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吸血執事

作者: Kyomoto

1.生配信・練習等での使用は自由。

2.お読みになる際、作者名と配布元のURLを記載してください。

3.語尾の改変・その他アドリブは自由。人称・性別改変はおやめ下さい。

4.使用報告自由。

5.誤字・脱字ありましたら連絡お願いします。

6.ボイスドラマ化・演劇上演される場合は営利・非営利問わずご一報ください。


※キャラクターの隣に書いてある『(M)』はモノローグ(心の声)です。

※【SE:〇〇】というのは効果音の事です。生放送・練習等で読まれる方は気にしないでください。

※複数人で同時に言うセリフはなるべく合わせてほしいですが、合わなくても大丈夫です。

※劇中某アニメ・流行語のパロディーセリフがあります。苦手な方はお控えください。

※女性でアレンを演じる方は少年声が出来る方/レイモンドは紳士的な男性の演技が出来る方でお願いします。

①アレン・カヴィル 

男、18歳、173cm。本作の主人公。高校から帰宅中、不慮の事故で瀕死の重傷になるが病室に現れたユリウスの従妹ミシェル・エルバーンと契約して事故前の身体に戻ったが、人間を捨て吸血鬼となり住み込みでミシェル・エルバーンの執事になる。現在はミシェルが海外出張で1か月間居ないため、その間ミシェルの従兄ユリウスの屋敷に住み込み執事として働いている。明るく物事をよく忘れがちだが、運動神経抜群


②ユリウス・エルバーン

男、20歳(人間年齢)、180cm。アレンの主ミシェル・エルバーンの従兄。有名ブランド【ELPS-エルプス-】二代目社長及び吸血鬼財閥エルバーン家第15代目当主。父親が亡くなった後一人で会社と家を切り盛りしている。好奇心旺盛でドS・潔癖症のため自分や身に着けている衣服が汚れると怒る


③レイモンド・フィリップス

男、28歳(人間年齢)、185cm。エルバーン家執事長。その正体は悪魔。悪魔呼びされるのが嫌い。基本真面目で有言実行。執事長ではあるが、人間界に降り立ってまだ日が浅い(言うて50年)。スケジュールを乱されるのが嫌い。性格とは裏腹に悪魔的な側面を持つ


④ノエル・リリー

女、23歳(人間年齢)、156cm。エルバーン家メイド。その正体は魔女で魔法学校を首席で卒業した天才。彼女の魔法の知識は超一級で出来ない魔法が無い位の腕の持ち主だが、性格は面倒くさがりで気だるげな喋り方をしている。そのため、掃除や洗濯は半分自分で半分魔法がやってる。宝の持ち腐れとは正にこのことである。年相応には見えない


⑤ジョージ・ブラウンシュヴァイク

男、40歳、195cm。エルバーン家コック。その正体は竜人。竜人は遥か昔に絶滅したはずだが、実は何人かは生き残っていてその一人。ミシェルの家のコックであるヴォルター・グレゴリウスとは同胞で親友。彼女(?)にミシェルの家を紹介したのは彼である。スラっとした体つきだが戦闘能力はかなり強い。いつもタバコを吸っている。唯一の常識人で人間界のことをよく知っているため、従業員たちのお父さん的存在。口癖は「おじさん」


⑥ルイス・ローラン伯爵

男、44歳(人間年齢)、188cm。エルバーン家に訪れる投資家の巨漢伯爵。性格は丁寧な言葉使いで大らか


⑦レオ・デル・リエゴ

男、26歳(人間年齢)182cm。ローラン伯爵に仕える執事で柔らかな笑顔が特徴の優しい青年…


⑧ナレーション




【配役表(♂4/♀1/不問2】

アレン♂♀

ユリウス♂

レイモンド♂♀

ノエル♀

ローラン♂

レオ♂

ナレーション&ポール♂






ナレ「時は現代、アメリカニューヨークのとある森の奥。そこにユリウス・エルバーンという1人の男とその従業員が人の目を気にせず静かに楽しく暮らしていた。それには一つの理由があった。これは彼らの奇妙で当たり前の日常の一遍を綴ったものである」


アレン「吸血執事」




ナレ「早朝、屋敷の中で従業員の男が慌ただしくしているところから物語が始まる」


レイモンド「アレン!!アレン!!どこにいるんですか!?アレン!!…はぁ、まったく。なぜ私がこんなことをしなければならないのでしょうか…」


ノエル「あぁ~楽楽。低空飛行で飛ぶ魔法作っておいてよかった~」


レイモンド「あぁっ!!ノエル!ちょうどいい所に!!」


ノエル「あ、レイモンドさんだぁ、どうしたの?」


レイモンド「実はですね…って貴女!!また魔法で移動しているんですか!?」


ノエル「うん…だってぇ、歩くのとか超面倒くさいし…それに魔法は有効活用しないとね」


レイモンド「普段は宙に浮きながら移動して、掃除や洗濯は自分でやらずに、全部魔法に頼っている事の何処が有効活用なんですか!?魔法というのはそういうことに使う代物ではないでしょう!?」


ノエル「え?…いやぁ、意外と使っている人多いよ??魔法って言っても全部が全部戦闘や護身の為のものじゃないからね。人々の生活に役立つものだってあるんだよ?」


レイモンド「…そうだったんですか。それは知りませんでした。…そんなことより!アレンが何処に行ったか知りませんか?」


ノエル「アレン君ですかぁ?さぁ??」


レイモンド「はぁ…(ため息)そうですか」


ナレ「さて、先程から2人は不思議な発言をしていると思う。そう、冒頭で言った1つの理由…それは、エルバーン家の主を含めた従業員は人間ではない。それを踏まえてこの2人の紹介をさせていただきたい。男の名はレイモンド・フィリップス。エルバーン家に仕える執事長である。真面目で有言実行。従業員の誰よりもユリウスのことを敬愛する執事の中の執事であるが、その正体は悪魔。普段は真面目だが、時折悪魔としての残虐性を持つ。そして、彼女はメイドのノエル・リリー。魔法学校を首席で卒業した魔女である。メイドなのに面倒臭がりで掃除や洗濯は主に魔法がやり移動でさえも魔法を使う。面倒臭がりが功を奏し、前人未到のオリジナル魔法の作成・無詠唱で魔法を唱えることが出来る。宝の持ち腐れとは正にこのことである」


ノエル「あぁ、そういえばぁさっきジョージさんがアレン君に荷物運びをお願いしていたようなしていなかったような…」


レイモンド「ほ、本当ですか!?」


ノエル「多分…まぁ、ジョージさんが何かしら知ってると思うよ。多分厨房に居ると思うからぁ」


レイモンド「分かりました!!」


ノエル「でぇ、アレン君に何か用なの?」


レイモンド「いつもは私がやっているユリウス様へのモーニングティーの準備を今日はアレンがやる手筈になっているのですが、準備どころかどこにも居なくて…こうして慌てて探しているというところです」


ノエル「へぇ~そうなんだぁ~それは大変だねぇ…」


レイモンド「全く貴女以上に手間がかかる子ですよ」


ノエル「え?今それアタシの悪口??ねぇ?ねぇ?」


レイモンド「(ぎこちなく)いえ、決してそういうわけでは…(時計を見ながら)あっ!そろそろ時間なのでそれでは!!」


【SE:走る音】





(場面転換。厨房)

ナレ「レイモンドは息を切らしながらジョージがいる厨房に着いた」


【SE:ドアを開ける音】


レイモンド「(息切れながら)ジョージさん!」


ジョージ「おぉ!!レイモンドじゃねぇか!(煙草を吸って吐いた後苦笑して)…珍しいな、お前がそんなに息切らしてるなんて…どうした?」


レイモンド「いや、ちょっと色々ありまして」


ナレ「煙草を吹かすこの男性はこの家のコック、ジョージ・ブラウンシュヴァイクである。彼の正体は竜人。竜人とは遥か昔に起こったとある事件で絶滅したとされている種族だが、実はその内の何人かは生き残っていて彼はそのうちの一人である。いつもタバコを吸っており、従業員の中で唯一の常識人。人間界のことをよく知っているため、従業員たちのお父さん的存在である。」


レイモンド「…アレン何処に行ったか知りませんか??」


ジョージ「アレン??あぁ、あの坊主か?あいつならゴミ捨て場に居ると思うぞ。荷物運んでもらったついでにゴミの処理も頼んだからよ」


レイモンド「そうですか!ありがとうございます!!」


ジョージ「いいってことよ…あ、そういえばおじさん今新作のスイーツ作ってるんだけどよぉ、良かったら味見してくれねぇか?」


レイモンド「申し訳ない。本当は味見したいところではありますが、今は急いでいますので!!それに味見ならノエルに頼めばいいのではありませんか?」


ジョージ「そりゃあそうなんだけどよ、あいつ今どこにいるか分からねぇんだよ」


レイモンド「彼女ならさっき2階の階段付近にいましたよ」


ジョージ「ホントか!?」


レイモンド「ええ。何なら心の中で念じてみたらどうですか?…彼女曰く【念は感じ取れない】そうですが、スイーツ絡みなのでもしかしたら来るかもしれませんよ(笑)」


ジョージ「ふーん、まぁ物は試しだ。やってみるか」


レイモンド「それでは私は急いでおりますのでこれで」


ジョージ「ああ」


【SE:ドアを閉める音】


ジョージ「…よし、やってみるか。(小声でぶつぶつと)ノエル、スイーツの味見しねぇか?ノエル…ノエ…」


【SE:ドアを勢いよく開ける音】


ノエル「味見する!!!」


ジョージ「…ははっ、マジかよ」





(場面転換。ゴミ捨て場)

ナレ「レイモンドがゴミ捨て場に着き勢いよくドアを開ける」


【SE:ドアを開ける音】


レイモンド「アレン!!」


アレン「ん?あれ?レイモンドさん?どうしたんですか?そんなに急いで」


レイモンド「どうしたんですか?じゃありません!!貴方今何時だと思っているのですか!?そろそろユリウス様がお目覚めになる時間ですよ!!」


アレン「あっ!!やっべ!!そうだった!!」


ナレ「この少年がレイモンドが探し回っていたアレン・カヴィル。物語の主人公である。本来の主はユリウスの従妹であるミシェル・エルバーンなのだが、彼女が諸事情で1か月間家を離れてる間、執事の勉強をするためユリウスの屋敷に行くことになった。しかし、彼はほかの従業員と違うところがある。それは、彼は元は人間だったということだ。元は普通の高校生で運動がとても好きな活発な少年だった。しかし、ある日不慮の事故に遭い重傷を負ってしまう。幸い、彼の意識は回復したが事故の後遺症で下半身が動かなくなってしまった。絶望的な状況の中、彼を救ったのは吸血鬼であるミシェルだった。彼の身体を事故の前に戻す条件として彼女が提示したのは、住み込みの執事になることと人間を辞め吸血鬼になることだった。そして、彼はその条件を飲み無事に事故前の体に戻ることができた。そして、人間を辞め吸血鬼となりミシェルの屋敷で住み込みの執事になるのだった」


