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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
56/201

カリブの海賊・強襲上陸

アメリカのターン(仮)

新世界暦1年4月15日 旧ベリーズ ベリーズシティ沖合


まさに水平線を埋め尽くさんばかり、という表現が当てはまる、大量のヘリコプターを伴ったLCACと上陸用舟艇、水陸両用車の群れがベリーズシティの海岸へと殺到していた。

オペレーション:カリビアンパイレーツと名付けられた、大規模な市民救出作戦である。


上陸作戦開始と同時に、巡航ミサイルと航空機による攻撃も始まっており、ベリーズシティ上空では大規模な航空戦が展開されていた。

この作戦のために、苦しいメキシコシティ戦線から海兵隊部隊や航空機を引き上げてこの作戦に投入したのである。

ここでの失敗はベリーズシティの収容所に捕らえられているとみられる数十万の一般市民の救出失敗、と言うこと以上にメキシコシティ戦線にボディブローのように効いてくることになる。


メキシコシティを中心とした防衛線は、航空支援によってなんとか持っている状態であるが、地上兵力のほうが限界だった。

かろうじて予備役10万人の召集は間に合ったものの、敵の物量の前では焼石に水だった。

とはいえ、焼石に水を掛ければ割れることだってあるかもしれない。やらないよりは遥かにマシだった。


ベリーズシティの数十万人を助けたところで、とくに何かあるわけではないのだが、敵の残虐性を宣伝することで急がねばならないことをアピールし、大量輸送による救出が行えない他の収容所での作戦ででる犠牲者を止むを得なかったものとして世論に容認させる意図もあった。


「上陸5分前!」


LCAC左舷下層の船室内で海兵隊分隊の分隊長が大声で叫ぶ。

彼らの仕事は、上陸後に撤収するまでLCAC周辺の安全を確保することである。

車両甲板には1輌のLAV-25と人員輸送用モジュールが据えられていた。


収容所になっている空港と大学がある区画に直接乗り付けて、上陸地点の安全を確保、LCACはひたすら沖にいる強襲揚陸艦に市民を輸送するのである。

ノルマンディーや仁川と並び、上陸作戦に名を残すであろうことは疑いない、ベリーズシティ上陸作戦の開幕だった。





新世界暦1年4月15日 旧ベリーズ ベリーズシティ上空


海は上陸部隊で埋め尽くされているが、空もヘリコプターで埋め尽くされていた。


AH-1Zを伴ったCH-53KとMV-22、UH-1Zの大編隊である。

ちなみに、CH-53KとMV-22は空荷で、市民を船まで運ぶのが仕事である。

対してUH-1Zはドアガンなども搭載し、武装した海兵隊員が搭乗している。


そのさらに上空を支援のためにF/A-18やF-35が追い抜いていく。

とにかくかき集めたせいで、ホーネットは新旧混合の海軍も海兵隊もごちゃごちゃであるし、F-35も強襲揚陸艦から来たBと空母から来たCが混ざっている。

空域管制を行うE-3が過労で死にそうになっているが、全部同じ方向に向かっているだけまだマシである。

この後は、各ヘリコプターが沖にいる船との間を往復し始めるのである。


そんなヘリコプター編隊の先頭を飛ぶAH-1Zの機内で、パイロットとガナーがどうでもいい雑談をしていた。


「おい相棒、この海はサーフィンするにはどうなんだ?」

「知るか、そもそもサーフボード持ってきてねぇだろ」

「大量の避難民乗せるんだからデカい荷物はダメだ!とかあのクソ野郎(艦長)言いやがったんだぜ!ほんとケツの穴が小せぇ野郎だぜ!サーファーの風上にも置けねぇ」


そもそも市民を収容したら撤退するんだからサーフィンしてる暇なんかねぇよ、とパイロットは心の中で思ったが、言うと波乗り狂い(ガナー)が五月蠅いので黙っておく。


「しっかし重てぇなぁ」

「けけけ、こんな大盤振る舞いなかなかねぇからな」


機体が重くて不服そうなパイロットに対し、弾薬がフルロードのガナーは嬉しそうである。

20mm機関砲は750発フルロードの上に、BGM-114ヘルファイアが16発、AIM-9Xサイドワインダーが2発。

おかげで動きはかなり鈍重である。


作戦司令部(オーバーロード)から作戦参加の全部隊、”海賊は暁に帰港する”繰り返す”海賊は暁に帰港する”》


上陸開始の符丁とともに、眼下ではLCACが次々と上陸しているのが見える。

ヘリコプターもUH-1Yがまず降下して載せている海兵隊員を降ろしている。


『外周警備にあたっていた敵戦車が収容所内に突入した。航空支援の要請が来ている』

『ホーネットにやらせるには近すぎる、ヴァイパー、向かえるか?』

「ヴァイパー1了解、月の裏まで吹っ飛ばしてやる」

「月、無くなっちゃったけどな」


機体を傾けて、収容所になっている大学の外周部に向かう。


「なぁ、あのでっかいのはほっといていいんかね?」


ガナーは緊張感無さそうに、浮いているバカでかい飛行艇母艦を指す。


「お前ブリーフィング聞いてなかったのか?あんなバカデカいもん下手に落としたら作戦の邪魔になるかもしれないから、落とすのは上陸部隊が撤収してから、鹵獲に失敗した場合って言ってただろう」


