第12話 掲示板とゼッカ
【GOO】総合スレ【雑談】
367.名無しの冒険者
俺同じエリアに居たけどマジで手も足も出なかったぞ
なんだよあのヨハンってやつ
368.名無しの冒険者
十万位から一気に上がってたから多分ランキング初参加だな
レベルも16だし、はじめて二ヶ月くらいだろ
まぁ俺はサービス開始から遊んで五万位くらいなんですけどね?
369.名無しの冒険者
GOOユニーク取れれば初心者でも無双できるクソゲーってマジ?
370.名無しの冒険者
元々そういうゲーム
ナンバーワンよりオンリーワンがキャッチコピー
運良く強いスキル取った奴が勝ち
371.名無しの冒険者
>>370
ロランドがトップの時点でそれはない
372.名無しの冒険者
ロランドは誰でも取れる装備と単純なプレイヤースキルでトップに居座ってるから
373.名無しの冒険者
鎧のデザインと時期的にバチモンコラボイベントで手に入れたぽい
ラスボスのデザインと酷似してる
374.名無しの冒険者
マジかよあのイベントのユニーク装備ってロランドが見つけたオメガソードじゃないのか
375.名無しの冒険者
イベント限定のユニークってひとつだよな?
おかしくね?
376.名無しの冒険者
誰もそんなこと言ってない
今までが一つだけだったってだけで今後もそうとは限らない
377.名無しの冒険者
今までも発見者が居なかっただけで普通に数種類あったのかもな
378.名無しの冒険者
今までの例から普通の遊び方してたらユニーク装備は絶対手に入らないからヨハンもなんかとんでもない遊び方してたんだろうな
379.名無しの冒険者
いいなー俺もユニークとって有名になりてー
380.名無しの冒険者
ユニーク装備はいいぞ
381.名無しの冒険者
ユニーク装備はいいぞおじさん「ユニーク装備はいいぞ」
382.名無しの冒険者
まぁトッププレイヤーのロランドがユニーク装備一切なしのキャラ構成なのが救いだな
みんなあいつを参考に頑張れる
383.名無しの冒険者
ロランドツイッターでしょっちゅうユニーク装備見つけた自慢してくるわりに自分じゃ全然つかわんな
384.名無しの冒険者
動画見てきた。なんだあのラスボスは
385.名無しの冒険者
バチモンという過去の遺物から蘇った魔王だ
386.名無しの冒険者
ラスボス……マジそれだわ
階層ボス従えてるとか怖すぎ
あいつだけ違うゲームしてんだよ
387.名無しの変質者
体型が女性だよなちょっと友達になりてーわ
388.名無しの冒険者
おまわりさーん
389.名無しの変質者
俺が警察だ
390.名無しの冒険者
世も末で草
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ゼッカこと、姫神絶佳は高校二年生である。塾の実力テストを終えて帰宅した絶佳は「そういえば今日はランキングイベントだったっけ」と、スマホを開いて結果を確認する。
それは元トップギルドに所属していた絶佳の習慣となっていた。
「総合順位は~っと。1位は不動のロランドさん。代わり映えしないなぁ」
2位3位4位5位とスクロールするが、前回と変わらぬメンツが並んでいて、絶佳にとっては退屈だった。
ジェネシス・オメガ・オンラインがリリースされて十カ月。半年くらい前に確立された筋力、敏捷特化型のビルドが流行して以来、トップ勢はほぼ同じようなキャラクタービルドに偏ってしまった。対抗馬だったバフ盛り型のサモナーも大幅な弱体化を受けて半ば崩壊。大量の引退者を出す羽目となってしまった。
基本タイマンで行われるランキングイベントにおいては剣士が圧倒的に有利であり、現在ではプレイヤーの半分が剣士という事態を招いていた。
ユニーク装備なしで最強の座に居座るロランドの劣化コピーのようなプレイヤーが多くいる。そんな固定された状態を良く思っていない絶佳はため息をつきながら総合順位を閉じる。
「さて、次は急上昇ランキングを見てみよ。この停滞した環境を打破できる、有力な新人は居ますかね~」
急上昇ランキングとは、順位をどれだけ上げたか……を競うランキングである。例えば3位から2位に上がったプレイヤーと1000位から990位に上がったプレイヤーでは、後者のほうが上のランキングに行くことができる。
「えっと急上昇ランキング第1位は10万位から107位。プレイヤー名がヨハンっと。いったい何したらいきなり107位になるのよ……ん? ヨハン……ヨハン……ヨハンさん!?」
思わず叫び声を上げ、隣の部屋に居た母親にキレられてしまう絶佳。だがそんなことはどうでも良かった。
「えぇ、ヨハンさんって、まだ始めて2週間でしょ……先週会った時もまだレベル1だったし。社会人だからあんまりログインできないって言ってたし……」
謎に頭を抱える絶佳。チラリと時計を見やると、そろそろ日付が変わろうという時間帯。絶佳は動画サイトにアクセスすると、ジェネシス・オメガ・オンライン公式チャンネルにアクセス。丁度10分前にアップロードされていたハイライト動画を開いた。
「急上昇1位なら、どこかに映っているはず」
食い入るように画面を見つめる絶佳。そして求めた映像はすぐに出てきた。
漆黒の鎧に身を包んだヨハンは赤いマントを翻しながら、階層ボスであるクワガイガーを従え、プレイヤーが使うことができない雷属性攻撃でプレイヤーたちを蹂躙していく。
そして最強プレイヤーであるロランドが切っても切ってもHPが1から減らない、謎の耐久力。
最後には分裂し始めるのだから、絶佳はもう自分がどうやったらこの存在に勝つことができるのか、想像もつかない。
「何この化物……」
これが本当にあのヨハンさんなのだろうか。バチモン以外は正直どうでも良さそうだったヨハンさんなのだろうかと絶佳は悩む。
「これ、多分何かしらのユニーク装備を入手したんだろうけど……」
絶佳は動画を見ながら思う。ここに自分が居たとして、果たして彼女に勝てるのだろうかと。最強のプレイヤーロランドに押されつつも切り返そうとしている彼女に、果たして勝てるのかと。だがそう思いつつ、絶佳の口角は自然と上がっている。
「……ていうかコレ、時間切れにならなかったら、勝っていた?」
いやさすがにないかと首を振る。それは、今の環境を退屈に感じている絶佳の希望的観測だ。
絶佳はジェネシスオメガオンラインが大好きだ。この十カ月、本気で遊びつくした。だからこそ、劣化コピーロランドに溢れた今の状況を快く思っていない。このゲームはもっと自由で、もっと可能性に満ちていなくては。
「この人なら、もしかしたら……」
スマホを見つめる絶佳の口が自然と緩む。
「明日、会えるかな……もし会えたら、話を聞いてみよう!」
ヨハンのこの一週間の冒険に思いを馳せつつ、絶佳は眠りにつくのだった。