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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
43/201

多国間演習

新世界暦1年3月5日 多島海 アメリカ合衆国ハワイ州南方海域


環太平洋合同演習(RIMPAC)に匹敵する規模になった多国間合同演習、実質的には多島海条約機構(APTO)最初の合同演習となった海上演習がスタートしていた。


アメリカ海軍からは原子力空母CVN-72「エイブラハム・リンカーン」、強襲揚陸艦LHA-6「アメリカ」、ミサイル巡洋艦CG-70「レイク・エリー」、ミサイル駆逐艦DDG-52「バリー」、DDG-59「ラッセル」、DDG-88「プレブル」、沿海域戦闘艦LCS-1「フリーダム」、LCS-3「フォートワース」、さらに攻撃型原潜SSN-776「ハワイ」の9隻。


イギリス海軍からは空母R08「クイーン・エリザベス」、ミサイル駆逐艦D33「ドーントレス」、D36「ディフェンダー」、フリゲートF78「ケント」、F81「サザランド」、補給艦A138「タイドサージ」の6隻。


海上自衛隊からはヘリコプター搭載護衛艦DDH-183「いずも」、ミサイル護衛艦DDG-174「きりしま」、護衛艦DD-101「むらさめ」、DD-118「ふゆづき」、FFM-201「やはぎ」、FFM-202「さかわ」、訓練支援艦ATS-4203「てんりゅう」、補給艦AOE-424「はまな」の8隻。


アズガルド神聖帝国海軍から、重巡洋艦「フギン」「ムニン」、駆逐艦「16-1」「16-2」の4隻。駆逐艦名が数字なのは帝国海軍と同じで1隻では軍艦としてカウントしないので、単純にどの艦型の何番艦かを示しただけである。


そして他に、カナダがフリゲート2隻、ニュージーランド、シンガポール、フィリピン、スリランカがフリゲートを1隻ずつ。台湾は国内のゴタゴタの収集がつかず、派遣を見送っていた。


そんな、お前ら実戦でもないのにそんな全稼働艦突っ込んだ演習して大丈夫?という大判振舞だが、海自が訓練支援艦をわざわざ連れて行ったように、大規模な実弾射撃演習が含まれていた。

これは「航行する船や飛行機が増えたらなかなかやれなくなるから、そういうのが増えないうちに派手にやっちまおうぜ!」という実に雑な提案に皆乗っかったせいである。


そして、2日目、対空射撃演習が行われる中、アズガルド神聖帝国艦隊司令は、旗艦「フギン」の艦橋で絶望を味わっていた。


「まるで当たらんではないか・・・」


飛行する曳航標的を射撃するのだが、まるで命中していなかった。


「最初は標的の速度が速すぎて、こちらの高射管制装置が追従しきれませんでした」

「さっきは速度を落としてもらったはずだが?」


艦長が言い訳をするが、司令にばっさり切り伏せられた。

先ほどから数度、訓練支援艦「てんりゅう」から発射されたファイアー・ビーが曳航標的を曳いて通過しているが、最初は時速1000キロで飛来し、碌に射撃もできずに見送ったのである。

その後、飛行速度を落としてもらい、時速500キロ前後にはしてもらったものの、撃てども撃てども命中弾は僅少だった。

対空射撃はそんなものだ、といってしまえばそれまでだが、あれが攻撃機だったら魚雷を投下されている。


「訓練標的が時速1000キロで飛行すると言うことは、日本や他の国はその速度の標的への対処を前提としているということだぞ?追従もできんでは、手も足も出ずに撃沈されるだけではないか」


事実、実戦ではそのようになったわけだが、それはこの際捨て置く。


「次は日本艦が射撃します」


見張り員の言葉に、司令と艦長は気を取り直して外を見る。

並走する形で、日本の駆逐艦が走っている。


「たしかむらさめという名前だったか・・・砲が1つしかないようだが・・・?」

「他国の艦も、大きさの大小問わず、ほぼ主砲は1門だけでしたね」


言っている間にその主砲が動き、どこかを睨む。


「まだ標的は見えないが・・・」

「レーダーで捉えているのではないでしょうか」


そう言って、艦長はレーダー員に対空レーダーで標的を捉えられるか聞いてみるが、応えは芳しくない。

そもそも、それが捉えられているなら先ほどの無様な射撃結果にはなっていない。


「見えました!左舷前方!」


特に目がいい見張り員が、針の先より小さいだろう標的機を発見する。

その言葉と、日本艦が発砲を始めたのは同時である。


「なんだ、あの発射速度は!?」


キツツキとも呼ばれる76mm単装速射砲は毎分85発の発射速度を誇る。

まぁ、もっとも、即応弾は80発なので、1分間撃ち続けることはできないのだが。


「当たってるみたいですね」


双眼鏡を覗いた艦長がぼそっと呟く。


「あぁ、そう・・・」


死んだ魚の目をした司令は呟くのだが、その後、チャカIIIを標的にした対空ミサイル射撃が行われ、連絡官として乗り込んでいる米海軍軍人と海上自衛官に共同交戦能力(CEC)だの、FCネットワークだのとちんぷんかんぷんなことを言われた司令は考えることを止めたのだった。





新世界暦1年3月6日 多島海 アメリカ合衆国ハワイ州南方海域


「燃え尽きたぜ、真っ白にな・・・」


重巡洋艦フギンの艦橋で、司令は自分の椅子に腰かけ、真っ白になって黄昏ていた。


「ええ、本当に・・・」


そしてその横で艦長が立ったまま真っ白になっていた。


昨日の対空射撃に続いて、今日は対水上射撃が行われた。


フギンと僚艦のムニンが最初だったので、1隻につき三連装砲塔4基12門、計24門の20センチ砲を距離12キロで標的艦に向けて斉射したのである。


連絡官として昨日に引き続き乗っていた、日英米の軍人は、その斉射をきゃっきゃと喜びながら見ていた。

完全に映画を見て盛り上がるノリだったのだが、三斉射目で命中弾を出し、司令達アズガルド神聖帝国海軍軍人は少し昨日の留飲を下げたのだが、問題はその後に行われた各国の射撃演習だった。


