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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
55/201

メキシコシティの戦い・市街戦と情報戦

新世界暦1年4月8日 メキシコ合衆国メキシコシティ とある街路


毎日銃声が聞こえる・・・のは前からだったような気がしないでもないが、24時間銃声の絶えることのなくなったメキシコシティは、すでにその状況が1週間継続していた。


小隊規模の敵が前線をすり抜けて市街に入り込むことが多くなっており、前線に補給を届けるトラックが襲撃される事案も散発するようになった。

結果、市民が避難し無人になった市街地では、それを掃討するメキシコ軍や米軍と侵入した神聖タスマン教国の間の戦闘が所かまわず繰り広げられていた。


それでは、前線の圧力が緩和されたのかというと、連日連夜攻勢が続く、というのが無くなっただけで不定期に大規模攻勢が繰り返されており、いつ前線が崩壊してもおかしくない状況だった。


そんな状況の中、前線からは少し離れた街路をM1281を伴った米海兵隊小隊がパトロールしていた。

前線の砲声は遠いが、上空を飛ぶヘリコプターや、近い街区から聞こえてくる小銃の発砲音や爆発音など、静寂には程遠い環境である。

こんなパトロール任務なら、ふざけているのが何人かいても良さそうなものだが、皆無駄口ひとつ叩かず、真剣な目で周囲の建物に目を配っていた。


普通なら後方に浸透して破壊活動を行う部隊であれば、正規軍との交戦は避け、補給部隊や物資集積所を狙うものだが、敵は条件反射的に出会った相手に襲い掛かってくるのである。

結果的に、避難していなかった家族が惨殺される事件が多数発生していたが、それ以上に不意打ちを受けた米軍やメキシコ軍に被害が多発していた。


敵の携行する兵器がグレネードか対戦車ロケット並の火力を持つのも、被害が拡大している原因だが、幸いなことに連射はきかないことがわかっているので、見つけてしまえば制圧自体は容易だった。

もっとも、制圧後も問題はあるのだが。


『前方突き当たりの建物2階で何か動いた』

「全員停止、散開」


M1281に赤外線(サーモ)で捜索させるが、反応はないという。


『吹き飛ばすか?』

「また避難してない市民だったらまずい」


呼びかけに反応しなかった家に40ミリグレネードをしこたま撃ち込んだ後に突入してみたら、中でメキシコ人4人が死んでいたという事件が一昨日発生していた。

幸い、やったのはメキシコ軍だったうえ、4人ともメキシコシティの住民ではなく、火事場泥棒にきた連中だったのでうまいことおさまったようだが、一歩間違えば大事になりかねない事案だった。


もっとも、連日連夜パトロールを行っている現場の意見は、避難してない奴が悪い、というので国籍問わず統一されていたが、後ろで新聞記事を書いている人間や政治家には関係のない話だった。


『こちらはアメリカ海兵隊だ!このエリアは民間人の立ち入りが禁止されている!直ちに両手を頭の後ろで組んで出てきなさい!出てこない場合は敵と見なして攻撃する!』


まず英語、次にスペイン語の警告を拡声器で行っていたが、スペイン語の途中で建物の窓から青白い光の塊が飛んできてM1281に命中して爆発した。


敵襲(Contact)!」


全員散開して建物の陰に入っていたので、負傷者は出ていないようだった。

一斉に全員が小銃や機関銃で反撃を開始する。

M1282は走行に支障はないようだが、車体上部に乗せている無人銃塔がバカになってしまったらしく、沈黙している。

何発か青白い光塊が飛んできて、建物や道路で爆発するが、まるで狙いが付けられていないようだ。

まぁ、全員がM27(IAR)M249(MINIMI)を装備しているので、5.56mmとはいえ制圧火力が凄まじいことになっている。

呑気に頭を出していたら割れたザクロのようになること請け合いだ。


射撃(Hold)止め(Fire)!」


最後に1人だけ拍手の止め時を間違えたように、M249がダダダと射撃して周囲が静かになる。

手を振って、小隊長が前進を指示する。

周囲も警戒しながら、M1282を盾にする形で前進する。

やがて、蜂の巣になった建物の前まで来た。


(手榴弾を使え)


