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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
29/201

変わっていく世界

新世界暦1年2月3日 アズガルド神聖帝国帝都アガルダ 参謀本部御前会議室


帰国したアルノルド中将によってもたらされた資料を皆で目を通している。


「・・・日本国にも皇帝がいるが、実際の政治は議院内閣制で行政、立法、司法の三権分立が為されている」

「軍は自衛に必要な必要最小限・・・最小限?」


日本政府がアルノルド中将やランヴァルド少将からの聞き取りや、ウルズの協力で得られた情報から降伏を説得するのに最適なように作成されていた。


「「「「「なんでこの国に戦争仕掛けたの?」」」」」


お前らが状況はよくわからんけどやれって言ったんだが?というのがアルノルド中将の内心だが、黙っている。


「だが、最小限の兵力しか持たないのならこちらに上陸はできまい?このまま」


知らん顔と言う手もあるんじゃないか?と陸軍参謀長が暗に仄めかす。


「その場合、国家の存続が不可能になるレベルで社会インフラに対し空爆を加えると仄めかされたんですが」

「そんな攻撃が航空機に可能な訳が・・・」

「我が国の空軍と海軍はどうなりました?」


ついつい空軍参謀長は自軍の航空機を基準に考えてしまうが、アルノルド中将に窘められる。

爆弾というのは意外と当たらないものである。

風の影響も大きいし、そもそも無風だとしても水兵爆撃にせよ、急降下爆撃にせよ、機体を安定させて投弾しないと命中しない。

だから同一目標に数十機で攻撃する必要があるし、炸薬量の多い大型爆弾を積むのである。

「当たらないなら威力をデカくしたら至近弾で問題ないよね!」というのを突き詰めると、どっかの国(英国面)は大型爆弾を造ったのである。


逆に言えば、命中するなら従来ほど大型の爆弾は必要ないことになる。

そもそも、爆弾の炸薬量というのは他に比べると過剰である。

155mm榴弾砲の榴弾砲の炸薬は約15ポンド(7キロ)。対して一般的な航空爆弾である500ポンド爆弾Mk82の炸薬量は192ポンド(87キロ)だと言えば、その過剰な火力がわかるだろう。


「大人しく降伏しましょう。賠償だけでいいと言われてるんですから、それでケリをつけてホリアセに向き合うべきです」


アルノルド中将は力説する。


「だが、その賠償の条件は?通貨レートもないのに」


全員が一斉にそれを知るであろうアルノルドを見る。


「エルドフリームニル油田の採掘権と、ドラスト大陸ナーストレンド台地の採掘権」


これについて、反応は二分された。


「エルドフリームニル油田は我が国最大の油田だぞ!」

「そもそもアガルダと地続きの油田を割譲など!」


ひとつは本国にある最大の油田を寄こせという要求に対する憤慨。


「ナーストレンド台地?あそこには鉱山などないはずだが」

「そもそも農耕にも不向きで使い道に困っている場所じゃないか」


もうひとつは何の利用価値もない大地の採掘権を要求してきたことに対する困惑。


「油田の採掘権、つまり採掘業者くらいは送ってくるでしょうし、積出港の整備くらいはするがそれ以上何かする気はないとのことでした」

「だが、あそこの原油を全て持って行かれると、他の油田で増産しても我が国の需給が逼迫します」

「そのときはそれこそ、かの国から買うことになるのでは?それも見越したうえでの採掘権での賠償要求でしょう」


もともと、海外領土も含めれば原油の生産量には余裕がある。

どの油田も全力で操業しているわけではないので、最大の油田とはいえ、持って行かれても(ドラスト大陸を維持できていれば)致命的な影響がでるほどではない。

ちなみに、日本がこの油田を要求したのは単純に一番近く、埋蔵量も多そうだったからである。


「しかしナーストレンド台地は謎ですね」

「まあ、あんなところの採掘権が欲しいというのならくれてやればいいのでは?」

「実質的には油田1つで和平できるというのなら・・・」


それともあの台地に何かあるのか?とは皆思いはしたが、知らない物は無いのと同じ、ということで目を瞑ることにしたのである。


「ナーストレンド台地の採掘権を渡すのはいいとして、それを利用してホリアセとの戦争に日本を巻き込めないか?」


アルノルド中将に首相が質問する。


「難しいのではないでしょうか。かの国は面倒だと思えばナーストレンド台地を捨てて逃げるでしょう。油田だけで充分ペイするでしょうしね」


その言葉で部屋に沈黙が満ちる。

従来の4分の1の規模の空軍と海軍でホリアセ共和国本国と、ドラスト大陸で戦わなければならない。

日本の空爆が無くなれば、急ピッチで再建を始められるにせよ、大量に失われたパイロットや乗員はどうにもならない。


「ただ・・・かの国の同盟国も巻き込めればあるいは・・・」


日本が戦い一度国土の全てを焼かれるほどの敗北をした国と現在は同盟国であり、ほかにも日本と同等程度の軍事力の国と同盟関係にある。

という話を聞かされていたアルノルド中将は、その話を持ち出す。


「ふむ、やはりこれからの国のかじ取りは、日本について詳しい人間がするべきですな」

「全くです。これで我々も安心して辞められるというものです」

「・・・え?」


首相以下、大臣の突然の辞める宣言にアルノルド中将はぽかんと口を開ける。


「何を驚いている?負けた戦争を始めた内閣が続投なんて、国民が納得するわけないだろ。日本との停戦をもって、我が内閣は総辞職、議会も解散して総選挙だ」

「そしてアルノルド、貴様は軍を辞めて新党を立ち上げ、議会議員に立候補する」

「新党には与野党から選りすぐりの人員が合流する手筈になっている」

「そして君は首相になり、日本と平和条約を締結。ホリアセとの決戦に備える。すでに筋書きはできている」


自分が全く知らない間に国の命運を左右するシナリオの中心に据えられていることに、アルノルドは驚愕した。


「ああ、なに、そんなに心配するな。君のブレーンとして現最大野党の幹事長、現外務省事務次官、交通省鉄道総局長が新党に合流するし、兵站参謀本部長にはランヴァルドを充てる。あれは猪のように見えて意外と思慮深いからな」


