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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
46/201

艦対艦

新世界歴1年3月5日 ユーラシア大陸と新大陸の間の公海海域 ザルツスタン連邦国 大洋艦隊旗艦「ザラーン」


「飛行隊が全滅だと!?」

「全ての機体との通信が途絶しただけで、全滅したとは・・・」

「じゃあなにか、一斉に無線機が壊れたとでもいうのか!?」


提督の言葉に参謀は沈黙する。


「そもそもなんだ!?向こうはこちらが威嚇しただけで、こちらを撃墜したのか!?」


そもそも当初の予定では、外縁部の船の進路上に威嚇爆撃を行い、船団に編隊を差し向けることで停船させるはずだったのである。

彼らにしてみれば、威嚇のつもりで投下したのに、回避行動をとったテグが想定外の加速で威嚇ではなく至近弾になったのは完全に想定外であった。


「航空機接近!」


見張り員の1人が声を上げる。


「対空戦闘!」


艦長のその号令で一斉に対空機銃や高角砲が動き出すものの、全く追従できておらず、発砲できた一部の機銃も見越し点の計算が全然追い付かずに、ただ曳光弾をばら撒いただけであった。


「なんだあの機体は!?」

「速すぎる!?」


攻撃されるために航過したJ-15なのだが、彼らにはそんなことはわからない。


「艦隊を非常態勢に移行、搭載機は全機発艦させろ!空母と護衛艦艇は退避、残りの大洋艦隊は艦隊攻撃を行う!」


その指令により、艦隊は慌ただしく動き出す。

空母とその随伴艦は艦隊から離脱し、風上に向かって全速で走り出す。

空母の抜けた艦隊は戦艦を先頭に、突入のための複縦陣を組み始める。


が、そんな艦隊で異変に最初に気付いたのは、先ほどの見張り員だった。

最初、彼にはそれが何なのかわからなかった。

ただ、それが凄まじい速度で近づいてくることだけがわかり、慌てて大声を張り上げた。


「不明飛行物体が高速で接近!」


それは破壊という言葉がそのまま超音速で飛行している群れであった。

中印露の各艦からてんでバラバラに発射されたそれは、整合性もなにもなく、速度も遷音速からマッハ3まで、質量も800キロから10トンまで、ただ共通しているのは、その全てが最低でも2000トン以下の艦艇なら轟沈、10000トンクラスまでは行動不能にさせ得る破壊力を秘めているという点だけである。


当然、同時弾着射撃なんてしゃれたものはない(一部のミサイルは同一艦から発射された者同士でのデータリンクは行っていたが)ので、てんでバラバラに思い思いの目標に突き刺さった。

最も悲惨だったのは、先頭を航行していた戦艦であった。

地球基準で言うならば、アメリカ海軍が1941年に竣工させたノースカロライナ級戦艦だろうか。要するに、技術的に見ればザルツスタン連邦国の最新鋭戦艦である。


まず、真正面からロシア海軍のワリヤーグが発射したP-1000が、艦橋に突き刺さった。

重量10トン弱、速度マッハ2.3、炸薬重量500キロの、「10万トン級原子力空母を沈めるため」に造られた超大型対艦ミサイルである。

正直、弾頭が不発だろうと、命中するだけでほとんどの艦は致命的な損傷を受ける。

そして、今回は、信管はきっちり仕事を果たした。


いくら戦艦には装甲がある、と言ったところで、所詮は排水量4万トン程度、原子力空母より遥かに軽く、小さいのである。

そして、不幸なことに、他にもブラモス(3トン、マッハ3)など大小3発の対艦ミサイルが突き刺さり、一瞬で轟沈してしまったのである。


他の艦も多かれ少なかれ、不幸であったことは変わりなく、最後のミサイルが着弾したあと、大型ミサイルの被弾を免れた大型艦だけがなんとか浮いている。という状態であった。

