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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
70/201

行き当たりばったりagain

10月になったのに忙しいとかありえねぇし(震え声

新世界暦1年5月7日 ニカラグア湖上空


機内は誰も口を開かない。


それはこれから行われる作戦が無謀すぎると誰もが感じているためである。


そもそも、無謀というよりも無策というか、行き当たりばったりというか、ただの誰かの思い付きである。


発端は数時間前、メキシコシティの戦線から、後方、つまり中米や敵本国方向に向かって出発した1隻の飛行艇が探知されたことである。

小型の高速艇らしく、その任務は、どう考えても連絡が途絶した(と思われる)本国の状況確認しかありえない。

そこで、こいつを沈めて状況確認を遅らせられれば、敵の侵攻を遅滞させられるだろう、ということで、当初は撃沈の予定だったのだが、どこか(ペンタゴン)にいるバカがふと口にしたのである。


「ついでだし、鹵獲できないかな」


一体何がついでなのか、とは作戦に駆り出された全ての兵士の疑問だが、敵はほとんど前線に集結する中で、単独行動する飛行艇。

敵陣に突っ込むよりは遥かに美味しい獲物だろう。


とはいえ、突発作戦なので投入戦力は急ごしらえである。

カリブ海にいた強襲揚陸艦と空母から選抜されたので、突入するのは普通の海兵隊員。予備役じゃなかっただけ運が良かった、とは後方の言で、当人達はちっとも良くない。

空母から発進したF/A-18EがまずAMRAAMを数発撃ちこんで障壁を発動させ、消失させる。

その後、強襲揚陸艦から発進した海兵隊員を乗せたMV-22が突入する、という無茶苦茶な作戦である。


ちなみに、飛行艇の搭載機発進口は閉まっているので、同じく強襲揚陸艦から発進したF-35BがAGM-65(マーベリック)を撃ち込むことになっている。

ちなみに、当初は500キロ以上で飛ぶ飛行艇にラぺリングで降下して取り付く、とかいう無茶苦茶な作戦も検討されたが、どう考えても失敗する未来しか見えないので没になった。