レイモンド「はぁ…(溜息)貴方がミシェルお嬢様の所からこの屋敷に来てもう2週間経ちましたが、来た時と全く変っていませんね」


アレン「ご、ごめんなさい…」


レイモンド「これだと、せっかく貴方をこの屋敷に行くことを承諾してくれたミシェルお嬢様に示しが付きません」


アレン「そうですよね…流石にお嬢様の顔に泥を塗るわけにはいきませんし…」


レイモンド「はぁ…(溜息)とりあえず、次からは気を付けてください。わかりましたね?」


アレン「…はい」


レイモンド「(時計見ながら)おっと、話している暇はありませんよ!!さぁ、早くお行きなさい」


アレン「分かりました!!それじゃあ、行ってきます!!」


レイモンド「あっ、ちょっと!!纏めてあるこのゴミはどうするんですか!?」


アレン「レイモンドさんがやっておいてください!!お願いしまーす!!」


【SE:走る音】


レイモンド「はぁ…(溜息)まったく忙しないったらありゃしない」




(場面転換。ユリウス部屋前)

ナレ「アレンはユリウスの部屋についた。急いで来たため、息を切らしていたが、息を整えゆっくりとノックをした」


【SE:ノック音】


アレン「失礼します。旦那様…」


ユリウス「(遮るように)主の目覚めより後に来るなんてどういうつもりだ?アレン?」


アレン「っ!?申し訳ございません!時計を見るのを忘れてしまいまして…」


ユリウス「時計を見れないほど夢中になっていたのか?」


アレン「あっ、い、いえ決してそのようなことでは…」


ユリウス「…はぁ、お前またやったのか?レイモンドから話は聞いていたが…まさかこれほどとは…ミシェルに仕えているときはいつもこうなのか?」


アレン「あー…いやぁ…どうなんでしょう…」


ユリウス「…その感じだといつもやっているんだな。反省しているのか否かよく分からないな」


アレン「申し訳ございません」


ユリウス「(溜息)まぁいい。何事にも一生懸命やっているというお前の気持ちに免じ今回は大目に見ることにする。ただし、次は無いからな?」


アレン「あ、ありがとうございます!!次からは気を付けます!!」


ナレ「この青年こそ、ユリウス・エルバーン。吸血鬼財閥【エルバーン家】の八代目当主であり有名ブランド【ELPS-エルプス-】の三代目社長だ。アレンの本来の主ミシェル・エルバーンの従兄。父親が亡くなった後一人で会社と家を切り盛りし従業員のスカウトもすべて一人でやったため従業員をとても信頼しており、従業員もまたユリウスのことをとても尊敬している。性格は好奇心旺盛でドエス。そして、潔癖症のため自分や身に着けている衣服が汚れると怒る。ただし他人に対しての時である。」


ユリウス「(ため息)まったく世話の焼ける執事だな。吸血鬼になったとはいえお人好しな所は人間の時と変わっていないと前にミシェルから聞いたが、本当だったんだな」


アレン「いやぁ、ジョージさんにどうしてもって言われてしまったので代わりに仕事をやってまして…で、気づいたらこんな時間に…あはははっ」


ユリウス「ジョージの仕事を手伝うのは勝手だが、今の期間だけお前は俺の忠実なる執事なんだ。それを忘れるな」


アレン「…はい」


ユリウス「で、いつになったらモーニングティーの準備をしてくれるんだ?」


アレン「ん??あぁっ!!すっかり忘れてたああああ!!!い、今すぐやりますから!」


ユリウス「(ため息)やれやれ、先が思いやられる」



アレン「旦那様、本日のアーリーモーニングティーは、ダージリンのセカンドフラッシュ、それにスコーンをお付けしております。」


【SE:紅茶を注ぐ&皿を置く】


ユリウス「ありがとう。いただこう(間)ふむ…アレン」


アレン「はい、なんでしょうか?」


ユリウス「美味い」


アレン「…あ、ありがとうございます」


ユリウス「この調子で精進しろ、いいな?」


アレン「か、かしこまりました。このアレン・カヴィル精一杯旦那様にご奉仕させていただきます。」


ユリウス「ふっ、楽しみだ。…で、アレン今日の予定は?」


アレン「はい!えっと、本日は朝十時から【ELPS-エルプス-】本社での会議・取引先での面談・その後はお屋敷でローラン伯爵との会食となります」

ユリウス「そうか、分かった…ところで朝食の準備は出来ているのか?」


アレン「はい、既に準備出来ております」


ユリウス「案内しろ」


アレン「畏まりました」




【場面転換。エルバーン家廊下。】

ナレ「食堂に向かう際中、アレンはユリウスに質問をした」


アレン「あの…旦那様?」


ユリウス「何だ」


アレン「僭越ながら、旦那様にお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」


ユリウス「いいだろう、言ってみろ」


アレン「あの…旦那様は純血の吸血鬼なんですよね?」


ユリウス「そうだ、それがどうした?」


アレン「えっと、旦那様のエルプス社での普段の勤務時間って午前から午後まででしたよね?」


ユリウス「ああ」


アレン「えっと、失礼ながら私の知識だと吸血鬼って確か日光を浴びると死んでしまうとお聞きしたのですが…」


ユリウス「…要するにお前は俺に『純血の吸血鬼なのに何で日光を浴びても死なないの?』って聞きたいのか?」


アレン「!?は…はい」


ユリウス「ふっ、ははははは!」



アレン「ちょっ、何が可笑しいんですか!?」


ユリウス「(笑いこらえながら)いや、すまない。笑う気はなかったんだが、我慢できなくてな…。凄く神妙な面持ちで言ってきたから何か重要なことでも聞くのかと思って蓋を開けてみたら…ふっ、何だそんなことか」


アレン「そんなことかって…実は前に一度だけ同じ質問をしたのですが、中々答えてくれなかったので…」


ユリウス「ん?そうだったか?」


アレン「そうですよ!もしかして忘れてたんですか!?」


ユリウス「だってしょうがないだろ。お前も知っている通り俺はかなり忙しいんだ。(間)…しかしまぁ、忘れていたのは事実だ。すまなかった。」


アレン「旦那様…い、いえ私も出すぎた真似をいたしました」


ユリウス「で?質問の答えだったな?アレはノエルの魔法だ」


アレン「魔法ですか?確かノエルさんって魔法学校を首席で卒業した天才でしたよね?」


ユリウス「ああそうだ。アイツの結界魔法を俺の身体に纏わせて日の光を遮断してもらっているんだ。現世の化粧品で似たようなものがあったな…えっと…」


アレン「日焼け止めクリームですか?」


ユリウス「そう、それだ!日焼け止めクリームみたいなものだ」


アレン「なるほど…そうだったんですね。しかし、あのノエルさんが…ですか?」


ユリウス「ああ。といっても、最初はやる気は全くなかったのだが『俺が死んだらお前がエルバーン家を継いでくれるのか?』とおど…(咳払い)言ったら快く引き受けてくれた」


アレン(M)「今、完全に脅したって言いそうになったよな」


ユリウス「ん?何だアレン?何か言いたいことでもあるのか?」


アレン「い、いえ!何でもないです!!それにしても、ノエルさんって凄いんですね…ああみえて」


ユリウス「当然だ。アイツ、いつもはぐーたらしていて面倒臭がりだが魔女としての腕は一流だ。なんせこの俺がスカウトしたんだからな。あぁ、そういえば、この前日本のドラマを見ているときに聞いた『干物女』というワードがまさにノエルにピッタリだな」


アレン「な、なるほど…私も一つ勉強になりました」


ユリウス「ふっ、そうか。それはよかった」


アレン(M)「ん?アレ、ちょっと待てよ。あの時、旦那様はノエルさんに『俺が死んだらお前がエルバーン家を継いでくれるのか?』って言ったんだよな?継ぐってことは……結婚しなきゃ出来ないよな。んん??えっ、ま、まさかプロポーズしたのか!?えっ!?う、嘘だろ…」


ユリウス「おい、アレン…今変な事考えたりしてないか?」


アレン「あぁっ、い、いえ!!えっと、旦那様がノエルさんに魔法結界のお願いをしたとき何か変わったことはありませんでした??」


ユリウス「変わったこと?あぁ、そういえばノエルが暫く黙り込んだ後急に顔が真っ赤になってぶっ倒れたな。熱かと思ってレイモンドに頼んで部屋に運んでもらった」


アレン(M)「あぁーーーーーやっぱりかぁーーー」


ユリウス「何だ、その『あちゃあ』みたいな顔は」


アレン「(ぎこちなく)ええっ!?わ、私そんな顔してます??」


ユリウス「しているぞ!!一体何を考えている!?いいから言ってみろ!!」


アレン「だから本当に何も考えてないですから!!!(急に話を変えるように)ああぁ!!そうこうしているうちに食堂に着きましたよ!!」


(SE:扉の音)


アレン「…コホン、さぁ旦那様お入りください」


ユリウス「(小声)ったく、後で覚えておけ…」


レイモンド「おはようございます。旦那様」


ノエル&ジョージ「おはようございます」


ユリウス「おはよう」


レイモンド「朝食の準備が出来ております。さぁ、こちらへ」


ユリウス「ああ。ありがとう」


(SE:椅子を引く音)


ユリウス「ジョージ、今日の朝食は?」


ジョージ「今日はオレンジジュースと主にオランダで食されている【アウツマイター・スペック・エン・カース】だぜ。複数個の卵・ベーコン・オランダ産のチーズで作った目玉焼きをトーストした黒パンに乗せた料理だ」


ユリウス「ほう…美味しそうだ。いただこう」


ジョージ「どうぞお召し上がりを」


ユリウス「(口をふきながら)さて、朝食も頂いたことだし…レイモンド」


レイモンド「はい」


ユリウス「相変わらず3人への円滑な指示・アレンへの指導・そして各々のスケジュール管理。毎日しっかりしていて感服する。これからもこの調子で精進しろ。だが、スケジュールに関するこだわりが強すぎだ。完璧にしたいお前の気持ちは分かるが、もう少し相手のことを考えろ。いいな?」


レイモンド「だ、旦那様!!執事である私に対してその様な事を仰るとは。私はエルバーン家執事長として当たり前のことをしているだけでございます」


ユリウス「ほう、当主が普段から頑張っている従業員に対して労いの言葉を掛けて何が悪い?」


レイモンド「い、いえ決してそのようなことでは!!」


ジョージ「おいおい、レイモンド、おめぇの頭の中は日本の鰹節かなんかか?相変わらず考えが固てぇんだよ。なぁ、落ち着いてゆっくりと考えてみろよ。普段忙しくてこういう時しかコミュニケーション出来ない旦那から久しぶりにこんな言葉が聞けたんだ。驚いてんのはよく分かるが、反論するのはあまりにも失礼じゃねぇか?」


