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彼女と外出してみた

デートとは?(哲学)

 異性とのデート────恋愛経験がなかったり、異性の好みに疎かったり、二人きりじゃないにしろ異性と遊びに行った経験がなかったり……とにかく、異性に縁がなかった人間は緊張し、苦悩する。着ていく服や行く場所に悩み、その日一日生きた心地がしないだろう。だが、例外というものがあると俺は思う。そんな彼女の恰好はカジュアルなブラウスにデニムパンツと年相応、季節相応。本人には絶対に言わんけどよく似合ってる


「なぁ、本当にこれでよかったのか?」

「朝陽君が私の元を離れないなら何でもいいよ」

「あのなぁ……」


 どうにか陽葵を唆し────もとい、説得し、どうにか家から連れ出す事に成功。とは言ったものの彼女はヤンデレ。普通に外出というわけにはいかず、俺の右手と彼女の左手を手錠で繋ぐ条件で今に至る。だが、客観的に見れば奇妙極まりない。警察へ通報されても文句は言えない。俺か陽葵が前科者になってもおかしくないのだ。ヤバいと思って尋ねるも隣を歩く彼女はどこ吹く風。気にした様子もなく答えた


「誰かに何か聞かれたら私達は恋人同士ですって堂々と言えばいいだけの話だよ」

「そりゃそうだけどよ……」


 俺と陽葵が恋人同士なのは事実だけど、手錠で繋がれてる事への説明にはならないんだよなぁ……。駆け付けた警察官に『私達は恋人同士です』と答えたところで証拠は何もない。オマケに年齢的な事を考えると捕まるのは間違いなく陽葵。もっとも、健全なお付き合いをしていれば未成年だったとしても違法にはならないと思うが……手錠で繋がれて外出するのが健全かと聞かれれば間違いなく健全ではないと思う。人によっては誘拐なのではないかと考える人もいるかもしれない。だからこそ俺が提案した事とはいえ、不安になってしまう


「だったらいいでしょ? 手錠で繋がってる理由だって私が極度の方向音痴で目を離すとすぐ迷子になっちゃうからって答えればいいんだしさ」


 陽葵が方向音痴だという話は聞いた事がないのだが、手錠で繋がってるそれらしい理由を説明するには多分だが十分だと思う。手錠で繋げないといけないほど迷子になりやすいってのはなかなかなんだが……何も突っ込むまい。家に缶詰よりマシだ


「それはそれでどうかと思うんだが……まぁいいか」


 彼女と付き付き合う事になった経緯が経緯だ。反論する気もしない






 他愛ない話をしながら歩いていると駅前に到着。改札口へ進み、電車に乗り込んだ。実際は徒歩五分だから大して長くはないのだが、陽葵と話してるのが楽し過ぎて時間を忘れていたようで、たかが五分が随分長く感じた


「とりあえず、どこ行く?」

「どこってショッピングモールだろ?」

「えー! ただショッピングモール行くだけじゃつまんなーい!」

「つまんないと言われても……俺は今日が初デートなんだ。女の子とのデートなんてショッピングモールか遊園地、映画館くらいしか思いつかないんだよ」


 電車に乗り込んだ後で行き場所に悩む事になってしまった……彼女と同じ年の男なら洒落たレストランやカフェを提案するのだが、生憎俺は高校生。年相応のデートスポットしか思いつかんのだ。相手がオタク系女子だったらアニメ専門店とかゲームショップとかに連れてくのだが、彼女はどちらかと言うとオタクとは無縁系の雰囲気。どちらかと言えばオシャレなカフェが似合う雰囲気だ。あくまでも雰囲気がそうだってだけで内面は知らん。実はオタク気質でしたと言われても普通に信じるまである


「私は朝陽君とならどこだって楽しいよ?」

「そう言ってもらえるのは嬉しいけどよ……彼氏としては彼女をちゃんとした場所に連れて来たんだよ」


 これは恋愛経験ゼロのしょうもない意地だ。初めてデートで下調べもロクにしてないクセして男としての面子を保つためだけにない頭を使って必死にデートプランを考える。女性慣れしてる奴からしてみれば滑稽な事この上ない


「そう言ってもらえると彼女的には嬉しいんだけど……最近もう二台ほどパソコン欲しいと思ってたから私としては電気屋さんにしてくれた方が助かるんだけど……」


 苦笑を浮かべる陽葵。彼女が現在使ってるパソコンは何の問題もなく動くのに何でもう二台? 使う用途は分からんが、二台もいらなくないか? 例えばだ、これから配信を始めようって思ったとしよう。仕事用のパソコンだと容量的な意味で使うのが躊躇われるから配信用にゲーミングPCを新たに買う。普通に分かる。しかし、それだって仕事用と配信用のパソコンだから合計二台。しかし、陽葵は新たに二台パソコンが必要だと言った。わけが分からんのだが……


「陽葵がそれでいいって言うなら俺は一向に構わんのだが、何で二台? 仕事用とプライベート用に使い分けるために買うなら一台で十分だろ」

「朝陽君の分も買うんだから二台買うのは当たり前でしょ?」

「はい?」


 陽葵のぶっ飛んだ発言に思わず間抜けな声を上げてしまった。『コイツ何言ってんだ?』みたいな顔をしてるが、言われた当人からすればこっちがコイツ何言ってんだ? だ


「聞こえなかった? 朝陽君とお揃いのパソコンが欲しいから電気屋さんに連れてって」

「陽葵がそこでいいなら俺は構わんが……」

「じゃあ決まりね」


 陽葵の一声で俺達のデート先が電気屋に決定。初デートの先が電気屋とは虚しいものを感じなくはないが、こういうのは女性の意見を尊重しておけば大体何とかなる。親父からの受け売りだ。そんなこんなで俺達は適当な場所で降車した。この辺は適当な場所で電車を降りても大きな電気屋があるから便利だ





