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異世界にて、我、最強を目指す。  作者: たま ささみ
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GPS-GPF編  第9章  イタリア大会~GPF  第4幕

スマホのアラームが鳴りだした。

 ああ、眠った気がしない。

 それでも数馬と会う30分前には起きてシャワー浴びて着替えないといけない。

 ぐずぐずしている間にデジタルの数字は進んでいく。


 まずいまずい。

 早くシャワーを浴びないと。


 5分という驚異的な速さでシャワーを浴びボディシャンプーで身体を隅々まで洗い終え、シャワー室から出た俺は、またもやすさまじい速さで制服に着替える。

 そして数馬の部屋の前に立ったのが7時25分。


 ああ、間に合った。今回はカードキーも忘れないで持ってる。

 何が成長したって、着替えの速さが一番成長したと思うよ、俺は。

 少し上機嫌で数馬の部屋のインターホンを鳴らしたのだが、また応答がない。まだ生徒会役員室にいるのか?

 まだ見惚れてるのかよ、と思いつつ、生徒会役員室を透視してみる。

 

 おや?数馬の姿は見えなかった。その代り光里会長と蘇芳先輩が若林先輩と話している。

 

 じゃ、どこにいるんだ?


 すると、数馬の声が離話で聞こえてくる。

「ごめん、海斗。お腹こわした。僕が行かなくても大丈夫?」

「適当なモン食ってても良いなら、1人で食堂に行く」

 腹痛で苦しんでるサポーターを無理矢理食堂に引っ張っていかなくてもいいさ。


 数馬はどこで何食って腹こわしたんだろう。

寝冷えか?

 さっきはそういう気配もなかったのに。

 食堂フロアのドアを開けると、逍遥(しょうよう)聖人(まさと)さんがトレイを片付けているところに出くわした。

 逍遥(しょうよう)が横向きに首を捻る。

「数馬は?」

 すぐさま透視する逍遥(しょうよう)

 おい、逍遥(しょうよう)。数馬は一応年上だ。少しは(うやま)え。トイレ透視したってしょうがあるまい。

「ああ、調べものしてるみたいだね」


 なにすや。

 腹こわしたって俺に言ったべや。


 嘘だったのか?腹こわしたというのは。

 それにしても、嘘までついて何してるんだろう。

 もしかしてアレクセイのことかな。

 禁止魔法関連ならまだしも、ショットガンを作製してるわけではないだろうから。


 ま、いいか。

 

 俺は1人で自由に食べることができるので、かなり自由度が上がった気がしてほくほく顔だった。

「海斗。数馬がいないからって食べるのサボるなよ」

 逍遥(しょうよう)。相変わらず察しのいいことで。

 たぶんこれも読心術なのだろうけど、絶対に認めないからスルーすることにした。

 読心術なら数馬が教えてくれる、って言ってたし。


「それって契約違反でしょ!!」

 読心術を使ったんだろう。逍遥(しょうよう)が周囲に聞えるような大声で叫ぶ。

それって、俺のことか?

俺が何を誰と契約したって言うんだろう。確かに還元とやらで魔法技術を教えてくれる約束にはなっているようだけど、逍遥しょうようはGPFだってあるし世界選手権の新人戦も控えてる。俺に教えてる暇ないでしょ。

「それでも時間を作って君に還元すると決めたんだ。契約を不履行にすることはできない」

「わかったわかった。でも、さしあたり読心術と瞬間移動魔法だけは覚えてしまいたいんだ」

「なんで、どーして」

「なぜ、っていわれちゃうと必要な理由を並べ立てることはできないけど、こっちにきてるメンバーほとんど読心術できるし。瞬間移動魔法だって、サトルみたいに魔法科にいるならまだしも、譲司や数馬だってできるんだぜ」

「譲司や数馬、若林先輩とかは魔法科を蹴った口だから並以上の魔法力があるんだよ。君は気付かなかったかもしれないけど」

「数馬は自分のこと人並みでしかない、って言ってたぞ」

「そりゃ謙遜だよ。人並みはおろか、魔法科でも敵わないくらいの魔法力持ってるんだよ」

「げげっ」

「海斗・・・カエルじゃないんだから」


 カエル呼ばわりかよ・・・。


 もう最後には俺が逍遥(しょうよう)に詫びを入れる形でこの件については決着した。

 GPF後に、集中して還元すると逍遥(しょうよう)は約束してくれた。

 数馬だってそれは分かってると思うし、なんたってサポート業務の範囲外だってこともある。

 もうひとつ、逍遥(しょうよう)ではなく数馬が俺に魔法を教授することを亜里沙の耳に入れたくなかった。

 こちらの世界に来てから、亜里沙の沸点がどこにあるかわからない。

 その意味で、皆に、特に逍遥(しょうよう)には迷惑をかけたくないのだ。

 

 聖人(まさと)さんは、ただ黙って俺たちの会話を聞いていた。

 まるで俺のことに興味などないといわんばかりに。

 そこまで無視される筋合いもないと思うんだが、心底慕っていた気持ちに整理をつけるにはこれで良かったんだろう。

 もう、ケリはついた。


 

逍遥(しょうよう)たちと別れ自分のトレイに菓子パンと牛乳、ポテトサラダを乗せた俺は、座れる席を探して食堂内を見回していた。この時間帯の食堂は、どうやら混むらしい。


 と、後ろから背中を2回、(つつ)かれた。

 誰?

