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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
71/201

映画と違うのは某俳優じゃないことだけだろ?

新世界暦1年5月7日 ニカラグア湖上空 神聖タスマン教国 偵察用高速飛行艇母艦


ブリッジから続く通路を足早に歩く人影がある。

聖女である。


臨時に自室となっている艦長室まで来ると、すぐさま扉を開けて中に声をかける。


「敵が突入してくるかもしれません。艦長は無能で何も気付いていないようですので、格納庫まで行って脱出用の飛行艇を確保します」


さくっと艦長と艦を見捨てる宣言をする聖女。


「「リョウカイ」」


無機質な返事を返したのは、甲冑(フルプレート)に身を包んだ体格のいい兵士のような外観の何かだった。

だが、その重量感は中身が人ではないと主張していた。


厳密に言えば「人は入っている」のだが、その手足は明らかに無機質のそれである。

歩行戦車と同じ、いわばゴーレム(魔法生物)なのだが、人間が中に入ろうとすると、当然サイズが大きくなって、普通の人間と同じように行動することは不可能になる。

かといって、人間が直接操作しないゴーレムは、単純な命令しか聞かない上に、いちいち命令しなければ何もできない。


では、どうするのか。

「中に入れる人間を小さくすればいい」というのが教国の結論である。


小人症の人間を入れているのか?

答えはノーである。数が限られるので兵士(実験台)の供給に問題がある。

では、意図的に成長を止めて小さい人間を作っているのか?

それもノーである。教国はそんな面倒なことはしない。


簡単である。

どうせ手足はゴーレムの体なのだから、必要ないというのが教国の出した答えである。

手足を切り離して人間を「小型化」してゴーレムの制御装置にしたのである。


しかし、魔導装甲兵と呼ばれる人型ゴーレムは、製造も手間で戦車よりも緻密な作業が求められるのでさして数はつくれない。

本来、配備されている数を考えれば、国内の人間の出生、成長状況を全て管理している教国なら小人症の人間でも十分に足りるはずである。

問題は、魔導装甲兵の制御系に適合する人間が少ないことである。


教国が事前に確かめる方法、なんて考えるはずも無く、魔導装甲兵の候補者は制御系に繋がるコネクタを脊髄にぶっさすのである。

それで廃人にならなければ採用、廃人になれば廃棄である。


基本的に要人や聖堂の警備に使われるので、忠誠心の高さだけで候補者は選ばれている。

候補者は吐いて捨てるほどいるから、多少使い潰しても困らない、というわけである。


そんな魔導装甲兵2体を先頭に、聖女は格納庫への道を歩き出す。


「騒がしいですね、突入されましたか」


道の途中で、艦内が俄かに騒がしくなる。


『格納庫に敵侵入!当直以外は全員白兵戦装備で格納庫に向かえ!』

「侵入されてから侵入場所に各個に向かわせてどうする」


艦長の無能に聖女は呆れる。

一旦どこかで集合させてから突入させないと、ただの戦力の逐次投入である。

もしくは、一旦格納庫は捨てて、機関室と艦橋(ブリッジ)を固めて、徐々に押し返していくかである。


「コノママ、カクノウコニムカイマスカ?」

「このまま向かえばブリッジに向かう敵と鉢合わせるでしょう。一旦、食堂を経由して迂回します。格納庫にも敵は残っているでしょうが、恐らく敵はブリッジと機関室に向かうはず。手薄になったところで格納庫を急襲して脱出します」