最後がちっともありがたくないんだが、と思いながらこの流れには多分逆らえないんだろうなぁと諦めの境地に入るアルノルドだった。





新世界暦1年2月3日 日本国東京 首相官邸


「いやあ、嵐みたいな2日間だったねぇ」


あはは、と呑気に笑う首相の横で、官房長官はぐったりしている。

勿論、嵐みたいだった原因は、世界樹島から日本編入のため(遊び)に来たウルズである。


まず国会での質疑応答が自由過ぎた。


日本への編入を希望すると言うのは、日本政府に騙されているか脅されて言わされているに違いない、とまくし立てた野党議員への返答は


「中国共産党統一戦線工作部から金貰って日本政府が不利になるように動いてるお前にだけは言われたくない。あ、昨日も品川のホテルで会ってお金貰ったみたいだね。あれ、奥さんいるのに愛人まで用意してもらってるの?」


勿論、この返答に言いがかりだなどと野党が騒ぎ出して収拾がつかなくなり、大荒れになったのだが、質問した当の本人は真っ青な顔をしていた上に、ウルズがいつどこで愛人と会っていたか、いつどこでいくら統一戦線工作部の工作員に貰っていたか、といったことまでペラペラと喋り出したので、今度は別の意味で収集がつかなくなり、大荒れになった。

ちなみに、もちろん公共放送で生中継された。


世界樹島(ユグドラシル)に関する質問や、日本への編入を決めた理由といった質問には普通に答えるのだが、自分を貶めるような質問や意に沿わない質問には質問者の醜聞(スキャンダル)の暴露で応えるという、ある意味唯我独尊な質疑応答であった。

もっとも、本人曰く、変な質問してくる奴はそんなんばっかだからやりやすかった、とのこと。


ちなみに、その日のニュースと次の日の朝刊は軒並みウルズにスキャンダルを暴露された議員の話ばかりで、世界樹絡みは小さく取り上げられただけだった。

もっとも、ネットではウルズにはぁはぁしていたり、世界樹島への一般の立ち入りが禁止されることへの不満がでたりはしていたが。


「まあ、アズガルド神聖帝国のほうも和平に応じるみたいだし、やっと落ち着けるよね」

「いや、無理でしょ」


転移から始まった一連の騒動を、終わった終わったという感じで言う首相と、お前何言ってんの?という顔の官房長官。


「ウルズさんを狙って動き出す国もあるでしょうし、アメリカがこれから本格的な交戦に入ることも予想されます。離れたとはいえ、ロシアと中国の動き、まぁこれはウルズさんを狙ってくるほうが面倒ですが」

「やだやだ、そんなのやだー」


お前もう首相辞めろよ、と思ったが口には出さない官房長官だった。





新世界暦1年2月3日 日本国東京都小笠原支庁ユグドラシル村 世界樹島


最早管轄考えるのめんどくさくなったじゃねぇのか?という管轄だが、「父島から沖ノ鳥島よりは世界樹島の方が近い」ということで最初は小笠原村に編入しようとしたのに比べればましである。

ちなみに、小笠原村への編入が為されなかったのは、「そんなもん管理する余裕はねぇ!」という小笠原村の叫びのためである。


そして、住所を設定するために一応村という行政単位は設置されたが、村長は小笠原支庁長が職務執行者、島の実際の管理は独立行政法人世界樹島管理機構が行い、理事長はウルズということになっている。


「いやぁ、楽しかったねぇ。特にあの愛人とスパイとの内通を暴露された国会議員の顔が傑作だったよねぇ」

「ソウデスネ」


ユグドラシルの王城あらため、独立行政法人世界樹島管理機構本部に帰ってきたウルズはご機嫌で言ったが、管理機構に出向になった北条は棒読みである。

面倒な世界との接触は全て日本に丸投げできたウルズは終始ご機嫌であり、東京でしこたま今回の旅の出費について怒られた北条と武田は管理機構に出向になり死んだ魚の目をしている。


「では我々は設備の設置がありますので」


管理機構の「警備員」たちは武器弾薬庫の設置や、警戒センサーの敷設のためそう言って出て行った。

表向きはユグドラシル村の治安維持ということになっているが、実質的にはウルズの身辺警護である。

他にも、島に空自がレーダーサイトを設置することになっている。


「農作物が不作の年だけ日本にその作物送ればいいとか、楽な条件で助かるよねー」


むふふとウルズはいい笑顔である。

要するに、この島の1日で農作物が収穫できるとかいうチートは、世界の農業を破壊しかねないので、対馬と同じで不作の時だけ国が流通させる。ということで落ち着いたのである。

まあ、どちらかというとアメリカとの貿易不均衡是正を考えると農作物の輸入を止めるわけにいかないのも理由だが。


「まあ、北条ちゃんと武田ちゃんも気楽にのんびりしなよー」

「「ソウデスネ」」


左遷された2人の官僚とともに、世界樹島管理機構はゆっくりと動き出したのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] <軍は自衛に必要な必要最小限・・・最小限?  ・4隻のヘリ空母(2隻は軽空母に改造) ・世界第2位のイージス艦保有量 ・世界初の第3.5世代主力戦車 ・世界最大級の通常導力潜水艦12隻 ・…
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