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思い出(memory)—あの可愛い姉妹のために—  作者: N.M
第一章 出会い
3/12

第1話 始まりの欠片

 

 俺は普通の高校生だ。

 友達にはよく、『ただの普通の優しい人』なんて言われている。


 毎日学校には行きたくなかった。否、時々行かないことはあった。

 あれは、いつの話だっただろうか。



 俺は自分の名前がわからない、忘れたんだ。殺されたあの瞬間から家族の名も友も思い出せない。


 だが、覚えていることもある。自称進学校に通っていたこと、RPGゲームにハマったこと。

 そこで攻略サイトにも載っていないNPCとは違う、人の心を持ったものに出会ったことを。

 それはバグとも言い難い。

 何故なら彼女には完全さの中に、一つだけ不完全が残っていたからだ。


 あの美しい純白で透き通っていた髪色、編み込まれた髪の中に輝く翡翠色(エメラルドグリーン)の髪留め、人間離れしたあの顔、心が暖かくなる声質。


 そして、あの悲しそうな表情を……。


 何が彼女を苦しめるのか。彼女は、どこにいるのか。


 会いたい、話したい、救いたい......


 確か、彼女の名前は



『メリア』



 と言った。


 メリアは突然として姿を消した。

 ゲームのストーリーには全く関係なく、心惹かれる要素はなに一つなかっただろう。でも、胸の奥には(トゲ)の刺さった感覚が残っていた。あれは何だったんだろうそう思っていた。



 思い出したくないことも覚えている。それは学校帰りに、くだらないこと。具体的には、早く家に帰りたい。そんなことを考えていた時だと思う。



「きゃー、逃げてー」


「はァ、はァ、はァ、はァ……」



 その瞬間、俺は意識を失った。

 そう殺されたのだ。



 この程度しか覚えていない。

 俺は今暗闇の中にいる、だが、不思議だ。

 急に一つの光が俺の目に映る。


 全力で追いかける、近づくにつれ徐々に、全身が光に包まれていく感覚がある。



 ——起きて! 起きて! 早く起きて——



  その瞬間、俺は意識を取り戻した。



「ここ、どこ? ってメリア?」

「ここにいては危険です!」


 あたり一面、炎で焼き尽くされている。刺された時の熱さとは違う、全身を包み込むような熱さ。


「テレポートッ!!」


 また、光が俺を包んでいく。感じたことがない感覚だ。


——————————————————————


「起きてください、起きてください」


「ん、んー。

 あなたメリア、さんですよね?」


「はい。お久しぶりです」


 あの美しさそしてあの表情。俺は安心した。心が暖かくなった。初めての感触だ。


「ってちょっと! 大丈夫ですか、意識が!」



 あれ、眠い。メリア、メリあ、めり□、□り□、□□□……


 メリアの存在が消えていくと同時に、俺の意識も遠くなっていく。


 ※


「ん、」


 俺が居るのは古民家のようで八畳くらいの部屋、薄暗い光に照らされて起きる。右手には誰かの温もりを感じる。



「大丈夫ですか? 

 もー、ほんと心配かけないでくださいよ。

 メリア、です。


 覚えて、ますか?」


「ちょっと、待ってくれ。色々説明してくれ。ここは、これはなんなんだ?」


 メリアといった彼女は微笑みながら言った


「それが先ですよね......

 わかりました。簡単に説明させていただきます。


『あなたは死にました。

 ここはあなたのような予定外の死人を救済するための場所です。ですが、転生前に私は助けて欲しくて…… ではなく、観光していた時にあなたに会いました。

 その時、あなたは私と何故か結ばれてしまったようです。だから、今、付き添っている。お世話をしているということです。


 あなたが転生された時、私はダンジョン五十階層『豪炎の間』というクエストの救助に行っておりまして、ちょうど、そこに転送されてしまいました。そこであなたは熱さによって意識を失ってしまった』


 と、いうわけです」


「なんとなくわかった。でも、君のことを思い出せない。こんなに可愛い子忘れるはずないと思うんだけど……

 メリア、俺の記憶にそんな人いないんだよ」


 彼女が何をいっているのか、理解が追いつかない。でも、まだ天国で楽しく、なんて行かないことはよく分かった。死んでもまだなお、試練がある。とそれだけは察した。


 どこかでメリアに会ったことある気がするのは確かだ。

 それは、『メリア』その言葉を聞くと俺の胸は苦しくなるから。


「とりあえずあなたの名前と職種を決めましょう!

 この感じ、あなたのいた世界と私達を繋ぐRPGゲームとやらに似てますね、大きくひとつ違うとしたら。  



 ——ここでの死は永遠の死——



 です」

次回:チュートリアル

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