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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
94/201

軍艦もドリルもみんな大好き

新世界暦1年9月15日 日本国東京都 内閣総理大臣官邸


「ふむふむ、まぁこんなもんかねぇ」


珍しく(?)1人で執務室の机に向かい、書類に目を通している家主(首相)

目を通しているのは日米安保の見直しと、それに付随する各種協定の見直し案である。


大枠としては、多島海条約機構(APTO)への日本とアメリカの加盟に伴い、そちらの集団安全保障を主軸に、日米安保は在日米軍や、自衛隊の遣米訓練のための条約として残す、という形である。

在日米軍は大幅な縮小が予定されており、すでにその一部は実行もされていた。


沖縄の海兵隊はすでに本国に呼び戻されているが、そのまま沖縄に戻ることなく、アメリカの地上兵力が再編された後も、最前線になったハワイやグアムに配置されることになる。

それに伴い、沖縄の海兵隊施設もほとんど日本側に返還されることになった。

なお、辺野古については、工事が進んでいるので、那覇空港を使用している陸自の那覇駐屯地を移設して那覇空港周辺の土地を空けるべき、なんて話が出て結局揉めている。

陸自ならヘリコプター部隊だけだからすでに埋め立て工事が終わっている場所だけでも問題ないというわけである。

ちなみに、お隣さんということでこっそり部品を融通したりしていた空自と陸自のCH-47の整備担当者たちがその話を聞いて、悲鳴を上げて互いの帳簿の辻褄を合わせるべく走り回るはめになったのは当事者たちだけの秘密である。


沖縄に残る米軍施設はジャングル戦訓練施設のある北部訓練場が陸自との共同管理になり、他の大規模施設は嘉手納、トリイのみという、いきなりごそっと空く土地の活用に方々が頭を悩ませることになる大再編である。


沖縄が大きく変化したのに対して、本州の大きな基地に変化はなく、九州の佐世保も、沖縄の海兵隊がいなくなったら強襲揚陸艦を置いておく意味もないので撤収かと思いきや、手狭な横須賀から艦船を分散させることになったので存続である。

ただし、大きな変化としては、いわゆる横田空域の大部分が日本に返還されることになった。


横田空域の返還を持ってようやく戦後は終わった、という論調もあり、世界が変わったのと共に時代も変わった、という期待感に世論は包まれていた。

とはいえ、自衛官の戦死や憲法改正を投げ出したままの集団安全保障体制への加盟に対する非難があるのも事実であり、様々な立場からいろんな批判がありつつ、この国お得意の「現実はそうなってるんだから仕方ない」で通すのだった。

面倒なことは全て後送り、次の世代へ。日本の政治家(クソッタレ)の伝統をフルに継承するダメ総理だった。





新世界暦1年9月17日 日本国神奈川県横須賀市 海上自衛隊横須賀地方隊


いわゆる海上自衛隊横須賀基地と呼ばれる施設に、海外から賓客が来ていた。

そのこと自体は、自衛艦隊司令部を各国海軍が表敬したりすることも多いので、さほど珍しいことではない。

しかし、その賓客が他国の王族、それも王位継承権1位だというのは珍しいことである。


「戦艦がないというのは残念ですが、やはり軍艦はどれもいいものです!」


そしてその賓客は、やたらとハイテンションで岸壁を見て回っている。

その人物は、ラストール王国第一王女という地位にあり、英国に続いて日本を公賓として訪問中である。

年齢的には、「ぼちぼち結婚して!?」と方々の関係者に思われているのだが、本人はそんなものどこ吹く風、というか「王国の至宝」とか「王国史上最高の美女」とか言われているのに、お相手(婚約候補達)がドン引きするほどの重度の艦船オタクなのである。

どれくらいかというと、英国で見た双発エンジン縦積みで何故か増槽を主翼の上につけるジェット戦闘機(ライトニング)に興奮しまくるくらいである。・・・それ艦船オタク違う?こまけぇこたいいんだよ。


