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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
98/201

嵐の前触れ

新世界暦1年10月15日 人民統制委員会 革命記念軍港


どこかソ連を連想させる勇ましいマーチが演奏される中、人民統制委員会が誇る主力艦隊が出港していく。

もっとも、誇っているのは人民統制委員会だけで、他国からは珍妙な艦ばかり揃えていると笑われており、地球基準で見ると一部のあっち側(英国面)の人達が歓喜しそうな艦隊である。


人民統制委員会。

その名前から想像される通り、共産革命によって成立した国家としては歴史の浅い国である。

もっとも、同じ世界から転移してきたアズガルドにラストール、そしてホリアセやザルツスタンに聞いても皆口をそろえて「あの国はヤバい」と言われるわけだが。


王族と一部有力貴族に富が集中する腐敗した王国だったところに成立した国な上に、革命後の権力争いで原始共産主義崇拝者や過激派が勝利したため、(その過程においてもそのあとも)粛清の嵐が吹き荒れ王族や有力貴族はもちろんのこと、「貴族」と名の付くすべての人間や知識人を殺しまくったので、割と悲惨なことになっている。


そんな状況でも産業が回っているのは、上に立った奴がただのアホではなく、筋は通すアホだったので、現場労働者は粛清しなかったからである。

結果的に熟練労働者は温存されたので「現場は」問題なく回せたのである。

ただし、研究開発や医療、資材管理、生産計画等が悲惨なことになっているので、お先真っ暗だが、本人たちは「見よ労働者の輝く明日」とか頭の痛くなるスローガンを掲げて、気づいているのか気づいていないのか、文字通りの死への行軍を続けている。


「同志艦隊委員長、新鋭艦の調子はどうかね!」


一応、人民統制委員会には身分は存在しないことになっているが、それではどうやっても軍隊を管理できそうにないので、「役職」が存在し、それぞれの役職の仕事を監督する「革命管理委員」がそれぞれの「役職」を強制することで事実上の階級制度を敷いていた。


「快調そのものであります、同志革命管理委員」


内心で、んなわけあるかボケェ!と思いながら、他国でいうなら提督とか艦隊司令にあたる艦隊委員長は返事をする。


「うむ、そうであろう。すべての海軍兵科が協同して戦う、人民解放委員会の理想を体現した素晴らしい艦だ!」


粛清の嵐をうまいこと潜り抜けた数少ない生き残りである艦隊委員長は、何もわかって無さそうな革命管理委員を見て、バレないようにそっとため息を吐く。


航空戦艦「人民革命」と「革命同志」。

人民統制委員会が革命後に建造した準同型艦である。

もう、その艦種の名称だけでご飯3杯くらいいける人がいそうだが、実用上の問題はお察しである。

その艦容は、「人民革命」が満載排水量6万トン、右舷にあるアイランド、その前方に40センチ三連装主砲塔2基、後方に煙突と40センチ三連装主砲塔1基、左舷側には(重量バランスをとるためにも)大きな張り出しを設けて飛行甲板、ケースメイト式の15センチ副砲や、さらに張り出して10センチ高角砲や各種機銃とかなりエグイ構造になっている。

ちなみに「すべての海軍兵科が協同して戦う」という言葉通り、水中魚雷発射管と爆雷も装備している。用途?・・・知らんな。


さて、ここで「あれ?これだと右舷側に副砲や対空機銃ないのでは?」と思ったあなた。

そのための「準」同型艦です。

「革命同志」は左右反転で作られているので、並走すればきっちり全方位の航空機や水雷艇に対処できるのです!

左舷アイランドの時点で「あっ」って感じだが、この手の複数艦でワンセット構想というのは三景艦の例を見るまでもなく、ダメな奴なんで些細な問題である。


基本的には兵器は戦闘単位ごとに独立した作戦能力を有した上で、集団戦闘を戦うようにしておかないと、運用がすごく面倒になるし、そもそも異なる二艦を完全に同期させて戦う、なんてのは相当に高度なデータリンクが登場するまで不可能なので、複数エンジンの同期はおろか、多気筒エンジンの点火タイミングにも手間取っているような技術水準では不可能である。


「しかし、同志革命管理委員、格納庫のあれはなんですか?」


艦隊委員長が今回、艦隊が全力出撃するきっかけになったとされる、飛行甲板下の航空機格納庫に運び込まれた大型装置について質問する。

ちなみに、ただでさえ使いにくい航空機格納庫が前後に分断されて、前半分は前部エレベーター、後ろ半分は後部エレベーターにしかアクセスできず、前後のアクセスには一度エレベーターで飛行甲板に出る必要があるという、訳が分からない状態である。


