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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
99/201

エンテ型はロマン

今回は短いですが許してください何でもしませんから。

新世界暦1年10月18日 ラストール王立海軍第一艦隊旗艦 戦艦「イヴ」


「忌々しい革命家気取りどもが」


第一艦隊司令の中将は忌々し気に毒づいた。


「まったくです。第一王女が帰国するという日に面倒なことをやってくれます」


司令の愚痴に、艦長は同意したが、それがまさしく艦隊の総意であった。


本来であれば、第一王女が帰国する艦隊をホスト艦隊として受け入れ、一端APTO艦隊を入港させて歓迎行事やら第一王女の帰国報告やらが済んだ後、帰路につくAPTO艦隊と合同演習を行い途中まで見送る、という予定だったのだが、そんな予定は偵察機が発見した人民統制委員会主力艦隊出港の報で全て吹き飛んだ。


出港準備が整っていた第一艦隊は緊急出港して人民統制委員会の艦隊の監視と牽制にあたり、ホスト艦隊は急遽招集をかけられた第三艦隊があたることになったのである。

ちなみに、ラストール王立海軍は主力艦隊が第一から第四まであり、第一が最新鋭の超弩級戦艦を主力とする花形艦隊、第二が空母を主力とする機動艦隊、第三が足の速い巡洋戦艦を主力とする即応艦隊、第四は足の遅い旧式戦艦が主力の予備戦力である。


「まぁ、いつもの示威行動だとは思うが」

「それにしては敵艦隊の出動規模がこれまでとは桁違いですね」


いくら人民統制委員会が頭のおかしい集団だとはいえ、世界第1位と第5位の軍事同盟に喧嘩を売るほどいかれてはいなかったので、数々の嫌がらせや示威行動は行ってきてはいても、実際に一線を越えては来なかった。

それは世界が転移してしまって、面倒なのが近くにいるとわかってからも変わらなかったのだが、ここにきて敵主力艦隊の全力出撃である。


アズガルドの軍事力が大きく低下したことが連中に露見したのか、ただの気まぐれなのかは不明だが、連中の意図が分からない以上、それなりの艦隊を敵艦隊の牽制につける必要があるというわけで、第一艦隊にその任が回ってきたのである。


「しかし、もしもアズガルドの応援なしで連中と交戦となると、連中の訳の分からない兵器群はこの際無視して数字だけで見れば戦力的に五分。負けはないにしても、看過できない損害を被ることになるのでは?」

「こっちに向かっているという多国籍艦隊の助力を得られるといいが・・・」

「なんとか通常の外交関係を開いただけで、軍事同盟どころか通商関係の細々とした取り決めすらまだ、という状況ですしねぇ・・・」

「まぁ、頭のおかしい連中にそのままお引き取り願えば何も心配する必要はない話だが、とにかく不測の事態への備えだけは怠らないように」


艦隊司令はそう言って、複縦陣で進む艦隊を眺めるのだった。





新世界暦1年10月18日 ラストール王立海軍第一艦隊所属 艦載偵察機


フロート付き(下駄履き)の複葉機がのんびりと空を飛んでいた。


もっとも、のんびり飛んでいるように見えるのは地球の軍用機を見慣れている人間から見た場合で、いたって真面目に偵察飛行中の水上機である。

もっとも、そのスタイリングが地球基準ではふざけ過ぎていて、なかなかぶっ飛んでいるのだが。


複葉機の水上機自体は、第二次世界大戦時点でも日本が高い安定性を買って、零式水上観測機として運用していたし、その単葉機では追従不能な旋回性を活かして、水上戦闘機的な運用も行われていたので、おかしなところは何もない。(1940年に新しい複葉機を作ったのは十分おかしいという話はさておく)


問題は、ラストールが運用しているそれは、「操縦手と偵察員の視界を最大限確保する」という目的のために設計されたその機体は、先尾翼配置なのである。

先尾翼配置、というと聞きなれないが、日本での知名度でいうなら「震電」、現用機でいうなら「タイフーン」や「ラファール」、「グリペン」が該当する、「尾翼が前にある機体」のことである。

推進式のエンジンとプロペラは、高さを稼ぐために上側主翼の上にのっかる形で1基、2000馬力級エンジンが載っているという、「え、お前ら何考えてんの?」な機体である。


そんな機体の胴体前寄りに設けられた操縦席と偵察員席では、搭乗員が周囲を見回して人民統制委員会の艦隊を見つけようとしていた。

本来なら、先に触接していた偵察機から引き継ぐだけのはずだったのだが、前任機が無線に応答しないのである。


「くそっ!あのバカ、絶対この間カードで負けた腹いせだぞ!」

「そこまで腐ってないと思うけどなぁ!」


風防はあるものの、閉鎖式ではないコクピットと偵察員席では、偵察のためゆっくり飛んでいる現状でも大声で怒鳴っていてようやく会話できるレベルである。

後期生産型では機内通話装置が追加装備されたが、生憎とこの機体は前期生産型だった。


「いいや、そうだね!それで帰投してから交代が来なくて危うく燃料切れになるか敵の触接を諦めるかの選択を迫られるところでした、とか言うんだぞ、あのバカ!」


それに偵察員が反論しようとしたとき、エンジンの唸りが突然大きくなり、出力が上がったと思った時には急旋回のGでシートに縫い付けられていた。

何事かと思うと、旋回前に機体がいた場所を曳光弾の火線と機体が通り過ぎる。


「人民統制員会の艦上機!」


偵察員は一瞬の交錯でも相手の機体の識別マークを見逃さなかった。


「クソッタレ!撃ってきやがった!道理で応答がないはずだ!あのバカ、もう墜とされてるんじゃねぇか!」


回避機動をしながら舌をかまずにしゃべり続けるパイロットはさすがである。


「艦隊に打電しろ!吾、敵の攻撃を受ける!僚機は撃墜された模様!」





新世界暦1年10月18日 ラストール王立海軍第一艦隊旗艦 戦艦「イヴ」


「総員戦闘配置!上がれる直掩機は全て上げろ!海軍司令部に打電!味方偵察機が人民統制委員会の攻撃を受け、撃墜された模様、これより自衛戦闘に入る!本格交戦の可否を問う!」


偵察機の報告を受けた艦隊司令は直ちに指示を出す。

自衛のための武器使用ならばともかく、本格的に交戦するとなると勝手な判断で動くわけにはいかないので、本国の回答があるまでは降りかかる火の粉を払う以上のことはできない。


本国からの返答を待ちながら、司令は弱火で焼かれるような焦れた時間を過ごすことになるのだった。

来週から更新は土曜日か日曜日になるかもしれません。

とりあえず二週間以内には次上げます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新乙でした。 大丈夫?この下駄履き、設計段階で王女殿下の趣味でのごり押し入ってない??? (ライトニングに大興奮してる王女殿下を思い浮かべつつ) 果たしてあのいろんな意味で濃ゆい航空戦艦…
[一言] エンテ型水上機とな まるでアニメ「アリソンとリリア」に出てくる水上機みたいですな 2隻でワンセット運用艦とか…そのうち氷山空母とか出てきても驚かんゆうにしとこ
[一言] ほんと、読んでて楽しいなぁ
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