しんこうの終わりに
書いてた分のデータがぶっ壊れたので今話は全部書き直しました(全ギレ
バックアップは実際大事。
新世界暦1年9月10日 アメリカ合衆国テキサス州サンアントニオ 神聖タスマン教国旗艦最上甲板
「うおぉ、いてぇ」
「全員無事か?」
旗艦潜入組は、墜ちる、とわかってから全力疾走で最上甲板に向かって耐ショック姿勢をとったので、なんとか全員無事だった。
無駄にデカい船体もクッションの役には立ったようである。
「あ、ありのままに今起こったことを話すぜ。敵の対空機銃を避けて最上甲板にへばりついていて、やっと中に入れたと思ったら、また戻ってきて最上甲板にへばりついていた。何を言って」
「うるせぇよ」
何やらぶつぶつ言っていたSAS隊員は最後まで言わせてもらえずに尻を蹴り上げられていた。
「おい、逃げる奴らがいるぞ」
下をのぞき込めば、何やら義足で杖をついている指揮官らしき人間を中心に、小隊規模の集団が離れていこうとするところだった。
「よっしゃ任せろ」
そういってHK417を構えたマークスマンを、無線機を持った男が制した。
「友軍を核で焼いた報いはうけてもらわんといかんよなぁ?」
そう言って不敵に笑った男は何やら無線で指示を出し始めたのだった。
新世界暦1年9月10日 アメリカ合衆国テキサス州サンアントニオ 神聖タスマン教国旗艦墜落現場付近
「ぐずぐずするな!さっさと進んで神敵を殺すのです!」
杖を振り回して聖女は叫ぶが、どう考えても瓦礫の散乱した足場の悪いこの場所で、足を引っ張っているのは聖女である。
そもそも、敵を殺せも何も、周囲にいる信者は全員、旗艦の搭乗員なのだから満足に武器も持っていない、ほぼ丸腰の状態である。
とはいえ、聖女を止められる人間はこの場には存在しないので、丸腰のまま敵がいる(かもしれない)場所へと進んでいく。
と、突如、周囲の地面に何かが突き刺さり、爆発のように砂ぼこりが上がると同時に、聖女の体は地面へと投げ出された。
それにやや遅れて、上空からヴーという唸るような連続音と、ゴーという敵の飛行機械が飛ぶときに聞こえる音が聞こえてきた。
「この私が!?異教徒どもに攻撃されたというのですか!?」
更なる怒りに染まった顔で、立ち上がろうとして―――――下半身が無いことに気づいた。
「ああああああ゛あ゛ぁぁぁぁぁ゛ぁあああ゛あ!!!!」
言葉にならない絶叫をあげる聖女。
それは、これまで部下を蹴り飛ばすときにあげていた憤怒の絶叫とは根本的に異なるものだった。
そこには憤怒の感情はなく、ただあるのは理解できないという、理解したくないという、しかし万人が逃れることができないもの。死の恐怖、ただそれだけだった。
新世界暦1年9月10日 アメリカ合衆国テキサス州サンアントニオ 神聖タスマン教国旗艦最上甲板
「「「「うわぁ」」」」
満面の笑顔でサムズアップしてるJTACに対して、横で見ていたSASと特殊作戦群はドン引きである。
A-10の毎分4000発近い30mm機関砲の雨を生身の人間が浴びるところを見せられたのだから、うわぁどころか、下手したらトラウマ物である。
「お、2機目が来るよ」
形は違えど、居合わせた人間すべての悪夢はまだ終わらない。
新世界暦1年9月10日 アメリカ合衆国テキサス州サンアントニオ 神聖タスマン教国旗艦墜落現場付近
下半身が無くなっていることに気づいた聖女は、まだ息絶えてはいなかったものの、絶望で動けなくなっていた。
その心中に去来したものは、神への信仰でも、亡き教皇への想いでも、敵への憎悪でもなく、ただただ「死にたくない」という人間なら当たり前の想いだった。
「いやだ、死にたくない」
涙と共に口から零れた言葉は、誰にも聞かれることはなく、その直後、周囲に五度目となる大量の土煙が上がり、土煙が収まった後に残ったのは、大量の血の跡だけだった。
新世界暦1年9月10日 アメリカ合衆国テキサス州サンアントニオ郊外 陸上自衛隊第7師団
砂煙をあげながら疾走する90式戦車の群れは、止まることなく走り続けたまま次々に射撃し、敵歩行戦車を無力化していく。
