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ラズライト 短編集

イタズラ好きの小悪魔ちゃん

作者: ラズライト

「あっはっは!今度はどこに隠したと思う?」


イタズラ好きの彼女の視線がそのまま隠し場所を教えてくれる。下駄箱の一番下の段だ。


「な、なんでそこが!」


……バレバレだからだよ。上履きを隠すとかいうもう小学生でもやらないようないたずらを行った馬鹿は放っておいて教室に向かう。


「あ、待ってよ」


小悪魔が俺の横まで走ってくる。


「なんで分かったの?」


「視線で分かるんだよ!っていうかこんなこといつまで続けるつもりだ」


「え〜いいじゃん楽しいし」


「良くない!」


本当にどうしてこいつはこんなに俺に構って来るのだろうか。理解できないな。


こいつはクラス一の美少女でスクールカースト最上位。イタズラ好きってところと可愛らしいその容姿から、小悪魔ってあだ名をつけられている。


対して俺はごく平凡な高校二年生だ。


「なんで俺なんかに構うんだ?」


「楽しいから?」


「質問に質問で返すな、馬鹿が」


「馬鹿じゃありません。私にはちゃんとした名前があるんですぅ」


また、頭が痛くなってくる。そんな俺を見て、彼女はまた嬉しそうな笑顔を浮かべる。


本当にイラつかせてくれるやつだ。


◇◇◇


いつものように授業を受けて、昼休みがやってくる。


「ほら、食堂行くわよ」


あいつが来た。


「いや、ダチと食うから」


「いいから着いて来なさいよ」


「おい、助けてくれ」


いつも一緒に飯を食う親友に助けを求める。


「消えろ。リア充が」


俺の腕にこいつがしがみついているのを見て、嫉妬深い視線を俺に向ける。親友から告げられた残酷な宣告を受けて、俺は渋々彼女と昼飯を食うことになった。


◇◇◇


落ち着いて考えろ、俺。さっき、もし自分があいつの立場だったらどうするかを考えるんだ。


友達が可愛い子に胸を押しつけられながら、ランチに誘われている。こんな状況が俺の目の前で起こったら……殴るな、確実に。そう考えるとあいつはかなり優しい対応をしてくれたんだろう。やはり持つべきものは親友だな。


「なにさっきから黙ってんのよ。なにか話題ぐらい提供しなさいよ」


決して目の前で話題を提供しろなどという女ではない。


「お前が連れてきたんだろうが。お前が言ってみろ」


「最近反応悪くない?」


「……だからどうした」


「いや、つまんないなって」


いつもとは違った素の彼女が出てくる。


「刺激が欲しいとか思わないの?」


「ああ、今のままでも満足いく生活が送れているからな」


「……でも私がつまんないの」


ふざけたやつだ。


「俺になんか構っていずに友達とかと遊べばいいだろ」


「いや、それはなんか負けた気がするし……」


「知らん」


一体なにに負けんだよ。


「はあ、じゃあちょっとしたサプライズがあるから放課後、体育館裏ね」


それだけ言ってあいつは席をたった。


「あいつのサプライズはいつも面倒なんだよな……行かないでやろうか」


……それじゃあ、負けた気がするな。誰にって?あいつにだよ。


「チッ」


あいつと同じ考え方をしている自分にイラついて、勢いよく水を呷あおった。


◇◇◇


まったく……あのくそ先公。こんな時間まで片付け手伝わせやがってぇ。


私は生徒会の雑務をさせられていた。


「用事があるって言っといたのに!」


イラついた私は足元に転がっていた小石を蹴飛ばす。


もう7時だ。どの部活動もとっくに活動を終えて、帰ってしまっただろう。もちろんアイツも。


でも私は、一応確認しに行く。体育館裏に足を運ぶとあの馬鹿はこんな時間になっても律儀に私のことを待っていた。


「遅い」


私のことを見つけた彼が、怒ったように言う。


「で?なんで俺をここに待たせやがったんだ?」


「別に意味はないけど……」


「ないけど?」


言葉に詰まる私に問う。


「そうだなぁ……目、瞑つむってくれない?」


私はあるイタズラを仕掛けるために彼にそう言った。彼はため息を吐きつつも目を閉じた。


「それで?」


彼が言う。


「そのままちょっと待っててね」


1歩ずつ彼に近づく。


「おい、まだか」


「まーだだよ」


私は彼の目の前に立つ。心臓の鼓動が早くなっているのを自分でも感じることが出来る。


彼の首に手を回し、そのまま彼の唇と私の唇をくっ付けた。


「ばっ、ばかっ」


彼はすぐに目を開けて、私から距離を取る。いつもとは違う理由で顔を赤くする彼はとても新鮮で、可愛らしかった。


「な、なんでこんなこと……いきなり」


「好きだから......だよ」


私は大好きな彼に自分の気持ちを伝える。


「からかってんのか?」


「違うよ、あなたが好きだから……お、お付き合いを……」


こんな時に言い淀む、自分が嫌いになってしまいそうだ。


「本気か?」


私は頷いた。きっと私は先程の彼以上に顔を赤く染めているだろう。


どれだけ時間がたっただろうか……校舎の光が消えて、私達を照らすのは淡い月明かりだけになる。


彼は私の横を通り、校門に向かった。振られちゃったか……でも、酷いや……返事くらいちょうだいよ。自分でも気づかないうちに涙が溢れていた。


ぽつりぽつりと涙が地面に落ちる。嗚咽が漏れそうになるが必死に堪える。だって彼に泣いているところなんて見せたくない。彼の前では笑って笑顔を浮かべていたい。それが私の思いだった。


もうなにも聞こえない。彼の足音も……聞こえない。


その時誰かが私の手を引いた。無理矢理後ろを振り向かされて私の唇を誰かが塞ぐ。体をギュッと抱きしめられて離れることも出来なかった。


背中に回されていた腕が緩められ、私は一歩後ろに下がった。暖かい手が私の涙を拭う。


「びっくりしたか?」


彼はイタズラが成功した子どものような笑みを浮かべながら、私に尋ねた。だから私は返事の代わりに彼に飛びつき、キスをする。


彼の手が私を包む。彼がそうしてくれることが、私はとても嬉しかった。

こういうイタズラ、いいと思います。


気に入って頂けた方は評価やブックマークをいただけると嬉しいです。


感想を頂けたりしたら、作者は泣いて喜びます。


他にも作品を投稿していますので気が向いたときにでも目を通していただければ幸いです。


ⓒ 2019 LAZURITE@11252

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