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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
74/201

海戦の序曲

おかしい、アズガルドとホリアセの話は2話で終わるはずだったのに、どう考えても5話でも終わらない・・・

新世界暦1年7月15日 ドラスト大陸西方海域上空


比較的低い位置に雲が出ている海上を、雲のはるか上を飛んで哨戒中の航空機が1機いた。


雲のせいで海上の様子は全く見えないが、機体3面に装備するフェーズドアレイ(HPS-106)レーダーで海面は隈なく走査されていた。

アズガルド神聖帝国に供与されたP-1哨戒機、ではなくまごうことなき日の丸をつけた海上自衛隊機である。


ドラスト大陸南方にくっついている大陸の航空偵察のためにドラスト大陸の基地を1つ借り上げる交換条件で、毎日英国と交代で哨戒飛行を行っているのである。

もっとも、それはやばそうなら自分たちがさっさとケツ捲って撤収するための情報収集も兼ねているので、誰のために行っている哨戒飛行かはそれぞれ見方が違うのだが。


「これは撤収したほうがいいかねぇ?」

「どうだろうねぇ?アズガルドの航空隊がどれだけ頑張るかじゃね?」


レーダーの探知情報が表示されたディスプレイには、大量の船舶を示す光点が表示されていた。





新世界暦1年7月15日 ドラスト大陸西方 アズガルド神聖帝国海軍航空基地


鳴り響くサイレンと共に、一斉に駐機してある機体に整備員とパイロットが駆けていく。

駐機されているのは、北海道で自衛隊にけちょんけちょんにされたリンドヴルム戦闘機と、魚雷を抱えた双発の雷撃機である。


とはいえ、リンドヴルム戦闘機は北海道にけちょんけちょんにされたものとは微妙に形式が変わっている。

日本から購入したプラグやハーネス、油脂類、そして過給機に対応させたエンジンを、元々機体構造強化のために改設計が進められていた機体に載せた新型である。


結果、もともと1900馬力などという、レシプロ戦闘機最盛期の地球のエンジンと比べても遜色ない出力だった空冷星形18気筒エンジンは、2000馬力を軽く突破しており、地球で匹敵する機体は、レシプロ戦闘機最終世代のシーフューリーやP-51Hといって差し支えない状態である。

ちなみに、参考程度だが、P-51やシーフューリー、F8Fといったレシプロ最終世代を改造して争う、リノエアレースのアンリミテッドクラスでは4000馬力を超えているので大人しめのチューンである。


