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『小説家になろう』から始まる、創作者のスローライフ

──ザァァァァァァ

 雨が降る。

 そりゃあ雨季だから当然。

 この地域では珍しくない天候。

 年に二度の収穫期が終わると、この地方は必ず雨期がくる。

 その結果、狩人たちも森に入ることができず、城壁越しに野良魔獣を狩る仕事しかない。


 この時期、穀物や野菜は豊富にあるものの、食肉が乏しくなる。

 結果、酒場で供される食べ物も大したものは出てこない。

 良い生活は良い食事から。

 その言葉が誰のものだったか覚えていないが、僕にとっては関係ない。


「はぁ……今日も依頼はゼロかぁ」


 狩人ギルドの依頼掲示板を見ても、近隣の森での魔獣狩りの仕事はない。

 雨季が近づくと魔獣も山の方へ移動する。

 駆け出しの狩人の仕事としては、あとは適当な雑役を受けて糊口を凌ぐしかない。

 魔法が使えたら、もっといい仕事にもありつけるんだが。

 魔法を使える人間が、こんな辺境の辺鄙な街に住んでいるはずがない。


 魔法使い=エリート

 魔法使い=貴族


 これが俺の住む国の絶対的ルール。

 魔法使いには、それだけの価値がある。


 とぼとぼと安宿に戻り、食堂で一番安い定食をもらい、部屋に戻る。

 厳重に鍵を掛けてから食事を取ると、俺は両手を前に伸ばし、ゆっくりと詠唱を開始する。


「小説家になろう……オープン」


──シュンッ

 一瞬で目の前に巨大な魔導書が浮かび上がると、ゆっくりとページが捲れていく。

 これは俺のユニークスキル『小説家になろう』。

 遥か昔、俺たちの世界に来た勇者が残した『禁呪』の一つ。

 俺は偶然、深い森の中でこれが記されていた石板を発見し、そして継承してしまった。

 この魔導書は不思議な力を持つ、その一つ目のコマンドが『投稿』。

 これを宣言して表示された場所に物語を綴り、投稿ボタンを押すと、『PV』という数値が増えていく。

 これはどこかの世界で、俺が投稿した文章を読んでくれている人がいるということを表すだけでなく、実はすごい秘密があった。


「ええっと……今日のPVは25か。払い戻し(リジェクト)……と」


 二つ目のコマンドがリジェクト。

 1PVにつき銅貨が10枚、支払われる。

 今日の『小説家になろう』の収入は銅貨250。

 宿代で銅貨150枚、食事代で一食20枚。

 今日はいい、これで明日も食事にありつける。


「しっかし、不思議な禁呪だよなぁ。俺にとっては小遣い稼ぎ程度のメリットしかないけれど、この神作家っていうのは、一日にどれぐらい稼いでいるんだろうなぁ」


 1ページ目に記されているランキング。

 ここには、毎日トップランカーという上位作家が表示されている。

 中にはPV15000とかもザラに出てくることがあり、それだけ楽しい作品が書き続けられたらなぁと羨ましく思うこともある。


「銅貨15000……銀貨150枚かぁ。高級宿で贅沢三昧、いや、もっといいところにいけるよなぁ……」


 しっかし、神作家って、どんなものを書いてあるんだろうか。

 いままでは興味がなかったが、ちょっとだけ見てみることにしよう。

 そう思って一つだけ読んでみたんだが。


「ん? 日記? 普段の俺たちの生活とあまり変わらないぞ? 貴族に生まれて追放された? チート能力? ああ、ありふれた日常だよなぁ。こういうのがいいのか? これなら俺の知っている英雄譚とかの方が、ずっと面白いぞ? ちょっと書いてみるか?」


 そう思い、雨季が終わるまで俺は執筆に没頭した。

 そして新作を投稿した翌日、俺の作品のPVはいきなり1000を越えた。

 これは楽勝か?

 そう思って、知っている吟遊詩人の物語を次々とアップしを稼ぎまくったある日……。



──続く?

いつもお読み頂き、ありがとうございます。


・この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

・誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。



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― 新着の感想 ―
[一言] この世界だと五示先生は…… なんだリアルと一緒のインボイス恨むぞ納税者ぢゃまいか。
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