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第十一話「読者は、こんな展開望んでいないはずです。」

 王都、大通りを二つの影が疾走している。

「どうした? 大口をたたく割には逃げるばかりで何もしないではないか。」

「俺にはこれくらいしかできねえからな!」

 レディブルが糸を吐く、瞬間テルヤがその身をよじる。糸が真横を通り過ぎていく。

 その勢いのまま、テルヤが地を蹴る、路地裏に滑り込む。

「小癪な!」

 レディブルはその路地裏へと糸を吐く。無数に吐かれたそれは、確実にテルヤを捉えんと猛追して、空を切る。

 テルヤは壁を蹴り、屋根へと登っていく。

「おのれ、ちょこまかと!」

「今のが、アンタの全力か?」

 テルヤは訳知り顔で言う。

「だったらなんだというのだ?」

「いっぺんに糸が吐けるのはその数までなんだろ。でなきゃ最初のファイヤーピラーの時だって、自分を糸でくるんじまえばいいだけだったもんな?」

 しつこく訊ねるテルヤの口を閉じんと、レディブルが高く地を蹴る。

 だが、レディブルが屋根に降りたったその時、レディブルを狙って火球が飛来する。

 レディブルはその身を翻し、かわす。

「おいおい、ギリギリだったじゃねえか! あんな小さなファイヤーボールも怖いのか? 四天王だか何だか知らねえが所詮は虫だなぁ!」

「貴様よくもぬけぬけとォォォッ!」

 そうして、すでに大通りを駆け出したテルヤの息の根を確実に止めようと、レディブルはテルヤめがけて高く飛ぶ。瞬間、ファイヤーボールが再度飛来する。レディブルは、糸盾でそれを防ぐ。

 そして、レディブルは大通りを駆けていく。


「ハハハ! どうだ、鬼ごっこは楽しいか!」

 テルヤはことさらレディブルを挑発するように、言う。

 どこからか飛来するファイヤーボールと、生意気なテルヤの言葉に、完全に平常心を失ったレディブルは、後先考えずに糸を吐き続ける。

「そんなに使っていいのか? またファイヤーボールが来るぜ!」

 その言葉に、レディブルが飛ぶ。だが、ファイヤーボールは来ない。

「おのれ、謀ったな!」

「お前が単純すぎるんだよ、バーカ!」

 再度、二人は駆け出す。駆け出していく。


「行き止まりだ、小僧!」

 眼前には、城門。門は開かれている。テルヤは躊躇なく飛び込む。

 レディブルは少し驚きながらも、あきれたように言う。

「馬鹿め、目的を見失ったか! ここは王の居城だぞ!」

「わかってるよ。心配しなくたって王様もうここにはいねえ。むしろ、ここが俺たちの目的地だ、レディブル。」

 足を止め、向き直るテルヤに、レディブルが笑う。

「ついに観念したか、小僧。貴様は我を相手によく立ち回った。その健闘を賞して、一撃で殺してやろう!」

「ハッ! テンプレみてえなセリフだな!」

 レディブルは返さず、糸を吐く。続いて、その体が揺らぐ。

 その糸が、剛腕が、テルヤを捉えようとして——空を切る。

 見れば、テルヤは駆け出している。

「貴様! 楽に死ねると思うなよ!」

「おいおい、さっきと言ってることが違うなあ!」

「黙れ!」

 城内を二つの影が切り裂くように駆けていく——。


 柱を、壁を、天井を破壊しながら、レディブルが叫ぶ。

「小僧! どこへ行った!」

 閉じたドアを破り、また破り、見失ったテルヤを探すレディブル。

 やがて、一つの部屋へとたどり着く。扉が、半開きになっている。

「そこかッ!」

 壁ごと扉を破る。テルヤはまたニヒルに笑いながら、言う。

「遅かったな。」

「鬼ごっこの次はかくれんぼか? だが、判断を誤ったな。ここは行き止まりだ。」

 瞬間、レディブルが霞む。レディブルは生意気なテルヤの頭を吹き飛ばさんとその剛腕を振り上げる。

 だが、その剛腕を受け止めたのは、麻袋。白塵が部屋を包む。

 ここは、あの時テルヤが——!あの時主人公がいた倉庫ですね。何を——

 

レディブルの頭上を飛び越えながら、テルヤが言う。

「粉塵爆発って、知ってるよな?」

 まずい——!レディブルがやられる!

 いや、まだです。レディブルは炎や高温に悉く弱い。だからこそ、粉塵爆発の存在も知っているはず。奴は自分の弱点を補うことを怠らない。糸は残っている。つまり、すぐにこの部屋を出れば、まだ間に合う!

 飛びのいて、それから糸盾を吐く!それで間に合う!大丈夫、大丈夫です!


 レディブルはその言葉に反応するが早いか、すぐに地を蹴る。そのまま半分転がるよう糸盾を吐き、部屋の外へと逃げのびる!

「と、まあ、炎を恐れるお前ならそうすると思ったよ。」

 テルヤが訳知り顔でつぶやく。

 完全に無防備となったレディブルの足元が、光る。

 振り向けば、いつぞやの魔法使い。ルートだ。

「女神よ、女神——」

 悟る。

「赤は炎——」

 もう、躱せない。糸はすでに使っている。

「天を衝く火柱よ、我が敵を喰らえ。」

 赤魔術“ファイヤーピラー”が、レディブルを貫いた。

 テルヤが笑う。

「言ったろ? いくらでも準備のしようはあるってな。」


 クソ! どうしてこうなる、意味が分からない。

 この世界は僕のものだったはず。僕の、僕が作った物語だったはずです。

 どうなっている? 分からない、なぜ僕のシナリオ通りに事が進まない?

 勝手にもほどがある。お前は、主人公は僕の駒に過ぎない。


 読者は、こんな展開を望んでいないはずです。

 僕が考えた完璧なシナリオを望んでいたはずなんです。


 すみません、キリが悪かったので今回は6話いっぺんにあげます。

 次回投稿は2022年3月10日までに行われます。

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