第四十八話「ギルド」
テルヤは、ミスター・パワーに四天王を倒すため入国したこと、諸事情でこの国にテレポートしてきたことを話した。
「つーわけで、俺たちは皇帝にこのことを話そうと思うんだ。」
だが、ミスター・パワーはニコニコしたままその言葉を否定する。
「それはとってもディフィカルトだと思うな。はっきり言って、君が勇者だというのだって信じられない。ルート君がいるからかろうじて嘘ではないと思えるくらいなんだよ。僕ですらそうなのに、皇帝陛下が信じると思えるかい?」
「そうなのか……。」
「うん、そうだよ。厳しいことを言うけど、君にあるのは肩書だけだ。違うかい? ルート君はその腕前が、サルビア君は王家という大きなバックがある。でも、君はその虎の威を借りているだけで、何もないだろう。」
図星をつかれ、テルヤは歯噛みする。
「ああ、そうだな……。俺には何もない。」
「そう、だから君が名声を掴めばそれでいいんだ。僕はこの国で冒険者をやっているから、ギルドに君を紹介してあげよう。依頼をこなして、名声を上げるんだ。名前が売れれば、きっと皇帝陛下も話を聞いてくれるよ!」
「ありがとう。まさかお前がここまで頼りになるとは、闘技場で見たときはただの変人かと思ったのに。」
「うーん、よく言われるよ! それじゃあ、ブレイブ! 頑張ってね!」
お決まりのキンニクポーズをして、ミスター・パワーが席を立つ。
「後でギルドに行けば、スムーズに冒険者登録が出来るはずだよ! 僕はこれから依頼があるから、また今度話そう!」
そう言って、ミスター・パワーは部屋から出て行った。
一行はその足でギルドに向かった。
ミスター・パワーの屋敷より一回り小さい大きさの建物だが、外観は周りの建物より古ぼけて、質素だ。それこそ、藁葺小屋をそのまま大きくしたような、安っぽい建物だった。
建付けの悪い扉を開け、中へ入る。
中は鼻が曲がるような汗と酒の匂いが充満していて、テルヤは顔をしかめる。
大きな広間の中心には、大テーブル。壁際には小テーブルが並べられており、そこにはパーティーを組んでいると思われる冒険者たちがグラスを片手に話し込んでいる。
一番奥には受付と思われるカウンター。死んだ目をした女職員が二人、肘をついて座っている。
テルヤがカウンターへ足を踏み出すと、冒険者の目が一斉に集まる。
やがて、そのうちの一人が立ち上がるとテルヤに立ちふさがる。
「おい、よそ者。この冒険者ギルドに何の用だ。」
「冒険者登録をしに来たんだよ。文句あるか?」
「口を慎めよ? 俺は“神速のアルフィニ”だ。俺に逆らったらその首跳ね飛ばすぜ?」
言いながら、アルフィニはその酒臭い息がかかる距離まで顔を近づける。
職員は止める気配もなく、虚空を眺めている。
「ああ、そうか。そりゃすまなかったな。通してくれるか。」
「あん? 誰の許可があって冒険者登録しようとしてんだ? よそ者が勝手に冒険者登録しようなんざ百年早いんだよ。ああ、でも金を払えば許してやってもいい。どうする?」
ニヤニヤと金をせびるアルフィニに、テルヤは真顔で返す。
「ミスター・パワーってやつに紹介された。それじゃますいのか?」
アルフィニはその言葉に舌打ちをすると、道を開ける。
「あのクソ偽善者の紹介なら止めねーよ。また厄介事起こされてもたまんねえからな。」
「どうも。」
テルヤはアルフィニを一瞥すると、受付へ歩いていく。
向かって右の職員の前に行くと、彼女はあからさまに舌打ちをした。
「えっと、ミスター・パワーの紹介で冒険者登録をしたいんだが。」
その言葉に、無言で四枚の紙を取り出す職員。
その紙には、冒険者登録申請書と書いてあった。
「えっと、俺たち四人分の名前を書けばいいんだな?」
「見て分かりませんか。」
冷ややかに返す職員にいら立ちながらも、テルヤたちは自分の分の申請書に記入していく。
「ほらこれでいいか。」
テルヤが四人分の書類を提出する。
職員は相変わらず無言で、裏へ消えていった。
やがて、職員が戻ってくると、面倒くさそうに溜息を吐く。
「えー、決まりなので確認させていただきます。弓使い、テルヤ様。癒し手、サルビア様。魔法使い、ルート様。サポーター、ワラシ様。お間違いないでしょうか。」
「ああ、合ってる。」
「間違いありません。」
「合ってる、です。」
「まあ、合ってるんじゃない?」
職員は死んだ目で頷くと、小さなカードを四枚取り出し、それぞれに手渡す。
「それはあなたたちが冒険者だと証明するカードです。無くさないように。再発行手続きは面倒なので。」
こうして、テルヤたちは冒険者となったのでした。ようやくテルヤが活躍するところが描写できそうです。ポンコツからの脱却へ向けて、いざ進め勇者よ!