そして、幸か不幸か、旗艦「ザラーン」も浮いている1隻であった。


「・・・戦艦5隻轟沈、2隻大破総員離艦発令中、2隻中破炎上中。本艦も中破なれど火災発生中」


大洋艦隊に所属する戦艦10隻全てが、事実上戦闘不能になっているということである。

重巡以下の艦艇の被害もひどいものだが、集計している暇もない、というのが実際のところである。


「消火ポンプ停止!人手が足りません!」

「排水ポンプ、全力運転中ですが排水が追い付きません!左舷に傾斜2度、なおも増加中!」


悲惨な報告が怒号となって飛び交う艦橋で、提督はその震えを抑えることができなった。


「何が起こった・・・」


その問いに応えられるものはいない。


「何が起こったと言うのだ!?」


最早叫びと言ってもいい言葉だったが、やはり応えるものはいない。

誰にもわからないというのが1つ、そんな暇な奴はいないか死んだ、というのが1つ。

アズガルドやホリアセの主力艦隊とでも正面から戦える大洋艦隊が、一瞬で消えたのである。

歴史に残る無能として世界に名前が残るのではないか、という恐怖に提督は1人震えたが、それは無用の心配である。

日本海海戦の連合艦隊司令長官は皆知っていても、バルチック艦隊の司令長官を知っている人は限られる、と言えばわかるだろう。まぁ、バルチック艦隊の司令長官は名前が長くて覚えにくいという理由もあるだろうが。


ちなみに、傾斜した戦艦というのはぶっちゃけ役に立たない。

数千トンある主砲塔は水平状態で旋回させる前提なので、傾いて重量配分は狂っているとそれを動かすほどの駆動力はないせいである。

戦艦大和を沖縄の浅瀬に乗り上げさせて陸上砲台として使う、なんていうのが机上の空論と言われる所以である。


「何隻残った!?艦隊の状況は!?」


相変わらず提督は喚くが、乗員はそれどころではない。


「提督、将旗を別の艦に移されることをお勧めします」


煤だらけになって黒くなっている艦長が声をかける。

先ほどまで火災現場を見に行っていたのである。


「総員離艦するというのか!?」

「そこまでではありませんが、本艦は既に戦闘能力を喪失しております。火災と浸水を止めてもドック入りしなければ戦闘復帰は不可能です」


もっとも、艦長の心中には艦橋で喚かれても迷惑だからどっか行ってくれ、という気持ちが多分に含まれていたが。

それを聞いた提督は項垂れた。


「そもそも、戦闘を続行できる艦がどれだけ残っている」


それは絞り出すような声だった。


「駆逐艦が数隻と軽巡が1隻、無傷です」

「たったのそれだけか!?」


大洋艦隊は戦艦10、空母6、軽空母2、重巡洋艦6、軽巡洋艦2、駆逐艦24、油槽船2という威容を誇ったはずだった。

それが一瞬にして1個水雷戦隊程度の戦力まで減らされてしまったのである。

護衛艦艇が少ないような気がするが、どこの世界も正面戦力に予算を掛け過ぎれば、他が削られるのである。


提督の頭に、一瞬、その水雷戦隊で突っ込むか!?という考えが浮かぶが、すぐに振り払う。


「1隻でも多く本国に帰すのだ。艦隊にそう命令しろ」


提督は俯いたままそう言った。

敵の追撃がない、というのは考え難いだろう。


「艦長、本艦の状況は?」

「先ほどと変化はありません。火災は延焼中、浸水は止められそうですが、傾斜を戻せるかは微妙です」


異常に高温な火災が発生し、消火班を困らせていたが、それは実は不発だった対艦ミサイルによるものである。

射程距離が200キロ近い対艦ミサイル(ハープーン級)を50キロ程度の距離で使ったのである。

弾頭は不発だったものの、残った推進剤は燃え続け、通常の火災では有り得ない高温をまき散らし続けていた。

ターボジェットエンジンなんだからロケットエンジンよりマシだ、という見方もあるにはあるが、どちらにせよ被弾した側は嬉しくはない。

ちなみに、フォークランド紛争で沈んだシェフィールドに命中した対艦ミサイル(エグゾセ)は不発であり、残った推進剤の燃焼による火災が沈没原因である。


「最悪、本艦を囮にしてでも艦隊を逃す」


その言葉に、艦長は息を呑む。


「悪いが覚悟を決めてくれ、艦長」

「わかりました。本艦を殿につけます」


そもそも、殿なんて務めなくても帰れるかどうかわからない状態である。


「我が国の最新鋭戦艦だ。(エサ)としてこれ以上のものはあるまい」


覚悟を決めるように提督は帽子を被り直したのだった。

次は水曜日にできるように頑張ります・・・。

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