーーー
お昼になり、購買へ向かう途中人集りが出来ていた。
「この前の期末の成績上位の人が貼り出されてるみたいだよ!見にいこっ!」
好奇心旺盛な真美に手を引っ張られる。
「行ったところで私たちの名前はないよ〜」
人集りの後ろから壁に貼ってある成績順位表を眺める。各科目の上位者が載ってるみたいだが、よく見ると全科目の一番上に同じ名前があった。
「すげーな、御美苗のやつ。全教科一位だせ?」
「しかも満点ってどういうことだよ」
「眉目秀麗っていつ使うのかと思ってたけど、あいつのためにある言葉だったか」
あーだこーだ言いながら、男子生徒たちが憂いた表情で佇んでいた。
しかも、その状況を鼻にかけることはせず、本人は騒いでいる女子生徒たちをスルーし日々淡々と過ごしている姿に
「ムカつくけどカッコいい…クソ!」
「俺も女の子からの誘いをクールに断ってみたい(いや、誘われたら即オッケーするが)」
「天は二物を与えないんじゃなかったのか?」
「俺の高校デビューオワタ」
と、全校男子生徒たちが泣いたという。
「すごいね御美苗くん!」
「御美苗くんに勉強教わりたいなぁ〜」
「今度お家行ってもいい??」
一方、華やかな女子生徒たちに囲まれていたのは御美苗くんだった。
「……………………」
取り囲んでいた女子生徒たち(取巻きガールズと名付けよう)には反応せず、無表情で成績順位表を眺めていた。
(御美苗くんって本当、無口…だな。この前も一言も話さなかったし。あ、でも【むろまち】のおばあちゃんには伝言残してたか……あっ!そういえばこの前のお礼言えてない!!)
スカートを押えてくれて、猛暑日に脱力した人間を運んでくれて、付き添ってくれて、500円玉拾ってくれた人に何故、お礼すら言ってなかったのか。なんて酷い女だ。
思い出した勢いで、気づいたら御美苗くんのところまで駆け寄っていた。
「お、御美苗くん!」
恐る恐る声をかけると御美苗くんが振り向いてくれた。
取巻きガールズに無反応だったから機嫌が悪いのかと思ったが、違ったみたいだ。
「この前は、ありがとう」
(ああ、ちゃんと言えてよかった…。遅くなってごめんよ、御美苗くん。よし、購買行こう………あれ?)
踵を返そうとしたところ、御美苗くんに手を掴まれた。
「……………………」
「……………………」
(…いや、だからこの沈黙は何?てか、この手!!これじゃあ仲良く手を繋いでる感じになってしまうのだが!?)
大きく筋張った御美苗くんの掌にすっぽり隠された手から手汗を感じた。
(ちょっ、普通掴むなら手首では?いや、声かけるだけでいいのでは!?あ、でも御美苗くん無口だから、思わず掴んだのかな?でも手首で良くない?お手手繋がなくても…つーか恥ずかしくなってきたーー!!)
「この前って何のことぉ?」
沈黙を破ってくれたのは、取巻きガールズの一人だった。
「あ、その、熱中症で倒れそうになったところを居合わせた御美苗くんが助けてくれて…」
「えー!御美苗くん優しい!」
「そういうこと出来るの本当にすごいよ!」
「いいなぁ、私も倒れたら助けてくれる?」
取巻きガールズたちが盛り上がっている中、御美苗くんにホールドされ続けているのだが……誰もそこにはツッコまないのか?
「……伝言」
ボソッと御美苗くんが呟いたのを私は見逃さなかった。
それは【むろまち】のおばあちゃんから聞いている。
ーー『もうあんな格好するな』って言ってたけど、何のことかわかる?ーー
「き、聞いたよ?その……ごめんなさい。次からは気をつけます」
なんだか、御美苗くんには色々迷惑かけたりお世話になったから頭が上がらないなぁ。素直に謝ると、御美苗くんはコクンと頷いた。
(あれ……今、笑った?)
相変わらずの無表情で何を考えてるか全く分からないが、なんとなく微笑んでくれたように感じた。




