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ひかりの恋それから  作者: ひなたひより
第二章 勇磨と楓
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第5話 解決策

「どうした? お前たちやけに早いな」


 誠司とひかりは、いつもより30分程度早く登校して島田を捉まえた。


「先生ちょっといいですか?」


 誠司は島田を職員室の外に連れ出した。


「被害にあった生徒のネットに上がった写真を見せろだって。女連れで来て変態か? けしからん。朝から破廉恥なやつだ」


 島田は信じられんという顔で誠司を見た。


「そんなんじゃなくって確認したいことがあるんです」


 ちょっと待ってろと、島田は一度戻ってUSBメモリを机から出してきた。


「おまえ、俺にやばいことばかりさせやがって。まさか本当にクビにしようとしてるのか?」


 視聴覚室のパソコンを立ち上げ、USBメモリの画像を開くと、そこには何枚もの女生徒の裸が写っていた。

 誠司は慌ててそれはいいんですと画面から目を逸らした。


「なんだ? お前の目当てはこれじゃないのか?」


 ひかりは真っ赤になって画面を見ている。

 本当はひかりは誠司に画面を見て欲しくなかった。


「教師と生徒がネットに流れた破廉恥な投稿写真を学校で見てる。見つかったら俺はクビだよ」

「いや、これじゃなくって先生、顔を隠して水着とかスカートの中とか撮ってる画像があるって言ってたよね」

「ああ、こっちだ。なんだおまえそっちの方が趣味なのか?」


 島田が別のファイルを開くと、大量のそういった画像が出てきた。

 それを見て誠司はやっぱりと呟いた。


「全部携帯で撮られた写真ですね」

「そうだな。そう見えるな」

「全体的に解像度が良くないので、多分そんなに新しいタイプの携帯じゃないと思います。写真が撮られた時期はバラバラですね。投稿が一番新しいのは今年三月。もし田畑がこの携帯を今も使ってるとしたら……」

「画像が残ってる可能性がある。か……」


 島田は眉をひそめた。


「その時の携帯じゃなくても写真を新しい携帯に移してるかもしれんが、この時の携帯のほうが確率は高いな……それでどうやって携帯を手に入れる?」

「色々考えてます。まだその辺は詰めていきます」


 島田は誠司の話を聴きつつ他の質問を投げかける。


「画像を確認するなら携帯のロックを解かないといかんがどうする?」


 それが問題だった。


「それはこれから……」


 誠司はひかりと事前にそのことについて打ち合わせていた。


「ひかりちゃん、ちょっとこれらを見て誰の写真か分からないかな?」


 顔が映っていない画像だったが、女の子同士ならそれでも見分けがつくものがあるのではないかと誠司は考えたのだった。


「これ、すみれちゃんかも」


 ひかりは早速一枚の画像を指さした。

 そして画像を拡大してみる。


「ひかりちゃんの知ってる子に間違いない?」

「うん。多分……持っている携帯のストラップ、私がすみれちゃんにあげたのと同じやつなの」

「ああ、黒田すみれか。時任、おまえけっこう一年のとき仲良かったよな」

「すみれちゃん、二年のとき三か月ほど誰かと付き合ってたみたいだった」


 ひかりは話しながら他の画像を確認していった。

 顔の部分にぼかしを入れてある画像ばかりだったが、髪型や背格好など、友達同士なら容易に見分けがついた。

 そしていくつかあった黒田すみれらしき画像を見終えて、間違いないと確信した。


「やっぱりすみれちゃんに間違いないわ」

「そうか。それで時任が女生徒を特定できたとしても、そのあとどうするんだ?」


 島田は誠司が何をしようとしているのかを測りかねていた。


「田畑はいろんな子に手を出してたって言ってましたよね」


 誠司が画面を見ながら島田に尋ねた。


「ああ、付き合ったかは別にして気の多い奴みたいだ」

「黒田さんならロック解除できるんじゃないかと思ってるんです」

「どうして?」

「ひかりちゃんから聞いたんです。信用できない彼氏ほど女の子はメールとか通話履歴を知ろうと暗証番号を知ってることが多いって教えてくれました」

「そういうことか」


 島田はにやりと笑った。


「そうか黒田の協力があれば全部分かるかもな」

「ひかりちゃん、なんとか黒田さんに協力してもらえるよう話できるかな?」

「うん。すみれちゃんに話してみる」

「よし。決まりだな」


 島田は明るい顔で二人の肩を叩いた。


 