 陽葵たってのリクエストで俺達は電気屋にやってきたのだが、半分春休みが抜け切れてない時期だってのと規模がデカいだけあって周囲の雑踏が凄まじい


「パソコンコーナーは六階か……」


 人混みの中どうにパソコンコーナーがどこにあるかを突き止めた。如何せん初めて来た店というのは勝手が分からんから困る。分かっているのは一階から三階のフロアは日用品とか、家電とかのコーナーが配置されてるという事だ。これはこの店に限らず十階建てとかの店だったら決まりきってる部分ある


「なら行こうか」

「だな。正直なところ、パソコンさえ買えればここに用はないんだろ?」

「うん。パソコン買ったらすぐ家に帰るし」

「え? 帰るの?」

「当たり前でしょ。必要なものがあるから外出したけど、それが済んだら用ないし」

「デートはどうするんだよ……」

「そんなの前半は外出で後半はお家デート。私は朝陽君と一緒にいれればそれでいいし、欲を言うと一日中抱きしめててほしいくらいなんだから欲が抑制されるような場所に長居するつもりはないよ」

「さいですか……」


 何だろうな……裏切られたとかじゃないんだが……コイツは本当に俺の事しか考えてないんだな。学校始まったらどうなる事か……考えただけでも頭が痛い


「当たり前じゃん。何? もしかして私が朝陽君の説得に応じたと思った? 残念だけど、ちょうどいい機会だからキミの案に乗っただけ。本当はネット通販でもよかったんだけど、朝陽君とデートしたいって欲もあったんだけどさ」

「どっから突っ込めばいいんだよ……」


 意外にも策士な陽葵に声も出ない。いや違うか、ツッコミが追い付かないと言った方が正しい。ヤンデレが同伴でとはいえ、外出を許可するだなんて変だと思った。まさか必要なもの買ったらさっさと帰る算段だったとは……


「突っ込まなくていいよ。朝陽君は私だけを見て私の事だけを考えていればいいんだから」

「はいはい。んじゃさっさと必要なもの買いに行こうぜ」

「うん」


 改めて年上の凄さを見せつけられた俺は陽葵に手を引かれる形でエスカレーターへ向かった。エレベーターは混雑してるから苦手だ。何より片手が手錠で繋がれてる状態でエレベーターに乗るのは有事の際、危険だしな






 六階に到着した俺達は一直線にパソコンコーナーへ。陽葵じゃないが、目的さえ果たせばこんなうるさい場所用済みだ


「ところで買うパソコン決まってるのか?」

「うん。持ち歩きできるノートパソコン」


 ノートパソコンと一言で言っても色んな会社のものがあるんだが……某リンゴのマークがついたやつは薄いし持ち歩きという意味ではコンパクトでいいとは思うが、値段が高かったり、慣れてないと使いづらい。別会社のものだとノートパソコンとは言っても持ち歩きにくかったりする。俺はどこの会社の製品を購入するつもりなんだって意味で聞いたんだが……聞き方が悪かったか


「ノートパソコンって言っても色んな会社のものがあるんだが……その辺はどうなんだ?」

「どこの会社が作ってるとかは別にどうでもいいよ。コンパクトで持ち歩きさえできれば」

「会社によってはアホみたいに値が張るんだが……」


 いくら社会人と言ってもさすがに安い買い物ではないから製造会社と値段を考慮して選んでほしいぞ……デカいマンションに住んでる時点で彼女の金銭感覚は狂っているようだ


「その辺は見てから決めるよ。それより、朝陽君は私に何か言う事ない? 服装とか」

「服装? ああ、よく似合ってるぞ」

「むぅ~、それもっと早く言ってよ~」

「俺の彼女は何を着ても似合うからな。別に言わなくてもいいと思ったんだよ」

「そう思っても好きな人には似合うって言って欲しいの!」

「悪かった。何べんも言うが、俺は女の子とデートした経験がないんだ、どのタイミングで言おうか迷ったんだよ」


 不満気な顔で俺を睨む陽葵。今のは正直な感想だ。ただ、どのタイミングで言おうか迷ったというのは半分嘘だ。本当はファッションに全く興味がなく、通報さえされなければどんな格好でもいいとか言えない……もっと言うと容姿に関しても全く興味がなく、ヤンデレだったら容姿なんてどうでもいいとは口が裂けても言えないよなぁ……


「もう……私はいつ言ってくれるか待ってたのに……」

「悪かったって、今度からちゃんと言う」

「むぅ~……朝陽君の初カノになれたからそれで許す……」


 若干不満が残った感じだが、俺の初カノになれたという事で陽葵は怒りを収めてくれた。女というのは何かと面倒臭い。別にデート時の服なんてスエットTシャツとか、ジャージとかぶっ飛んだ格好以外だったら何でもいいし、その場にあった服装だったらそれでいいんだがなぁ……女心というのは複雑なんだな






今回も最後まで読んで頂きありがとうございました

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