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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
65/201

無人の瞳と爆撃機

新世界暦1年4月25日 メキシコ合衆国 メキシコシティ防衛線上空


高度1万8千メートルの空を、独特の形をした航空機が飛行している。

背中にターボファンエンジンを1基装備し、30時間以上飛び続ける大型の無人航空機(RQ-3B)である。


そこから送られてくる合成開口レーダーやFLIRの映像は遥か後方にいるオペレーターによって監視され、必要に応じて情報が各所に通報されていた。

通信衛星の消失によって長時間の常時監視任務が可能という最大の利点が失われていたのが、ようやく復帰させられるだけの準備が整ったので、早速投入されていた。


これと併せて、武装したMQ-9(リーパー)も待機しており、RQ-4(グローバルホーク)が広範囲を監視し、防衛線を抜けようとする敵がいればMQ-9がヘルファイアAGMやペイブウェイIIを叩きこむ、という現場には兵士がいない無人防衛線を構築しているのである。


一部の人間は全自動殺人機構だ!とか喚きそうだが、後方にオペレーターがいて、実際の判断は全て人間が行っている。

合成開口レーダーの解析や映像分析にAIが活用されているのは事実だが、攻撃も含めた最終判断は人間が行っているのが現状だった。

完全自動化の話が無いでは無いものの、ではその攻撃の責任は誰が持つのか、判断ロジックを後から100%解明できるのか、そもそもその判断ロジックを組んだプログラマーが責任を問われるのではないか、といった問題を考えれば、最終判断を軍人にしておけば従来の兵器の延長で使用できる、というメリットがあった。


衛星が復帰するとともに、戦場を見張る無人の目は増加の一途を辿るのだった。





新世界暦1年4月25日 アメリカ合衆国カリフォルニア州 ビール空軍基地


「最近動きが無いねぇ」


RQ-4Bから送られてくる合成開口レーダーの情報を眺めながらオペレーターの1人が言った。


「せっかく衛星も復活して俺達の番だーって思ったのにな」


この基地にはRQ-4Bの部隊と、U-2Sの部隊が同居しており、RQ-4Bの部隊は、連日連夜出撃続きのU-2S飛行隊をすることも無く見送る日々が続いていたのである。

もっとも、オペレーターはU-2Sから送られてくる情報の解析に駆り出されていたので、もっぱら暇だったのは実機に関わる整備員のほうだったのだが。


「まぁ、敵さんへの攻撃が効いてるってことだろ。いいことじゃないか」


ベリーズシティでの作戦後、敵の兵站拠点と思われる場所への攻撃が強化されていた。

特に、火の海になったベリーズシティは、もはやついでだということで、徹底的に破壊し尽くされており、その後、敵が寄り付くことはなくなっていたので、拠点として放棄されたと判断されていた。


「救出された市民の証言で、敵本国攻撃へのハードルも下がったし、航空攻撃の効果がようやく出てるんだ。喜ぼうぜ」

「だといいけどねぇ」


不気味な静寂に思えてならない。

そう思っているのは何もこのオペレーターだけではないのだが、それと同程度、航空攻撃の効果だと楽観視している人間がいるのも事実だった。





新世界暦1年4月28日 アメリカ合衆国ワシントンD.C. ホワイトハウス


「で、敵の攻勢が止まったって?」

「攻めてくるのを止めたわけではなく、大規模攻勢の準備のために止まっているように見えます」


戦況のブリーフィングを受けながら大統領は、テレビを見ている。


「敵後方拠点の空爆を敵本国まで広げて継続していますので、物資備蓄は阻害出来ていると思われます」

「敵正面兵力への攻撃ですが、敵の対策がここに来て異常です。部隊防御用というのでしょうか、敵の飛行機械や歩行戦車が装備しているのと同じようで異なる、より大規模な防御障壁が恒常的に展開されています」

「レーダー等による射撃管制がされている様子はありませんが、無視できない数の対空砲火も確認されており、攻撃ヘリは接近不可能、航空機も3000メートル以下の高度は危険です」

「同様に敵都市においても、一部障壁の展開が確認されています」


ベリーズシティの作戦以後の変化が報告される。


「前線部隊を守っている障壁の強度は、敵大型飛行機械を守っている物とは比較にならず、現状で貫通が確認できたのはGBU-28(ディープ・スロート)GBU-57(MOP)のみです」

「敵本土の一部都市を覆っている障壁も同様の強度ですが、障壁の無い都市の数と、前線に展開されている障壁の数が一致しますので、都市防衛用のものを転用したものと思われます」


