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異世界にて、我、最強を目指す。  作者: たま ささみ
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GPS-GPF編  第9章  フランス大会  第3幕

次の日からの練習を考え、その日は軽く夕食を済ませレストランを出た俺と数馬。

 数馬が意気消沈しているように見えたので、話すことは最小限にして数馬の部屋の前で別れ、俺はまた頬を膨らませながら自分の部屋に戻った。

 腹が立つあまり透視でもしてやろうかと思ったが、どうせみんなもう自分の部屋に帰ってるだろう。

 離話するのも面倒、というか、話したくもない。

 俺はまたあの本をキャリーバッグから出して栞代わりのスマホを取りページを捲ったが、どうして数馬が嫌われるのか、答えは書いていなかった。

 俺が癇癪(かんしゃく)を起したところで本のページも終わっている。

 意味ないじゃん、この本。

 捨てようかとも思ったが、待て、待てよ。

 こういうときこそ冷静にならなければ。

 サトルか逍遥(しょうよう)に理由を聞かねばなるまい。


 明日からはまた練習が始まる。

確かフランス大会の次は日本大会。会場は横浜の国際競技場だったはずで、皆の話も聞きやすいだろう。


 俺は逸る心に蓋をしながら、毛布にくるまった。



◇・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 翌日の午前9時から練習が始まった。

 俺の場合、1位とかそういうレベルにはほど遠いので、取り敢えずGPF参加を今の最高の目標として考えることにした。

 6位から落ちなければいいわけだから、気が楽だ。


 まず、数馬に念入りにストレッチを頼んで身体を解し、あとはいつものように姿勢を整え3D映像を脳ミソの引き出しから呼び出しイメージ記憶を膨らませる。

 アリーナの中では、其々の選手が学校や国から支給されている練習用ソフトを使って的を出す方式を使い、人さし指をデバイスとして矢を放っていた。

俺も、ご他聞に洩れず練習用のソフトを数馬が準備してくれて、的を出しては射るを繰り返す。


 今日は20分で40枚を超えた。

 うん、ここに来て調子は上がっている。

 他の選手も腕が上がるようになってきた頃だろうから油断してはいけないと思いつつも、この調子の良さに俺も数馬も表情は緩んでいた。


 公開練習日は、確か1週間後。

 皆に俺の調子が上がっているところを見せれば、数馬への批判めいた態度も止むかもしれない。

 俺は数馬と二人三脚でGPFを目指す。

もう、生徒会には数馬の方から現在の調子と目標を提出しているはずだ。

俺の自力で上位通過など望めないのは皆がわかっていることじゃないか。


 なんかこの頃、練習してることはしてるけど、それ以上に人の悪口を胸に溜めこむばかりで、とても生産性の無い生活を送っているような気がする。

 生産性が無さすぎる。

人の悪口を心に思う暇があったら練習しとけ、って話。



◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 瞬く間に時間は過ぎ、公開練習の日がやってきた。


 ロシア大会辺りまでは悪い意味での緊張感が俺の勘を鈍らせていたのだが、ここのところ調子が上向いてきた。

 実際に演武を行うアリーナで、大会事務局から提供されたソフトを使い的を射ていくわけだが、身体的には思った以上に良好で、頭も冴えているように感じる。


公開練習も20分で42枚命中。

 よし。この調子だ。

 数馬とのミーティングでも、次回日本大会での3位入賞を見越して今回は目標を6位以内と定め、ラフに身体を動かすように指示があった。

 目標枚数は、45枚。


 大会も3回目ともなると時間の流れがきちんと身体に入ってくる。

 1日1日のスケジュールが時間通りに過ぎていく。

 もう、フランス大会の試合が迫っていた。



◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 いざ、フランス大会が幕を開けた。


『デュークアーチェリー』では、命中した枚数を数え間違えて俺は7位に沈んだ。

 1位は変わらずロシアのアレクセイ。

何と48枚という命中率は、ここしばらくのGPSでは誰も成しえていない記録だそうだ。

 2位はフランスのルイ。

自国開催の利をその背に受けて、46枚という相当な枚数を命中させていた。リュカのことで心配もあっただろうが、よくぞ蘇ったと思う。

 3位はカナダのアルベール。45枚。これだって、普通にすごい命中率。余程鍛練に時間を費やしてきたのだろう。

 4位はスペインのホセ。44枚。ホセはどの大会でも結構いい順位で終えている。このままいけば2位通過でGPSも有り得るかもしれない。

 5位はイギリスのアンドリュー。43枚。この辺りまで来ると、毎回順位変動があり、誰が有力とかは言えなくなる。

6位は無名の選手だった。申し訳ないんだが、初めて気が付いたような気がする。名前も良くわからない。英語圏の人間では無さそうだ。本当に今まで『デュークアーチェリー』に参加していたのか?その選手も43枚だった。