標的艦は3隻用意されていたが、日本が90式艦対艦誘導弾、英国がハープーン艦対艦ミサイル、アメリカがRGM-158Cを射撃し、英米海軍のP-8哨戒機がAGM-84、空自のF-35BがJSM、英空軍のF-35BがSPEAR3と、ぼっこぼこに対艦ミサイルを撃ち込んで沈めてしまった。


しかもその全てが100キロ以上離れた位置から、米海軍のRGM-158Cに至っては400キロの距離から発射したうえ、さらにその倍の距離からでも撃てると聞き完全に真っ白になってしまった。


「うちの国、何と戦ってたんだ?」

「さぁ・・・」


真っ白になった2人の先で、日は徐々に沈み、夕闇が迫っていたのだった。





新世界暦1年3月15日  アズガルド神聖帝国ドラスト大陸領 大陸派遣軍司令部


司令部にある会議室の一室に、複数の陸軍関係者が集まっていた。

その日、その会議室の使用予定は入っておらず、本来なら無人のはずのその部屋には、大陸派遣軍の中でも重役と言える星付き(将官)の姿もあった。


そして、その面子は、大多数がいつぞやに集まって日本との和平への不平不満を述べていたメンバーである。


「国の未来を憂う優秀な士官がこれだけ集まってくれたことを嬉しく思う」


その中で、もっとも星の多い階級章を着けた人物(中将)が発言する。


「我が国は負けてはいない。これは我が大陸派遣軍を見れば明白である」


中将の演説は続くが、この部屋にいるのは陸軍軍人だけである。

海軍と空軍の参加者がいないのは、大陸派遣軍だけで見ても半分超、全体で見れば4分の3の兵力を失ったのに、「負けてない!」「損傷軽微だ!」と言い張れる奴はそうそういないというだけである。


「弱腰の海軍と空軍を見よ!彼らは戦力を残しながら、もう戦えないという。奴らに散っていった英霊の無念を感じることはできないのか!?」


死んだ戦友ならともかく、見ず知らずの英霊とか政治思想を持ち出し始めるとだいたいが精神論で戦っている軍隊なので(敵味方双方が)碌なことにならない。

概ね末期の軍隊が多いのだが、アズガルド神聖帝国は(日本の感覚からすれば)末期というほどには追い詰められていないはずである。

が、継戦期間が追い詰められた当時の日本の10倍以上長いのだから、やはり追い詰められっぷりでは同じくらいなのかもしれない。


「それで、同志はどの程度集まった」


中将が隣にいた少将に問うと、少将は顔を歪めた。


「それが、大陸派遣軍の陸軍以外には・・・」

「帝都防衛師団は?第四艦隊は?第16航空団は!?」


少将は力なく首を振る。

中将が声を荒げて名を挙げた部隊は、指揮官がタカ派で知られる部隊である。


「くっ」


中将は唇を強く噛み、強く拳を握りしめるが、同時に冷静な部分はこれほどまでに賛同を得られない自分の考えは、大陸派遣軍陸軍のみでしか共感されない狭い考えなのではないか、という疑念を感じていた。


「中将?」


訝し気な表情の少将が顔を覗きこんでくる。

中将は一瞬頭に浮かんだ疑念を払いのける。


「だが、これでは帝都で行動する部隊がないではないか」


所詮、どれだけ兵力がいたところで、ドラスト大陸はアズガルド神聖帝国の一地方でしかない。

一番肝心な帝都を押さえる部隊がいないでは、決起したところで、ただの不平分子の叛乱というか、下手したら暴動である。


「それは・・・」


少将も言葉に詰まり、他を見回すが、他の参加者も顔を伏せたり、口を強く噤んだりと、悔しさが滲んでいる。

自分達の思い、愛国心に共感するものがほとんどいない、ということの悔しさ、やるせなさである。


「大陸だけでも押さえて陛下に翻意を願うか・・・」


中将は小さく呟くが、正直良い手であるとは思えない。

国を割ることになりかねない上、このドラスト大陸は怨敵であるホリアセ共和国と繋がってしまっているのである。

彼らはアズガルド神聖帝国がまだ負けていないという強い思いを持つ愛国者であって、別に権力が欲しいとかホリアセと通じているとかいうことはないので、母国の不利益になりたいわけではない。

だったら、端からクーデターなんか企てるなと言う話だが、負けを認めたくない人間というのはどこにでも一定数いるものである。


正直、どうしようもないのだが、これといった打開策もなく、沈黙が室内に満ちた時、突然部屋の扉が勢いよく開かれた。


「中将、ここにおられましたか!」

「なんだ!?会議中だぞ」


会議中も何も、本来使用予定の無い部屋なのだから、そんなことは当直の通信士官には知りようがない。

とはいえ、通信士官は怒鳴られたことなど意に介さず、そんなことより大変だと言った感じで声を張り上げた。


「ホリアセ共和国と繋がってしまったエリアを哨戒飛行中だった偵察機が突如消息を絶ちました!直前に2機の戦闘機の発見報告が届いております!」


その報告に、室内にいた人間は一斉に弾かれたように外に飛び出していった。

できるかどうかわからないクーデターの計画など練っている場合ではなくなったと、中将も慌てて自室に向かうのだった。

来週はいろいろ予定があるので更新が不定期で回数も減ると思います。

ご了承ください。

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