ノエル「そうだよぉ。旦那様はぁレイモンドさんに感謝の気持ちを持って言っているんだよぉ。有難く受け止めたらぁ?」


レイモンド「確かにそうですね…分かりました。そのお言葉、誠に光栄の至りに存じます。先ほどのご無礼をお許しください。」


ユリウス「頭を上げろレイモンド。俺は怒ってなどいない。気にするな」


レイモンド「…御意」


ユリウス「さて、次にノエル」


ノエル「はぁい」


ユリウス「メイドとして屋敷の掃除や俺や従業員たちの衣服の洗濯、見るたびに完璧すぎるほど綺麗で感心する…と言いたいところだが、これは全て魔法がやっているから直接お前がやっているわけではない。だが、普通の魔法使いではあそこまで綺麗に出来る者は少ない。それと、お前の結界魔法。アレが無ければ吸血鬼である俺は今頃灰になっている。流石、【天才】と呼ばれるだけはある。この調子で精進しろ」


ノエル「へへ、そ、そこまで言われるとさすがの私も照れちゃいますぅ。それに、私も一応メイドとして当たり前のことをしているだけだし旦那様のために魔法を使うのも屋敷の者としての責務だからぁ」


ユリウス「当たり前でも俺にとってはとても嬉しいことなんだ。分かるよな?」


ノエル「旦那様…あ、ありがとうございますぅ。これからも頑張りすぎないように頑張ります!」


ユリウス「頑張りすぎないように頑張る…ふっ、その言い方実にお前らしいな。次にジョージ」


ジョージ「あいよ」


ユリウス「コックとして俺や従業員の気分や好みに合わせた料理を瞬時に思いついて短時間で作る才能、見ていて感服する。それに一人の人物として腕前と性格両方合わせてこれほど良いと思った人物はお前が初めてだ。これからも精進しろ。ただし、厨房や皆が集まる前に煙草を吸うのはやめろ。服に匂いがこびり付いているぞ」


ジョージ「…ユリウスの旦那はおじさんのこと隅々まで見てるんだなぁ。こんな奴褒めまくってどうすんだよ。そんなに褒められたらおじさん調子乗っちまうだろ。でも、ありがとよ。その言葉、有難く頂戴するぜ。後、忠告しっかり守るわ」


ユリウス「さて次にアレンだが…無い。以上」


アレン「ええっ!?ちょっ、旦那様!?無いってどういうことですか!?」


ユリウス「何か文句でもあるのか?」


アレン「あっ、いえ…レイモンドさん達に対して素晴らしいお言葉を掛けていらっしゃったので、私にはどんなお言葉を掛けていただけるのかなぁと淡い期待を…」


ユリウス「だって、3人は俺の従業員。お前は今の期間はそうだが、本来はミシェルの従業員だろ?3人に対して日頃の感謝の言葉があってもおかしくはないだろ?」


アレン「いや、そうですけど…」


ジョージ「お?もしかして坊主、妬いてんのか?」


アレン「や、妬いてないですよ!!」


ジョージ「おいおい、嘘は良くないなぁ…おじさんそういうのはすぐ分かっちまうからよぉ。従業員らしく、欲しいなら欲しいっておねだりすればいいのによ」


ノエル「そうだよぉ。少しは自分に正直になったらぁ?」


アレン「ちょっ、ノエルさんまで!からかわないでくださいよ!!」


ジョージ「バカ、なぁにムキになってんだ?冗談だよ冗談。なぁ、ノエル?」


ノエル「うん!」


アレン「もう…!!」


ユリウス「(遮るように)ゴホン。…さぁ、茶番はそこまでにしておこうか」


アレン「ちゃ、茶番…」


ユリウス「随分と長くなってしまった。アレン、そろそろ出かける準備を」


アレン「か、かしこまりました」




ユリウス「さて、俺はそろそろ出かける。その前にレイモンド」


レイモンド「はい」


ユリウス「昨日言っていた件だが、いつまでに終わる?」


レイモンド「はい、昼前には終わるかと」


ユリウス「分かった、抜かりなく任務を遂行しろ。いいな?」


レイモンド「御意」


ユリウス「次にジョージ」


ジョージ「ああ」


ユリウス「例の場所の特定は?」


ジョージ「ああ、昨日のうちに全部終わらせたぜ。まるでリンゴの皮を剥く位簡単だったなぁ。それと…念のためしっかりと火を通しておいたんだが…迷惑だったか?」


ユリウス「いや、全然。むしろ俺の手間が省けた。感謝する」


ジョージ「いいってことよ」


ノエル「ねぇねぇ…皆さっきから一体何の話しているのぉ?アタシだけ仲間外れとかズルくない??」


アレン「ノエルさん。俺もさっきから何の話しているのかさっぱり分かりません」


ジョージ「ふっ…2人にはちょぉっと刺激の強いスパイシーな話だよ」


ノエル「スパイシー…??アタシ辛いの嫌い!!」


レイモンド「今の貴方達にとって無縁の話ですが…その時が来たらお話しましょう」


ユリウス「だから、お前達はいつも通り自分の仕事をしていればいい。分かったか?」


アレン「はい」


ノエル「分かりましたぁ」


ユリウス「それでは、行ってくる。家のことは頼んだぞ」


レイモンド「行ってらっしゃいませ」(出来れば3人同時に)


ジョージ「行ってら」(出来れば3人同時に)


ノエル「いってらっしゃいませぇ~」(出来れば3人同時に)


ユリウス「アレン、行くぞ」


アレン「あっ、ちょっと待ってください!!」


レイモンド「アレン!」


アレン「はい?」


レイモンド「旦那様をしっかりとお守りなさい!!」


アレン「…任せてください!行ってきます!!」


ノエル「行ってらっしゃい」


ジョージ「頑張れよ!!」


【SE:扉の閉める音】


レイモンド「さてと…今日は夕方にローラン伯爵が来ます。ジョージは食事の準備を、ノエルは屋敷の掃除やその他雑用をお願いします」


ジョージ「あいよ」


ノエル「分かったぁ~」


レイモンド「私は私用で一時間程席を外しますので、緊急事態が起こった際は私に連絡をください。それではまた」


ノエル「ねぇねぇ」


ジョージ「ん?」


ノエル「さっき、レイモンドさんに言ってた鰹節ってなぁに?」


ジョージ「あぁ、それはだな…」




ナレ「ユリウスや従業員がそれぞれの仕事を終えて屋敷に戻ってから2時間後、屋敷に来客が訪れた」


【SE:扉の開く音】


レイモンド「ローラン伯爵、エルバーン家の屋敷へようこそいらっしゃいました」


ローラン「お迎えご苦労。しかし、この屋敷は凄く綺麗ですな」


レイモンド「お褒め頂き誠に光栄でございます。当屋敷には優秀なメイドがいますので」


ローラン「そうかそうか。いやぁ、うちにもこれくらい優秀なメイドがいてくれたら良いんだけどなぁ。お前もそう思わないか?レオ」


レオ「はい、ローラン様の仰る通りでございます」


ナレ「屋敷に現れた来客の名はルイス・ローラン伯爵。様々な企業と連携を取り活躍している大物投資家だ。性格は大らかで紳士的。今回彼はユリウスが経営している『ELPS-エルプス-』と契約を結ぶため執事のレオ・デル・リエゴと共にやってきた。レオは爽やかで優しそうな風貌をしている好青年だ」