 

 俺は42枚。最初は44枚だと思って4位?と喜んだもののあとで命中が42枚だったことを知り、撃沈。

今回は公式練習でも好調を保っていたのだが、元々の地力の差というか、上に食い込むことができないでいる。

 今日はさすがに悔しかったが、次は日本大会。お膝元での大会だから今まで以上に試合に打ちこめるだろう。

 次の目標日本大会3位は、決めて見せたい。数馬のためにも。


 日本までの飛行所要時間は大凡12時間。時差は・・・日本が8時間早いと言うのだが、俺には時差の概念がよくわからない。

 えーと、パリを夜の8時台に出発して羽田空港に着くのは午後3時台。

 寝るなと言ううことか?それとも、たくさん寝ろと言うことか?いや、着くのは夕方。着いてすぐ夜が待っているのだから、そこそこ寝とけと言うことで間違いないな?


 アメリカ大会でサンフランシスコに行ったときは、聖人(まさと)さんが全部教えてくれたから俺は言われるままに従っていたけど、今は数馬に頼り切りではいけないと思い、自分でできることは自分でやる習慣をつけている。

数馬と俺とのバディ風景は上下の格差もないし、お互いが対等。魔法科の方が優れているという考えは、俺は大嫌いだ。

 そうか、皆、数馬が魔法技術科でそれも休学留年しているから心の中で馬鹿にしているのかもしれない。


 どうにかして数馬の良いところを皆に知らせることができないものかと俺は思案していた。

 フランス大会でも、夕方4時から5時半までの予定で近くのレストランに足を運び祝勝会が開かれることになった。

 そこで数馬の良い部分を紹介できればいいんだけど。

 

 祝勝会では、毎度、試合に臨んだ選手の結果があらためて皆に知らされる。

 光里(みさと)会長は『バルトガンショット』3位。急にポジショニングが変わったのに、いつも上位にくるのは勿論努力もあるだろうが、元々の才能が物を言っているのだと思う。

 2年のホープでもある光里(みさと)会長。

 来年の全日本や薔薇6では、現1年のスーパー軍団を引っ提げて各大会のトップに君臨することは間違いない。

 Gリーグだって、リーグ戦突破できるかもしれない。

 なんたって、聖人(まさと)さんや逍遥(しょうよう)、サトルがいるんだから。


 あ、来年のことをいうと鬼が笑うといわれてるの知ってる?

だから、来年の夢想はここまでにして、フランス大会の結果に戻ろう。


逍遥(しょうよう)の『エリミネイトオーラ』はぶっちぎりの1位。亜里沙たちに、またいい報告ができることだろう。まったく、本気を出せばここまでできるのに、なぜ本気を出さないのか俺には不思議だ。ああ、還元とか言ったっけ。あれに『エリミネイトオーラ』は含まれていないのかもしれない。だから逍遥(しょうよう)は気を抜いたのか?俺には分らないところだった。


 南園さんの『スモールバドル』は3位。

俺は午後の途中から観戦していたのだが、南園さんはちょっと疲れが見えてきたのか、今回は順位云々よりも、よく最後まで身体がもったなという感じだった。

『スモールバドル』ではラケットデバイスが小さい分、細かな動きや大胆なスマッシュなどが求められ、第2セットの南園さんは足が動かなくなっていて見るに忍びない感じがした。


