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【コミック4巻発売】お前のような初心者がいるか! 不遇職『召喚師』なのにラスボスと言われているそうです  作者: 魚虎・瀧岡くるじ
第四章 let's enjoy killing festival

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短編2-3

 イベントの最終日の夜。


 ここ二週間のゼッカとギルティアの頑張りの成果を見届けたヨハンは、とても幸せな気分で、闇の城の自室にて、くつろいでいた。


「良かったわね、ゼッカちゃん。頑張った甲斐があったわね」


 床には今回入手したバチモンの召喚石がずらりと並べられている。普段は酒を飲まないヨハンだったが、今日ばかりはこの光景を肴に、ワインでも飲みたい気分だった。


 ギルドのみんなにも協力してもらい、排出率の低いクロノドラゴンも10個集めることができた。


 そして、ヨハンにとって、もう一つ嬉しいことが起こっていた。


 並べられた召喚石の最前列。そこには、ロランドとの戦いの時に入手した特別な召喚石。


 他のバチモンとは違い、赤い×字で覆われた黒紫色の水晶。ただのイミテーションで、何の説明も書かれていなかったカオスアポカリプスの召喚石。その説明欄に、こんな一文が追加されていたのだ。


『ComingSoon……』と。


「これは、いよいよバチモンコラボ第二弾を期待してもいいのかしら。ふふ」


 と微笑むヨハン。


 そして、イベント終了まであと3分といった頃。クリアカラーの卵形の玩具を取り出す。それは、今回のイベントにて追加されたプチドラとプチコロの召喚石。


「本当は手に入れてすぐに呼び出したかったんだけどね……」


 この二週間、周回をするにしてもそれ以外のことをしているにしても、必ず周囲に知り合いがいた為、なかなか呼び出す機会が訪れなかった。

 いや、周囲に人が居る状態で召喚することはもちろん可能だったのだが。


「冷静でいられる自信がなかったのよね。私のクールなイメージが壊れたら大変だわ」


 という訳で、城から人が出払っているこの瞬間を見計らって、呼びだそうという魂胆だ。ヨハンが召喚石のボタンをカチリと押すと、幾何学的な魔法陣から、一匹のモンスターが姿を現した。


挿絵(By みてみん)


「もっ」


「きゃー! かわいい!」


 手のひらサイズの黒いまんじゅうに二つの目がついたようなそのモンスターの名は【プチドラ】。


 バーチャルモンスターズの設定ではヒナドラの進化前にあたり、卵から生まれた時の姿である。


 全てのドラゴンタイプのバチモンの幼体でもあり、この時期の育て方によってヒナドラやギラドラ、クソドラへと進化先が分岐していく。


「もきゅ」

「お……おお……じ……じょぶず……」


 尊さが限界を超え、訳のわからないことを呟きながら両手ですくうようにプチドラを持ち上げる。そして、頬ずりをした。


「もっもっ」

「あったけぇ……やわけぇ……ああ、見事な仕事だわ運営さん。これでノーベル賞はあなたたちの物よ」


 肌にぬいぐるみのような心地よいふわふわと、動物のような体温が伝わってくる。もうずっとこうしていたい。


 そう思ったヨハンの耳に、通知音が聞こえる。


「び、びっくりしたわ……何かしら……」


 そのメッセージの件名を見た瞬間、ヨハンの背を嫌な汗が流れた。


「え、いや……そんな……なんで……」


 それはプレゼントボックスにアイテムが送られたことを知らせるメッセージ。


「えっと……オメガソードⅡは別の人がとったでしょ……? 待って……待って……」


 恐る恐るプレゼントBOXを開く。すると、送られてきたのは装備品のようだった。




《ユニーク装備》

ゲーム内において設定された特殊な条件を満たした者に贈られる特典。


【カオスアポカリプスⅡシリーズ】頭・胴・右腕・左腕・足


防御+50 譲渡不可・破壊不可・売却不可


装備スキル:暗黒の遺伝子Ⅱ

○装備したプレイヤーが所持している召喚可能な召喚獣のスキルを全て発動することができるようになる。


《入手条件》

期間限定コラボイベント:復刻バーチャルモンスターズにおいて、原作再現状態でのクリア回数がもっとも多いプレイヤーに贈られます。バーチャルモンスターズを好きで居てくれてありがとうございました。





「どういう……こと? 私、みんなに遠慮して、原作再現プレイは一回しかしてないのに」


 ヨハンは混乱した。


 カオスアポカリプス入手のための条件を公開し、皆、入手のために原作再現プレイを頑張っていたのではないのかと。


「……」


 ヨハンは動画サイトへアクセスし、一番再生数の多い【GOO】カオスアポカリプス入手までの流れ~【ユニーク】という動画を開く。


「あかん……」


 そして、その手順を見て、頭を抱えた。


 そこで紹介されている方法は、原作再現とはほど遠いものだったからだ。確かに敵を倒す手順や技は完璧に再現されていた。しかし、それでは足りない。


 省略された台詞を補完するため叫んだり、BGMのタイミングを合わせたり……他にもさまざまな要因が、ヨハンからみて、圧倒的に足りていなかった。


 そして、青ざめる。


 皆がこの方法に従って周回していたのだとしたら……と。実際ほぼ全てのプレイヤーが、敵の撃破順と撃破するときの技を真似るだけでいいと考えていた。


 だがそれでは、愛が足りなかったのである。コラボイベントのユニーク装備は、欲しいと思って手に入るものではないのだ。付け焼き刃の知識や、強いから欲しいという気持ちでは、決して手に入らないようにできている。


 原作を愛し、そこから生まれる狂気じみた行動の果てに、初めて手に入れることができるのである。


「……。このことは、内緒にしておきましょう……」


 次の日。


 GOOの総合掲示板では「誰が入手したのか?」という話題でもちきりになったが、それはまた別のお話である。




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― 新着の感想 ―
[一言] 息をするように限界のその先の愛を奏でる女子、ヨハンさんに幸多からんことを
[良い点] 更新ありがとうございます [気になる点] ヨハンさんの気持が少しわかる自分 ……気になります!! [一言] 運営はそうなることはわかっていたんじゃないのかな? 掲示板もすぐに回答にたどり着…
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