レイモンド「それでは、お部屋にご案内します。主がお待ちです」


ローラン「うむ」




【SE:ノック音】


レイモンド「旦那様、ローラン伯爵と執事のレオ様をお連れ致しました。」


ユリウス「入れ」


【SE:ドア開く音】


レイモンド「失礼します」


ユリウス「初めましてローラン伯爵。私がユリウス・エルバーンです。お会いできて光栄です」


ローラン「ルイス・ローランだ。こちらこそお会いできて光栄ですエルバーン卿。あぁ、そうだ紹介しよう。後ろの彼は…」


レオ「執事のレオ・デル・リエゴでございます。気軽にレオとお呼びください」


ローラン「…それにしても、若くして社長と当主を同時に引き受けたとなるとさぞかしお辛いのではありませんかな?」


ユリウス「いえ。もう慣れましたから。」


ローラン「はははは!!そうでしたか!これは無粋なことを言いましたな」


ユリウス「いえいえ。良く言われているので…お気になさらず」


ローラン「ははは!けいはとてもお心が広いようだ」


ユリウス「それでは、商談に移りたいところではあるのですが夕食の準備が出来ましたので我が執事が広間へご案内いたします」


アレン「伯爵。どうぞこちらへ。あ、執事のレオさんも」


ローラン「おぉ、そうかそうか。レオ、行くぞ」


レオ「畏まりました」


ナレ「広間で食事をとったローラン伯爵と執事のレオは満足な表情で応接室へと戻っていった」




ローラン「いやぁ、満足満足。あんなに美味しい食事を毎日取られている卿を羨ましく思うよ。レオもそう思うだろう?」


レオ「はい。大変おいしゅうございました」


ユリウス「喜んでもらえたようで良かったです。なにしろ、うちの従業員は全員優秀なので」


ローラン「執事・メイド・そしてコック、この屋敷の従業員は凄いな。全員先代の時から仕えているのかね?」


ユリウス「いえ、父の時の従業員達は現在隠居中でございます。なにしろ、全員良い歳だったので。今の従業員達は全て私が集めてまいりました」


ローラン「そうでしたか。いやぁ、卿は見る目があるようですなぁ」


ユリウス「いえいえ、そんなことはありませんよ」


ローラン「ははっ、そんなにご謙遜なさらずに。うちも見習わないといけないですなぁ。そうだろ?レオ」


レオ「はい、従業員一同これからも精進してまいります」


ローラン「さて…そろそろ商談の話に移りましょうか」


ユリウス「(微笑)そうですね」


ローラン「いやぁ、卿の御眼鏡に適うと良いのですが…」




ナレ「ユリウスとローランが商談を始めてから一時間が経った」


ローラン「いやぁ、中々卿の御眼鏡に適うものは無いようですなぁ」


ユリウス「申し訳ございません」


ローラン「いやいや、謝らないで結構だよ。それと、申し訳ないがお手洗いを借りたいのだが...」


ユリウス「あぁ、それでしたらウチの執事長がご案内いたします。レイモンド」


【SE:ノック音&ドアを開く音】


レイモンド「失礼します…旦那様、お呼びでしょうか?」


ユリウス「伯爵をお手洗いに」


レイモンド「畏まりました。それでは伯爵こちらへ」


ローラン「ああ、ありがとう。それと、手洗い後に電話をしたい。長くなりそうだから君は先に部屋に戻っていてくれて構わないよ。それに私には執事のレオがいるからね」


レイモンド「承りました」


ローラン「レオ何してる。早く行くぞ」


レオ「御意」




ナレ「伯爵達が手洗いと電話をしに行ってから50分以上が経った。」


ノエル「伯爵達遅いねぇ...」


レイモンド「電話をしているからとはいえ50分以上も席を外されるのは少し疑問ですね。ましてや人を待たせている状況なのに…」


ジョージ「なぁ、旦那・レイモンド。もしかして…」


レイモンド「もしかしなくてもそうとしか考えられないでしょう。旦那様如何なさいますか?」


ユリウス「…そしたら、ノエル...伯爵の様子を見てきてくれないか?」


ノエル「え、アタシですかぁ?」


ユリウス「そうだ」


ノエル「ホントにアタシなの?」


ユリウス「何か文句でもあるのか?」


ノエル「文句も何も…嫌ですよ面倒くさい。それに皆さん知ってます?こう見えて私レディなんですよ??」


ジョージ「(溜息)まさかお前の口からレディって言葉が出るとは…片腹痛ぇぜ」


ノエル「だってぇ、もし仮に行ったとして殺されたりしたらどうすんのぉ??」


ジョージ「バカ野郎!そういう時こそ魔法を使えばいいじゃねぇか!」


ノエル「で、ですよねぇ~」


ユリウス「(静かな威圧感を出しながら)…ノエル」


ノエル「ひっ!!…な、なんでしょう??」


ユリウス「面倒臭いとか死にたくないとかそんなのは正直どうでもいい。俺がやれって言ったらやるんだよ。分かるよな?」


ノエル「は、はい…」


ユリウス「それに、俺はお前のことを信じて頼んでいるんだ。お前なら出来る。もっと自分に自信を持て。いいな?」


ノエル「…はい、分かりましたぁ。アタシやってみます」


ユリウス「(微笑)それでいい」


レイモンド「危なくなったら魔法を使ってお逃げなさい」


ジョージ「バレなかったら御の字だが、もしバレたときはおじさん達が必ずお前のこと助けてやるからよ。安心して行ってこい」


アレン「ノエルさん頑張ってください」


ノエル「皆ぁ…I'll be back」




ナレ「ノエルはローランたちが電話をしている場所に着いた」


ノエル「えっとぉ...伯爵達は何処に...あっ、居た居た」


ローラン「だからもう少し待っててくれと言っているんだ!」


ノエル(M)「ん?何の話をしているんだぁ...??」


ローラン「…ふぅ。すまない。少し興奮してしまった。…あぁ…あぁ…あぁ、分かった…ふっ、今のところ計画通り進んでいる…なぁに、安心しろ。その時は私たちがどうにかする…あぁ…あぁ、分かった。また連絡する」


(ローランは電話を切る)


ローラン「はぁ…」


レオ「伯爵いけませんよ。そんなに大きな声を出してはすぐに気づかれてしまいますよ。ただでさえ貴方の声は馬鹿デカいんだ。少しは自重してもらわないと」


ローラン「そんなことは百も承知だ」


レオ「ところで、戻ったらどうするつもりですか?電話という理由だけでこれだけ時間を掛けているとなるとそろそろ怪しまれても仕方がないかと」


ローラン「あぁ、そうだな」


レオ「ところで、貴方の真の目的は一体何なのですか?私には一切教えてくれないじゃありませんか。何故、今の今まで黙っているのですか?私はそれが理解できない」


ローラン「それは…お前の事をまだ信用していなかったからだ。」


レオ「ほう。随分と正直に仰られるのですね。雇った身だから何でも言っていいとお思いなのですか?」


ローラン「いや、そういうわけではない。…お前はまだ私に何か隠しているだろう。今のお前は執事の格好をしただけのただのひ弱そうなガキだ」


レオ「…ふっ。そういうことでしたか。それは大変失礼をいたしました。ですが、もうそろそろ私の本性を晒すときが来ると思いますよ。その時まで、貴方はルイス・ローラン伯爵。そして私はその執事レオ・デル・リエゴ。この”役”を楽しもうではありませんか?」


ローラン「役…か。最初に会った時からそうだが…お前はまともそうでまともじゃない」


レオ「まともそうでまともじゃない…ふふ、誉め言葉として受け取っておきましょう」


ローラン「勝手にしろ」


レオ「それで、貴方はまだ私の質問に答えていないですよ」


ローラン「質問?」


レオ「貴方の真の目的ですよ。多額の金に釣られ詳しい詳細を聞かないまま貴方に雇われた身ではありますが、流石にそれを知る権利は私にもあると思いますが…まだお答えになる気はないのですか?」


ローラン「......」


レオ「どうなのです?」


ローラン「隠し財産だ」


レオ「隠し財産?どういうことです?」


ローラン「ユリウス・エルバーンの父、ニコラス・エルバーンは亡くなる直前屋敷のとある場所に財産を隠したという噂を耳にしてな。その財産の場所をユリウスから聞いて手にするというのが今回の真の目的だ」


レオ「…なるほど、理解しました。ですが、あの彼がそう簡単に財産の場所を吐いてくれるのですかね?相当口は堅いと思いますが?」


ローラン「ふっ、それなら安心しろ。こういう時に備えてコレを用意した」


ナレ「そういうとローランはポケットからあるものを取り出した」


レオ「これは…ただの懐中時計じゃありませんか。コレをどう使えば彼から隠し財産の場所を聞き出せるのですか?」


ローラン「これは…ただの懐中時計じゃない。時計の後ろの部分に絵が彫られているだろう」


レオ「ええ。それがなにか?」


ローラン「この絵をスライドさせると別の絵になる。それを見せると…催眠機能が発生する仕組みだ」


レオ「なるほど…それは凄いですね。しかし、この時計何処で調達したのですか?」


ローラン「こういう手の物を作るのが得意な知り合いがいてな。ソイツに作られたのさ」


レオ「なるほど、私も一つ欲しいくらいです」


ローラン「それは…本心か?」


レオ「さぁ??貴方はどっちだと思います?」


ローラン「興味ない」


レオ「あらまぁ、それは残念ですねぇ」


ノエル(M)「むむむ、隠し財産ですかぁ…こいつぁ大変なことになってきましたなぁ…とにかく速く皆に伝えないとぉ」


【SE:物音】


ノエル「あっ、やべっ」


ローラン「誰だ!?」


ノエル「ここは魔法を使うべぇ」


レオ「…鼠ですかね?」


ローラン「バカ言え。それに、お前も散々見てきただろう。こんな奇麗すぎる屋敷に鼠なんて出るわけがない」


レオ「えぇ、確かにそうですねぇ。だとすると、鼠じゃなかったら一体何だったんでしょうかねぇ。もっと別の何かか…もしかしてもうバレてしまいましたかね?」


ローラン「分からん…仕方ない一度確認してみるか」


レオ「ほう。どうやって」


ローラン「こうするんだよ(周りの匂いを嗅ぐ)」


レオ「…えぇっと、一体何を?」


ローラン「黙っていろ!気が散る!!それにお前は私の正体を知っているだろ!!」


レオ「あぁ。そうでしたねぇ。貴方の正体は確か…いえ、ここは黙っておくことにしましょう。もしかしたらまだ聞かれているかもしれませんしね」


ローラン「(周りの匂いを嗅ぐ)...匂いが無い…気のせいか」


レオ「本当にそうでしょうか?」


ローラン「...とにかくここで悩んでいても時間の無駄だ。益々怪しまれないうちに早く部屋に戻ろう」


レオ「承知しました」




ナレ「ローランとレオが会話している間、ノエルは低空飛行の魔法を使い颯爽と4人のいる部屋に戻ってきた」


ノエル「ソロモ…皆よ!!私は帰ってきたぁ!!」


アレン「ノエルさん!お帰りなさい!!」


ジョージ「ほ、本当にI'll be backしてきた…」


レイモンド「とにかく無事でよかったです」


ユリウス「ノエル、ご苦労だった。で、どうだった?」


ノエル「あ、そうだ!!大変なんだよぉ!!な、何から話していいか…お…オ…オ”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!」


【SE:空を切る音】


ナレ「ノエルは頭がパニックになりすぎて縦に回転しだした」


ジョージ「バカ野郎!!一回落ち着け!!」


ノエル「(回転しながら)お、落ち着けって言われてもおおおおお!!!うぷ…あ、ヤバイ…酔ってきた…吐きそう…誰か助けて」


レイモンド「アレン!!こうなったらノエルの身体の動きを止めるしか方法はないです!!さぁ、お行きなさい!!」


アレン「いやっ、あの…行きなさいって言われても…この回転力…マ、マジで半端ないって!!ノエルさんマジで半端ないって!!!!」


レイモンド「やはり魔法学校主席の名は伊達ではないということですか…」


アレン「何冷静に分析しているんですか!?それに、この回転と魔法学校主席全く関係ないでしょ!?」


ノエル「(回転しながら)アタシ…このまま回転しててもいいのかもしれない…あぁ、なんか幻覚と幻聴が…目の前に見覚えのある銀髪褐色の人が『止まるんじゃねぇぞ…』って言ってるよぉ…希望の花流れちゃってるよ…」