ハンドサインで一斉に手榴弾を投げ込むよう指示を出す。


「Frag Out!」


小隊長が叫ぶと同時に、安全レバーが外れ飛んだM67がいくつも投擲され、建物の1階や2階の窓から中に飛び込んでいった。

一拍の間を置いて、中でいくつもの爆発が起こる。


「突入!」


銃撃と爆発でその用を為さなくなった扉を無視して、数人が建物の中に入る。


「敵が死んでるか確実に確認しろ」


倒れている敵から武器らしい杖のようなものを遠くに蹴り飛ばして、頭を銃口でつついたり、蹴ったりして動かないか確認していく。


「全部死んでる」


そう言って、振り向いた伍長の後ろで、倒れていた敵が動いた。


「総員退避!」

「聖者タスマンの導きあれ!」


米軍兵士には何と言ったのかわからない叫び声とともに、青白い光を放って敵兵士は自爆した。


確実に無力化しなければ自爆するゲリラによる損害、というのも去ることながら、情報が欲しいのに捕縛が滅多にできない、ということも米軍を悩ませるのだった。





新世界暦1年4月8日 メキシコ合衆国シナロア州某所


普通の人間は寄り付かないエリアに、周囲を金網と鉄条網で囲まれた建物群があった。

誰がどう見ても収容所のようにしか見えないし、もう少し詳しい人間ならアメリカがグアンタナモやサウジアラビアに造っている類似施設(ブラック・サイト)との関連性を見出しただろう。


メキシコシティの市街戦で捕縛された敵兵は、全て後送されて収容所に送られることになっていたが、その足取りはメキシコシティを出るとぷっつりと途切れていた。

公式には某所の米軍基地に造られた収容所に送られたことになっているが、実際にはここに収容されているのである。

今のところは10名弱と少ないが、貴重な情報源である。


ジュネーブ条約なんて守ってられないので、相手を国家承認していないのをいいことに、アルカイダやISと同じ扱いにして、高度な尋問(拷問)を行っているのである。

とはいえ、まずは言語を解析するのが先なので、”今のところ”窓のない真っ暗な部屋は使われていなかったが。


「今日も良い天気ですな。ラングレーの旦那」


こんな場所には不釣り合いな背広を着てネクタイまで締めた男に、サングラスをかけたアロハシャツの男が声をかける。


「そちらは朝から飲んでるようで、羨ましい限りだ」


背広の男は一切表情を動かさずに言う。


「これくらい大目に見てくださいよ。なんせすることが無いんですから。酒飲んで女呼んで騒いでなきゃ気が狂いそうだ」

「南米ルートが無くなってくれたおかげで私達は楽だがね」


ふん、と背広の男は鼻で嗤いながら言った。


「そりゃねーでしょラングレーの旦那、今は協力関係なんですから、仲良くしましょうよ」


元来、ブラック・サイトは何をしても罪を問われない場所に造られてきた。

軍政下にあるキューバのグアンタナモや、合法的に行えるサウジアラビアなどが典型である。

場合によってはサウジアラビアの治安機関に引き渡す、なんてことも行っていたし、そのえげつなさときたらブラック・サイトの拷問が子供のお遊戯に見えるレベルであり、それを知るテロリストの中には引き渡しを仄めかすだけで失禁して知っていることを全て話してくれる者もいたほどである。


そんなわけでキューバがあれば話が早かったのだが、残念ながらあそこは島国なので、多島海エリアに飛んで行ってしまった。

いちいちそんな場所まで運ぶのも面倒なので、どこか無いか、と考えた結果、残虐なことに定評のある政府の管理が行き届かない連中が近くにいるじゃないか、ということでこのブラック・サイトが造られたのである。


「ああ、それとラングレーの旦那、というのは止めたまえ。本部はもうそこじゃないし、なにより私はただのアメリカから来た旅行者だ」

「こんな時にわざわざ旅行になんか来ますかね?そうでなくとも、元々普通のアメリカ人はこんなところ来ませんぜ?」


おどけたようにいうアロハシャツの男を、背広の男は睨みつける。


「それにしたって、メキシコシティは大丈夫なんですかね」

「なんだ、メキシコ政府が心配なのか?」

「政府なんざどうでもいいが、ここは俺達の国だ。そこに土足で踏み入ってきたバカ共に一泡吹かせてやりたいと思うのが人情だろ?」


笑いながらアロハシャツの男は言ったが、その目は笑っていなかった。


「君が銃を持って敵と戦わねばならない状況なら、メキシコだけじゃなく、アメリカだって終わってるだろうさ」

「だろうな。だからこうしてあんたらに協力してる。ちゃんと敵の情報を引き出してくれよ」


そういってアロハシャツの男は酔ったようにふらふらと歩いて行った。


「それ以前の問題だから困ってるんだよなぁ・・・」


狂ったように同じことを叫び続ける収容者たちを思い出して、背広の男は溜息を吐くのだった。

次は木曜日。・・・金曜日かも

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