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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
45/201

艦対空

新世界歴1年3月5日 ユーラシア大陸と新大陸の間の公海海域 ロシア太平洋艦隊旗艦「ワリヤーグ」


西側軍用艦ではなかなか見かけることの無くなった、厳めしい背中合わせの2つのパラボナアンテナが回転している。


「提督、インド艦が攻撃を受けたようです」

「被害は?」


凄まじい対艦攻撃能力と、広い防空エリアを併せ持つスラヴァ級ミサイル巡洋艦は、古くなったとはいえ、まだまだ艦隊の中枢を担う重要な艦である。


救難信号(メーデー)は出ていませんので、それほどではないものと思われます」


ふむ、と提督は顎を撫でる。


「敵は?」

「インド艦を攻撃した4機は戻るようです。それとは別にこちらに向かう機影を30機以上確認しています」


やれやれ、と提督は指示を出す。


「一応、モスクワにお伺いは立てんとな。勝手に戦争を始めるわけにもいくまい?」

「艦隊への指示はどうしますか?」

「自衛を第一とし、味方に被害が出ないことを優先せよ。それと」


提督は一拍置いて告げた。


「モスクワの指示があればただちに反撃に移る。準備させておけ」





新世界歴1年3月5日 ユーラシア大陸と新大陸の間の公海海域 インド海軍フリゲート「テグ」


「応急班、直ちに浸水に対処せよ!」

「対潜ソナー使用不能、損傷した模様」


幸いなことに至近弾で直撃は免れたが、艦首に浸水が発生し、ソナーが使用不能になった以外に目立った損害は無かった。

もっとも、投下後に急加速しなければ至近弾にもならなかったのでは?という考えが艦長の頭に過ったが、攻撃を受けたとなれば反射的に速度を上げてしまうのは仕方がない、と犠牲者が出なかったことに納得するしかない。


「敵機さらに接近!数4!」

「自衛行動をとる!主砲、対空戦闘用意!」


主砲が旋回して仰角をとる・・・はずだったのだが


「主砲旋回不能!」

「駆動装置に異常は見当たりません」


旋回しようとしているのに、何かにひっかかっているような挙動をしている。


「まさか、ターレットが衝撃で歪んだか?」

「敵機、なおも接近!」


テグが艦首に搭載しているSAMは艦隊防空用の大型のものであり、使用するには近すぎる。

ならば残る対空兵装は1つだけである。


カシュタン(CIWS)起動、対空戦闘始め!」


CIWSと言うにはあまりにも巨大、かつ厳ついシステムが起動する。

ヘリコプター格納庫両側に1基ずつ設置されたそれは、それぞれ30mm六銃身ガトリング機関砲2門に近SAM8基を有する。

これが艦のシステムとは独立した捜索、攻撃能力を有している。


起動したカシュタンは、すぐさま接近してくる敵機のほうを指向する。

超音速対艦ミサイルの迎撃のために作られたカシュタンにとって、400キロ以下でのろのろ飛ぶレシプロ機の捕捉など朝飯前である。

数秒追尾した後、SAMが発射される。


半自動指令照準線一致誘導方式である9M311は、複数目標を同時に迎撃するには向かないが、自らに向かってくる対艦ミサイルを機関砲と合わせて確実に撃破するという目的を考えれば、理に適った誘導方式である。

最も、この時ばかりは同時多目標攻撃可能なRAMのほうが適役だったが、違うものは仕方がない。


チャフ・フレアはおろか、ミサイル警報装置すら持たないレシプロ機が、秒速600メートルで飛翔するSAMを躱せるわけも無く、編隊の先導機はあっさり爆発した。

CICは直ちにカシュタンに別の目標を追尾するよう指示する。


その後立て続けに2機を撃墜したが、最期の1機はさらに接近する。


「間もなくSAMの最短射程を割ります!」

「機関砲、フルオート射撃!」


それまで眠っていた6銃身の機関砲が、周囲を切り裂く轟音とともに目を覚ます。

毎分9000発の30ミリ機関砲弾が、文字通り空気を切り裂き、毎秒900メートルの速度で目標に向かって飛翔する。

味方が撃墜されたにも関わらず、攻撃進入を継続する蛮勇を見せた最後の1機は、文字通りボロクズのようになって海に消えた。


艦橋に響いた歓声は、しかし、この海戦の始まりの合図でしかない。





新世界歴1年3月5日 ユーラシア大陸と新大陸の間の公海海域 ロシア太平洋艦隊旗艦「ワリヤーグ」


「各艦に通達、対空戦闘を開始する。インド海軍機の退避を確認次第、割り当て通りに攻撃を開始せよ」


まだ少し距離があるため、全体的に余裕がある。


「最終確認だが、中国軍とは関係ないのだな?」

「インド海軍を攻撃した機体、こちらに向かっている機体、そして接近してくる不明艦隊、すべて中国海軍とは一切無関係であるとの返答です」


提督はその言葉にゆっくり頷く。


「インド海軍機、退避完了しました」

「攻撃始め!」


その号令ととともに、ワリヤーグの後部VLSからボスッと、お前ほんとに対空ミサイルなん?、という大型の弾体が放り出され、空中で一瞬止まったように見えた瞬間、ロケットエンジンに点火し、すさまじい煙を残して飛翔していく。