鉄筋コンクリートを6m貫通できる爆弾(GBU-28)でないと有効打にならないとは、なかなかの強度である。


「しかし、そんなもんエネルギーどうしてるんだ?」


尤もな疑問を大統領が述べる。


「偵察機からの映像では、障壁の中心にある発生装置と思われる機械に接続されているこれがエネルギー源なのでしょう」


プリントされた画像には、なにやらよく分からない光る装置と、それに接続されている大きな箱のような構造物が写っている。


「なにこれ」

「わかりませんが、かなりの大きさがありますので、部隊と共に移動する、ということはなさそうです」

「そもそもどうやって運んできたんだ?」

「大型の輸送飛行機械ですね。ベリーズシティの作戦中からその後にかけて輸送しています。わかっていれば設置される前に攻撃したんですが」

「そこまでの余裕は無かった、か」


なんやかんや言ってもメキシコシティの戦線を維持しつつ、ベリーズシティで大規模な水陸両用戦を展開したのである。

敵の輸送飛行艇攻撃は一時的に休みになっていた。


「改修で戦線を外れていたB-52Iが復帰するのと入れ替えでB-1Bの改修に着手します。B-1Bが単独で敵輸送船攻撃に従事できるようになれば、少し余裕が出ます」


現状では敵の輸送船団を攻撃するのに、空域管制のAWACSは除いて、4機一組のF-15EかF/A-18E/Fを充てている状況である。

障壁への陽動用のAIM-120を搭載したのが2機と、本命の攻撃用にAGM-84H(SLAM-ER)を搭載したのが2機である。

とはいえ、あのクラスのミサイルを1機に4発搭載できるようにしているF-2がおかしいのであって、普通は1機に2発である。

つまり、4機いてもSLAM-ERは4発しか積んでいないことになる。


そこで、わざわざ4機も飛ばすくらいなら、大型機を使えば足も滞空時間も長くていいんじゃないか?というなんか冷戦時代に聞いたことあるような話が、当然のように出てきたのである。

では、素早く戦力化するにはどうすればいいか?すでにあるものを使えばいい、と言う話である。


そこで目を着けられたのは、核攻撃任務から外されているB-1Bである。

しかも都合の良いことに、レーダーをAESA化する際に、F-16と同じAN/APG-83を搭載しているのである。つまり、ソフトを足すだけで空対空モードが追加できる。

そして、外部ハードポイントにランチャーをつけてAIM-120に対応させ12発から18発、というのが改修の内容である。

ちなみに、爆弾倉は無改修で本命の攻撃用にAGM-158を18発である。


これで敵地の奥深くまで侵入して輸送船狩りをしようというのである。

しかも、もともとB-21と交代で退役する予定だったので、戦略爆撃機戦力も減衰しないといいことずくめである。

B-1Bの速度なら万一にも敵に追尾される心配はない、というのも採用理由もあった。


「まぁ、いずれにせよ国連の名前がついたんだ。要職は押さえたし、派遣国も厳選したが、増援として届くには時間がかかる。慎重に攻勢の準備を進めるように」

「心得ております。とにかく今は敵の継戦能力を削ぐことに全力を注ぎます」


そこで会合はお開きになりかけるが、ふと大統領が思いついて聞いてみた。


「そういえば障壁を突破できる兵器があるなら、障壁の発生装置を破壊すればいいんじゃないか?」


至極当然の発想である。


「試しましたよ。MOPを直撃させましたが、装置自身はさらに強力か同程度の障壁に守られているようです」

「人や低速の歩行戦車、減速した敵飛行艇等は普通に出入りしているので、高速のものに効果を発揮するのではないかと当たりを着けてドローン攻撃も試みましたが、そうすると今度は敵の対空砲火に捕捉されます」


お手上げ、と言った感じで空軍将校は肩を竦めた。


「MOPもディープスロートも、広範囲を攻撃するには向かない兵器ですし、数もありません。別の手を考えないと」

「いっそドローンの飽和攻撃でも試してみますか。障壁内に入る前に相当数が撃墜されるでしょうが」


わいわいと言いながら将校団は部屋を出て行った。


「一難去ってまた一難、か」


1人部屋に残った大統領はぽつりと呟くのだった。

次回は金曜日になります。

そしてここまでの投稿で新世界暦1年と0年が入り乱れてることに気付く。

1年に統一してきます・・・。

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