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第十二話「あほくさ。」

早筆な作者は嫌いですか。今のところ毎日投稿ですね。まあ、しばらくは展開が決まっているのであとは文章化するだけだからね、しかたないね。

 あーあ、しょうもない。もうどうにもなりませんよ。僕のシナリオは完全に破綻しました。

 まあ、僕も悪いです。レディブルは本来三人目だ。それを軽率に一章の序盤で登場させたのも悪い。それは分かっています。

というか、そもそも一人目の四天王はサルビアと主人公の二人で倒すはずだった。

 仲間だって、せっかく赤髪の赤魔術使いを用意していたのに、完全に上位互換みたいなキャラが出るなんて、これじゃあキャラ被りもいいところです。

 はあ、あほくさ。

 もういいです。もういい。諦めます。重厚な世界観で紡がれる涙と感動のストーリーなんてもういいです。でも、こんなことにした責任は取ってもらいましょう。

 あなたのせいで、読者は僕のシナリオを楽しめなくなった。

 なら、代わりとなるシナリオをこの世界で紡げばいい。

 やれるものなら、ですけど。せいぜい、頑張ればいい。

 ああ、すみません、読者の皆さん。私の独白に興味はありませんでしたか?

 わかりました、お詫びと言っては何ですが、今回は明るい感じにしましょう。

 なら、書き出しは——。


 あれから半日、太陽が外壁にかかり始める頃。

 勝利の興奮冷めやらぬヴェルヘニア。

 王都、ヴェルヘン城の大ホールでは、今まさに勝利の宴が開かれていた。

「新たな英雄の誕生を祝して、乾杯!」

 ガームルはやはり大仰に、コップを振る。

 歓声が大ホールを包む。

「おい、待て。勇者である時点で英雄扱いじゃなかったのか? 今まで俺英雄だと思われてなかったのか?」

 すこし体をビクッと振るわせると、ガームルは目を逸らしながら、言う。

「まさかまさか、勇者テルヤはこの世に生を受けたときから英雄なのです。ああ、なんと神々しい、あなた様こそ英雄の星に生まれた素晴らしきお方!」

 だが、そのぎこちない身振り手振りが、余計にテルヤの疑惑を決定づける。

「おい、ごまかしても無駄だぞ。」

 ガームルに詰め寄るテルヤの肩に、優しく手が置かれる。

「大丈夫、大丈夫です。わたしは、知ってる。です。」

 優しく微笑むルートに、テルヤの目頭が熱く——。

「テルヤは、どうしようもない役立たず、です。」

 なる前に、頭に血が上った。

「いい度胸じゃねえか! 表出ろ、泣かしてやる!」

「わはー、役立たずが怒った、怒ったです」

 そう言って逃げていくルートの背中を見ながら、テルヤは誰にも聞こえない声でつぶやく。

「まあ、生きてて本当によかった。やっぱり未来予知はあてにならねえな。」

 そう言いながら、テルヤは適当に近くにあった料理を皿にとる。

 何かのフライのようだ。衣は厚く、フライというよりは唐揚げのような見た目をしている。

 口に運べば、じゅわりと勢いよく広がる肉の旨味。さらに舌でつぶせてしまいそうなほど柔らかい肉と、分厚い衣のカリカリとした触感が絶妙なコントラストを醸し出している。

「なんだこれ! めちゃくちゃうまいぞ!」

「お気に召しましたか?」

 感動するテルヤに、どこからかサルビアが声をかける。

「うわ、びっくりした。どこに行ってたんだ?」

 驚くテルヤを見ながら、彼女は不満げに

「どうしてこういう時だけ察しが悪いんでしょう。私の衣装を見ても同じことが言えるのですか?」

 見れば、数刻前と違って、サルビアはあの紺碧のドレスに身を包んでいた。

 テルヤは得心がいったような顔をしながら、返す。

「ああ、着替えに行ってたのか。それでさっきまで姿がなかったわけだ。」

 サルビアはその言葉にさらに不満を募らせると、白けた目で、テルヤを見る。

「テルヤ様。『似合ってる』の一言くらい言ってほしかったです。」

 そう言うと、彼女はテルヤに背を向け、どこかへ行ってしまった。

 テルヤは頭をすこし掻くと、また謎肉のフライを口に運んだ。


 かち、かちと時計の針が響く。

 テルヤは、自分にあてがわれた部屋の、明らかに高そうなベッドの上に寝転んでいた。

 窓からは、幽かに月光が差し込んでいて、大ホールは少し前までの盛況を思い返しているかのように、静かに佇んでいる。

 テルヤは、何か考え込んでいるのか、難しい顔をしながら呟いた。

「俺の能力は未来予知じゃないが、違うとしたら何だ? これから何が起こるか分かるのは間違いない。『神の声が聞こえる』ってのが何か関係しているのは分かるが……。」

 おやおや、馬鹿な主人公がなにか考えているようですね。まあでも今回は明るい感じにすると決めたのです。《幸い、ルートやガームルのような予定にない人物と違って、サルビアはまだ僕の能力の支配下にあります。》ここは彼女にヨーグレー酒をうっかり飲ませて、テルヤに突撃させましょう。お色気シーンがあれば読者も喜ぶ——。


「おい、なんだよ、今の。サルビアが誰の支配下にあるって?」


 ……なるほど。理解しました、彼の能力を。僕はなんて馬鹿なんだ。そういうことか。

 つまり、テルヤの能力は、僕の声を盗み聞きする能力だったんです。

 ふざけたことをしてくれましたね、“彼女”も。

 道理で僕のシナリオが上手くいかないわけだ。

 突然の苦難を乗り越え、成長していく主人公を描いた物語が、僕のコンセプトだった。

 でも、苦難が突然でなくなるなら、話は別だ。いくらでも対策ができる。


いいでしょう! なら、その能力も含めてこの『物語』を盛り上げればいいんです!

だって、この世界は僕のものだから!


編集履歴)

 終盤の改行ミスを修正しました。(2022年2月20日10:15)


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