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ご都合主義って知ってる?~もし作者が世界を自由に改変することができたなら~  作者: 僕(投稿者:吉田純一郎)
第一章「アリステリア編その1」
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第二十七話「ビンゴだな。」

推敲しながら投稿していますので、残りの四話分は少しお待ちください。

 昼時を過ぎ、日が地平線に向けて沈む準備をし始める頃。

 まだにわかに明るい中央通りを、テルヤは南に向かって歩いている。

 やがて、一つの角を曲がり、少し行くと周りの建物よりも一際古ぼけた建物が見えてくる。

「宿屋の店主に聞いた話じゃ、ここがオルボールとかいう奴の家だが……。」

 草が伸びきった明らかに手入れのされていない庭に足を踏み入れる。

 と、家の扉が開く。

「む、客か?」

 エルフにしては大柄な男が、ちょうど今出かけようかという恰好で出てくる。

「ああ、お前がオルボールか?」

「うむ、いかにも。」

「そうか。いきなりで悪いんだが、俺に稽古をつけてくれよ。強いんだろ?」

 いやいや、頼むにしてももっと言い方とかやり方とかあるでしょうに。なんであなたそんなに偉そうなんです?

「すまないが、俺は今それどころではないのでな。また今度にしてくれ。」

「いや、その大荷物から察するに当分帰ってこないだろ? 俺も急ぎだからさ、頼むよ。」

「もう一度言うぞ。俺は今それどころではないのだ。今朝妹が攫われたと、妹の友人が言いに来た。ヒューマンにだ。正直今はヒューマンの顔すら見たくない。帰ってくれ。」

 怒りを露わにしながら、テルヤに詰め寄るオルボール。

「悪かったよ……って、うん? もしかして妹を攫ったヒューマンって、もしかしてグリーン・カンパニーとかいう奴じゃないか?」

 テルヤはエルランで深紅の……長すぎるので以下略します。深紅の(以下略)団に聞いた話を思い出しながら、言う。

 その言葉に、オルボールがさらに詰め寄る。

「そのグリーン・カンパニーという者たちが犯人なのだな?」

「いや、絶対そうとは言い切れないが、俺に心当たりがあるのはそいつらくらいしか……。」

 すると、オルボールはテルヤの手を強く握り、言う。

「ありがとう、さっきは強く当たってすまなかった!」

「ああ。よければ協力しようか? その代わりと言っちゃなんだが妹が見つかったら今度は俺に剣を教えてくれよ。」

「もちろんだ! よし、今から探そうではないか! 友よ!」

 そう言い、オルボールはテルヤに抱き着く。無駄に厚い胸板がテルヤの顔を押しつぶし、テルヤは小さくうめいた。

 ……なんか思ったより順調にいきましたね。


 宿屋の三人部屋。

「——と、いうわけで、コイツに協力する代わりに俺に稽古をつけてもらうことになった。」

「また面倒事に巻き込まれてしまったのですね……。」

「ああ、だが俺が強くなるチャンスだ。俺がもっと力をつければ戦闘に幅が出る。」

「たしかに、テルヤは逃げ足以外取り柄がない、ないです。」

 さらりと悪口を言ってみせるルートをにらむと、テルヤは言う。

「否定はしないがお前は黙っとけ。まあ、とにかくこれからのためにもコイツに協力したい。それでいいか?」

 その言葉に、二人は頷く。

「よし、じゃあとりあえず犯人がグリーン・カンパニーであると仮定して動くぞ。明日から二手に分かれて情報収集だ。ルートとサルビアはメリーズ近辺で情報を集めろ。俺とオルボールで妹が攫われた森の捜索をする。」

 そうしてこれからについて、四人は話し込んでいく——。


 捜索一日目。

 テルヤとオルボールはメリーズから一時間ほど歩いた森の中にいた。

 森の中は鬱蒼としていて、見通しが悪い。たしかに、人を攫うにはちょうどいい場所なのかもしれない。

 しばらく歩くと、ふと開けた場所に出る。

「これ、焚火の跡だな。」

 広場の中心には、焦げた木が寄せ集められたものがある。

「そのようだな。」

 テルヤは焚火にくべられた焦げた薪に触る。

「まだ新しいな。」

「どうして分かる。」

「三日前は雨だったろ。それに、この日当たりの悪さで地面はまだ少しぬかるんでる。だってのに、薪は乾いてる。つまり、ここ最近焚火をしたやつがいるってわけだ。」

「そうか。俺の妹を攫ったやつと関係していると思うか?」

「わからない。だが、こっから少し歩けばメリーズだ。わざわざここで焚火をするってことは、迷ったか、街に入れない理由があるかのどっちかだろうな。」

 そう言って、二人は引き続きあたりを探索する。

 と、オルボールが何かに気づいたように地面を見る。

「テルヤよ。ここに足跡があるぞ。」

 見れば、森の中から広場に向けて二組の足跡が続いている。

「はっきりしてるな。これも雨の後にできたもんだと思う。」

「ならば、辿るほかあるまい。」

「そうだな。」


 しばらく足跡を辿ると、不意にその並びが大きく乱れる。

 明らかに争った形跡だ。

 さらに、地面には、ひっくり返った手持ち籠と散乱したベリー、それから赤いバンダナが落ちている。

「なあ、これお前の妹のじゃないか?」

「いや、このバンダナは妹の友達のものだな。だが、この籠は妹のだ。」

「そうか。ビンゴだな。よし、明日からはあの焚火の周りを二人で張るぞ。」

 テルヤは籠とバンダナを拾うと、オルボールとともに森を後にした。


 日が地平線に沈み、街を夜闇が包み込む。

「——森で分かった情報は以上だ。そっちは?」

 そう促すテルヤに、サルビアが返す。

「はい。ここ最近メリーズではよく誘拐事件が起こっているそうです。ただ、一つ気になることがありまして。誘拐事件が起こる前日、決まって旅の商人を名乗る、細身で背の高い男が来るそうです。オルボールさんの妹さんが誘拐された日の前日も、です。もしかしたらそのグリーン・カンパニーと何か関係があるかもしれません。」

「なるほど、分かった。じゃあ、二人は明日からその商人が来ないか見張っててくれ。」

 二人が頷く。

 彼らは明日から始まる張り込みのため、休息をとるのであった。


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