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第一次「異」世界大戦  作者: 七十八十
新世界暦1年
19/201

北海道会戦・序曲

なんかめっちゃ急に総合評価pt伸びたなぁと思ってたら「日間文芸・SF・その他異世界転生/転移ランキング」で1位になっていました。

驚きすぎて3回くらい見直してしまいました。

ご期待に沿えるよう頑張りたいと思いますので、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

新世界暦1年1月24日 日本国北海道稚内市 自衛隊稚内分屯地


暗く照明の落とされた室内に複数のコンソールが並んでいる。

それらには稚内分屯地に設置されているJ/FPS-7のレーダー情報が一次情報も含めて表示されている。

とはいえ、同じ内容は三沢にある防空指揮所でもモニターされているし、スクランブルの指揮は防空指揮所が行うので、他のレーダーサイトの情報を見ることもできない。


レーダーサイトといっても実際の職務はレーダー施設の保守管理が主任務であり、むしろ三自衛隊が駐屯する珍しい基地である稚内分屯地は電波情報の収集という重要な任務も帯びている。

元々は極東ロシア軍の無線情報や各種電波情報を収集していた。大韓航空機撃墜事件の際のソ連軍の迎撃機と地上の交信を傍受していたのもここだと言われている。


とはいえ、その極東ロシアが無くなってしまったので、転移後はもっぱら(何を言っているかわからない)神聖アズガルド帝国の無線を傍受し続けている。

枝幸町を占領している部隊へのジャミングが行われていないのは、少しでも無線情報を収集し、言語や暗号の解析に役立てようという思惑のためである。


「なんだか今日は交信が多いな」


飛び交う無線交信の量がいつもの倍以上になっているのに気付いて情報本部電波部の係官は首を傾げた。


「相変わらず何言ってるかさっぱりわからん」

「けど、なんか毎日聞いてるとなんとなくどんなことがわかる気がしないか?どのみち軍用通信なんて言うことはそう変わらんだろ」

「まぁ、千歳でやってる言語解析も終盤らしいから、直にそのわかった気が正しいかどうかわかるだろ」


そう言って発信位置を特定するためにコンソールに向き直る。


「発信位置が敵の本国じゃないな?」

「感じからして航空無線ですね」


音声の雰囲気から航空無線であろうという見当はつくが、相変わらず内容はさっぱりなのだった。





新世界暦1年1月24日 日本国青森県三沢市 三沢基地北部航空方面隊防空指揮所


「SS稚内が不明機(ボギー)を探知。稚内北北西250キロの洋上。数は20~30なおも増加中」

「市ヶ谷より連絡、当該地域において空母機動艦隊によるものと思われる多数の無線交信を探知。枝幸を占領中の敵国と思われるとのこと」

「現時点でボギーを敵機(バンディット)と認定。千歳、三沢にスクランブル」


ブザーが響き、スクランブル発進が発令されたことを知らせる。


「稚内に展開中のPAC-3と鬼志別に展開中の中SAMに発令」

「千歳201、三沢302、邀撃機上がりました。後続も準備中」

「八戸から海自のP-3Cが対艦装備で離陸。中空防空指揮所(DC)より、百里003が対艦装備を準備中と連絡あり」


各所との交信で慌ただしくなる室内を尻目に、航空方面隊司令官の空将はじっと正面の大型ディスプレイを見ていた。


「ここまで動きが無かったのに、急だな?市ヶ谷から突然情報がくるのはいつものことだが、そもそもこの空母機動艦隊はどこから湧いてきた?」


敵本国の海上、航空兵力は殲滅されているはずである。


「米軍のように在外兵力があるということか?」


ひとしきり考えた後、再び正面のディスプレイに目をやる。

とりあえず目の前の自分の仕事に専念することにしたのである。

大型ディスプレイには千歳から上がったシンボルが4つと三沢から上がったシンボルが4つ表示されていた。





新世界暦1年1月24日 日本国東京都 市ヶ谷 防衛省中央指揮所


防衛省の地下に設けられた中央指揮所には、自動警戒管制システム(JADGE)や海自の作戦指揮(MOF)システム、そして陸自指揮システムの情報を表示できるコンソールと、それらを統合表示する大型ディスプレイが設置されていた。