アレン「マズいですよ!!このままではノエルさんが死んじゃいますって!!『止まるんじゃねぇぞ…』言われてる側から言う側になりますって!!」


ジョージ「クソ…こうなったら奥の手だ!!おいノエル!!回るの辞めたらお前の大好きなショートケーキ食わせてやる!!しかもとびっきり美味いやつ!!」


アレン「…いやいや、ジョージさん…それで止まるわけ…」


ノエル「マジで!?言ったな!?」


アレン「止まったーーーー!!!」


ジョージ「お、おう!マジだ!!男に二言はねぇ!!…ん?あ、そういえばイチゴ切らしてたな…」


ノエル「…は?えっ?ジョージさん…それマジで言ってる??」


ジョージ「い、いやぁ~もしかしたらおじさんの勘違いかも…」


ノエル「ねぇ?イチゴのないショートケーキって何になるか知ってる?」


ジョージ「イ、イチゴのないショートケーキ?えっ、えっと…クリームケーキ??」


ノエル「それは違うよ!!」


ジョージ「えぇっ!!じゃ、じゃあ何なんだよ??」


ノエル「イチゴのないケーキはな…イチゴのないケーキなんてもはやパンなんだよ!!ただの甘いパンなんだよおおおお!!」


ジョージ「あっ、はい…す、すいませんでした」


ノエル「ふん、分かればよろしい」


ユリウス「お前らいつまで茶番を続けているつもりだ」




レイモンド「で、何が大変だったのです?」


ノエル「あぁっ、そうだ!!ローラン伯爵の本当の目的は旦那様のお父様の隠し財産なんだって!!」


アレン「な、何だってえええええ!!!」


ユリウス「やはりか」


アレン「…え?」


ノエル「えっと…やはりって?」


ユリウス「最初から知っていた…ということだ」


ジョージ「そういうこと。ついでにおじさんとレイモンドも知ってたぞ」


ノエル「ええええええええええ!?」


アレン「あっ!?もしかして朝3人が会話していたのって…」


ジョージ「ピンポーン、大正解」


アレン「な、何でそんな重要な事を俺らに話さなかったんですか!?」


ノエル「そ、そうだよぉ!!アレン君はともかく何でアタシに伝えてくれなかったんですかぁ!?」


レイモンド「そ、それは…」


ユリウス「だってお前顔に出るからな」


ノエル「ええっ!?」


ジョージ「おいおい旦那、レディー(笑)に対してド直球に言っちまったらショック受けるだろ?まぁ、事実なんだけどな」


レイモンド「ジョージさんも変わらないじゃないか!!ほら、見てご覧なさい!!ノエルがノエルがぁ!!」


ナレ「ノエルは人差し指を立てた左腕を前に出し体を真っ直ぐにした状態で倒れていた。それはまさにあの『止まるんじゃ…』」


アレン「(遮るように)いやいや、このネタいつまで続けるんですか?それに分かる人少ないでしょう?」


ノエル「…いつからですか??」


ユリウス「ずっと前からだ。お前自分が気に入らないことがあるといつも顔に出てるんだ」


ジョージ「そうそう。今回の件も事前に言おうと思ってたんだが旦那に止められちゃってよぉ。お前の顔を伯爵に見られるとうちの印象が悪くなるし、場合によってはバレそうってなぁ」


ノエル「そ、そんなぁ…旦那様もジョージさんもアタシのことけちょんけちょんに言うなんて…泣くぞ、アタシ泣くぞ」


レイモンド「ま、まぁ徐々に直していけば良いと思いますよ」


ノエル「そ、そうだね…アタシ頑張る」


アレン「ノエルさん、ドンマイ」


ジョージ「それよりも旦那、どうするつもりなんだ?」


ユリウス「どうするって?」


ジョージ「決まってるじゃねぇか、伯爵の事だよ」


ユリウス「そうだな…全く興味のない話を延々と聞かされるのにはもう飽きた。それに…父が隠し財産を持っていた話なんか聞いたことがない」


ジョージ「そりゃあ、隠し財産なんだから旦那にも隠していたんじゃねぇのか?」


ユリウス「それはない。父は隠し事が大の苦手だったからな。持っていたとしてもすぐ母にバレていただろう」


ジョージ「なるほどなぁ」


ユリウス「…隠し財産ではないが、父が一番大事にしていたものなら知っている」


ジョージ「なんだよ?」


ユリウス「この屋敷と…家族だ」


ジョージ「…旦那」


ユリウス「最初は分からなかったのだが、俺がエルバーン家の当主になってから父が屋敷と家族を大事にしていた気持ちがよく分かるようになった。この気持ちは今もこの先もずっと変わらないだろう」


ジョージ「(鼻をすすりながら)く、くそめっちゃいいこと言いやがって…目頭が熱くなっちまったじゃねぇか。おじさん意外と涙もろいんだよ」


ノエル「ハンカチ貸そうか?」


ジョージ「おお、ありがとな」


ナレ「ジョージはノエルから貰ったハンカチを手にすると鼻を思いっきり噛んだ」


ノエル「うわぁ…最低」


ジョージ「はぁ、スッキリした。で、結局どうすんだよ?」


ユリウス「ああ。そろそろフィナーレと行こうか」


ジョージ「ふっ…りょーかい」


アレン「えっと…俺とノエルさんはどうしたら?」


ユリウス「お前は俺の執事として最後まで仕事を全うしろ」


アレン「…御意」


ユリウス「ノエルはジョージと隣の部屋で待機だ」


ノエル「了解!」


アレン「あれ?そういえば、さっきからレイモンドさんの姿が見当たらないのですが」


ユリウス「レイモンドなら大事な用事で今さっき出て行ったぞ」


アレン「出ていくの早っ!」


ユリウス「さぁ、お前たちそれぞれの持ち場に付け。あの伯爵にエルバーン家の最高級のおもてなしをしてあげようじゃないか…ふふふふ」




ナレ「それから数分後、ローランとレオが戻ってきた」


【SE:ドアを開く音】


ローラン「いやぁ、すまない。予想以上に電話が長くなってしまった」


ユリウス「いえ、お気になさらず。それより…そこにいる執事と電話口の相手ポール・ウィーケンスとどのような会話をしていたのですか?」


ローラン「っ!?…はははは、な、何を言って言るのだね卿は?ポール・ウィーケンス?誰だそれは?初めて聞いた名だよ。そうだよなぁレオ?」


レオ「はい。私も聞いたことがございません」


ユリウス「御二方。嘘はいけませんよ。あぁ、そうだ。僭越ながらこの私が予想してご覧に入れましょう。伯爵はエルプスと連携をするためにうちに来た。しかし、本来はもっと別の計画をポールと2人で練っていた。それは私の父ニコラス・エルバーンが残した隠し財産の在りかを聞き出す計画をね」


ローラン「!?はははははは!!とんでもない予想ですなぁ。だが残念、不正解だ」


ユリウス「そうでしたか。そしたら、どんな会話をしていたのか私にお教え願いませんでしょうか?」


ローラン「!?そ、それは駄目だ!!」


ユリウス「何故です?」


ローラン「いやっ…あっ…そ、それはだね…」


ユリウス「普通の会話なら私に話せますでしょう?ま、まさか本当に父の隠し財産が目当てだったのですか?」


ローラン「いやっ、違う!!そうではない!!…妻だ。妻と話をしていたのだよ。…ど、どうだね!!これで納得していただけたかな?」


ユリウス「そうなんですか。でも、おかしいですねぇ。伯爵って確か独身だった気がするのですが…」


ローラン「!?あっ、い、い、い、いやぁ…」


レオ「…はぁ、見るに堪えませんね」


ナレ「そういうと、レオはポケットからあるものを取り出した」


レオ「伯爵、これが何か分かりますか?」


ローラン「ボイスレコーダー…!?お前…まさか!?」


レオ「はい。先程の我々の会話を録音させていただきました」


ローラン「貴様ぁ…自分が何をやっているのか分かっているのか!?」


レオ「えぇ、これをエルバーン卿に渡せば貴方の正体と我々の本当の目的が確実なものになってしまいますねぇ」


ローラン「レオ…お前この私を裏切るのか!?」


レオ「裏切るだなんてとんでもない!ただ、単に今のあなたが至極滑稽だったから助け船を出してあげたまでです」


ローラン「お前、それは助け船でもなんでもない。ただの自殺行為だ。それにお前の正体も分かってしまうのだぞ」


レオ「私?私のことでしたらご心配なく。実はね…私の本当の正体はまだ貴方に明かしていないんですよねぇ…」


ローラン「なんだと!?お前は殺し屋のレン・クリスではないのか!?」


レオ「残念、違いますよ。私の本当の正体を知るのは至難の業ですよ」


ローラン「ふっ、やはりか…お前は最初から私に明かす気はなかったのだな」


レオ「そうです。人類は誰しもありとあらゆる仮面を持って生活している生き物ですよ」


ローラン「このペテン師が」


レオ「お褒めいただき光栄です」


ユリウス「…ふっ。まさか執事にあっさりと正体をバラされるとはな。ほんの少しだけ同情するぞ、ルイス・ローラン伯爵…いや、国際指名手配中の詐欺師バルドラ・アドルフエッジ」

