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桜花さんの拳脚商売奮闘記  作者: 岸本ひろあき
お礼参り編
1/14

プロローグ

 



 突然だが私は転生者である。


 今世の名は一番合戦いちまかせ 桜花おうか。珍しい苗字である。


 前世ではごく普通の家庭に生まれごく普通に学生時代を送りごく普通の社会人をしていた小市民であった――と思う。どうにも自分自身の記憶は曖昧で、名前すら思い出せないのだ。男よりの趣味嗜好から多分おっさんだったんじゃないかしら、と漠然と思考する程度の記憶しかない。趣味であっただろう漫画や小説やゲーム、果てはネット小説まで娯楽物は結構覚えているのに。


 前世を思い出したのは五歳ごろであったか――

 ともかく、気付くと生まれ変わっていたでござる、の巻であった。


 転生先の世界は前世の記憶にある娯楽物には一切該当しない(もしくはまったく知らない)格闘ゲームとしか表現の仕様のないトンデモ技が乱舞する現代地球であった。

 しかも街で適当に石を投げれば当たるほど、そんな格闘家がゴロゴロしていて、有名どころの格闘技大会では、生身でビームを飛ばしたり、生身で空を飛んだり、生身で炎を発火させて爆破させたり、生身で不可視の力を発動させたり、生身で自然現象を操ったり、といった有様であった。自然科学に全力で喧嘩を売る理不尽の権化である。


 しかもそのトンデモ技を平気で連発する格闘家たちの試合を全世界に配信する格闘専門TVチャンネルがいくつもあり、その中でももっとも人気の高い『地上最強の<暴君>をキメる』と銘打った北米のTV番組『ロード・オブ・ランペイジ(LOR)』に至っては視聴者が驚異の二十億人越えというはっちゃけぶりだ。


 そんな面白格闘世界の日本のとある山奥にある、千年以上の歴史を刻む名門中の名門、一番合戦流氣功術の宗家に生まれた桜花は、連綿と続く家業に則り、己の全てを家に捧げたと言っても過言ではない人生を送ってきた。


【武神に至る】


 ただその一点を追い求めた彼の一族に連なる桜花は、その人生の大半が、死んで生き返ってリハビリして死んで生き返って半死にしてリハビリして死んで生き返ってリハビリするような過酷なものであり、なんかこれってもう前世で見知った創作物の世界であっても原作知識(笑)にしかならないよね、と思ってしまうほどアルティメットハードであった。これだけデッドアンドアライブを繰り返すと、役立てる場面があっても立ち向かう気概も意欲も失せるだろうと。あと宗家の倫理観は、ぼんやり覚えている前世の倫理観など、国家破綻した紙幣よりも価値のない代物だった。ケツ拭く紙にもなりゃしねぇ、ってやつである。


 それでもまぁ、この体の持ち前の気質なのか前世の気性から来ているのか判然としないが、特に否と言わない流される性格のまま修行に修行を重ね、結果として、多大なる運と努力と才能と克己により13才で【一番合戦流氣功術皆伝】を賜ることになった。


 ううむ、人生とはまことにどう転ぶか分からないものだ。


 そう感慨に耽っていたのだが。


 気付くと、魔法の世界【バルバロード】に強制召喚されていた。


 なんだろう。この節操のない波乱万丈な人生は。






       ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★






 魔法世界バルバロードでも屈指の強国、海洋国家レグラント共和国。


 この国は大小一万二千を超える諸島群で構成されいて、その中で最も大きい島、ナルヴァーナ本島に首都を置いている。


 世界五大陸の内の一つ、エリアトル大陸の程近くにあり、世界随一の良港というのも手伝って、世界中の様々な人種が集まり大いに繁栄する人種のるつぼといえる国家である。


 レグラント共和国領内の端っこにある辺鄙な無人島に召喚された桜花であったが、現在は紆余曲折あって、ナルヴァーナ本島より凡そ南東15km先にある島、ホロノア大島の大都市ガロナにある老舗の店で厄介になりながら暮らしていた。


 店の名を【マウラの薬品店】という。


 年齢不詳の老婆、魔女マウラが切り盛りする小さな店である。


 この物語は、魔女秘伝の薬草学を学びつつ、蹴ったり投げたりぶん殴ったり、たまに冒険したりする、武人の物語である。



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