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JADE  作者: シュリンプ
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アマゾンの恐ろしさ

マナウスを出発した冷泉翡翠探検隊は巨大なアマゾン川をボートで快走していた。凄まじい雷雨で何も聞こえない。水面を叩きつける音だけが永遠と聞こえる。私は匂いを探った。熱帯植物特有の匂い。濁った川の匂い。土砂の匂い。全てが私は大好きだ。日本ではとても味わえない。遠くに雷雲が見える。またしても雷だ。アマゾンは気候が突然変わる。別々の地域の雷雨が襲ってくることもある。激しい閃光が熱帯河川を照らし出し凄まじい轟音が轟き渡った。水位がどんどん上昇していく。今の内にルートを定めておいた方がいい。その時、河口に差し掛かった。いよいよ熱帯世界の迷宮に足を踏み入れる。冷泉の胸が湧き踊る。アマゾンは生物の楽園である。この世界で生きていくのは至難の技だ。地獄のような過酷な環境で生物達は驚くべき進化を遂げた。アマゾンの生物は皆地球上の進化の極限を行っている。彼らは我々を敵か餌としか見ていないのだ。油断すれば待っているのは哀れな結末だ。神経を研ぎ澄ませ、鳴き声、物音、水面の波しぶき等様々なことに注意を払わなければならない。ボートがゆっくりと川の分岐点に入る。川は複雑に枝分かれしており、一つのルートを巡るだけでも一日は掛かりそうだ。私は一番手前の川にルートを決めた。まずは体を文明からジャングルに慣らす必要もある。隊員に指示を出すとボートを手前の川に入れさせた。後ろのボートが後に続く。数十隻の大船団だが、ベースとなる船は河口付近に停泊させてある。基地となる船がなければ探検など出来ない。補給線は生命線だ。常にスマホと無線で連絡を取る必要がある。インターネット環境もWi-Fiを用意してある。ジャングルでも快適だ。

「以前の探検を思い出せ。ここから先はワニがいる。川に手足は入れるな。アナコンダもいる可能性もある。ピラニアもな。危険な生物も多い。我々が学んだことを常に初心に戻っていかすのだ。」私は隊員達に号令を発した。威勢の良い声が上がる。期待しているぞ、お前達。私はアマゾンのジャングルを見た。相変わらず土砂降りの雨だが私は素早く動く影を見た。どうやら猿だ。フサオマキザルのようだった。この猿はとても賢く器用だ。介護猿として特殊な訓練を受けている個体もいるほどに高度な知能を持っている。この猿はまるで我々を受け入れるかのように、追い返すかのように唸り声をあげるとあっという間にジャングルの奥へ消えていった。

「お出迎えと忠告をどうも。」

私は猿の歓迎かつ警告を胸に抱き止めボートを更に進めるように指示した。

「隊長、半魚人は各部族の間では伝説として語り継がれると同時に恐れられてもいます。まずは彼らの村に行き聞き込むをしては如何でしょう。」

未確認生物の生体に詳しい日比野隊員が言った。この日比野政樹隊員は日本では登山のプロでもあった。主に樹上棲の未確認生物に詳しい。

「だが半魚人の発見情報多発地帯の部族は未発見の集落ばかりだ。そう易々とは行けん。まずは近くの村に寄ってみよう。それからだ」

「わかりました。」

「前回の探検では酷いことになりましたからね。」

未確認生物の中でも植物系に詳しい竹中昴隊員が行った。竹中隊員は日本では竹細工の職人であり、対象捕獲の際の即席檻の製作に尽力している。

「彼らには彼らの流儀がある。我々が勝手に足を踏み入れたのだから仕方のないことだ。あの時はホラー映画のキャラクターの気分がよくわかった。」

こう話すのは畑中三沙隊員。畑中隊員は日本で刑事をしていた異色の経歴をもつ女性だ。未確認生物でも地中の未確認生物に詳しい。

「集落で部族達に捕まり檻に入れられた時の話か。あの時は大変だった。だが話のわかる人達だっただろう」

冷泉が言うのは前回のアマゾン探検時に情報収集のため立ち寄った部族の集落で捕らえられたときの体験だ。未発見の部族だったらしく和解するのに大変長い時間がかかった。だが対話できない部族がいる反面、理解すると面白い部族もいる。彼らは後者だった。川に面した檻に放り込まれたときはヒヤヒヤしたものだ。だが通訳の巧みな話術と翡翠の美貌、人柄もあって彼らは心を開いてくれた。彼らは我々を気に入り大変手厚くもてなしてくれた。驚くほど好感度が高い部族だった。野蛮ではない。文明に生き他人を見下し差別をする我々こそが野蛮なのかもしれない。村人が作ってくれたトカゲの丸焼きは大変美味だった。中々日本では味わえない。

「アマゾンにはまだ見ぬ部族も多い。気を抜かないようにな。」

私は隊員達に命じた。ここではほんの気の緩みが命取りになる。私は死ぬのは怖くはないが彼らはそうはいかない。部族と交渉決裂した時彼らが怒りで攻撃してきたらと恐れるものもいた。パニックは恐ろしいものだ。メチャクチャに取り乱しても何も解決しない。大事なのは真剣に向き合うことと強い意思を持つこと。瞬時にその次を判断しなくてはならない。

「わかりました。隊長のために精進します。隊長の警告は胸に染みます。」

隊員達の声。アマゾンの恐ろしさは数多いことを身をもって知るのも良いことだろうか。とりあえず情報を集めるため部族の村を探し始めることにし、開けた場所まで移動することにした。一旦川の開けた場所を目指すことに。だが…そのとき私は信じられないような光景を目撃した…

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