 沢渡元会長の『プレースリジット』は、堂々の1位。確かここまで1位の座を他国に渡していないのは沢渡元会長だけだと思う。素晴らしいファイティングポーズ。

 デバイスの使い方がこれまた秀逸だと聞く。沢渡元会長用に特化したショットガンデバイスを、若林先輩が精巧に組み上げたものらしい。

やはり、デバイスの出来不出来が試合を左右することもあるのだろうか。

でも沢渡元会長についてはその言葉は当てはまりそうにないが。


 今日は南園さんの試合を見たから、次の日本大会では沢渡元会長の『プレースリジット』を観戦してみようかな。あとで数馬に相談するか。


 俺は図らずも7位に沈み、祝勝会のメンバーの中には溜息を洩らす者もいた。

 しかし、そこで沢渡元会長が景気づけるように皆を鼓舞した。

「魔法を始めて半年余りの八朔(ほずみ)が7位入賞するのだから大したものだ。我々も次の日本大会、そしてイタリア大会を勝ち越してGPFに残れるように頑張ろう」

 そこで皆は俺に対しエールを送ってくれた。

 沢渡元会長、ありがとうございます。今まで散々な結果しか残せてないけど、GPFに残れるよう、次は頑張ります。



 皆の順位報告会が終わり、つかの間の自由時間になった。

 壁際に移った俺の元に、数馬がにこにこしながら近づいてくる。

 すると、急に数馬の影が揺れた。

 やべえ、またきた。

またしても眼の焦点が合わなくなり、ぐるぐると回りが高速回転する目眩(めまい)で俺は普通に立っていられなくなり、壁に背を付けてようやく立っていられるだけだった。

 おまけに、酷い耳鳴りと吐き気が俺を再度襲ってきた。吐きはしなかったのでレストランスタッフに迷惑をかけることは無かったが。


 立っているのが精一杯の俺だったが、数馬が「風のあるところに」というので、俺はちょっと冷たい風に触れるため外に出た。数馬の肩を借りながら。

 俺はそのとき気付いていなかったが、逍遥(しょうよう)聖人(まさと)さん、サトルや譲司は、その様子をレストラン内から見ていたらしい。かといって、皆が集まってきたわけではなかった。

 祝勝会に水を差すようなことをしたくなかったのだろう。


 夕方5時半になり会はお開きとなったが、俺は乾杯の席にいられない程症状が酷かった。外で風に当たっていたが、症状は一向に良くならない。俺は倒れないように(うずくま)るだけで精一杯だった。

 店の外でなんとか我慢して、レストラン内で預かってもらっていたキャリーバッグを数馬が運んできてくれた。2人分のキャリーバッグを持つ数馬に申し訳なかったが、もう、俺は何もできる状態ではない。

 そこに、姿を見せたのがサトルだった。数馬に俺のキャリーバッグを預けて、俺の身体だけ預かるから、と声を掛けていたようだった。

 

「海斗、大丈夫?じゃないよね」

「サトル?来てくれたのか」

「選手のサポート業務は生徒会の仕事でもあるからね」

「仕事で来たのか、つまんねえ」

「まさか。友人として君の様子を見に来たんだよ」


 サトルは俺の背中をさすりながらゆっくりとした歩幅で一緒に歩いてくれた。レストラン近くには紅薔薇高校専用の貸切バスが用意されていたので、一番最初に乗り込んだ俺。一番前の席に陣取って背もたれを倒して横になった。

皆が乗り込むまで俺は待たなくてはいけない。ほろ酔い加減のメンバーたちが集まるのが遅く感じられ、俺のイライラは頂点に達するほどだったが、イライラよりも目眩(めまい)や耳鳴りが酷く、ぐったりしていると言った方が正しかったかもしれない。

 

総勢が乗り終え各自がシートベルトをすると、バスは急ぎ空港を目指し走り出した。

夜の(とばり)が降りたパリ市内を走るバスの中では、皆が(はしゃ)ぎパリの面影を満喫しているように思われた。

俺だけだと思う、こんなにゲロゲロとした表情で、外も見ずに眼にホットタオルを乗せてるのは。


 空港に着いてからも搭乗手続きはサトルにお願いして、1人で行うことはCAさんの手を借りて。あとは完全にサトルに頼り切り。

 でも機内の座席は数馬と隣同士だったので荷物を預けた後、数馬はサトルと交代し、また俺の傍にいてくれた。

 日本までの12時間、また俺は飛行機内で苦しみ続け、ようやく眠ったかと思えばまた目を覚まして目眩(めまい)で周りがぐるぐると回りキーンという音が耳の中で木霊するような錯覚に捉われる。

俺は祝勝会で何も口に入れてなかったので、吐き気はすれども吐く物が無かったことだけが幸いだったかもしれない。

フランスで診察した際の目眩(めまい)止めなどを飲んだが効かず、生徒会の承諾を得てサトルに他者修復魔法をかけてもらったりもしたが、一向に病状は良くなることが無かった。


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