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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
78/201

決着

新世界暦1年7月16日 ドラスト大陸西方海域 ホリアセ共和国海軍 ドラスト大陸上陸艦隊旗艦


「しかし、暗礁とは。連中の狙いはこれか」


満足な海図が無い以上、昼間ならともかく、夜間では暗礁があれば全く気付かずに乗り上げることになる。


旗艦が座礁したことで艦隊は追撃を停止していた。

そもそも、敵艦隊を上陸部隊から遠ざけるという目的は達成しているのである。

旗艦以外にも数隻が暗礁に乗り上げたようである。

駆逐艦が他に暗礁が無いか、慎重に確かめながら周囲の警戒に当たっていた。


「敵はそのまま去ったようです」

「上陸部隊のほうに行ったんじゃないだろうな」


それでは全くの無意味である。

それこそ、座礁していない艦だけで追撃を掛ける必要がある。


「一応、水雷戦隊を2つ追撃につけています。大丈夫でしょう」


幕僚達はあれやこれやと方々から入ってくる通信を整理して何も記載のない一面海の海図に書き込んでいた。


「現在地はわかったのか」

「そもそも、正確な大陸間の位置関係が不明ですから・・・」


海図には上陸部隊や追撃中の水雷戦隊の位置関係が記入されているだけで、陸地などは何も記載がない。

出港してきたホリアセ本国からの慣性航法での位置関係は割り出せるが、目的地のドラスト大陸との位置関係が、いい加減な航空偵察しか情報が無いのである。


「だいたいの位置を出せばいい」

「わかりました」


提督は苛立ったように現在地の割り出しを急がせる。

なぜだかわからないが、嫌な予感がしたのである。

本当に連中の目的が、こちらを座礁させることだけなのか。


いや、そもそも、暗礁があるということは、大陸にかなり近づいているのではないか?という考えが提督の頭を過った時、空が僅かに白み始めた。

東の空が僅かに明るくなる気配を見せ始めた結果、西側に黒々とした大きな影が見えた。


「おい、大陸に近付きすぎじゃないか?」


真っ暗で分からなかったとはいえ、あまりにも迂闊であった。

とはいえ、陸地に気付かなかったのは、全く明かりが無かったからである。


「離礁できればすぐに離れる必要があるな」


提督はそう言ったが、それに誰も返事をすることは無く、提督自身も以後、何かを考えることは無かった。





新世界暦1年7月16日 ドラスト大陸西岸 アズガルド神聖帝国海軍 ユーダリル要塞


要塞砲として設置された旧式の30センチ榴弾砲が轟音と共に次々発射される。

砲が設置されている砲台からは海は見えない。

山なり弾道を前提に、海から見れば山の尾根を超えたところに設置されているので、海側からは砲の位置が全く見えないのである。


山なり弾道で発射される300キロ近い重量の徹甲榴弾は、ほぼ垂直に落下し、最新戦艦の装甲も貫通できる。

普通ならそんな山なり弾道の砲弾を航行中の船舶に当てるのは困難だが、これが要塞砲であるというのが重要なことである。


要塞砲は設置された場所から動かないので、事前に砲撃地図を作成しておくことが可能である。

そして、綿密に仰角や装薬量の情報を事前に試射して収集しておくことが出来るのである。

よって、敵の正確な位置がわかっていれば、測距の必要も無く、揺れる船の上から撃つのとは比べ物にならない精度で命中弾を出すことが出来るのである。

そう、例えば、間抜けにも要塞の眼前で座礁した戦艦(大きなマト)などには。


要塞に設置された12門の30センチ榴弾砲の集中射を浴びた敵旗艦は、弾薬庫誘爆とボイラーの水蒸気爆発によって、痕跡も残さず消し飛んだ上に、周囲にいた小型艦も何隻か道連れにしたのである。


旗艦が消し飛んだことで、自分たちがどんな場所にいるのか、ようやく気付いたホリアセ艦隊は散り散りに退避しようとしたが、後の祭りである。

固定設置という運用の柔軟性の無さと引き換えに、洗練された給弾機構と装填装置を持つ要塞砲は、設置スペースの制約も無いので、戦艦よりも発射速度は速い。


次々に戦艦を重点的に狙って砲撃し、敵戦艦3隻の撃沈という破格の戦果をあげたのである。


そして、敵戦艦が無力化できたのを確認し、海側斜面のトーチカに設置された戦艦主砲塔転用の40センチ加農砲を主力に中小口径砲も射撃を開始したことで、巡洋艦も次々とその屍を晒すことになった。


