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ご都合主義って知ってる?~もし作者が世界を自由に改変することができたなら~  作者: 僕(投稿者:吉田純一郎)
第一章「アリステリア編その2」
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第四十五話「クソ、俺は無力だ。」

「ジャルソン、彼女を介抱してあげて頂戴。」

「かしこまりました。」

 ジャルソンは気絶したルートを抱え上げると、シャルテ側の扉から出て行く。

 サルビアも心配そうに、ルートについて行った。

「大丈夫よ、彼女たちは無事に返してあげるから。」

 言いながら、シャルテが手元のナプキンで口を拭う。

「そうねえ、それじゃあ約束通り四天王について話してあげるわ。何について聞きたい?」

「メリナについてだ。あとは他の四天王について。」

「いいわ。まず、メリナはここからヴェルヘニアを越えて東、オルガシア帝国の侵攻を担当しているわ。彼女はアンデッドの王。無数のアンデッド軍を使ってオルガシアの街を次々に占領している。全く、野蛮な女よね。」

 忌々しそうに顔を歪ませ、シャルテがグラスを弾く。

「他に、ヴェルヘニアの北に位置するイスタシア共和国を攻撃している“獣王レディブル”と、ヴェルヘニア王国の侵攻を担当している“剣帝ドラドス”がいるわ。」

 その言葉に、テルヤがテーブルを叩いて立ち上がった。

「待ってくれよ、レディブルなら俺が殺したはずだぞ!」

「アナタが殺したレディブルは……ヤギの頭をした怪物だったのではなくて?」

 シャルテは片眉を上げながら、見透かすようにテルヤに問う。

「あ、ああ……。」

「それはドラドスの配下よ。そもそも、レディブルがヴェルヘニアにいるはずがないわ。そうねえ、ドラドスがアナタの力量を確かめるために送り込んだ刺客といったところかしら? でも、生きて返されたということはドラドスがアナタを“脅威ではない”とみなしたということね。フフフッ、屈辱かしら?」

 ちょ、ちょっと待ってください? 僕は確かにレディブルをテルヤに送り込んだはずです。一体どうなってるんです? まさか僕の手を離れたせいで彼らの設定が変わった? いやしかし、そんなことは——。

 

 テルヤはどこか達観したような顔で、シャルテに返す。

「いや、お前とあの怪物とではオーラが違う。お前からはあの怪物とは比べ物にならないくらいプレッシャーを感じるよ。今なら分かる。あんな小物が四天王なわけないな。」

「あんなのと比べないで頂戴。ドラドスは四天王の中でもトップクラスで強いけれど、配下は寄せ集めのクズばかりよ。」

 そう言って、シャルテは残りの葡萄酒を飲み干し、立ち上がる。

「それじゃあ、あの魔法使いの子が起きたらオルガシアまで送ってあげるわ。それまでは自由にしてていいわよ。」

 シャルテの背を見送りながら、テルヤは強くテーブルを殴る。

「クソ、俺は無力だ。」


 立ち上がる気力もなく、テルヤが椅子に座ってグルグルと無意味に思考を回している。

 当然、得られるものはない。だが、そうしていないと自分の無力さに押しつぶされそうになるのだ。

「ワラシちゃん。」

 意味もなく、席を一つ挟んで座るワラシに声をかける。

「なによ。」

「お前はあのシャルテとかいうヤツが怖くねーのかよ?」

「私に感情はないわよ? 自由度の高い会話が出来るようにプログラミングされているだけ。なに、文句あるわけ?」

 表情を変えずに言うワラシに、テルヤは自嘲気味に笑う。

「いや……。俺はこの世界でそれなりにやっていけてるつもりだったんだがな……。今思い返してみれば、国を一つ救うことすらできてなかったんだなって考えちまってさ。お前みたいに悩みとかなさそうな奴が羨ましいよ。」

「よく分からないけど、元気出しなさいよ。アンタらしくないわよ。」

「アンタらしくない、ね。出会ってまだ数日のお前にそんな励ましをもらうとはな。」

 テルヤは天井を仰ぎ、ため息を吐く。

 やがて、ルートとサルビアがジャルソンに連れられ戻ってきた。

「ただいま、です。」

 その顔はいまだ恐怖で塗りつぶされている。

「本当にごめん。俺がもっと強ければ……。」

「いえ、仕方ない、です。わたしも四天王をなめすぎていた、です。」

 サルビアも、横で悔しげに唇を噛んでいる。

 そんな三人に、ジャルソンが声をかける。

「では、皆様をオルガシアまでお送りしますが、よろしいですか?」

「ああ、頼む……。」

 テルヤはどこまでも暗い顔で頷いた。


 案内されたのは、地下室。

 薄暗い部屋の中心に、魔法陣が描かれている。

「その魔法陣からオルガシアまで飛べるようにしておきました。戻ってくることはできません。」

 淡々と告げるジャルソンだが、ふと何かを思い出したように手を叩く。

「ああ、この私としたことが忘れるところでした。お嬢様から伝言です。『もしもっと強くなったら、その時はちゃんと相手してあげる。待ってるわ。』……だそうです。」

「けっ、どこまでも舐めやがって。なら伝えておけ。今ここで俺たちを殺さなかったことを後悔させてやる、ってな。」

 怒りを滲ませるテルヤに、ジャルソンは相変わらず表情を崩さずに言った。

「承りました。」

 そして、魔法陣は煌々と輝き出す。


 と、言うわけでようやく四天王討伐編(本編)に入ります。展開が遅すぎてすみません。これでも結構飛ばして書いたんですが……。

 次回投稿は余裕を持って2022年4月1日にさせてください。毎日投稿も今日で終わりになると思います。多分。

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