もっとも、防空指揮所や自衛艦隊司令部とは異なり、実戦部隊を直接指揮する能力は持っていない。

基本的には「政治判断」を仰ぐための情報提供設備、首相官邸の危機管理センターの予備、なんかそれっぽい設備(おもちゃ)が欲しい、という種々の要請から設置されている設備である。

真面目な話をすると、ベレンコ中尉亡命事件の際に三自衛隊間での調整機関が無く、情報共有に遅延、齟齬が発生し、陸自の高射砲が空自のC-1を撃墜しかけたとか、そもそも当時の防衛庁で現場の状況を網羅的に知ることができなかったといった教訓によって設置された設備である。


それでも結局、まともに機能するようになるにはC4Iシステムの発展を待たねばならなかったわけだが、作戦単位が限られている空自と海自に関しては、ほぼリアルタイムで状況を知ることが出来るようになっていた。


「最近大人しいと思っていたら、急に動き出したのか」


統合幕僚長たる空将が足早に大型ディスプレイの方に目をやりながら会議室に入る。


「敵空母機動部隊から発進した航空部隊が北海道の領空に向けて接近しつつあります」


会議室内のモニターには、北海道から北西を中心にした情報が表示されていた。


「敵航空機は約240。対して、こちらの迎撃は千歳からF-15Jが4機と三沢のF-35Aが4機。増援で中空から小松のF-15Jが4機、新田原のF-15Jが4機と圧倒的に数が足りません」

「敵航空機240とは・・・真珠湾の第一波より多いじゃないか!」


敵のあまりの数に驚愕する。


「現在、千歳と三沢の後続も準備中ですが、予算の問題でアラート待機を通常の4機態勢にしていたため、少し時間を要します」

「ほんとにこの国は戦争をしとるのか・・・」


空自の戦時体制によるアラート費用の膨張に対応するため、緊急補正予算を申請していたが敵があまりにもあっさり撃退できてしまったため、国会では通常予算の増額でいいじゃないか、という雰囲気になっていた。


「三沢から連絡、米空軍のF-16Cが4機離陸しました」

「とはいえ、敵の数が多すぎるぞ」

「搭載している誘導弾を全弾命中させたとしても152機撃墜。100近い敵機が抜けてきます」

「稚内のPAC-3と鬼志別の中SAMもありますが、100発はないですね」

「百里のF-2を対艦装備に換装したのは失敗だったかもしれません」


数に精度で勝つのが現代の軍隊とはいえ、それも限度があった。


「それを言い出したら、DDGを1隻でも置いておけば良かったという話になるだろう。たらればは今話しても意味はないよ」

「そもそも、これで敵の航空攻撃は全てなのか?第二派攻撃や敵陸上機の攻撃はないのか?」

「それを言い出したら、この艦隊はどこから湧いた?とにかく情報がない現状では目先の状況に対処するしかあるまい」


敵のあまりの数に、本土空襲を許すかもしれない。という焦りが室内を支配する。


「こうなったら築城と那覇のアラート機も向かわせますか」

「そうなったらそれこそこちらの予備戦力はゼロになるぞ」

「だからと言って、敵の本土空襲を許すわけには」

「誘導弾を発射した後はひたすら機関砲で数を減らしてもらう他あるまい。相手は所詮レシプロ機だ。こちらの一撃離脱には対応できんよ」

「だが、機関砲の射程では万が一が無いとも言い切れない」


意見のまとまらぬまま、衝突のときは刻一刻と迫っていた。





新世界暦1年1月24日 日本国北海道千歳市 東千歳駐屯地


演習場の一角にある市街戦訓練施設に急ごしらえで造られた収容施設。

そのただ1人の収容者であるアズガルド神聖帝国陸軍のアルノルド中将は、うんうんと頭をひねって考えていた。


「ランヴァルド少将はあれで優秀な軍人だ。反りは合わんし、独断専行なところもあるが、彼我の戦力差や兵站の状況は十分に理解しているだろう。きちんと兵たちの安全が保証されることを説けば応じるはずだ。問題は・・・」


日本語との翻訳にようやく目処が立った。

とは言っても、ほとんどの解析は日本側が行ったので、アルノルド中将が行ったことは文章のサンプル提供や、互いに意味が通じているかどうかの確認、モノの写真を見て片っ端から名詞を答えていくといったことに限られていたが。


