第1話 恋心
拠点は、『ここ』と決めている。
ターミナルには、『ムーンマウンテン』という山がある。街を一望できるくらいの大きさ、高さの山だ。そこに、二階建ての家があった。少し古めの城という言葉が似合う建物だ。
メリア・ナナ・紋徒・俺で食事会をした後、ナナとその家に向かったいた。
「ナナ、なんで、俺とパーティー組もうと思ったんだ?」
「なんででしょうか。ルアンさんといると、胸が痛くなったり、熱くなったりするんです。
姉が言うには恋心らしいです。
——好き
になってしまったみたいです。心の病です!」
『好き』その言葉は生まれてから初めて聞いた。愛することも、愛されることも、疎遠だった俺は、好きという感情を忘れかけていた。いや、忘れていた。
でも、ナナの気持ちには応えたい。好きを好きで返したい。
これは使命感なのかもしれない。でも、嬉しさとも、楽しさとも違うこの暖かい感情をもっと感じていたい。ずっと感じていたいと思う。
俺は何も言わずに彼女の手を握った。冷たい空気を感じないほどの手の温もりを感じる。静かな山道の中、お揃いの指輪の金属音が響き渡っていた。
彼女は、ナナは泣いていた。それは悲しみの涙ではない。嬉しさ、安心からくる涙だ。
手を握ってから、少し歩いた頃、あの城が見えてきた。その家は山の中にある。でも、そこだけは、あたりがひらけていて、街が一望できる。人の活動による光が生み出すその夜景は、あまりにも美しかった。
「きれいですね。この世界にこんな場所があったなんて知らなかったぁ!!」
「俺もここまでとは思わなかったよ」
夜景に見とれていた時、ふと気がついたことがある。この城、立派すぎる。いくらするんだよ……
「ナナ、この城いくらするんだ? 今の所持金、十万ルピーしか持ってないけど足りるのか……」
「この看板に書いてありますよ」
——こちらの物件
『1000万ルピー』
連絡はこちらまで「防具屋兼不動産・ノヴァ」まで。
賃貸は受け付けておりません——
「ナナ、いくら持ってる?」
「すいません。剣を作るのにほとんど使ってしまって……」
「だよな......
仕方ない。明日から、ダンジョン探索とクエストで稼ごう……
ノヴァってところも明日行くとして。今日はここで寝よう。もう疲れたよな」
「はい!疲れました!」
疲れを吹き飛ばしてくれる程の笑顔で笑った。
ナナとはグレンのとき。レッドキングスライムのとき。ナナと契約を交わした時。の三回くらいしか接点はなかった。でも、今こうやって、パーティーを組んで、一緒に暮らしていくことになっている。人生はよくわからないものだ。
そして、良いものだ。
「星きれいだな」
「きれいですね」
「あのさ、前にナナが俺に質問してきたの覚えてるか?」
「覚えてますよ。あれは、チュートリアルのときですね。ルアンさんは、答えてくれなかったですけどね。フフっ」
「俺も恥ずかしかったんだよ。それに、一応言っておくけど
『お前みたいなやつは放っておけるわけないだろ......』
だから、ずっと一緒にいろよ! 俺を一人にしないでくれよ......」
「どーしよっかな! でも、指輪のせいで、嫌でもずっと一緒ですよ。
それに私は、
『永遠にルアンと一緒にいる覚悟を決めましたので。好きになってもらえるよう頑張ります!!』
私を一人にしちゃダメですよ??」
俺なりの返事をしたつもりだ。
いつか必ず『好き』ってナナに言ってあげたい。『愛してる』って言いたいと思った。
「もう、寝よっか」
「もう少しお話しましょ。いい、ですか?」
俺は今日、ナナのことをもっと知りたくなった。
だから、その夜は、いろんなことを話した。趣味、お互いの過去、これからのことを。こんなに希望に満ち溢れた夜は初めてだ。起きるまで、ナナと手を握っていたい。お互いもう一人にはしたくない。
契約に縛られた関係ではなく、心からずっと一緒にいたい。
これはお互いの願い。
いつか別れがやってくる。それを知っているからこその願いだ。
好きは直接伝えなきゃわからないし、直接伝えた方が幸せだ




