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魔法使いの世界の帰還者たち

さてと。

こんなに寂れた街に来たのは、本当に久々ですね。

さてと。

エルフとドワーフ、ヒューマン。

それと、ええっと、貴方の種族は何かしら?

頭の羊のようなツノに見覚えはありますが。

あ、ノームでしたか。

それと、そこの可愛い貴方は?

額にある宝石は何かしら?

え、こう見えても大人?

それは申し訳ありません。


では、ほんの御礼として、こちらの物語はいかがですか?

先ほど仕入れたばかりなのですけど。

 皆さんこんにちは。

 簡単なご挨拶ですが、まあ、私の言葉など誰も聞いていないのはよくわかっています。毎年恒例の愛のイベントの時などは、知人の冒険者にチョコレートを送りあったり指輪を贈ったりもらったり、そのために必要なアイテムの交換のためだけに私の元にやってきて幸せそうな顔で見せつけるという始末はどうしたものかと考えさせられましたわ。まあ。今となったは全てが懐かしい時代ですし、このような事態になっても私が私でいられる原動力であることは否めません。あの怪しげなマスクの男がこの世界から旅だってから、何か世界が変わってしまったようにも感じられます。それから一年も経たずして、ふと街で楽しそうに語り合っていた冒険者たちの姿が消えてしまいました。え?旅だったのでは? いえ違います、なんと言いますが、深夜0時丁度にですね、皆さんの姿がスッと消えてしまったのですよ。最初は何かあったのではないかと思いましたけれど、今となっては何が起こったかだなんでわかりません。ただ、あれからもう数年間、この街には冒険者の姿がなくなってしまったのです。

 それと同時に、ゆっくりとですが遺跡が消滅する事件が起こり始めました。まあ、私は街の中に生きているしがない商人ですからその実情なんてわかりません。ですが、時折街の中にやってきては買い物をしている『狂Pの試練場』の管理人さん曰く、このアザルP大陸が消滅し始めているという噂を聞きました。それがどうしてなのか、私にもわかりません。


 あら?

 どうして世界のことを話そうとするとピーっていう音がするのですか?


 まあ、その程度は些末なことですわ。

 ひょっとしたら冒険者さんたちは、そのために旅だったのかもしれません。もしもそうなら、私は彼らの帰る場所を守らなくてはなりません。ええ、この私の愛を込めて、彼らを私は待つことにしましょう。ですが、時折商店街の皆さんはこう言うのです。私の愛が重すぎると。え? そんなことはありませんよ、私は私を愛してくれる方に対して精一杯の愛を返すだけですから。あ、既に恋人がいたり結婚している人については知りません。私の前でいちゃつくのなら死んでしまえばいいと思います。

 また話が逸れてしまいましたね。申し訳ありません。しかし、私たちの住むディPント王国で起こった魔力消失事件の影にあのPャーデという魔女が関与していたことはすでに冒険者たちによって暴かれ、しかも解決したはずなのです。ですがそのあともいくつもダンジョンが発生したり、それ以前にも異世界からの来訪者という方がいらしたとかでディメPト王国は幾度となく危機訪れたことをみなさんは覚えていますか? え? 乳神様は危機ではない? あんなおっぱいお化けの存在、私たちディPント商工会議所に勤める女性職員にとっては危機以外あの何者でもありません。まあ、暫くして自分たちの世界に帰っていったので精々していますけれどね。でも、あの可愛い男の子まで連れて帰る必要はなかったと思いますよ。あの子なら、きっと私の心を受け止めてくれると思ったのに残念です。ええ、どうせあの大きな胸に騙されているのですわ。あんな細い紐を使って胸を強調するようなロリ乳神のんて滅べばいいのですよ。


 ぜいぜい。


 ああ、息が切れてきましたわ。まだ言いたいことはあるのですが、こう、毎日、冒険者のいない街でじっと待ってあると言うのは退屈でかないません。鍛冶屋のバルバスタンPさんなんて、ここ暫くは槌を振るうこともなく退屈だって話していましたし、なによりも武器を強化する機会がなくなって寂しいそうです。けれど私は知っているのですよ? 貴方が武具を強化するとき、成功率95%でも技を手を抜いて失敗し、お客様の武具を破壊していたことを。その時のお客様の死にそうな顔を見て心の中でニヤニヤと笑っていたことも。そんな事をするなら、ディメントP国では破壊しないようにお守りを売っていたのですよ? それに、あなたは仕事が終わって自宅に戻るときに街の警備騎士に自宅まで送ってもらっていたこともみんな冒険者には筒抜けでしたからね。知っていますか? 冒険者相手に殺人を犯していた赤い目の集団を、彼らにかけられていた召喚システムの裏では、貴方を殺して欲しいと言う依頼が日夜殺到していた事を。それがない今は、あなたにとっては天国なのかもしれませんね。


 ああ。

 本当に冒険者さんたちはいつ戻ってくるのでしょうか。早くしないと、やがてはこの街も消滅してしまいますよ。あら? あれは誰でしょうか? 門のところから誰かが歩いてからようですね。あなた達は誰ですか? その出立は冒険者ですね。まあ、横の女性も冒険者? あなたには用事はありませんわ少し黙っていてくださいね。


 私はロッテと申します。

 冒険者の皆さんのお帰りを、お待ちしていました。

 

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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