随伴している米海兵隊のLAV-25中隊を呆れさせながら、他国を上回る圧倒的速度で進軍する。
その上空は米陸軍第一騎兵師団のAH-64が飛行しており、地上の戦車が撃ち漏らした敵や隠れている敵をあぶりだしている。
映像の中でもそうそうお目にかかれない規模の機甲戦を展開しながら、彼らはサンアントニオ中心部、アラモ伝道所を目指して疾走する。
その様は(国籍を無視すれば)まさにアラモ砦救援に向かう騎兵隊であった。
新世界暦1年9月10日 アメリカ合衆国テキサス州サンアントニオ アラモ伝道所
「アパーム!弾持ってこい!アパーム!」
キンキンと熱された金属の音を銃身から出しているM60を振り回しながら、サンアントニオ市長は秘書の名前を叫んでいた。
「市長、無茶せんでください。あと、7.62ミリのベルトはこの二箱で最後です」
弾薬箱を2つ抱えて走ってきた秘書は、息を切らしながらそのうち1つを開けて弾薬ベルトを取り出しながら言う。
「は、いよいよ最期か。よく粘ったもんだ」
そう言って市長は即席で築いたバリケードの内側を見回す。
まさに死屍累々という有様で、動けるものは負傷していようが軍民関係なく銃を持って戦っていた。
自分の街がこんな有様になっていることを思うと、やり場のない怒りが改めて沸いてくるが、今はまだ出来ることが残っていた。
乱暴に装填を終えると、再び前方を睨む。
「正面、敵戦車!数2!」
その時、大声で警告が発せられる。
対戦車兵器はすでに枯渇しており、敵装甲兵器は鬼門である。
「俺が行く!」
そう言って、1人の若い警察官が時限信管がセットされたC4を手に取って走りだそうとした。
「まぁ、待て、まだ遠い」
が、すんでのところで市長はその警官の手を握って飛び出すのを止めさせた。
「今飛び出したら敵から丸見えだ。敵があの建物の前まで来たら、障害物が邪魔でここは死角になる。そしたら一気に駆け寄ってプレゼントを届けてやるんだ」
市長は警官にそう言ったが、それをこの警官にやらせるつもりはこれっぽっちも無かった。
対戦車兵器を撃ち尽くして以降、こんな自殺攻撃でしか敵戦車を撃破できなくなっている。
当然、毎回成功するはずもなく、近付きもできずに敵主砲の餌食になることも多々あった。
それでも、敵をこれ以上進ませるわけにはいかないと、一般市民も次々に志願して散って行った。
ここを突破されれば、背後は最後の避難民で溢れる駅である。
家族のために何かしたいと言って、銃を持たない奴ほどその役目に志願して散って行った。
これ以上、そんなのを見せられるのはごめんだ、というのが市長の本音である。
「ああ、しかしこの重たいのは腰に来る。ちょっと持っててくれんか」
そう言って、さりげなく市長は警官にM60を渡して、C4を受け取ると、銃座を飛び出して走り出した。
背後で警官と秘書が叫んでいるのが聞こえるが、無視である。
「ははは、まだまだわしも行けるな」
ぜぇぜぇと肩で息をしながら、既に撃破された敵戦車の残骸に身を潜める。
口から心臓が飛び出しそうなほど脈打っているが、不思議とまだもう一走りできるという気力が沸いてくる。
「さあ、タッチダウンと行こうじゃないか!」
そう自分に言い聞かせて、障害物を飛び出したところで、運悪く敵の砲身と目があった。
あ、だめだ。そう思った瞬間、敵戦車の周囲が青く光ったと思うと同時に、ゴインという固い金属同士がぶつかる様な音が響き、敵歩行戦車は崩れ落ちた。
そして遅れて聞こえる、聞きなれた爆発音。
市長がポカンとして爆発音のほうを見ると、戦車がこちらに走ってきていた。
いつもの戦車とは違うようだが、足の生えていない、無限軌道で走る戦車である。
そのままポカンとしていると、戦車は逃げ腰になった敵を追いかけるべく、市長の前を通り過ぎて行った。
その戦車の側面に書かれた白い馬のマークを見た市長は思わず叫んだ。
「騎兵隊の到着だ!」
その言葉と同時に、アラモ伝道所に歓声が響いた。
次回は・・・1週間ですかね?