まだまだ先行量産の段階で、数は少ないが、(ジェット機導入までの)アズガルド神聖帝国の次期主力戦闘機リンドブルム4Eである。

双発雷撃機のほうは、特に見るべき点は無い、従来通りの陸上攻撃機であり、積んでいるのも普通の魚雷である。


羽根を連ねて飛び立っていく戦爆連合80機。

このうち何機が帰還できるのか、今は誰も知らない。




新世界暦1年7月16日 ドラスト大陸西方海域 ホリアセ共和国海軍 ドラスト大陸上陸艦隊


「直掩機がもう無いだと!?」


艦隊に4隻いる正規空母と2隻の軽空母から上がってきた報告を聞いて提督は声を上げて卒倒しそうになった。


昨日から断続的に続く敵の航空攻撃で、直掩機が枯渇したというのである。

艦隊の被害は、外周のピケット艦が沈められたり、一部輸送艦が損傷した程度だったので、迎撃は成功していると思っていたのである。


被害が抑えられていたのは、アズガルドがなぜか雷撃に拘ったせいであり、上空から戦場を眺めていた日本と英国は


「なんで雷撃に拘ってんの?」


と疑問を呈していたが、複葉機(ソードフィッシュ)4発機(飛行艇)に雷撃させていた国が言っても説得力皆無である。

とはいえ、確実に沈めるのに魚雷は向いているが、対空機銃や高角砲が無傷のところにまっすぐ突っ込んでいくのだから、まともに攻撃位置につける方が稀である。

普通は外すの前提で水平爆撃を行い対空機銃を潰してから、急降下爆撃と雷撃、というのがセオリーである。


ちなみに、水平爆撃を主任務とする艦上攻撃機は軒並み旧オホーツク海に沈んでいるので、いきなり雷撃になったのは人員と機材の枯渇が原因である。


「敵戦闘機の性能が従来からさらに上がっているようで、一撃離脱されると全く追随できなかったとのことです」

「格闘戦なら従来通り、というところのようですが、上昇能力が桁違いで、簡単に振り切られたとのことです」


もともとアズガルドの戦闘機は機体強度とエンジン出力に物を言わせた一撃離脱指向、対してホリアセの戦闘機はぼちぼちのエンジンに軽量な機体で格闘戦指向、という差があったので、アズガルドの性能が一気に向上すれば、追従できなくなるのは道理である。


「敵が何故か雷撃に拘ってくれたのでこれまでのところどうにかなっていますが、アズガルドお得意の急降下爆撃を主力にされるとまずいです」


その懸念はそもそも戦闘機が残っていてもホリアセで共有されている脅威である。


「提督、間もなく敵魚雷艇の航続圏内に入りますが」

「ふん、今更外洋で魚雷艇など何が出来る。沿岸や夜襲での待ち伏せ以外脅威にならんよ」


そう言って提督は周囲を進む艦隊の艦を見遣る。

出港時の陣容は戦艦8、正規空母4、軽空母2、重巡洋艦10、その他護衛艦船60、そして上陸部隊を運ぶ輸送船が2000トンから15000トンまで、大小合わせて120。

輸送船の数に対して護衛が過少だが、別働で水雷戦隊24隻が左右両翼に展開しているので、まぁ、なんとか面目は保っているといったところである。


現在までの損害は、駆逐艦4隻撃沈、輸送船1隻大破、2隻中破、というところで、当初の想定より遥かに少ない。

沈んだ駆逐艦は全て輸送船を庇っての被雷なので、敵の攻撃自体は輸送船に集中していることになる。


「輸送船に対空機銃を装備させたのは正解だったな」

「調達するのは苦労しましたがね」


提督が出港前に、輸送船だからって丸腰でいいわけねぇだろ!と言い出したので、急遽80隻分の対空機銃を調達して設置することになった参謀は三日三晩寝ずに駆けずり回る羽目になったが、それだけの効果はあったと言っていいだろう。


「まぁ、敵が仮装巡洋艦を輸送艦と勘違いしたのもありそうですが」


輸送船団の外縁部には、優秀貨客船に本格的な武装を施した仮装巡洋艦も混ざっていたので、その火力は対空機銃をポン付しただけの輸送船とは比べるべくもない。


「敵艦隊がそろそろ出現してもおかしくはないが・・・」

「情報部からの情報では敵の増援艦隊は装甲巡洋艦1、重巡洋艦2の増強水雷戦隊のみとのことです。艦隊を分けるのは見えてからで問題ないでしょう」


下手に分けて輸送船の方を襲撃されたら目も当てられない、と肩を竦める。


「まぁ、敵がその程度の増援しか送ってこないのは不気味だが、案外、あの噂本当かもな」


情報部経由で流れてきた、真偽不明の噂である。


曰く、アズガルド神聖帝国は海上戦力と航空戦力の過半を失った、と。


「とはいえ、何の裏付けもない噂だ。信じて行動すればバカを見よう」

「とりあえずは、慎重に、ですな」


艦隊は警戒を怠らず、ただ上陸地点と定められた場所に向かう。





新世界暦1年7月16日 ドラスト大陸西方 アズガルド神聖帝国海軍基地


慌ただしく出港していく水雷艇隊を横目に、大型艦の出港準備はのんびりしているように見える。


「敵艦隊の規模を考えると、正面決戦は無茶でしょう」


重巡フギン艦長はその様子を艦橋から眺めながら、提督に声をかける。


「日本から購入するとかいう新攻撃機も全く間に合わない状況では、どう考えても起死回生の一手はありますまい。全て無駄死にです」


これまでのところ、何も作戦らしいことを立てていない提督を攻めるように、艦長は声を荒げる。


「まさか、俺が何も考えていないとは思っておるまい?」

「それはそうですが・・・」


不安そうな艦長に提督はニヤリと笑って言った。


「我に策有り、さ」

次回は水曜日

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