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Eternal  作者: 空白のワンダーランド
3/9

第3章 主人公

物語の鍵はいつだって、Alice ─。




この作品は「不思議の国のアリス」と「白雪姫」のオマージュ作品です。


 「不思議の国のアリス」と「白雪姫」のキャラクター名を使わせていただいてますが、キャラクターの性格は原作と異なる場合があります。

chapter:第3章 主人公] 「貴方は誰?それに…」

 アリスは言葉を切り、少年をじっと見つめる。

「…なぜ私のことを知っているの?」

(こんな人、登場人物の中にはいないのに。どうして…)

「僕はルイス。どうして僕が君のことを知っているか、と聞いたね。それは…」

 ルイスと名乗った少年とアリスは向かい合い、言った。


「僕は物語の書き直しによって、物語から省かれた登場人物だからさ」

 そう言ってルイスは寂しそうに笑った。


「ここは消滅の森といってね、物語から省かれた登場人物たちが来るところだ。物語が変わりかけている時だけこの森への道は開かれる。君がここへ来ることができたということは、今物語が変わりかけているのかい?」

「えぇ、そうなの。私、ハートの女王を探しているんだけど、ハートの女王がどこにいるか知らない?」

「いや、知らないよ」

[newpage]

 アリスは慌てて時間を確認する。


 物語がスタートしてからちょうど1時間。そしてタイムリミットまであと1時間。


「ルイス、ごめんなさい。私急いでいるの。行かないと」

 アリスが立ち去ろうとしたその時、ルイスはアリスの手をつかんだ。


「待って、アリス!」

「え…?」

 ルイスはアリスを説得するように言った。

「君は物語の主人公なんだろう?なら、君がここへ来たのは正解だ」

「なぜ?」

「君は物語通りの生活なんかもうしたくないだろう?自由になりたいと思わないかい?」

「…思うけど、今はそんなこと」

「できるよ」

「え…?」

 アリスはルイスの蒼色の瞳をじっと見つめる。

「君は自由になれるよ」

 ルイスは優しい声でそう言い、微笑む。

「どうやって?」

「物語をなくしてしまえばいいんだ。…そこに本があるだろう?」

 ルイスの目線をたどると、切り株にのった1冊の本があった。


「その本はこの世界の物語の本。つまり、

──『不思議の国のアリス』の原作だ」


 アリスは驚き、目を見開く。

[newpage]

 「その本は物語の主人公だけが触れることができる。さぁ、アリス。その本のページを破いて」


 アリスはそっと本に手を伸ばす。表紙には「Alice in wonderland 」の文字が光っている。アリスは静かにその文字を指でなでる。


(これが原作本…)

 本当にいいのだろうか。もし、取り返しのつかないことになったら。

 なぜか胸騒ぎがした。


「ねぇ、本当にいいの?私がページを破いてしまっても」

「ああ、だから早く。物語が書き直されてしまうよ」

 ルイスの言葉にアリスは頷きページのすみを持ち、破こうと手に力を入れたが、はっと手を止めルイスの方を見る。

「ルイスは…ルイスはどうなるの?」

「どうなったっていいじゃないか。なぜそんなことを聞くんだい?」

「だって…ルイスが心配なのよ」

 するとルイスは言った。

「僕はもうこの森から出ることはできない。すでに物語に存在しない人物だから。もうどうにもならないんだ」

「そんな…!」

「さぁ、アリス。ページを破くんだ!」

「でも…」

 ルイスはうつむくアリスの手を取り言った。

「お願いアリス。僕はこの時のために今まで頑張ってきたんだ。だから」

 必死なルイスの表情にアリスは仕方なく頷く。

「…わかった。ルイス、ありがとう。さようなら」


 アリスはページを持つ手に力を入れた。

 「ビリッ」と音をたて、ページは破ける。

 破けたページはヒラヒラと宙を舞い、ルイスとの別れを物語る。


「さようなら、アリス」

[newpage]

♤ ♡ ♧ ♢

 気がついた時にはアリスは野原に立っていた。

 手にはまだ、ページの破れた原作本を持ったままだった。

 隣を見ると、ハートの女王が座って本を読んでいる。


 そしてハートの女王はアリスに向かって言った。

「ねぇ、アリス。私たち自由になったよ」

「なぜハートの女王がそのことを知っているの?」


 アリスはハートの女王が手に持っている本を見て、目を疑った。なぜならその本はアリスが図書室で読んだ「物語の書」であったからだ。


「まさか、最初から…」

「ごめんね、アリス。私は貴方を利用したの」


 思えば、最初に役を交換しようと言ったのはハートの女王だった。

 最初からアリスはハートの女王の手のひらの上だったのだ。


「どうして、そんなことを…」

「ずっと前にルイスと交わした約束を守るためよ」

「ルイス…?」


「ずっと前の話だけど…聞いてくれる?」

 

次回、ハートの女王の過去が明らかに。


読んでくださりありがとうございました。


無断転載、使用は禁止です。

また、この作品は次のページにも掲載しています。

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