現在の横須賀には、米空母は不在というか、米海軍自体、数隻を残して全て本国戦線に投入されていたのだが、他国の艦船がかなりの数いた。

まず英海軍が、空母「クイーン・エリザベス」を筆頭に、45型駆逐艦「ドラゴン」、26型フリゲート「グラスゴー」、23型フリゲート「ポートランド」、補給艦「フォート・ビクトリア」という空母打撃群。

他に台湾海軍のキッド級駆逐艦「基隆」、O・Hペリー改級フリゲート「田單」、O・Hペリー級フリゲート「逢甲」の艦隊防空艦”だけ”で構成された艦隊。

さらに単艦だが、NZ海軍のアンザック級フリゲート「テ・カハ」、シンガポール海軍のフォーミダブル級フリゲート「テネイシャス」、アイルランド海軍のサミュエル・ベケット級哨戒艦「サミュエル・ベケット」、フィリピン海軍のハミルトン級カッター「グレゴリオ・デル・ピラール」と、まぁ要するにAPTO加盟国で外洋航行可能な軍艦を持つ国の軍艦が集まっているのである。


これらの艦に、海自からDDH「ひゅうが」、DDG「まや」、TV「かしま」「はたかぜ」「しまかぜ」、AOE「ましゅう」と、王女を乗せてきたラストール王国海軍の超弩級巡洋戦艦1隻と駆逐艦1隻、あとアメリカ海軍から駆逐艦1隻を加えて、APTO初の合同艦隊として、ラストール王国を表敬訪問しようというのである。

海自だけ完全に練習艦隊に「世界はちょっと物騒だし護衛つけとこう」みたいなノリなのは気のせいである。


「ああ、それにしても艦橋(アイランド)が2つある空母もなんだかイイですが、こっちもイイですねぇ」


うっとりした感じで気に入った艦を眺める王女は妙に艶めかしく、案内役や随行員は一部腰が引けていた。

そんな王女のお気に入りは、なぜかアイランドが2つある英空母「クイーン(Q)エリザベス(E)」と、後継艦(まや型)の就役で練習艦に改装された海上自衛隊の「はたかぜ」「しまかぜ」姉妹のようである。

QEはなんか2つに分かれた変なアイランドが、はたかぜ型はマストや武装がごちゃごちゃしてるのがお気に召したらしい。


ちなみに、当初はたかぜ型は練習艦への改装に伴い、後部主砲を撤去して練習艦設備を設置するはずだったのだが、それ(火力)を減らすなんてとんでもない!という物言いがどこか(水陸機動団)から入ったので、艦橋下部のアスロック予備弾庫と自動装填装置が撤去される羽目になった。

よって、外観からは艦橋正面下部のデザインがわずかに変化している程度で、現役時代と外観上の変化はさしてない。


「ああ、それにしてもこんなに多彩な艦を毎日眺めたり行ったり来たりしながら国に帰れるとは、嬉しすぎて濡れてしまいます」


興奮しすぎて、お前ナニ口走ってんの!?という発言をする王女だが、幸い居合わせたのは明日出港する艦隊の関係者だけなので、全員が気になったことはひとつである。

「お前乗艦コロコロ変える気かよ!?」と。





新世界暦1年9月19日 日本国東京都 首都高湾岸線大井JCT付近


高速道路を走る車内から神聖アズガルド帝国首相のアルノルドは、東京の市街地を眺めていた。

APTO艦隊がラストールに向けて出港したのと入れ違いに日本を実務者訪問したのである。


羽田空港に着陸する機内からすでに東京の市街地は見ていたが、改めて地上から見ると巨大すぎる都市圏に圧倒されるとともに、その乱開発ぶりに呆れてもいた。


ちなみに、実務者訪問なので警護車両と白バイはついているものの、首都高は普通に一般車両も走っているし、そもそも羽田まで乗ってきたのも日本の航空会社の定期便である。

自国の爆撃機より高い高度を快適に速く飛ぶ民間機、なんてものの存在を考えると頭が痛くなるが、最近はそういうことは考えないようにしているアルノルドだった。


「それにしてもすごい量の車ですね」


日本が初めての同行の秘書官が興奮したように言う。


「年間500万台の自動車が日本国内で販売されているらしい。これでも最盛期より減ったというのだから呆れるしかないな。我が国の昨年の自動車の販売台数は何台だったかな」