艦内における最強の白兵戦力は、間違いなくこの2体の魔導装甲兵である。

が、聖女はそれを自分を守ること以外に使う気はこれっぽっちも無かった。

なぜなら、教皇からそのように下賜されたものだからである。


そして、何より、今は一刻も早く教都に戻ることが重要である。

こんな足にしただけの艦にいちいち関わってられない、というのが聖女の本心である。


様々な無能と無責任と無謀を乗せて、飛行艇はまだ飛行を続けていた。





新世界暦1年5月7日 ニカラグア湖上空 神聖タスマン教国 偵察用高速飛行艇母艦 格納庫


次々に銃声が響き、格納庫にいた敵を無力化する。


「格納庫を確保、事前の計画(ブリーフィング)通り、機関室に向かう!」


突入出来たMV-22は計5機。

侵入した海兵隊は約100名である。


このうち30名は格納庫を確保し、残りはまず機関室に向かう。

機関室を確保した上で、停止させられるなら停止させ、無理そうならブリッジに向かう、ということになっているが、ベリーズシティで自爆スイッチが機関室にあったので、とにかくそこを押さえてしまおうとペンタゴンが立てた作戦である。


「けど飛んでるとは言え船だろ?70人で一か所に押しかけても通路が渋滞するだけじゃねぇのか?」

「別に飛行機と考えても70人で一か所に押しかけると渋滞するだろ」


くだらないことを言いながら海兵隊員達は駆けていく。

残ったのは物言わぬ死体と、防衛に残った30名、それにエンジンをかけたまま待機しているMV-22B(オスプレイ)のみである。


「なあ、敵来ると思うか?」

「そら来るだろ」


ローター音がやかましいので大声で話しているが、隊員間の通話はインカムがあるので大声でなくても出来る。

が、勿論小隊内全員に丸聞こえなので、無駄話は隊長や軍曹の雷が落ちることになる。


『コンタークト!』


インカムから接敵を知らせる怒声が響くのと、格納庫内にM249の射撃音が響くのは同時だった。

姿勢を低くしながら銃声の方を見れば、何やら武器らしきものを持って飛び出してくる敵が、飛び出した順にバタバタと薙ぎ倒されていた。


七面鳥撃ち(ターキーハント)か?」

「それ以下だろ」


前の奴がバタバタと倒されていくのに、次々と飛び出してくる敵に呆れながら、まるでコメディ映画のように次から次に同じように倒れていく敵を眺める。


撃ち方止め(Cease fire)!』


小隊長の号令が響くが、そもそも撃っていたのはM249が1挺だけである。


「我々には機関銃がある」

「彼らには無い」


マキシム機関銃が戦場にもたらした変化をたった一文で表した、有名な一説だが、そう表現するしかないほど、生身の人間にとって、機関銃というのが如何に危険な兵器なのかを如実に示す光景が広がっていた。