で、意思疎通がある程度できるようなったところで、上陸部隊を降伏させることが出来るのなら部隊の生命の安全は保証するという話を持ち掛けられ、二つ返事で引き受けたのである。

が、引き受けたはいいものの、自分と反りの合わない旅団長2人を如何にして説得するか、という難題にぶち当たり、中将は再び悶えることになってしまった。

もっとも、アルノルド中将が懸念する、ランヴァルド少将ではない「もう一人」は中将が拉致されてきたときに爆弾で吹っ飛んでいるのだが、そんなことは知る由もない中将の悩みは深い。


と、そこで部屋の扉がノックされた。


「どうぞ」


中将が声をあげるのと同時に扉を開けて入ってきたのは、世話役の外務省職員だった。


「残念なお知らせがあります」

「え?」


入ってくるなり職員の告げた言葉に、中将は思わず間の抜けた返事を返してしまった。


「貴国が大規模な攻勢に出たようです。よってこの攻勢を挫いた後、降伏勧告については再検討する。ということになりました」


彼我の技術格差を顧みずに大規模攻勢にでた母国と、それをいとも簡単に打ち破れると言い切った職員の言葉に、中将は意識が遠のくのを感じたのだった。





新世界暦1年1月24日 日本国北海道 旧オホーツク海上空


オグメンタ(アフターバーナー)を焚いて音速を超えて飛行する機影が4つ。

千歳基地をスクランブル発進したF-15Jである。


いわゆるF-15MJではなく、F-35Aでの更新が決まっているF-15SJばかりである。

中国に対するスクランブルの増加による南方シフトで、70機に満たない数しかない単座のF-15MJはほとんどが那覇と新田原の3個飛行隊に集中配備され、他の飛行隊には僅かな数しかない。


複数の改修が行われ、ミサイル搭載量の増加とAESAレーダーへの換装も始まっているF-15MJに対し、導入以来近代化改修がろくに行われていないF-15SJははっきり言って二線級の戦闘機であり、運用できる対空ミサイルも退役したF-4EJ改と一緒という状態である。


とはいえ、「飛行機」としての性能にF-15MJとF-15SJの差は無いので、今回のようなレシプロ機相手のケースでは強力すぎる戦力である。


「マーチ17、レーダーコンタクト」

敵機(バンディット)飛行禁止空域(NFZ)に侵入。攻撃を許可する。武器使用は自由》

「ラジャー、マスターアームオン、ターゲットロック、バンディットまで距離があるし密集している。FLOODモードによる同時攻撃を行う」

《了解、マーチ17、グッドラック》


本来なら1発ずつしか誘導できないAIM-7Fで同時多目標攻撃を行う方法。

特定の目標をロックオンして追跡するのではなく、機首レーダーの首振りを止めて固定し、前方12度の円錐にレーダー波を照射し続け、その反射波をミサイルに追尾させるのである。

普通はESMで敵レーダーの索敵モードはモニターされているので、回避行動でその狭い円錐から逃げられてしまい、まず命中しないのだが、回避行動をとらない巡航ミサイルや、動きの遅い機体相手なら十分有効である。

そして今回の相手はESMを持たないので回避行動をとらない、速度の遅いレシプロ機である。


「FOX1、FOX1」


4機から一斉にAIM-7M中射程対空ミサイルが発射される。

これがF-15MJならAAM-4やAIM-120を発射し、命中を見届けることなく上昇、敵編隊の上をさっさと取って、20mmバルカン砲やAAM-3、AAM-5で攻撃、となるのだが、命中までレーダーを照射し続けなければならないAIM-7ではそういうわけにもいかない。


「ルックキル!ルックキル!」


遥か前方で爆発の閃光と煙が小さくいくつも上がる。


「事前の作戦通りに各機上昇!速度も上昇能力もこちらがダブルスコア以上の大差で上だ!落とされるどころか捕捉されるだけでもイーグルドライバーの名折れだぞ!」


編隊長はそう言うと、機体を垂直上昇させ得るエンジンを吹かして上昇を始めた。

全ての運用国合計でキルレシオ100対0を誇る制空型F-15は、この日さらにスコアを大きく伸ばすことになるのだが、それでも敵の数はあまりにも膨大であり、迎撃に上がった機体は圧倒的に少ないのだった。

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