 少し警戒しながら振り返ると、そこにいたのは国分くんだった。

八朔(ほずみ)くん、久しぶり。今日は1人なの?」

「国分くん、ホントに久しぶりだね。うん、今日は1人なんだ」

「よかったら一緒に食べない?」


 国分くんが2人分の席をキープしてくれて、俺たちは顔をほころばせながら席に着いた。

八朔(ほずみ)くんは『デュークアーチェリー』にエントリーしてるのか。あそこ、強い人たくさんいるんだよねえ」

「国分くんは何にエントリーしてたの?」

「『バルトガンショット』と『エリミネイトオーラ』。四月一日(わたぬき)くんが出場するから『エリミネイトオーラ』にした。優勝は無理でもくらいつけばGPFは確実だ」

「2人一緒に出るなら、僕、どっち応援すればいいのか迷うなあ」


 俺の言葉など耳に入らないかのように、国分くんは話し続ける。

「『デュークアーチェリー』は、結果先行ではあるけど試合を録画して観てるんだ。世界選手権新人戦の種目になりそうだから」

「そうなの?先々まで読んでるんだね。僕がのんびりし過ぎなのかな」

八朔(ほずみ)くんも頑張ってるじゃない」

「中々思った通りに試合運びできなくて」

「僕らはまだ1年だから」


 すると国分くんは何やら周囲を見渡し、俺の方に頭を傾け小声で話し出した。

「聞いてない?禁止魔法使ってここにいる生徒の話」


 ドキッとした俺。

 アレクセイのことか?

 カマをかけられている可能性も否定できないので、アレクセイのことは話せない。(けむ)に巻くしかない。

「さあ。海外だと禁止薬物とか禁止魔法とか何でもアリだ、って聞いたことはあるけど」

「そうか。君の出場してる『デュークアーチェリー』で禁止魔法の噂が出てる。僕も使用者までは特定できてないけど」

「知らなかった」

 ホントは知ってるけど。

 たぶん、アレクセイの話だ。そういう噂は一夜にして広まるものだから。


「禁止魔法は、筋肉に使った痕跡が現れるからすぐにバレるんだけどね。禁止薬物が髪の毛に出るように」

「じゃ、そろそろキツネ狩りってところなのかな」

「今度の大会前に抜き打ちか、全体検査があると思う」


 俺は黙って頷いた。

 となれば、アレクセイは引っ掛かるだろう、完全に。

 

 逍遥(しょうよう)の見た透視が本当だとしたら、数馬が何を調べていたのか分らないけど、アレクセイの禁止魔法の噂は各国に流れてるとみて間違いはない。

 

 俺と国分くんはディープな会話を終了させ、自分たちの出場競技などについて意見交換していた。国分くんは世界選手権の新人戦に狙いを定めているのか、『デュークアーチェリー』の練習方法についてすごく聞きたがる。

 そういえば、国分くんの隣にサポーターが付いてる場面は見たことがなかった。白薔薇はサポーター無しで競技に出場させているようだ。

俺としては下手くそなのも手伝って、サポーター無しだと緊張度合いもMAXだし、何より試合運びを考えながら1人で何もかも考えるのは無理だ。


俺として国分くんに話せるのは、姿勢のことくらい。

バランスボールはまだ練習してないし、どういった成果がでるかもわからないので口にしなかった。

でも、これまた新人戦の種目になりそうな『バルトガンショット』のタイミングが掴めないことを話すと、一緒に悩んでくれた。

紅薔薇のサポーターに(聖人(まさと)さんね)、動体視力から脳に伝わってそこから手に伝わるタイミングがずれてるんじゃないか、っていわれたことまでは話したんだが、それ以上はお互い企業秘密ということで。


国分くんもその辺は重々承知のはず。

でも、今日の意見交換は俺にとって久々の気分転換になった。

いつも数馬に食事のことでガミガミ言われてたから。数馬が心配するのもわかるんだけど、食べられないものは仕方ないんだよ。


トレイを片付けて食堂を後にし、EVまで歩いていくと国分くんは階段を上がって部屋に行くということで、そこで俺たちは別れた。

今度会う時は、GPFか、はたまた世界選手権の新人戦か。でも、国分くんがGPFに出るには逍遥(しょうよう)を超えなくちゃいけない。いや、オール銀メダルでも出場は可能だな。