そのため、戦闘機はもっぱら市街地外周部の敵部隊を攻撃するか、発信してきた小型飛行艇の対処に追われていた。

もっとも、その肝心の大型飛行艇(デカブツ)も、地面と係留索のようなもので繋がっていて、動き出す気配はないが。


「ほれ、それより仕事だぞ」


上陸地点に向かおうとする敵戦車12輌を見つけてガナーに声をかける。


「任せろ」


そう言うと、まず敵戦車に向けて20mm機関法をばら撒く。

車体に命中したり、青白いバリアに当たって火花を上げたり、とはいえ、派手なだけで有効打にはなっていない。


「何にでも反応しちまうってのは不便だねぇ」


AN/AAQ-30で目標に照準用レーザーを照射する。


「サヨナラ」


次々とヘルファイア対戦車ミサイルが発射される。

目標上空で急降下してバリアをすでに使用してしまった敵戦車の天板に命中し、タンデムHEATの弾頭を爆発させる。

天板が薄いのは異世界でも変わらないようで、次々にハッチから炎を噴き上げて脚に力が入らなくなったように胴体を地面に落としていく。


「こちらヴァイパー1、こっちは片付いたヘルファイア残弾4、他に支援が必要な場所はあるか?」

『B5地区で敵歩兵部隊が市民に攻撃している。すぐに向かえるか』

「了解、くそったれどものミンチでハンバーグを作ってやる」


すぐに旋回して報告のあった地区に向かう。


「あれだ!」

地獄に(Go to)落ちろ(Hell)クソ(Son of)ったれ(a bitch)共!」


轟音とともに20ミリ機関砲が発射され市民に杖のようなものを向けて、青白い光を放っていた兵士たちが文字通り薙ぎ払われる。


「ざまぁみろ!」

「思い知ったか!」


逃げていた市民がこっちに手を振っている。


「んなことしてねぇでさっさと収容地点に向かいやがれ!」


聞こえないのを承知で怒鳴っているが、顔は笑っている。


『ヴァイパー1、敵機が1機抜けてそっちに向かった!』

「んだと!?」

「返り打ちだ!」


いくら敵の小型飛行艇(600Km/h)戦闘機(1000Km/h)に鴨撃ちされているとはいえ、巡航速度300キロ程度のAH-1Zからすれば十分に脅威である。


「どれだ?」

「あれだ!真正面(ヘッドオン)

「いい度胸だ!やってやるぜ!FOX2!」

「あ、バカ!?」


スタブウイングの端に装着されたAIM-9Xのロケットモーターが点火し、勢いよく飛び出していく。

一直線に敵機に向かっていき、命中・・・するところで敵機が青い光に包まれた。


「このアホ!敵がバリアで発動条件変えたみたいだから、牽制でもいいからとにかく撃って発動させてから本命ってブリーフィングで言ってただろ!」


パイロットはこいつ(ガナー)まじでブリーフィング聞いてなかったのか、と思ったが、今はそれどころではない。


「おい、戻ってくるぞ!」

「任せろ、今度こそ落としてやる!敵に向かって進め!」

「は?」


一瞬パイロットはこいつ何言ってんだ?という顔になる。


「真正面からあのクソ野郎をやって(ファックして)やるって言ってんだよ!」


えぇ・・・とドン引きしながらも機首を敵機のほうに向けて、機体を前に傾ける。

だが、この状態では機首下部の機関砲で敵を撃つのは不可能である。

どんどんと互いの距離が詰まり、敵機が発射した赤い閃光がコクピットのすぐ脇を通過する。


「今だ!引き起こせ!」

「がってん承知!」


次の瞬間、勢いよく機首を引き上げ、急上昇すると同時に急減速したAH-1Zは敵機に向けて20mm機関砲を発射した。

対地攻撃用に発射速度が落とされているとはいえ、秒間11発近い射撃速度である。

陸軍と異なり、攻撃ヘリが対空戦闘(想定しているのはヘリコプターだが)も行う海兵隊ゆえ、それなりに想定も訓練もしていたことが役立ったのかどうなのか、数十発の命中弾を受けた小型飛行艇は地上に落ちて爆発した。


「見たか!」

「二度とやらねぇ」


パイロットはもう全て終わったかのような疲労感に包まれていたが、作戦自体はまだまだ序盤である。

これからヘリとLCACで延々と市民を船まで運ぶ仕事が待っているのである。

意外と頑張れた。

次は土曜日になります。

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