後にこの付近一帯は、太平洋戦争の激戦海域となった海峡にちなんで、鉄底海岸と呼ばれることになる。





新世界暦1年7月16日 ドラスト大陸西岸 ホリアセ共和国陸軍上陸地点


敵艦隊を追撃していった主力艦隊からの連絡がないことをやや不審に思いながらも、上陸作戦は予定通り行われていた。


港湾地区は要塞化されているとはいえ、海岸線全体の長さから言えば、何もない地区のほうが圧倒的に多いのである。

何の抵抗も無く、次々と部隊や物資が揚陸されていく様を、揚陸艦のデッキから眺めながらも上陸部隊指揮官の陸軍中将は不安を感じていた。


揚陸する戦力に比べると、過剰なほどの物資を運んできているとはいえ、補給は空荷になったこの艦隊が本国に戻って、再び運んでくるまで無いのである。

いくら大量の物資があっても、それだけでやりくりしろと言われると、不安になるものである。


とにかく橋頭保を確保し、物資集積所を守るのに十分な警戒線と防御線を早急に構築しなければならない。


「中将、上陸艇の用意が整いました」


いつの間にか従卒が呼びに来ていた。


「そうか。じゃあ行こうか」


中将にとって、ホリアセ共和国がアズガルド神聖帝国にドラスト大陸から追い落とされてから数年ぶりの上陸だった。





新世界暦1年7月16日 ドラスト大陸西岸 アズガルド神聖帝国陸軍 急造野砲陣地


ホリアセの上陸を受けて、待機していた自動車化榴弾砲連隊が、急速進出して急ピッチで構築した野砲陣地は、既に射撃準備が整っていた。

とはいえ、知っている人間が見れば、まるで陸上自衛隊の特科部隊が介入したのかと見間違えるだろう光景である。


中砲けん引車にFH-70、73式大型トラックなど、どこからどう見ても陸上自衛隊の特科装備で構成された部隊である。

もちろん、全てアズガルド神聖帝国陸軍の新装備である。


トラックは新品と陸自のお古の混成、FH-70は19式装輪自走榴弾砲の採用と火砲削減で余剰になった陸自のお古である。


従来、アズガルドやホリアセの陸軍が装備していた最大の機動火力である200ミリ榴弾砲の最大射程が概ね20キロなのに対し、FH-70は通常弾使用でも24キロ、射程延伸弾を使用すれば30キロである。

これで一方的にアウトレンジでボコボコにしよう、というのが今回の対着上陸作戦の第一段階である。


戦車や航空機など、他の装備と異なり、従来の装備と取り扱いにさして差が無い、という特性の結果、他よりも圧倒的に早く実戦配備されたのである。

砲の性能が上がったところで、誘導砲弾を使わない限り、砲弾は放物線軌道以外に飛ばないのである。


『弾種多目的弾、目標敵着上陸地点一帯、照準射、撃て!』


各中隊で1門だけが発射し、照準が合っているかどうか確認する。


『全弾命中、続けて効力射、発射弾数2、全力射撃!』


観測点からの連絡を受け、直ちに連隊の全砲門80門が全力射撃を開始する。


03式155ミリ榴弾砲用多目的弾。

開発直後に政治的理由で全弾廃棄されてしまったはずの、広域制圧を目的にしたクラスター弾である。

アズガルドは条約関係ないから、使いたければ使えば?と設計図や製造方法をまるごと売却したのである。

構造自体は155ミリ砲弾に時計信管と子弾を入れているだけなので、単純な部類であり、子弾のHEAT弾落下中に下向きになる工夫がしてある程度なので、アズガルドでは全力生産に入っていた。


とはいえ、80門が2発ずつなんて射撃をすれば全量尽きてしまう程度しか製造できていないのだが、そもそも現在アズガルドが所有するFH-70はこの80門が全てなので、さしたる問題はない。

あとは通常の榴弾で地面を耕すだけである。


一方的にアウトレンジで砲爆撃を受けた後、従来のアズガルド神聖帝国陸軍のドラスト大陸防衛軍団が、従来から持っていた兵器でさらなる砲爆撃の後、機甲部隊が上陸地点を蹂躙。

すでに主力艦を失い、戦闘機も失っていたホリアセの上陸艦隊は、航空攻撃と、要塞砲が主力を粉砕したことでフリーになって戻ってきた増援艦隊が粉砕した。


後に鉄底海岸の虐殺と呼ばれるこの戦いで、ホリアセは戦艦8隻、正規空母4隻、軽空母2隻、その他輸送艦等約100隻、地上兵力約6万を失う大敗北を喫したのだった。

なんで6話も続けてるんだろうね(白眼

今後の更新は不定期になります。とりあえず最低週1は目標に頑張りますのでよろしくお願いします。

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