レオ「ほうほう、そこまでご存じだったとは思いもしませんでした...さぁ、どうします?伯爵?…いや、バルドラさん??」


ローラン「……くっ、くそぉっ!!何でだ!?この俺の完璧な計画がお前のせいですべて台無しだ!!」


レオ「あらあら、私のせいにしないでください。それにあの状況で言い逃れ出来るなんてさすがの私でも無理ですよ」


ユリウス「ふっ、やっと化けの皮が剥がれたな」


ローラン「いつだ!?いつから分かっていた!?」


ユリウス「最初からだ」


ローラン「最初だと…そんなバカな!?」


ユリウス「契約は本当に信用できる人とじゃなきゃ絶対にするなって先代に口を酸っぱくして言われていたからな。つまり、俺は最初からあなたを信用してなかったんだよ」


ローラン「な、なんだと…俺は最初からまんまと騙されていたってわけか」


ユリウス「騙すも何も元々はあなた方が私を騙そうとしていたじゃないか。自業自得だ」


レオ「ふっ、酷い言われ様ですね」


ローラン「お前は黙ってろ!!く~~~っ!!俺をバカにしやがってえええええ!!こうなったらこれを使う!!」


レオ「お…それは…」


ナレ「そういうと、バルドラは例の懐中時計を取り出した」


ローラン「これはただの懐中時計ではない!!催眠機能付きの懐中時計だ!!これを使って隠し財産の居場所を聞き出してやる!!!」


ナレ「そして、ユリウスに催眠機能付きの懐中時計を見せた」


【SE:催眠音】




ローラン「ふふふ、これでお前も終わりだ!!ユリウス・エルバーン!!」


ユリウス「…誰が終わりだって?」


ローラン「な、なんだと…!?催眠が効いてないだと…何故だ!?」


ユリウス「ふっ、そんなものこの俺に効くはずないだろう。さぁ、来いバルドラ。そんなもの捨てて掛かってこい」


ローラン「く、くそおおお!!この役立たずが!!!」


【SE:物を叩きつける音】


レオ「あらら、せっかくの時計が…」


ローラン「(怒りながら)こうなったら…」


ナレ「そして、ローランことバルドラはポケットの中から携帯を取り出し誰かに電話を掛ける」


【SE:通話音】


ローラン「もしもしポール、俺だ!!計画は失敗だ!!今すぐアイツらを」


ポール「(遮るように)やめろ…やめてくれ…」


ローラン「…おいポール、どうした?何があった?」


ポール「ば、化け物だ…化け物が現れた」


ローラン「化け物?おい、そいつぁどういうことだ?」


ポール「アジトに居た仲間のほとんどがやられた。しかも瞬殺だ。人間が出来る動きじゃなかった…」


ローラン「なに!?どいつだ?どんな奴にやられた??」


ポール「て、敵は…」


ナレ「ポールが言いかけるとすぐ側で仲間の一人が大きな断末魔を挙げた」


ポール「クソ!!仲間が一人やられた!!」


ローラン「何だと…!?は、早く言え!!敵はどんな奴だ!?」


ポール「敵は1人。金髪で燕尾服を着た若い男だ」


ローラン「金髪で燕尾服…ま、まさか!?」


ポール「ク、クソ!!敵に見つかった!!…た、頼む。い、命だけは。命だけは…うわあああああああああああああああ!!!」


【SE:雑音】


ローラン「ポール?おい!聞こえるか!?おい!!」


レイモンド「…もしもし」


ローラン「…お前エルバーン家の執事だな」


レイモンド「おや、私の声を覚えて頂けているなんてとても光栄です」


ローラン「アンタの容姿を聞いてピンと来たよ。それより…この電話の持ち主は何処だ?」


レイモンド「あぁ、彼なら隣で眠りにつきましたよ…永遠の眠りにね」


ローラン「!?くっ、くっそ~~!!こうなったら直接奴らに掛けるしか!!」


ナレ「バルドラは電話を切り別な所へ掛ける」


【SE:着信音】


ローラン「クソッ!!何でだ!?何で出ないんだ!!」


ナレ「すると、隣に待機していたジョージ達が部屋に入って来た」


【SE:ドア開く音】


ジョージ「(煙草を吸いながら)うぅっすーお邪魔しまーす」


ノエル「…待たせたな」



ローラン「お、お前はこの家のコックとメイドだな!?何の用だ!?」


ジョージ「アンタ、誰に電話しようとしてんだ?」


ローラン「ふっふっふ!!聞いて驚け!!最近麓の方を拠点にしているギャングがいる!そいつらに電話をしているんだ!」


ジョージ「あらやだ、聞きました?奥さん??あの人ギャングに電話かけようとしているんですって!!」


ノエル「やだぁ、ちょーこわーーーい」


ローラン「な、何だその反応は!?…へへっ、今に見てろ。今からギャング共がこの屋敷目掛けて乗り込んでくるぞ」


ジョージ「なるほどなぁ、でも…(煙を吐きながら)掛けたって無駄だ。その電話おそらく一生出ねぇぞ」


ローラン「…なに?どういうことだ!?」


ジョージ「だってよぉ、そいつらおじさんが全員始末しちゃったからよぉ。あぁ、ついでにじっくりと火を通しておいたから全員もれなく炭になってるなぁ」


ノエル「あらあら奥さんまた料理失敗しちゃったの??」


ジョージ「何を仰いますのぉ?奥さん??失敗じゃなくて寧ろ大成功よぉ!!おほほほほほ!!!」


ノエル「おほほほほほほー」


ローラン「なん…だと?あの最強のギャング共を全員倒したというのか!?」


ジョージ「ああ。昨日の深夜のうちにな」


ローラン「き、昨日だと…何処までも用意周到なんだな。」


ユリウス「ああ。俺はな、信用できる人間が会社の人間と屋敷の従業員しかいないんだ」


ジョージ「ということだ。大人しく観念するんだな」


ローラン「…ふ、ふざけるな。こんなにコケにされたのは生まれて初めてだ…この方法はあまり使いたくなかったんだが致し方ない。」


ジョージ「おいおい、今度はどんな手を使おうとしているんだ?アンタがどんな手を使おうがおじさん達には効かねぇよ」


ナレ「そういうとローランは窓に浮かぶ奇麗な満月を見た」


ローラン「…今日は月が綺麗だな」


ノエル「え…まさかの告白??」


ジョージ「バカ、この状況で言うわけねぇだろ…」


ローラン「しかし、ここだと光が当たりづらいなぁ…」


ユリウス「お前何を言って…!?今日は満月…ま、まさか!?」


ナレ「突然ローランは窓から飛び出した」


【SE:窓ガラス割れる音】


ユリウス「ま、待て!!」


ジョージ「お前らなにぼぉっとしてんだ!?早くいくぞ!!」


アレン「了解!」(出来れば2人同時に)


ノエル「わかったー」(出来れば2人同時に)


ナレ「アレンが外へ掛けようとした瞬間微動だにせずその場で立ち尽くしているレオを見た」


アレン「あ、あの…レオさんは行かないのですか??」


レオ「あぁ、私のことはお気になさらず」


アレン「は、はぁ…あ、あの!」


レオ「はい?」


アレン「何故貴方はあんな真似をしたんですか?」


レオ「あんな真似…とは?」


アレン「あの人…バルドラを裏切ったこと…です」


レオ「裏切ったなんて人聞きの悪い…」


アレン「だって、アレはどう見ても裏切ったとしか…」


レオ「貴方は裏切った…そうお思いなのですね?」


アレン「は、はい…」


レオ「さっきも言ったでしょう?私はあの人を裏切ったつもりはありませんよ。ただ…潔く認めてほしいと思っただけです」


アレン「それは…良心ですか?」


レオ「さぁ?どうでしょうねぇ?」


アレン「どうでしょうって…貴方は!!」


レオ「(遮るように)私はね…あのままだとつまらなくなると思ったんですよ…」


アレン「つまらなくなる…??」


レオ「ええ。私とバルドラさんは『エルバーン家来訪』という演目に悪役として参加している役者なんですよ」


アレン「役者…言っている意味が…」


レオ「分からなくて結構。あのままズルズルいくと、話が間延びしてつまらなくなる。あの時、とうとうルイス・ローラン伯爵ではなく犯罪者バルドラ・アドルフエッジとして分かった以上あのまま自白してクライマックスに突入したほうがいい。私はそう思ったからあのような行動をしたんです」


アレン「…あの状況を演劇だと思っていたのですか??」


レオ「その通り。私の人生は全て『演目』そして私はそこに生きる『役者』。『主役』の時もあればそうじゃない時もある。常にそのような考え方をしなければうまくやっていけないんですよ。たとえそれが、喜劇でも…悲劇でも」


アレン「く、狂っている…」


レオ「…その言葉誉め言葉として受け取っておきましょう」


ジョージ「おい!!坊主!!何やってんだ!!早く来い!!」


アレン「はい!分かりました!!!…貴方が敵ならば俺は全力で叩きのめすだけです。それでは」


レオ「貴方を叩きのめすですかぁ…ふふふ、楽しみにしておきましょう。ただ…俺を倒すのは中々難しいぞ」




ナレ「その頃、エルバーン家の庭では」


ローラン「くっ、うぅぅぅぅっ!!うああああああああああああっ!!」


ナレ「バルドラは月を見るなり突然叫びだした。そして、その体はどんどん変わっていった。」


ローラン「(遠吠え)」


ユリウス「お前、ただの人間だと思っていたがワーウルフだったんだな」


ローラン「その通りだ。この姿になった俺は最強!!あんな奴ら使わなくても俺1人居れば百人力だ!!それに…(匂いを嗅ぐ)匂う、匂うぜぇ。ふふっ、なるほど。お前らもただの人間じゃないみたいだなぁ」


ジョージ「(煙草の煙を吐く)ご名答。おじさん達全員人間じゃねぇ。でも、それがどうした?アンタみたいな犬っころ俺たちの敵じゃあねぇ」


ローラン「ふん、そいつぁどうかな?さっきまでの俺ではないぞ!!はははは!!!」


ユリウス「ジョージ、ノエル、アレン…アイツを倒せ!」


ノエル「りょーかい」


ジョージ「了解!」


ユリウス「ん?アレンはどうした??」


アレン「ここにいます!!」


ユリウス「何をやっていた?」


アレン「い、いえ…ちょっと」


ユリウス「ふん、まぁいい。とにかくあのデカ物を倒せ」


アレン「はい!」


ローラン「行くぞ!!がああああああああ!!!」


【SE:足音】


アレン「あ、危ない!!」


ノエル「ジョージさん逃げてぇ!!」


ジョージ「心配すんな」


ローラン「ふっ!その余裕いつまで持つかな!?がああああああああ!!!」


ナレ「襲い掛かってきたバルドラの手をがっしりと掴むジョージ」


【SE:掴んだ音】


ローラン「はははは!!掴んだって無駄だぁ!この俺の力をもってすれば…!?な、なんだと!?くっ、うっ、腕が動かないだと!?ど、どういうことだ!?」


ジョージ「おいおい、あんなに力自慢してたのにこんなもんなのか?大したことねぇなぁ!!」


ナレ「そして、ジョージは手を掴みながらバルドラに足蹴りを食らわせた」


【SE:蹴る】


ローラン「ぐあああああっ!!くっ、こんなひょろっとした奴が俺の力を超えるとは!?貴様!!どこの種族の者だ!?」


ジョージ「(煙草の煙を吐く)しょうがねぇなぁ。仕方ねぇから教えてやる。俺は竜人。竜の人って書いて竜人。分かるか?」


ローラン「!?馬鹿な!!りゅ、竜人だと!?竜人と言えば遥か昔にとある事件で絶滅したと聞いたが…まさか生き残りが居たとは…」


ジョージ「そうだ。あの事件で沢山の仲間が死んだ。でも、生き残った仲間は別々の世界に移り住んだ。おじさんもその内の1人だよ」


ローラン「なるほど、そうだったのか…だが、目の前に竜人がいようがそんなことは関係ない!!お前ら全員ぶっ殺してやる!!!ははははは!!!」


レイモンド「そうはさせません」


ナレ「レイモンドはバルドラの後ろに立ち背中を大剣で切り裂いた」


【SE:斬られる音】


ローラン「ぐあああああああああああっ!!!くっ、貴様あああ!!後ろから斬るとは卑怯だぞ!!」


レイモンド「卑怯?はっ、その言葉そっくりそのままあなたにお返ししましょう」


ユリウス「レイモンド」


レイモンド「旦那様、レイモンドただいま戻りました」


ユリウス「ご苦労だったな。帰ってきて早々悪いが、3人と一緒にアイツを倒せ」


レイモンド「イエス、ユアハイネス」


ノエル「レイモンドさんだぁ」


レイモンド「ノエル、皆お怪我はありませんか?」


ノエル「大丈夫」


アレン「俺も今のところ」


ジョージ「俺も大丈夫だ。それにしても、レイモンド結構惨いことすんだな。流石悪魔」


レイモンド「悪魔だなんて呼ばないでください!!汚らわしい」


ジョージ「はぁ?お前何言ってんだ??悪魔のお前に悪魔って言って何が悪いんだよ??」


レイモンド「悪魔だと響きが悪いでしょう!?私のような存在は悪魔呼びではなく…えっと…」


ジョージ「決めてねぇなら言うんじゃあねぇ!!」


レイモンド「決めてないというわけではないんです!ただ…」


ローラン「きっ、貴様らあああああああ!!俺が動けない間にペチャクチャペチャクチャ喋りおってええええ!!もう許さん!!お前ら全員ぶっころ…」


レオ「全く、無様ですね」


ローラン「お前!!今の今まで何をしていた!?」


レオ「いやぁ、最高の味方は最高の場面で登場するものですよ」


ローラン「最高??最悪の間違いじゃねぇか?」


レオ「ふふ、それはどうでしょうか??」


ユリウス「おい!レオ・デル・リエゴ…いや、レン・クリスと言ったか。お前の情報は職業しか見つからなかった。一体何者だ!?」


レオ「…ふぅ、この喋り方も…そろそろ疲れてきたなぁ。もう正体を見せてもいい頃かなぁ!!!」


ナレ「すると、レオの髪色が金色から白髪になり目つきがギラっと変わった」


ユリウス「!?お、お前は…お前が何故ここにいる!?」


レオ「ふっふっふっふっふっふ!!ふははははははははははは!!!!ひゃははははははははは!!!!この俺を知っていたかぁぁ!!!ユリウス・エルバーン!!!!」


アレン「旦那様、アイツは…」


ユリウス「ニール・マーダー。世界中をまたにかけ殺しをする猟奇的殺人鬼だ。アイツはターゲットを持ち前の演技力で騙し、最後の最後で殺す。最高に危険でイカれた野郎だ。変装の名人とは聞いていたが…まさか、髪色や顔そのものを変えられるとは思っていなかった…」