「敵はバカなのか?」

「かもな」


学習とか、状況を見るということをしないのだろうか。


「過激派のイスラム原理主義の連中でももうちょっと利口だぞ」

「しかし、命令されたらその通りに命投げ出すような敵ってことだろ?面倒じゃね?」


10人では機関銃1挺に薙ぎ倒されるだけでも、1000人いれば陣地に届く。


「核で焼いといて正解じゃね?」

「もうイラクやアフガンは御免だぜ」


狂信者の相手はもう勘弁だ、と言った感じで、げぇという顔をする。


とはいえ、部隊に敵はちょろい、という空気が広がったところにそいつは現れた。


全身隙間なく鎧に覆われた大柄な男のように見えるが、それにしては雰囲気が異様である。

その右腕には装飾が施された大型の馬上槍のようなものが装着されていた。

突然現れた、そんな異常なものに、全員の頭に「?」という文字が浮かぶ。


先ほどまで飛び出して来ていた乗員とは明らかに異なるが、果たしてこれはなんなのか?と。


が、そんなことを考える時間を与えず、突如その大柄な槍が青く輝き始めた。


撃て(OpenFire)!』


隊長のその号令で一斉に発砲が集中し、大柄な鎧が凄まじい火花を散らす。


しかし、甲冑はそれに一切怯んだ様子もなく、槍を構え、光弾を発射した。


光弾は隊員には当たらなかったが、待機中だったオスプレイに命中し爆発を起こした。


『なんだこいつ!?』

『未来から来た殺人機械だろ!』

『HAHAHA!って言ってる場合か!』


くだらないことがインカムで飛び交う間にも被害はどんどん拡大する。

すでにオスプレイは2機がおしゃかになっているし、隊員が遮蔽物にしている敵の小型飛行艇も次々吹き飛ばされている。


M82(バレット)撃ち込んでやれ!』

『もうやった(弾かれた)!』


間断なく射撃は続いているが、まったく効果がないようである。


『あの大きさで装甲車並の装甲とか反則だろ!?』


そんなことを言っていると、もう1体の甲冑が格納庫に現れた。


ウソだろ(ジーザス)!?』

M32(ダネル)を使う!援護してくれ!』

『了解!全員援護しろ!』


一斉に小隊各員の5.56mmと7.62mmが敵に叩きつけられる。

敵がそちらにきを取られている隙に、M32を構えて遮蔽物から飛び出した隊員が、40mmグレネードを次々と撃ち込む。


数発が敵に直撃し、敵の周囲は爆発と煙に包まれた。


『やったか!?』


それはやってねぇってことだよ!?と何人かが思うのと同時に、煙の中からM32の射手に向けて次々に光弾が飛んできて、隊員が無残な姿になる。


クソ野郎が(サノバビッチ)!』

『KIA!1名KIA!』

AT-4(84)だ!AT-4を使え!』


そもそも閉所での戦闘で装甲目標との交戦を考慮していなかったので、FGM-148(ジャベリン)は持ってきていない。

AT-4で効果がなければ万事急すである。

射手は畳まれているサイトを出し、安全装置を解除してコッキングレバーを操作する。

肩に担いで最後の安全装置と発射ボタンに手を掛けつつ、飛び出すタイミングを窺う。


『撃つぞ!』

『ぶちかませ!』


号令とともに、飛び出して甲冑に向けてAT-4が発射された。

無反動砲故の凄まじい轟音と同時に、甲冑の腰部に命中したHP弾はその破壊力を遺憾なく発揮し、上半身と下半身をサヨナラさせた。


『ざまあみろ!』

『見たか!』

『油断するな!まだいるぞ!』


部隊は歓声に包まれたが、もう1体の敵が問題である。


『残りのAT-4は機内だぞ!』

『それってあれの機内か?』


その視線の先には彼らが乗ってきたオスプレイが、甲冑の光弾を受けて爆発して燃え上がっていた。


『どうする!?』

『他の機内にはねぇのか!?』

『知るか、探してみるしかねぇだろ!』


隊員がヤケクソ気味になっていたところ、突然、残っていたもう1体の甲冑に、これまでの銃撃とは比べ物にならない勢いで命中の火花が上がり出した。


『え?』

『なに?』


残っていたMV-22Bが胴体下部に装備しているIDWS(ミニガン)を射撃したのである。

本来なら、飛行中でないと安全装置がかかって撃てないのだが、基本的に後付け兵装なので着地しているという信号をカットすることで射撃できるようにしたのである。

これまで沈黙していたのは、その作業のためである。


ちなみに、最初はちょっとだけ飛行して射撃すればそんな面倒なことしなくてもいい、と考えたのだが、どう考えても敵の注意を引くし、墜とされると(特にフルパワーで回っているローターが)地上待機に比べて周囲への被害がとんでもない(のと乗っている人間が死ぬ確率は当然上がる)ので信号をカットする方向になった。


100発で倒せないなら1000発撃ちこめばいい。という数の暴力で撃ち込まれた7.62mmNATO弾によって甲冑はボコボコになり、動かなくなった。


海兵隊が勝利の雄たけびを上げたところで、一機の小型飛行艇が格納庫を飛び出して行ったのだった。

IDWSが作中のような方法で射撃できるのかはわかんない。(おい

まぁ、配線1本切ったらオッケーみたいな昔ながらの構造じゃないでしょうし無理でしょうね。フィクションと言うことで大目に見てください。


次回は火曜日かな?

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