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異世界にて、我、最強を目指す。  作者: たま ささみ
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魔法W杯 全日本編  第4章

ミーティング室からでた俺と亜里沙、明は、校舎を出て寮に向かった。

 二人に連れられて来た道は、どこをどう曲がったのかわからない。まるで二人はこの世界にしょっちゅう来ているような行動っぷりだ。

 亜里沙と明は、寮の別部屋に宿泊しているという。

 最初そこに乗り込もうとしたが、亜里沙は女子の部屋には入れん!と騒ぐし、明は物が散乱していて部屋と呼べる代物ではないという。

 

 リアル世界でもそうだった。遊びに行くと、明の部屋はいつも何かが散乱していて床が見えたためしが無い。

 ほとんどが、洋服類や書籍類なのだが、たまーに、ほんとたまーに、食品類(お菓子類)だったりもする。それはちょっとまずいんでないか?

 今日も俺は明にプチ説教しながら寮まで連れだって歩いたのだった。

 

 しかしだ。そうとなれば、必然的に集まるのは寮の部屋ということになる。

 早速、寮の部屋に入り込んで茶話会を始めた。俺は酒が飲めないし、酒が飲める亜里沙や明としては不満だったろうが、この上、悪目立ちしたくないのだ。


「この部屋も変わってないよね」

「そうだな。ここが寮って言われて“は?”って。外出たら廊下で、びっくりしたよ。なんで俺だけ自分の部屋なんだろ」

「第3Gだからじゃない?」


 亜里沙は話を逸らし、昼間のことをちょっと馬鹿にしていた。

「もー、あんなに緊張してさ。ハラハラしたわ」

 明はこんな時でも優しい。

「俺があそこにいたとして、緊張するよ、入学したばかりで300人の前だモン」

 

 俺だって、好きで緊張した訳じゃない。魔法W杯全日本高校選手権、って何だ?と思ったのと、呼ばれたのが300人のうちの15名くらいだから、それにビビっちゃっただけだ。


◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 一晩亜里沙や明と語り明かしたが、亜里沙も明も、俺が魔法を使えないとは言わなかった。使えるとも言わなかったけど。


「やるしかないっしょ」

 亜里沙の言葉に明はうなずくだけ。

「そうだね、可能性には賭けてみないと」


 お前たち。

 やはり俺が魔法を使えないこと、知ってるだろ。その上で頑張れって励ましてるんだろ。

 腹ん中で笑ってるだろ。

 あーあ。明日から起きて魔法とやらの練習に勤しまなければならんのかと、本気の溜息をついた。


 翌朝。

 昨夜語り明かしたせいで、眠いどころの騒ぎじゃない。

 どうせ魔法なんて無理だし、また使えたとしても全日本高校選手権とやらで勝てるわけもない。


もう、紅薔薇高校とやらに行く気すら無くなった。

 恥をかくのは嫌だ。


 布団を頭から被って寝たふりをする俺。


 と。

 またノックする音。


 今日は誰が迎えに来たんだ。

 また、そっとドアを開ける。


「ギャッ」

 迎えに来たのは亜里沙だった。

「あんた、何てカッコで寝てんの!」


 俺は自分の着ている物を確認する。

 上半身裸。下半身・・・パンツがずり落ちそうになってる・・・。

「悪い、今日は出ないからよろしく」

「あんた、昨日呼ばれて選手になったんでしょ、魔法の練習しなきゃダメだよ」

「どうせ無理だよ」

「選手に選ばれたのに?」

「でも魔法なんて出来っこないよ」

「最初は皆できないって沢渡会長も言ってたじゃない」

「だって、魔法だぞ魔法。できたところで、試合に勝てるわけないっしょ。俺の中学時代までの運動神経、お前だって知ってるだろうが」

「どうせ、でも、だって。一番カッコ悪い言い訳だね」

「うるさい、誰が何と言おうが、俺は行かない」


 その時だった。

 ひゅうっと冷たい風が俺と亜里沙の間に流れた。

 ぞくっとするような冷気。


 足下を見ると、廊下からドライアイスのような白い煙が立ち上がっていて、それはまるで俺を包み込むかのようだった。

 上半身裸なのも一つの原因なのだろうが、寒くて凍ってしまいそうだ。

 とっさに感じとった。

 これは、決して良いものではないと。


「なんだ、これ」

 少々ビビッている俺に、容赦ない亜里沙の言葉が刺さる。

「魔法ってやつみたいよ」

「お前は寒くないのかよ」

「全然」


 まじめに、このまま凍傷で死ぬんじゃないかと思うくらい、足が固まっている。

 亜里沙に助けを求めたところで、こいつは何もできないはずだ。


 俺は魔法を操っている主に対し、観念した。

「わっかりました。行きます、行けばいいんでしょ」


 その声が届いたのかどうか、ドライアイスは即座に消え、辺りは暖かくなった。


 仕方なく、制服を着てヘアブラシで髪を直し部屋を出た。

 そうだ、洗面所。

 歯を磨かないと人前には出られない。出たくもない。

 俺の前を歩く亜里沙に声を掛けた。


「亜里沙、寮の洗面所はどこにある」

「廊下のつきあたり」

「来たばかりでよく知ってんな」

「まあね。身だしなみよ」

「明は?」

「もう出掛けた」

「勉強って何すんの」

「ここでは魔法の勉強みたいだよ」

「お前も明もサポートなんだろ。他の人が練習してる間はなにやってんの」

「普通の勉強」

「先生いるのか」

「いるよ、普通科あるもん」

「俺は普通科じゃないの?」

「あんたは魔法科」

「なんだよー、普通科で良かったのにー」


 こんなへらず口を叩いている間にも、紅薔薇高校の小奇麗な校舎は近づいてくる。

 また、昨日の緊張が思いだされて、手足がぎくしゃくしてきた。

 亜里沙にはそれがお見通しだったようで。

「今日、魔法科は体育館で練習みたい。あたしと明は先生いなくて自習だから、練習に付き合ってあげる」


 ナイスフォロー。


 と言いたいところだが、俺は性格が捻じ曲がっている。明と比べられて生きてきたせいだ。

「いらない、付き添いなんて」

「何言ってんの、知らない人しかいないとこであんたが練習するとは思えない」


 ぐさっ。まさに胸に刺さるお言葉。

「まあ、なんだ。正直いえば、他人ばかりのとこで醜態しゅうたいさらしたくない」


 紅薔薇高校の校舎は、東西南北の4つに分れている。1年生は南校舎、2年生は東校舎、3年生は西校舎。そして1階は普通科、2階は魔法技術科、3階は魔法科になっている。

北側校舎には教員室と実技室、生徒会室、ミーティング室等がある。体育館と講堂は別棟になっており、渡り廊下で繋がっている。

 校舎ごとに昇降口があり、登下校の際には違う学年の生徒とすれ違うことは滅多にないが、各校舎が交わるところに購買や食堂があるので、昼のひととき購買戦争などが見られるのは、どこの高校も変わりはない。

 

 というわけで、亜里沙と一緒に校舎に入り魔法科の教室を探した俺。

やっと3階の教室を探し当て、教室内のロッカーにカバンを入れたあと、コマ割を見た。

1コマは体育館と書いてある、ただそれだけ。

仕方なく、南校舎の昇降口を出た俺と亜里沙は急いで体育館へと向かった。

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