ローラン「お、お前があのニール・マーダー…」


レオ「そうだぁ!!俺こそが”あの”ニール・マーダーだぁ!!ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!」


ローラン「お前、今まで自分の正体を偽っていたのはニール・マーダーだと気づかれないためか?」


レオ「ご名答!!!俺は俳優なんだよぉ!!しかもとびっきりのなぁ!!!それに、敵を騙すためにはまずは味方からって教わんなかったかぁ!?」


ローラン「そういうことだったのか…まぁ、いい。とにかく早くアイツラを倒すぞ!」


レオ「倒すぅ!?おいおい何言ってんだアンタァ!!!ぶっ殺すの間違いだろぉ!?」


ローラン「…いいか!ユリウスは殺すんじゃねぇぞ!!」


レオ「俺に指図してんじゃねぇ!!ふふふ、さぁ、誰が一番最初に俺のデスサイズの獲物になるんだぁ!?ひゃははははは!!!」


ナレ「そういうとニールはデスサイズと呼ばれる大きな鋏を取り出した」


ユリウス「デスサイズ…お前…まさか…死神か!?」


レオ「そうだぁ!!俺は死神だ。といっても昔の話だがなぁ!」


ローラン「死神…噂で聞いたことがある。命を狩る天才で戦闘能力がかなり高いと…お前、何故猟奇的殺人鬼なんかに」


レオ「はっ!!決まっているだろう!!殺しをするのが楽しいからだよぉ!!俺の演技力でターゲットを騙し最終的に殺すときのあの絶望感!!いやぁ、いつ見てもたまらねぇんだよぉ!!」


ローラン「く、狂ってやがる」


レオ「だろう!!それがこの俺ニール・マーダーなんだよぉ!!さてと、男を狩るのは趣味じゃねぇが殺しのパーティーの始まりだぁ!!ヒャッハァ!!!」


ナレ「そして、ニールはユリウスたちに向かっていった」


ローラン「お、おい待て!!…くそっ、俺が素早く動けないのをいいことに…だが、アイツはあの猟奇的殺人鬼ニール・マーダー。もしかしたら、殺れるかもしれない」




レオ「ヒャッハァ!!」


ナレ「ニールは鋏の形をしたデスサイズを肩に抱えながらアレン目掛けて突進してきた」


ジョージ「おい、来るぞ!!」


レオ「さぁて、最初はお前からだぁクソガキィ!!!」


アレン「何!?うわぁっ!!」


レイモンド「アレン!!」


ジョージ「坊主!!」


ノエル「アレン君!!」


ナレ「ニールはアレンに襲い掛かり鋏の型をしたデスサイズを思いっきり振り下ろした」


レオ「おらぁっ!!」


【SE:空振り】


アレン「危ねぇ!!」


ナレ「レオの攻撃を間一髪のところで避けたが」


レオ「はっ!!避けたって思ってんじゃねぇぞ!!」


【SE:蹴り】


アレン「ぐはぁっ!!」


レオ「さらにもう一丁!!」


【SE:2回パンチ】


レオ「もう一つおまけだぁっ!!おらぁっ!!」


【SE:蹴り】


アレン「ぐはぁっ!!」


ナレ「ニールの容赦ない攻撃にアレンは吹き飛ばされた」


レイモンド「アレン!?…貴様ぁぁぁ!!!」


ジョージ「レイモンド!!待ちやがれ!!」


ナレ「アレンが攻撃されたことによりレイモンドはニール目掛けて攻撃を仕掛けた」


レイモンド「はぁぁぁぁっ!!」


【SE:空振り】


レイモンド「何!?私の攻撃を!?」


レオ「お前は邪魔だぁぁぁ!!!」


【SE:蹴り】


レイモンド「くはっ!!」


ジョージ「レイモンドォッ!!」


ノエル「ジョージさん!?ここはアタシ達も」


ジョージ「おう!!俺たちも…」


ナレ「ジョージが応戦しようとした瞬間」


ローラン「(遮るように)待て竜人!!」


ジョージ「!?お前…まだ動けるのか…?」


ローラン「まだだ…俺は…まだ、負けたわけじゃねぇぞぉっ!!」


ジョージ「おぉ、そうかい。そしたら、ここは俺らが相手になるぜ!!行くぞノエル!!」


ノエル「がってんだい!!」




アレン「はぁ…はぁ…なんだコイツ」


レイモンド「彼は…化け物ですか…?」


レオ「ひゃっはははははは!!!!おいおいおいおい!!!2人そろってこの様か!?案外弱えんだなぁ!!拍子抜けだぜ!!!それに、そこのクソガキィ!!俺を叩きのめすんじゃあなかったのか!?あぁ!?さっさとかかって来いよ!!」


アレン「く、くそぉ…」


レオ「…さてと、そろそろ終いとするかぁ」


レイモンド「そうはさせません!!はぁぁぁぁっ!!」


レオ「甘めぇ!!」


レイモンド「ぐふぅっ!!」


アレン「レイモンドさん!!」


レオ「さて、邪魔者がいなくなったところで…処刑の時間だぁ!ガキ…最後に言い残すことは」


アレン「...ここで死んだらミシェル様に顔向けできない。だから俺はここで死ぬわけにはいかない。お前になんか負けてたるか」


レオ「ミシェル??誰だそいつぁ??ふっ、まぁ、いい。お前所詮口だけなんだな。」


アレン「なんだと?」


レオ「口だけの奴は結局何も行動しない。そう思ってるのなら行動してみせろよぉ!!」


ナレ「しかし、アレンは満身創痍で動くことができない。立っているのがやっとの状態だ。自分に対してへの不甲斐なさ。そして目の前にいる敵への敵対心を込めて彼はニールを睨みつけた」