「ああ、あれか・・・」


艦隊委員長に質問された革命管理委員も微妙な顔をする。


「なんでも先ごろ見つかった西の島で手に入れた革命的新兵器との話なのだが・・・正直眉唾だなぁ」


その装置の管理を任されている革命管理委員もよくわからないという顔をする。


「まぁ、革命的前進の意思があればあんな装置があるかないかなど些細なことだ!さあ、我ら労働者の敵、革命の敵、ラストールの憎き豚どもを粉砕するため前進するのだ!」


根性論みたいなスローガンを叫んで、革命管理委員は針路前方を指し示す。

それに合わせて艦橋要員が革命歌を歌い始め、艦隊委員長はまたこっそりとため息を吐くのだった。




新世界暦1年10月16日 ラストール派遣APTO連合艦隊 イギリス海軍 空母「クイーン・エリザベス」


「やれやれ、一時はどうなることかと思ったが、どうにかなるものだな」

「勿論です。プロですから」


特徴的な艦容の空母の艦橋で、艦隊を眺めながら提督と艦長が話していた。


とりあえずAPTO加盟国の初めての寄せ集め艦隊で、そもそも大規模な多国籍艦隊の経験が日英米を除いて著しく欠如していた。

単縦陣くらいなら問題なくとも、今回の艦隊は空母1、ヘリ空母1を含む水上打撃群である。

必然的に輪形陣が主となり、各艦の速力が揃っていない上に、小型艦まで混じっているので、最初は陣形を保って転舵することはおろか、そもそも綺麗に陣形を組むことすら困難だった。


「というか、日本がまともに艦隊派遣してくれたらこんな苦労せずに済んだのでは!?」


一応、海自は5隻を派遣していたが、現役の護衛艦は「ひゅうが」「まや」の2隻のみ、残りの3隻は練習艦という、「ちょうどいいから遠洋練習航海やったろ!」という思惑が見え見えだった。


「というか、今日もその日本艦隊が見当たらんが」

「またいつもの対潜訓練らしいです」

「潜水艦もまだまともに活動開始してないというのに、熱心なことだな」

「まぁ、海外展開しないのにアメリカの半分の数の対潜哨戒機持ってる国ですからね。どんだけ潜水艦嫌いなんだよと」

「それ、本来ならうちがそうなってるはずだよな?」


第二次世界大戦でさんざ潜水艦に悩まされたのに対潜哨戒機の近代化で二転三転したり、数が減らされたり、一時的に稼働機がゼロになったりと碌なことが無い英国対潜機材事情である。

そこから考えると、戦闘艦はアスロックと対潜ヘリ積んでて当たり前、対潜哨戒機60機の海自がおかしいのである。


「そういえば、そこらの艦を飛び回っとる王女様は今日はどこに?」

「今日は日本艦隊ですね。練習艦かしまにいるのではないでしょうか」

「国家元首級来訪を前提に設計された特別公室を持つ専用練習艦を新造してるとか、贅沢すぎだろ」

「なんか聞いた話だと、戦闘艦の数は決められてるけど、補助艦の数は決められてないから有事の船団護衛用にとりあえず造っとくのだとか言ってましたが」

「だから無駄に対空レーダーとFCSもってたり、対潜魚雷発射管積んでるのか・・・それにしても予算に余裕ありすぎだろ!?」

「あの経済規模で原潜も大型空母も持ってなければそんなもんなんじゃないですか」


結局のところ、予算をどこに割り振るかの話であって、金食い虫の大型空母や原潜を持っていないかどうかの差で、予算が足りている軍隊なんて歴史上存在しないのである。

なぜなら、常に予算以上にいいものを欲しがるのが人の性だから。


「しかし、あの戦艦はいいな」

「ええ、いいですね」


そう言って、いつも眺めているラストール王立海軍の巡洋戦艦に2人は視線を移す。

かつて英国が建造した巡洋戦艦フッドに似た艦影の巡洋戦艦は方々で大人気だった。

ちなみに、興奮した一部が、ネルソン級戦艦の写真を見せてこんなのもあるのかと聞いて、王女以外のラストール関係者にドン引きされる一幕もあった。


「いずれにせよ、じきにラストールですし、王女様もいなくなる帰りはもうちょっといろいろできるでしょう」

「艦隊運動の訓練と、各国ごとの演習ばかりでは多国間艦隊の意味が無いしな」


もっとも、日米や英米など、普段から合同演習をやっている国同士での二国間演習はちょいちょいやっているのだが。


「まぁ、帰りは帰りで忙しくなるし、いまのうちにゆっくりしておくか」


そう言って提督は自室へと引き下がったのだった。

わーいぎりぎりだぁ(白眼

次も1週間・・・かなぁ。遅くとも2週間以内には。

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― 新着の感想 ―
[一言] 日本「潜水艦死スベシ慈悲ハ無イ」 まぁ、日本は日本で潜水艦より痛い目に合った機雷戦で昔やらかしてるんだけどね! まぁ、今でもたまにその時投下された機雷が見つかったりするほどばら撒かれたからな…
[一言] 更新お疲れ様です。 文革とポ○ポトのミックスですか・・・・>知識人粛清 なかなかのロマン艦w 装備てんこ盛りで抗靱性や復元性皆無のような気が・・・・ 大鳳のように些細な被弾から轟沈とか(T…
[気になる点] >西の島で手に入れた革命的新兵器 ……何だろ? タ教国の核兵器同様、シャレにならない兵器だったりして……。 [一言] >人民統制委員会 一瞬、中共がダ首連を滅ぼした後に建てた傀儡国…
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