あとは・・・俺がそこまで行ければの話だ。


俺が部屋に戻った瞬間、「もしもーし」と声がする。数馬から離話だった。

どうやら食堂を透視していたらしく、邪魔にならないよう見ていたのだとか。

「俺は気が付かなかったけど、国分くんは気が付かなかったのかな」

「さて。僕は気配を消して透視していたから、たぶん気が付かなかったと思うよ」


 え、気配を消した透視ってできるんだ。

 本当に、数馬の魔法力は侮れない。

「これから君の部屋に行ってもいいかな」

「どーぞー」

「公開練習日はまだだからって、気の抜けた声出さないでくれ」

「それより早く部屋に来てよ」


 30秒も経たないうちに数馬は俺の部屋に入りベッドを占領した。

「それ、反対。俺が寝転がるべきでしょ」

「たまにはいいじゃない。ところで、さっきの生徒は白薔薇の国分くんかい?」

「そうだよ、良く知ってるね」

「サポーター業務に入ってるよ、国内国外合わせて、どんな相手がいるのかは」

「国分くんは『エリミネイトオーラ』に出てるって言ってた、でもさ、成績聞けなくて」

「なんでまた」

「逍遥がいるから優勝は無理でしょ、どう聞いたらいいのかわかんなくて」

「彼はかなり優秀でね、シルバーコレクターとも呼ばれてる。良い意味じゃないけどね。逍遥(しょうよう)さえいなきゃ、彼は優勝できてる」

 

 そりゃそうだよな、国分くんは元々逍遥(しょうよう)に次ぐ紅薔薇1年のホープだったわけだから。


 数馬の目がキラーンと輝いた。

「他に何か話したでしょ、顔付き合わせて」

 俺はさっきの会話を再現して見せた。

「禁止魔法かけてる人間がいるっていう噂。各国に広がってるらしいよ」

「アレクセイのことかな」

「俺はそう捉えたけど。今度の試合前かGPS終了後に、抜き打ちか全体検査あるんじゃないか、って」

「なるほど。今回はどうするのかねえ」

「引っ掛かったら順位は剥奪されるんだろ?リスキーだよね、あまりにも」

「国ぐるみならリスク分散というか、掴まった人間をぶった切る可能性もある、トカゲのしっぽ切りでね。捕縛者の割合によっては国家としてGPFも世界選手権も棒に振ることになるんだが、国家はそこまでバカじゃない」

「なんか企んでるってこと?」

「まず、国家が絡むとなれば全体検査はないだろうね、噂の立ってる人物にのみ焦点を当てるはずだ。今回で言えばアレクセイ。ロシアは魔法に関する競技人口が多いから、替えはいくらでもいるんだ」

「アレクセイの場合は、試合内容が半端ないからそういう噂も立ったんだろうし」

「あれは悪目立ちしすぎたね。やりすぎだよ、いくらなんでも」


 俺はふと、数馬が何を調べているのか気になった。

 気になったからにはそれを聞かないと気が済まない性分なんだよ、俺は。

「数馬、今まで何してたの」

「別に何も」

「嘘は嫌いなんでしょ。話せ、話して楽になれ」


 アイドル顔のくせに、おかめ顔のような表情で俺を騙そうとしている。いや、騙されないから、俺は。

「アレクセイのこと調べてたの?」

「いや、違うよ」

「じゃあ何さ」

「寝てた」

「残念、逍遥(しょうよう)が調べものしてる君を透視したんだよ」

「そうなの?」

「うん、聖人(まさと)さんも何も言わなかったし」

「そりゃ参ったねえ」

「だから吐け」


 数馬は数秒だけ真面目な顔つきになった。話すか?と俺は期待を膨らませる。

「やっぱ言わない~」

 期待は裏切られ、数馬はまた剽軽(ひょうきん)な顔に戻る。

「パートナーにも言えないくらいのことしてたわけだ」


 俺はふぐのような顔をして、不満を口にした。

「サポーターとの信頼度が下がるような真似は止めてくれる?」

「海斗は知らない方がいいことだから」

「何、それ」

「人生色々あるの。さ、少しマッサージしてあげるから」

 

 結局マッサージという魚に釣られ、俺は数馬の日の当たらない部分を垣間見ることはできなかった。


またしても、数馬のマッサージで夢見心地となった俺は夕食後ということもありそのまま爆睡。どうやって数馬が出ていったのかさえ覚えてない。俺の部屋のカードキーを数馬が持って出れば俺の部屋は自動的にロックされるし、翌朝数馬がカードを持って入ればいい。

 と、簡単に考えていたのだが、各階にあるカメラはものすごく優秀で、人の顔がよく見えるように配置されている。万が一他の部屋のカードキーを持っていると、ブラックリストに乗るらしい。

 数馬はそんなところで下手をこくことはしない人間だ。

 数馬が部屋を出るその時だけ俺を叩き起こし、部屋に内鍵をかけさせたのだろう。

 

 どこかしら寒くて目覚めた時、俺はベッドの上でジャージ姿で大の字になっていた。

 スマホで時間を確認すると、まだ午前2時。

 季節は晩秋。

イタリアは11月が雨期にあたるらしい。東京あたりと気温は変わらないが、夏でも夜は冷えるのだとか。今日も、雨こそ降らないけど結構肌寒い。

このままでは風邪をひきかねない。

 俺は部屋の電気を完全に消し、猫のように丸くなって布団にもぐりこんだ。


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