迷宮剣聖と、留守番の人々
「さて、俺はいつまでこの迷宮の中で遊んでいなくてはならないんだ?」
「さぁ? そもそも、ここにいる理由って何か聞いていないの?」
いつものようにストーム・ブートキャンプを終えたのち、参加者たちのスタンプカードにポン、とスタンプを押す。
今日の参加者は3名、確か尾行っ娘さんとシャリシャリさんと、あと一人は……誰だったかな?
「うう……名前を覚えて貰っていない……」
「いや、すまんな。尾行っ娘とシャリシャリさんは覚えているんだが、なんというか、影が薄いわけじゃなくて、ほら、確かメリエルさんだったよな?」
「メリエルじゃなくてメリメリです……あ、違う違う!!」
大慌てで両手を振って否定しているメリ……あ、メリメリさんだな。
「そうそう、メリメリさんだったか。それで、今日はあの学生たちは来ないのか?」
「彼女の名前はメリエールです!! そして彼らは今、とある任務で大忙しですから。私たちはオムイ防衛の為に残っているだけで、詳しい作戦については良く判っていないのです」
「でも、このオムイを守らなくてはならない、それは確かなのですから」
うん、メリメリさんとシャリシャリさんの目が燃えている。
それはそうと、尾行っ娘さんは、何を必死にメモしているのかねぇ。
「え、これはですね、ストームさんの技術や修行方法を纏めているのですよ。いつかあなたを討伐する者が現れた時、あなたの技術を誰かに継承する必要があるのですから。でも……」
「でも?」
そう問い返すと、尾行っ娘さんが俺に手帳を見せる。
そこには何も書かれておらず、真っ白のまま。
「どれだけメモをしてもですね、翌日には消えてしまうのです。だから、少しでも知識としてではなく体で覚えた方がいいと思いまして」
「それで、姫騎士であらせられるシャリセレス・ディー・ディオレールさんに同行して頂いているのですよ」
「ほう。その姫騎士ディオレールさんはどこに?」
――シクシクシクシク
そう問いかけると、メリメリさんの横に立っているシャリシャリさんが涙目で右手を上げている。
あれ、シャリシャリさんの本名って、シャリセレス・ディー・ディオレールだったか。
そいつは済まないことをした。
「私です……もうシャリシャリでもどうでもいいです」
「いや、こいつは済まなかった。本気で間違えただけなんだ、そもそも俺は、人の名前をおぼえるのが苦手でね」
「この方も遥さんと同じ属性持ちなのですか……」
遥……ああ、この前、マッチュと一緒にカレーを作っていた奴か。
正直にいうが、ありゃ化け物だぞ?
マチュアに近い属性持ちで、他人の為になら自己犠牲も厭わないタイプだ。
俺のように『身近なものを守る』というのではなく、『纏めてひっくるめて守る』っていうタイプだからな。まあ、それだからこそ、彼の近くには大勢の仲間たちがいるっていう事なんだろうなぁ。
「ま、俺よりもマチュアのほうが、その遥っていうやつに近いとは思う。それにしても、俺の任務って一体、何だったんだろうなぁ……」
そう思いつつ、迷宮の中を散策してみる。
特に何か変わったことはない、ここ最近はマッチュとも連絡が取れん。
確か最後の仕事とか言っていたのは、【三丁目の大賢者さんがピンチ】だとか話していたけれど、それってどういう意味なのかさっぱり分からん。
まあ、あいつはあいつなりにやるべきことがあるっていうだけ。
それなら俺は俺で、やるべきことを考えてみるか。
「さて、それじゃうあ暇つぶしに、地上で鍛冶屋でやっているか」
「え? ストームさんって鍛冶屋さんなのですか?」
「そ、それじゃあ、私に武器を一振り、打ってもらえますか?」
「オムイの復興には必要な戦力です。ここはオムイ一族代表として、そして軍神メロトーサムの娘として、ストームさんに復興の助力をお願いします」
へぇ、なんだか凄い二つ名を持っているなぁ。
なんだ、その軍神メロトーサムつて、おじさん、ちょっと興味が湧いて来たぞ?
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。