レオ「あぁ?何だ?その目は?何とか言ってみろよぉ!!」


ナレ「レオがアレンを殴りかかろうとした瞬間、誰かがレオの拳を思いっきり掴んだ」


レオ「なっ!?お、お前は…」


アレン「だ…旦那様」


ユリウス「お前の執事としての覚悟十分に伝わった。ここまでよくやってくれた。後はこの俺がやる。お前はゆっくり休んでいろ」


アレン「し、しかし旦那様!!流石に旦那様の手を煩わせるわけには」


ユリウス「そんな状態で俺の心配をしている暇があるのか??」


アレン「あっ、えっと…その…はい、休んでおきます」


ユリウス「それでいい…さて、待たせたなニール・マーダー。この俺が相手になってやろう」


レオ「ふっ、ふふふふふふふ…ははははははは…ひゃははははははは!!!ついに主役の登場か!!いいねぇ!!面白くなってきたじゃねぇか!!!」


ユリウス「さぁ、来い」


レオ「行くぜえええええ!!!」





ナレ「一方、ジョージ達は」


ローラン「があああああ!!!」


【SE:空振り】


ジョージ「おぉっと危ねぇ!!ノエル!」


ノエル「はいよ!ファイア!!」


ナレ「そういうとノエルの目の前に魔法陣が浮かび上がり火の玉を繰り出しバルドラに命中させる」


【SE:火の魔法】


ローラン「ぐああああああっ!!あの小娘魔女だったのか!?」


ノエル「もう一丁ファイア!!」


【SE:火の魔法】


ナレ「ノエルがもう一発火の玉を出すが、バルドラはそれを躱す」


ローラン「ふっ、もう一度同じ技を食らってたまるか!!ふっ!!」


【SE:空振り】



ノエル「あっ、避けた!!ジョージさん!!」


ジョージ「あいよ!!せぇぇぇぇっや!!」


【SE:蹴る音】


ナレ「ノエルが放ちバルドラが避けた火の玉がジョージの元へ行きそれを空中から思いっきり彼目掛けて蹴り上げた」


ローラン「な、なにぃ!?ぐあああああああっ!!」


【SE:着地】


ジョージ「決まったぜ。名付けて『ファイアトルネード』だ!!」


ノエル「…なんかダサいしどっかで聞いたことある」


ジョージ「バカ、気のせいだよ気のせい」


ノエル「ふーん。それよりこの人死んだかなぁ?」


ジョージ「いや、流石にくたばってないだろう」


ノエル「どうする?」


ジョージ「そうだなぁ…とりあえず縛っておくか」


ノエル「そうだね。そしたら拘束魔法を…」


ローラン「まだだ…まだ終わってねぇ」


ジョージ「げ、まだ動けるのかよ。いい加減諦めたどうだ?」


ローラン「俺は諦めねぇぞ…俺はぁ…!!」


ノエル「しつこい!!」


【SE:落石音】


ローラン「ぐああああああああ!!!!」


ジョージ「お、お前…それ庭に置いてある石像じゃねぇか…それを瀕死寸前の相手にぶつけるって…え、えげつねぇことするんだなぁ」


ノエル「だって、これ以上戦うと魔力消費するから嫌なんだもん!!」


ジョージ「そ、そうか…お前のそういうところおじさん嫌いじゃねぇぞ」


ノエル「てへーーーーー」


ナレ「2人が話していると遠くからレイモンドとアレンがやってきた」


レイモンド「ジョージさん!ノエル!無事ですか!?」


ジョージ「おぉ!レイモンド!!坊主!俺らは大丈夫だ。お前らは?」


レイモンド「2人とも既に治癒しているので大丈夫です」


ナレ「レイモンドとアレンは自然治癒能力を持っているので長くても5分ほどで回復する」


ジョージ「旦那は!?」


レイモンド「あそこです」


ナレ「レイモンドが見る先にはユリウスとニールが死闘を繰り広げていた」


レオ「はぁぁっ!!」


【SE:空振り】


ユリウス「ふっ!!」


レオ「おいおい!!いつまで避けているんだぁ!?さっさと攻撃したらどうなんだよぉ!!」


【SE:空振り】


ナレ「ユリウスが避けたその瞬間…ニールが振り上げた鋏型のデスサイズがユリウスの着ている衣服に掠り、破けてしまった」


【SE:破れる音】


ユリウス「!?こ、これは…」


ジョージ「お、おい、レイモンド。まさか今のって…」


レイモンド「えぇ…そのまさかだと思います」


ノエル「あ、こりゃあアイツ終わったなぁ」


アレン「え?ど、どういうことですか?」


レイモンド「旦那様は物凄く潔癖症だってことは前にお伝えしたと思いますが覚えていますか?」


アレン「はい。特に他人に対しての扱いが酷いとか」


レイモンド「その通り。そして、旦那様が他人にされて最も嫌いなことは『服を触られること』特に『服を破いた』となったら旦那様の怒りは最高点に達します」


アレン「と…いうことは」


レイモンド「ええ。旦那様が本気で怒るとどうなるか…しかとその目に焼き付けておきなさい」




レオ「?おい!どうした!!今になって俺にビビっちまったかぁ!!」


ユリウス「...おい、お前。自分が今何をしたか分かっているのか...?」



レオ「さぁ?分からねぇなぁ」


ユリウス「なぁ、おい...自分が今何をしたのか分かっているのかって聞いているんだよ!!!」


レオ「!?何!?さっきより動きが速えぇ!!ぐはぁっ!!」


【SE:蹴り】


ナレ「ユリウスは一瞬でレオの元に行き思い切りレオを蹴り飛ばした」


レオ「げほっ!げほっ!な、何なんだよ。この力はぁ…一撃が余りにも重すぎる…」


ユリウス「お前はこの俺の大切な服に傷をつけた。この罪...お前の命で償ってもらおうか!!!」


レオ「あぁん!?服だぁ!?それであんな力出すのかよ!?はっ、アンタ意外とガキなんだなぁ!」


ユリウス「黙れ!!」


レオ「また速えぇ!!ぐはぁっ!!」


【SE:蹴り】


レオ「くっ…ふふふふふ…ふははははは!!!!強えぇ…こいつぁ馬鹿みてぇに強えぇ!!面白え!こんな奴と本気で殺し合えるなんて…ホント最高だな!!…さて、あの2発だけでここまでのダメージか…これで最後だな…」


ユリウス「おい、さっきまでの威勢はどうした?俺は今物凄く機嫌が悪い。早くかかってこい」


レオ「ふははははは!!そうかい…そんじゃあご希望通りかかってきてやるよおおおお!!うおおおおお!!!」


ナレ「レオは最後の力を振り絞ってユリウスに鋏型のデスサイズを振り上げた…が、ユリウスはそれを片手で掴み…思い切りへし折った」


【SE:折れる音】


レオ「なっ!?俺のデスサイズが…」


ユリウス「さらばだニール・マーダー」


ナレ「ユリウスはへし折った鋏型のデスサイズの刃の部分をレオの心臓に突き刺した」


【SE:刺される音】


レオ「あがぁっ…くっ、ふふふふふふふ…まさか、自分の武器に殺されるとはなぁ…至極滑稽な話だ…ふっ、最後の相手がお前でよかったぜ…ユリウス・エルバーン。俺は先に地獄に行ってるからよぉ…早めに来たら承知しねぇからな…あばよ…」


ナレ「そして、レオ・デル・リエゴことニール・マーダーは静かに息を引き取った」


ユリウス「ふぅ…人を殺めるのは気分がいいものではないな」




ナレ「その後、ノエルに石像をぶつけられ気絶していたバルドラが目を覚ました」


ローラン「…うぅん…はっ!?俺は何を!?…ニ、ニール・マーダーは!?…!?し、死んでいる!?(体を動かしながら)っ!?な、なんだこれは…か、体がう、動かない!!俺に何をしやがったぁっ!?」


ノエル「アタシの拘束魔法だよぉ」


ローラン「!?お前はさっきの小娘!?」


ノエル「目が覚めて暴れられると面倒くさいからアタシの魔法でおっさんの身動きを取れなくしたんだぁ」


ローラン「くっ、くっそおおおおおおおおお!!!こ、こんなもん…俺の力でええええ!!!」


ノエル「その魔法は簡単には解けないよ。それに、おっさん深手負っているじゃん。大人しくしておいたほうが身のためだよ?」


ローラン「こ、こんなところでくたばるわけには…くたばるわけにはいかないんだよおおおおおお!!!うおおおおおおおっ!!!」


ノエル「だからさっきから言ってるでしょ?その魔法は簡単には…」


ローラン「うおおおおおおおおおおっ!!!はぁっ!!」


ナレ「そしてローランは己の力で魔法が解除された」


【SE:パァンって感じの音】


ノエル「!?マ、マジかぁ~さらに拘束魔法を…って…あ、やべぇ魔力が足りねぇええええええ!!!!」


ローラン「動く、体が動くぞ!よし、これなら…ふっ!!」


ノエル「に、逃げた!!(間)皆ごめん!!逃げられたぁ!!」


レイモンド「何ですって!?逃がしはしませんよ!」


ユリウス「レイモンド、待て」


レイモンド「!?だ、旦那様!?なぜ止めるんです!?」


ユリウス「お前はさっき一仕事してきただろ?」


レイモンド「そ、それはそうですが…しかし、私はまだやれます!」


ユリウス「それに、お前の役職は何だ?執事長だろ?家や部下の面倒を見なくてどうする?」


レイモンド「た、確かに。それなら誰がアイツを追いかけるというのですか?あのまま放っておくと何をするか分かりません」


ユリウス「それなら一人適任がいる。…アレンお前だ」


アレン「え?俺ですか!?」


ユリウス「そうだ」


アレン「な、何故?」


ユリウス「お前、さっきニールにボコボコにやられていた時に言ったあの覚悟…それを糧にしたお前の真の力を俺はまだ見せてもらっていない」


アレン「し、しかし…」


ユリウス「いいか?アレン。お前の本来の主はミシェルだが今の主はこの俺だ。俺がやれって言ったらやるんだよ。今ここで執事としての本当の覚悟ってものをこの俺に見せてみろ」


アレン「旦那様」


ユリウス「それに、お前がバルドラを倒してくれると信じている」


レイモンド「旦那様の言う通りです。それに、我々も貴方を信じています」


アレン「レイモンドさん…」


ジョージ「そうだぜ。坊主なら出来る」


ノエル「うんうん」


アレン「ジョージさん・ノエルさん…分かりました!!俺、何とかやってみます!!」


ユリウス「(微笑)それでいい。それじゃあアレンもう一度言う。バルドラ・アドルフエッジを倒してこい!!」


アレン「イエス、マイロード」




【場面転換。森の中】

ナレ「1人森の中を走るバルドラを追いかけるアレン」


アレン「さぁってと、バルドラ、バルドラっと…あっ、居た居た」


【SE:走る音】


ローラン「はぁ、はぁ、はぁ…ここまでくれば大丈夫か。と、とにかくアイツらを倒す打開策を見つけなければ…」


アレン「みーつけた!」


ローラン「!?な、なに!?もう追い付いてきたのか!?…どこだ!?どこにいる!?」


アレン「ここだよ!」


ローラン125「えっ?ぐわぁっ!!」


ナレ「振り向いた瞬間、空中にいたアレンに蹴られるバルドラ」


【SE:蹴り音】


ローラン「くっ…お前、ユリウス・エルバーンのもう一人の執事か」


アレン「そうですよ。さぁ、観念してください!」


ローラン「そういうわけにはいかないんだよおおおお!!がああああああっ!!!」


アレン「ふっ!!」


ローラン「な、なに!?いつの間に懐に!?ぐあああっ!!」


【SE:切りつける音】


ナレ「アレンは瞬時に避けローランの懐に移動し奇麗な指先で彼の身体を切りつけた」


ローラン「き、貴様あああああ!!!」


アレン「これはあまり使いたくなったんだけど…」


ナレ「そういうと、アレンは指先から滴り落ちるバルドラの血を舐めた」


ローラン「!?お、お前…な、何を!?」


アレン「まぁ、見てなって…(少しだけ悶え苦しむように)!?くっ、うおおおおおおおおおお」


ナレ「アレンの四肢は徐々に毛に覆われていった。まるで、ワーウルフ…狼男のように…」


ローラン「お前…その姿は!?」


アレン「俺はね他種族の血を舐めると一時的にその力を得ることが出来るんだ。といっても、使った後の身体への負担と血に対しての欲求が強くなっちゃうからあまり使わないんだけどね」


ローラン「そうだったのか…でもそんなことは関係ない!!お前のその借り物の力で純血の俺に勝てるわけがないだろう!!!」


アレン「それは、やってみなきゃ分からないでしょう!!はああああああああ!!!」


ローラン「勝つのはこの俺だあああ!!!はあああああああ!!!」


【SE:斬撃音】


ナレ「両者はお互いに背を向けて立っている。勝ったのは…」


ローラン「かはぁっ!!…そ、そんな…この俺が…こんな…ところで…」


【SE:倒れる音】


アレン「俺はここで負けるわけにはいかないんだ…さてと、コイツどうしようかなぁ」


ナレ「すると、遠くから聞き覚えのある声が聞こえてきた」


レイモンド「おーーい!!」


ノエル「アレンくーーーん!!」


ジョージ「大丈夫か―――!?」


アレン「あっ、皆さんだ。おーーーーい!!!」


ナレ「こうして事件は幕を閉じ、ルイス・ローランことバルドラ・アドルフエッジは無事に逮捕されレオ・デル・リエゴことニール・マーダーの遺体は警察に引き取られた。彼らが犯行時身に着けていた衣服は全部盗品だったことが後から分かった。国際指名手配犯ということもあり、警察から多額の懸賞金を貰うことになったがユリウスはそれを丁重に断った。そして、それからはというと…」




アレン「旦那様、何を読まれているのですか?」


ユリウス「あぁ、新聞だ。少し面白い記事があってな…」


アレン「面白い記事ですか…?」


ユリウス「あぁ、最近ニューヨークで変わった人物が活躍しているらしい」


アレン「えぇっと…『腕はいいが素行不良な怪物探偵レイ・ブラッドリー現る』ですか…」


ユリウス「レイ・ブラッドリー…ブラッド…ふっ、血という意味か。面白い名だ…」


アレン「はぁ…そうですか」


ユリウス「彼を今度呼んでみようと思う」


アレン「えっ?彼に何か依頼でもするのですか…?」


ユリウス「あぁ、少し面白い依頼をな…ふふふ」


ナレ「この会話から1週間後、ユリウスの屋敷にレイ・ブラッドリーが来訪する。その話はまた別の機会に…」


最後までお読みいただきありがとうございました。

3作品目はファンタジー作品です。

ローランことバルドラ・レオことニールの二面性に驚いていただけたのではないかと思います。声劇をするにあたってこの2人は後半めちゃくちゃ叫ぶので演じた方は必ず水分を取っていただくかのど飴を舐めて下さい...笑


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