「5万台そこそこじゃなかったですか?まぁ、9割はトラックやバスでしたが」

「あ、そう」


アルノルドは現実逃避するように遠くを見る目をした。


「これでも最盛期に比べると貧しくなったそうだ」

「たったこれだけの国土しか持たない国が、他のあらゆる大国を押しのけてかつて世界第二位の経済大国だったということに驚きました」

「今でも少なく見ても5番以内は確実らしいがな」


秘書官とアルノルドははぁとため息を吐き、話題を変えることにした。


「そういえばドラスト大陸派遣軍で不穏な動きをしてた連中はどうなったんだ?」

「ああ、彼らですか」


秘書官は苦笑いをするだけで、「日本への降伏に不満を持った不穏分子がいる」としか聞いていなかったアルノルドは頭に?を浮かべて怪訝な顔をするのだった。





新世界暦1年9月19日 神聖アズガルド帝国ドラスト大陸領 セントーラス空軍基地


「がははは、それにしてもすごいもんですなジェットエンジンというものは!」


自衛隊と英空軍がアズガルドから借りて使用している航空基地に、ドラスト大陸派遣軍の中将が視察に訪れていた。

何を隠そう、いつぞや日本に対して徹底抗戦を訴えていた将官である。


そのはずだったのだが、ホリアセのドラスト大陸侵攻でなんだか有耶無耶になり、あげくその日本から得られた情報(航空写真)兵器(榴弾砲)でホリアセを蹴散らしてからは、お前の手のひらモーターでも入ってんの?という変わり身で、親日家になっていた。


「貴国に販売するために開発中のF-1Bは順調です。訓練機として同じ操縦系統を持ったT-2Bも間もなく試験機がロールアウトしますので、並行してパイロットの養成に入れるでしょう」


飛行試験のための空域が簡単に取れるという理由で、アズガルド向けの戦闘機であるF-1CCV改めF-1Bの開発はドラスト大陸で行われていた。

まぁ、機体や操縦系統についてはT-2CCVで開発は終わっているので、F-5エンジンとのマッチングを開発と称して追加データを取ろうという飛行開発実験団の悪だくみなのだが。


「いやぁ、とはいえそちらは空軍の領分ですし、私としてはあちらのほうが気になりますな」


そういって中将が指さした先には、アズガルドに納入されたばかりのピカピカのUH-2が並んでいた。

もっとも、パイロット達はまだまだ明野で訓練中なのでアズガルドに飛ばせる人間はいないのだが。


「直に戦車も届くという話ですし、楽しみですなぁ!」


がははと上機嫌に笑いながら中将は視察を終えたのだった。

次回は・・・年内にもう一回くらい更新したいですねぇ・・・。

誰だよ年内に新世界暦1年終わらせるとか言ったやつ(白眼

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― 新着の感想 ―
[良い点] 王女様に一言、『紅茶に染まってらっしゃるようですね。マーマイトはいかがでしょうか?』 [気になる点] なし。面白い。 [一言] これからも頑張ってください。
[一言] ライトニングは比較的「良い英国面」だから…(震え声)、上昇性能は第三世代に対抗できるレベルだし、何故か知らんがファイアストリーク空対空ミサイルを搭載すれば空力も上がるし…運用に防護服が必要だ…
[一言] 更新お疲れ様です。 また全体の登場人物持ち出して恐縮ですが某第一王女(ポンコツ)とか某第一皇女(困ったちゃん)とか、なんだか七十八十さんが描く「第一王女or皇女」とかって美人でも残念な人物…
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