 お昼休み誠司は勇磨を、ひかりは楓を連れて美術室に集まった。


「えっと、何と言ったらいいかな……」


 四人で机を挟んで席に着いてみたはいいものの、何やらお互いに話し辛そうな勇磨と楓を前に誠司は口ごもる。

 ひかりは困り果てている誠司に助け舟を出してやる。


「取り敢えずお昼ご飯にしない? 私お腹すいちゃった」

「そう。そうだよね。俺も早く食べたいなって思ってたんだ」


 ひかりは向かい合わせに席に着く誠司に、手作りのお弁当を手渡す。


「いつもありがとう」

「今日もあんまり代わり映えがしないものばっかりだけど」

「そんなこと無いよ。いつだってすごく美味しいよ」

「そう言ってくれて嬉しい……」

「俺のほうこそ……」


 なんだかイチャイチャし始めた二人に、勇磨も楓も居心地が悪そうだ。


「ちょっと。私たちがいるの忘れてない?」

「そうだよ。めちゃくちゃ居づらいんだけど」


 不満げにそう指摘され、誠司とひかりは頬を染めてうつむいた。


「もう、ひかり、ここが学校だってこと忘れてるよ」


 二人の恥ずかしそうに反省している姿を見て楓はくすくす笑った。

 勇磨もつられて笑いだす。


「もう、二人ともからかわないで」


 ひかりは口を尖らせたが、何となく自然といつもの雰囲気になってきたのを歓迎したのだった。



 お弁当を食べ終え水筒のお茶を飲んでいた時に、なんだかそわそわしていた勇磨が向かいに座る楓に向かって口を開いた。


「あのさ……」


 勇磨の緊張した声音に楓の表情も硬くなる。


「昨日はごめんな……」


 そのまま勇磨は下を向いてしまった。

 楓も何も言い返せずに黙り込む。


「カッとなってみんなの前であんなことしちまって……悪かった」


 いつものよく通る大きすぎるぐらいの勇磨の声は重く沈んでいた。

 ひかりが隣に座る楓の背中をポンと軽く叩く。

 楓は上目遣いに勇磨の顔を見て口を開いた。


「私こそごめんね……」


 硬い口調でそう言った楓に勇磨は顔を上げる。


「私のことを心配してくれてたのに、あんなきつい言い方してしまってごめんなさい」


 楓はちらちらと勇磨の顔を窺いながら、躊躇いを隠さず言葉をつづけた。


「ほんとは言った後ずっと後悔してた……」


 ひかりが肩を落としている楓の背中をさすってやる。


「昨日言ったこと……みんな忘れて欲しい……って都合よすぎるよね……」

「じゃあ……俺のやらかしたのも忘れてくれないかな……」


 勇磨も楓もなんだかいたたまれない様子で、お互いをちらちら見ている。

 ひかりはそんな二人の気持ちを察して助け舟を出してやる。


「お互いにそう言ってるんだったら何にも問題ないんだよね」


 その一言で楓と勇磨の表情が明るくなった。


「うん。そうしようよ」

「そうだな。それがいいよな」


 いつもよりかはまだ少し大人しめだったが、二人の声に張りが出てきて、誠司とひかりもようやく安堵の笑顔を見せた。


「よーし。いつもの元気が出て来たところで作戦会議に入ろうか」


 誠司は島田とひかりとで話し合った計画を実行すべく話し始めた。


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