発射後、直ちにVLSの蓋が閉鎖され、次弾発射のため弾倉が回転する。

全く不必要な機能で、故障確率を上げるだけだと酷評される機能だが、一部では人気がある。カッコイイので。

ちなみに、陸軍型にはもちろんこんな機能はなく、弾体が収められたコンテナから直接発射する。


発射したVLSがコンテナを回転させて発射準備を行っている間に、隣接する別のVLSから2発目が発射される。

そうして立て続けに6発。

セミアクティブレーダーホーミングのS-300Fだが、終末誘導を受け持つ射撃指揮装置はフェーズドアレイレーダーであり、カバー範囲内であれば6機に対して同時多目標交戦能力を持つ。


他に随伴する2隻のソルヴレメンヌイ級駆逐艦からは西側のスタンダードSM-1に似たSAMが、Mk13発射機に似た発射機から発射される。


これだけでも艦隊防空用の対空ミサイルが10発、他にインド海軍のコルカタ級駆逐艦1隻がバラク8を10発、デリー級駆逐艦がソヴレメンヌイ級と同じ3S90を2発、シヴァリク級フリゲートとタルワー級フリゲートが3S90を1発ずつで、計24発の艦隊防空SAMが不明機の編隊に向かっていく。


ちなみに、S-300は弾頭が150キロ前後のHE破片効果という、弾体サイズに合わせて弾頭も対艦ミサイル並の炸薬が詰まっている。

そんなものが6発もレシプロ機の密集編隊で炸裂すればどうなるか、と言う話である。


結果、30機以上いた編隊が24発の対空ミサイルで最後尾の2機を除いて全滅した。

その残った2機も戻ってきたMig-29Kによって撃墜された。


「対空ミサイル標的でももう少し張り合いがあるぞ」


提督のその言葉に艦橋が笑いに包まれる。

旧ソ連時代の旧式艦ばかりとはいえ、アメリカ艦隊の輪形陣と航空攻撃を掻い潜って肉薄し、超音速ミサイルを撃ち込むことを目的に設計されているロシア艦にとって、レシプロ機の編隊など脅威には成り得ないのは当たり前である。


「司令部より返信、”我が国と友邦国に攻撃を行った武装組織(テロリスト)を懲罰すべし”、とのことです」

「テロリスト、か。まぁ、我が国が認めた国家ではないのだから当たり前だな」


まず間違いなく異世界の国家なのだろうが、勿論ロシアが国家承認しているわけではないので、全て「テロリスト」である。


「インド海軍はどうすると?」

「本国の指令待ちのようですが、対艦ミサイル攻撃の準備をしています」

「ふむ、ではインド海軍の判断を待ち、その結果に関わらず、テロリストに対し対艦ミサイルによる反撃を行う」


ロシア海軍の対艦ミサイルは、10万トン級原子力空母を1発で行動不能にするために造られている。

対艦兵装としては間違いなく最大級の攻撃力を持つ艦隊が、その攻撃力を解放しようと爪を研ぎ始めた。





新世界歴1年3月5日 ユーラシア大陸と新大陸の間の公海海域 南海艦隊旗艦「山東」


「印露艦隊が不明艦隊から攻撃を受けている?」


司令員がJ-15からの報告を確認して声を上げた。


「ふむ、我が国の艦も攻撃してくれませんかね。どこの野蛮人か知りませんが、占領の良い理由になります」


政治委員の発言に、それを聞いた他の者は一瞬顔を歪めた。

誰がわざわざ実弾の入った銃口の前に立ちたいと思うのか?という話であるが、政治委員はそれが自分ではないので気楽なものである。


「ああ、そうだそのJ-15にその艦隊の上空を低空フライパスさせるのはどうですか」


このボケ、海軍の艦上機パイロットは数がたりてねぇんだぞ、と艦長は思ったが、口には出さない。

誰もわざわざ政治委員と喧嘩しようとは思わないのである。


「司令員?」


早くやれ、といった感じで政治委員は司令員に促す。

これで何かあっても、命令したのは司令員で、政治委員は偵察手段の一つとして提案したにすぎない、とかいって逃げるつもりなのである。

そんな姑息なことはわかっているが、司令員に対抗手段がないのも事実である。


では、どうするか。


「艦長、各艦の運用は艦長の裁量だ」


司令員が言ったのはそれだけである。

パイロットたちが聞いたら、腐ってやがると激怒しそうだが、誰だって責任は負いたくないのである。


「・・・飛行長、頼む」


そして艦長もそれだけ言って黙る。


「・・・不明艦隊の上空を低空でフライパスして偵察せよ、という命令でよろしいでしょうか?」


そして飛行長ははっきりとそう艦長に問うた。

結果、上と下に挟まれた艦長は絞り出すよう命令を下した。

ちなみに、政治委員と司令員、飛行長は同派閥であり、艦長が嵌められたのだが、艦長がそれに気付くのは全て終わった後である。


その後、低空フライパスしたJ-15は無事(?)に対空砲火を浴びたが、レシプロ機とは比較にならない速度だったので無傷だった。

墜ちてくれた方が良かった(艦長の責任を問える)のに、と政治委員以下3人が思ったのは本人達しか知らない。

次回は・・・日曜日かな・・・?

頑張ります

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