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迷宮剣聖、不安に駆られる

 今日も今日とて、朝食を取って迷宮へと向かう。


 この『白い変人』という宿を長期契約して、はや一か月。

 俺のこの世界での仕事は、毎日、明記夕最下層へと向かい、やって来る冒険者を倒すだけ。

 まあ、倒すと言っても、物理的に倒すのではない。

 『尾行っ娘』と呼ばれている子がたまにやって来て、その子とお茶会を楽しみつつ最近の出来事について語り合ったり。

 

 『ギョギョっ娘』という子が獲れたての魚を持参して来て、代わりに剣術の訓練指導を行ったり。

 ああ、この前は迷い込んできた女の子がいきなり困り果てた挙句、パニックに陥って脱ぎ始めたよなぁ。

 シルヴィーにばれたら怒られる案件だわ、女の子を泣かせるでないって。


 そういえば、オタって呼ばれていたチームがやって来た時は、なかなか面白い話が聞けたよなぁ。

 この世界にどうして自分達が来たのか、最初に召喚された神界での出来事から始まって、そのあとの出来事など。

 不良チームとかいう輩が悪さしようとしていたとか、ほんと、大人数で召喚された時は色々と気を付けないとならないよなぁと考えさせられたわ。

 そのあとはまあ、マチュアから貰っていたティーセットとウォルトコのティラミスを差し出したんだけれど、その翌日には大勢の女性達がやって来て『お金は支払いますから、ウォルトコの食べ物を分けてください』って頼まれたなぁ。

 

 そうそう、その代表の委員長とかいう子が、女の子達を取りまとめていたけれど、あの子は『苦労しているんだなぁ』っていうオーラを放っていたよな。

 

 ほんと、この街には大勢の生徒が来ていて、それでいてなんというか……世界の危機を救っているっていう雰囲気なんだよなぁ。


「はぁ。手助けしたいとは思っているんだが。どうやら俺が手助けすることは、神は想定していないらしいかなぁ」


 おそらくだが。

 ここに来た理由っていうのは、多分だが。


「あの子たちのガス抜きなんじゃないかなぁ」


 って思ってきた。

 多分だが、あの子たちはここに入ったところから出ていったところまでの記憶はないと思う。

 それでも、心の中に澱んでいたストレスなどは幾分は解消できているんだろうと思う。


「あの……魚、持ってきました」

「あ~したちが、来たし」

「あの……うちの領地で怪しい迷宮があるっていう話を聞きまして」


 ええっと、ギョギョっ娘とギャルさんと、あとは……ああ、この前来ていた意味不明な子が話していたメリメリさんだったかな。


「あ、俺としては、メリメーリさんの土地を侵略する気はないので」

「はう……この人にもメリメーリさんって言われている……」

「え、この前来た、なんだか気合の入った独り言のような話し方している少年が、この領地の責任者はメリメリさんだって話していたが」


 そう説明すると『遥だからなぁ』『遥だよなぁ』『遥くんだからねぇ』って。

 ちょっと待て、そんなにあの少年は残念な子なのか?

 言っちゃなんだが、見た瞬間に幻影騎士団にスカウトしようと考えたレベルの化物だぞ?

 『化け物というか馬鹿だからなぁ』『馬鹿よねぇ』『ちょっと、遥くんにもいいところがあるよ』

 うん、必死に委員長が訴えているけれど。

 俺もその意見には賛成だな。

 あの子はいい感じで成長していると思うが。

 って話すと、なんで君たちがヘヘヘッて照れているんだ?

 

「うう。もうメリメーリでいいです。私、変な迷宮皇さんにもメリメーリで認識されている……」

「あ、迷宮皇さんがメリエールさんを泣かせたぁ」

「ま、待て、泣かせるつもりはなかったんだ、ほら、今日もティーパーティーを開いてやるから」

「うう……ケーキ大盛でお願いします」


 仕方がない。

 マチュアから預かっているウォルトコのティーセット以外にも、カレーとか麻婆豆腐とかの入った寸胴も置いておくから。

 ここれでも食べて、元気出してくれ。な。

 そしてケーキ大盛を請求した娘は別の子だな、メリエールさんが手を左右に振って否定しているぞ。

 しかし………俺はいつまで、ここに居なくてはいけないんだ?

 どうしたら帰れるのか、誰でもいいからちょっと説明してくれないか……。


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