敵飛行艇の最高速度が、MV-22の最高速度より速いことがわかっているので、一度失敗すれば追い付けない、チャンスは一回キリの出たとこ勝負である。

ちなみに、失敗して取り付けなかった場合、従来通りAGM-84(SLAM)が撃ち込まれることになっている。


「そもそもベリーズシティで泊まってるの相手でも失敗したのに、時速500キロで動いてる奴相手にやるとか、正気か?」

「ベリーズシティみたいに自爆されたら俺らお陀仏だぜ」


MV-22の荷室に詰め込まれた海兵隊員がそんな無駄口を叩く。


ベリーズシティで自爆したのはSEALsがやっちまっただけなのだが、世間的には敵が鹵獲されるくらいならと自爆したことになっている。


「突入10分前!」


エンジンとプロペラの爆音が響く機内に隊長の怒鳴り声が響く。


「ああ、クソがしてぇ」

「漏らすなら降りてからしろよ。くせぇから」

「そうだ、漏らしたら放り出すぞクソ野郎」


どうでもいい(事実だとすると周囲はどうでもよくはないが)ことを喋って気を紛らわせるのはいつものことである。

荒くれ者(海兵隊員)達はただその時を待ち、それぞれの銃のグリップを撫でて気を落ち着かせるのだった。





新世界暦1年5月7日 ニカラグア湖上空 神聖タスマン教国 偵察用高速飛行艇母艦


通常の飛行艇より小型だが足の速い高速飛行艇は、連絡が途絶した本国を目指して巡航速度の時速550キロで飛行していた。

その船内では、うろうろと檻の中で落ち着かないライオンのように歩き回っている女がいた。

いや、まぁ関わったら噛み付かれると言う意味では、船内でライオンそのもののように扱われていたのだが。


聖女である。


本国の近くに駐留している部隊や、聖女の進言で、本国で防衛のために機動運用されている部隊と繋がった通信によると、本国で複数の大規模な爆発が観測されていた。

それだけならともかく、幾人かの地位の高い人間、つまり機密を知る人間は、神の秘跡の爆発ではないか、という私見を述べていた。


しかし、いま教国にある神の秘跡は、聖女が指揮する侵攻部隊に編入されている秘跡の守護者が保有する5発が全てである。

製造中のものはあるかもしれないが、その途中の事故だと言うなら、爆発は製造を行っている精錬所、1ヶ所だけのはずである。


言い知れぬ不安を紛らわすように、聖女は怒鳴り散らすのだが、当たられる方は堪ったものではない。

特に艦長は、以前は侵攻部隊で聖女の幕僚を務めていたのだが、分かりきったことを進言して飛ばされた人間である。

出世コースから外された恨みつらみがあるものの、一方の聖女のほうは


「なんか見覚えあるなこいつ」


くらいにしか認識していなかったので、丁度いい不安の捌け口(サンドバッグ)にしていた。

ひとしきり怒鳴り散らして少し落ち着いたのか、怒鳴り声が鳴りを潜め、うろうろと歩き回るだけになってしばらくの時間が経過し、乗員はほんの少しの安堵感に包まれていた。


本国の状況が不明な時こそ、最上位指揮官になる聖女は落ち着いてどっしり構えていなければいけないはずなのだが、所詮は宗教によって創られたカリスマだった。

半狂乱になって泣き叫んでいないだけましだろう。


と、突如、爆発とともに障壁が作動し、船体が青白い光に包まれた。


「敵の攻撃です!」

「どこからだ!?」


一気にブリッジは喧騒に包まれる。


「障壁消失後の敵の攻撃に備えろ!総員、戦闘配置!」


艦長の命令とともに、警報が艦内を駆け巡り、クルーは慌ただしく走り出す。

そんな喧騒の中で、聖女は1人、突然落ち着きを取り戻したかのように静かに何かを考えていた。


艦長は何を考えているのかなど気に留めることも無く、黙っててくれるなら都合がいいと無視することにした。


「敵、正面!」


見ると何やら醜い小型飛行艇が複数、まっすぐこちらに向かってきていた。


「魔導障壁、稼働限界。消失します」


クルーの言葉と共に障壁が消失し、同時に敵が何かを発射した。


「回避!」

「間に合いません!」


爆音と衝撃がブリッジに響き、船体が揺れる。


「被害報告!」


艦長の言葉で呆けていたクルーが、慌てて動き出す。


「報告!敵の攻撃で戦闘飛行艇発進口が崩壊!閉鎖不能!」

「報告!更に敵の攻撃、対空銃座が被弾しています!」


そこに遅ればせながら被害報告が入ってくる。


「?敵は沈める気がないのか?そんな攻撃では沈まないことくらいさんざ試しただろうに」


艦長は首を傾げるが、聖女は何かに思い当たったかのように、1人ブリッジを後にした。





新世界暦1年5月7日 ニカラグア湖上空 アメリカ海兵隊 MV-22B(オスプレイ)一番機


出たとこ勝負の無茶苦茶な作戦で、一番の無茶苦茶をさせられる立場の人間のはずなのだが、機長はやたらハイテンションで、ノリノリだった。


「HAHAHA、この作戦を思いついた奴はマジでクレイジーだな!気に入った、うちに来て弟をファックして良い!」

「なんでお前そんなハイなんだよ!?」


どこかにいる弟君の貞操が勝手にペンタゴンの誰かに差し出された気がするが、これから行われようとしている無茶な突入作戦に比べれば、些細な問題である。


なんせ最高時速600キロ近い速度で飛行する飛行艇に、最高速時速550キロのオスプレイで乗り込もうというのである。

そして、突入口は飛行艇正面。

後方にも、小型飛行艇を収容するための開口部があるのはわかっているのだが、当たり前だが後ろから接近するには相手より速い必要がある。

空母や強襲揚陸艦には、兵員輸送に最適なオスプレイより速い機体はないのである。


まぁ、厳密にはC-2のほうが僅かに速いのだが、誤差でしかない上に、強襲揚陸艦の海兵隊員を空母に移して、という手間が増えるだけなのでオスプレイでGo!ということになった。


とはいえ、正面から向かって行って突入口から飛び込めばいいのか、というとそんなことをすれば相対速度で時速1000キロ近い速度で格納庫の壁に突っ込むことになる。

正面から近付いて行った後に反転、最大速度で同行すれば相対速度が時速50キロ以内くらいにはできるので、このまま(後ろ向きで)突入口に飲み込まれる形にするわけである。


ただし、オスプレイは固定翼モードで着陸すればローターを地面に擦るので、突入の瞬間には垂直離着陸モードか転換モードにしている必要があるのである。

つまり、その瞬間、オスプレイが出せる最高速度よりも速度が落ちる、要するに相対速度が広がるのである。


やはり、考えた奴はバカじゃないのかという作戦だが、さらにより大きな問題がある。

オスプレイが同行してから飛行艇に飲み込まれて着艦するまで、敵にはまっすぐ飛んでもらわないといけないのである。

もう前提からして滅茶苦茶だが、これについては作戦が立てられていた。


「見えなきゃ避けないだろ」


という雑な発想で、ブリッジの視界を塞ぐことになっているのである。


どうやって塞ぐのか?

簡単である。

空中給油ポッドを装備したF/A-18Fから、塗料を混ぜた燃料をブリッジ前で放出させるのである。


そうすれば前が見えなくなるから、(相対的に)ゆっくり接近してくるオスプレイにも気づかない、といいなぁという作戦である。


「よっしゃ!いくぞ!」


F/A-18Fが燃料の放出を開始したことを確認し、低空から接近していた編隊は一気に上昇して反転したのだった。

次は金曜日か土曜日

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