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異世界にて、我、最強を目指す。  作者: たま ささみ
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魔法W杯 全日本編  第33章

ミーティングを早めに切り上げて、俺たちは3年の先輩方の応援に行くことにした。

 今日の種目はラナウェイなので、PVで観るしかないのだが。

 それでも各校の応援団は吹奏楽演奏あり、チアダンスあり。

 神奈川県総合体育館に設置されたPV会場はお祭り騒ぎになっていた。


 沢渡会長、勅使河原先輩と九十九先輩がタッグを組んで、優勝しないわけがないと思うのだが、3年の試合はやはり違う。

 各自のポジションであったり連携であったり。

 1年の俺たちは、優勝したとはいえ、まだまだ連携が足りないのだと痛感させられた。


 ベスト8を決める対戦の相手は黄薔薇高校。

紅薔薇の姉妹校だが薔薇6対抗戦ではいつも下位に沈んでいると聞いた。それでも、全日本高校選手権では毎年のようにシード校で勝ち上がってベスト8に顔をみせているのだそうだ。

 確かに、紅薔薇と比べれば地力には劣るかもしれないが、紅薔薇をラインにしてはいけない。紅薔薇高校は、強すぎる。

沢渡会長たちはどんな相手でも全力で向かっていくため、試合を取りこぼすとは考えにくかった。


 予想通り、10分ほどで相手3人を仕留め、紅薔薇はベスト8に勝ちあがった。



 準々決勝の相手は白薔薇高校。

 姉妹校との対戦が続く。

 白薔薇高校は薔薇6対抗戦でも結構いい成績を残しているらしく、今回の目標は「全日本優勝」なのだそうだ。

 今年の3年生は白薔薇高校史上最高とも言われているのだという。


 2時間後、試合が始まった。

 予想では紅薔薇有利だったのだが、ことのほか白薔薇戦士たちの活躍が目立ち、勅使河原先輩と九十九先輩がショットガンの餌食になってしまった。

 かなりピンチの紅薔薇高校。

 それでも、魔法力で圧倒的優位に立つ沢渡会長は、うまい具合に隠れて魔法陣を作っては相手の思わぬところで姿を現し、次々と敵を葬り去る。

 結局、沢渡会長がハットトリックを決め、紅薔薇高校は逆転勝ちしベスト4に駒を進めた。



 1時間後に、準決勝が始まった。今度の対戦は京都嵐山高校。

 昨年の準決勝カードだ。

 さすがに紅薔薇高校のポジション取りは堅実かつ一転して攻撃に移れるような布陣をしいており、京都嵐山高校に圧力をかけていく。

 しかし、デバイスの技術は高かったし、選手互いのターゲットを別々に設定するという変わった連携の仕方で、沢渡会長たちも面喰ったようだった。

 最後はバラバラに動いていたこちら側の3人が一カ所に集まり敵を騙し、一気に爆発させる戦術を成功させた。

焦った京都嵐山高校の裏をかき、30分ギリギリで勝負はついた。


  

 早いもので、試合は決勝を残すのみとなった。

 今年は札幌学院高校と優勝を目指して争う。

 札幌学院の選手は皆、走り込みを続けているらしく、逃げ足がとても速い。笑いごとではない。逃げる戦法というものがあるのだ、と俺は初めて知った。

 追いかける紅薔薇高校は、焦りも手伝ってか、九十九先輩が相手の術中にはまり、最初にショットガンを足に撃ちこまれた。

 と、驚くべきことに、札幌学院と同じように、紅薔薇も逃げる策を巡らしてきた。

 一時は膠着状態こうちゃくじょうたいに陥るかと思われたが、そこは沢渡会長。

 逃げると見せかけて相手を観察し、的確な指示のもとに勅使河原先輩がショットガンを放っていく。

 引き分けに終わるかと思われたその時、沢渡会長と勅使河原先輩が同時に敵を仕留め、紅薔薇高校3年生は、見事ラナウェイで優勝を飾った。



「やった!」

 PVの前で、俺たち紅薔薇高校のユニフォームを着た選手団が歓喜の声をあげた。皆、飛び上がって喜んでいる。

 もしかしたら、俺たち1年生の新人戦のときも喜んでもらえたのかなと思うと、素直に嬉しい気がした。


◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 その晩は、宿舎の食堂でラナウェイの試合が全日程を終了したということで、祝勝会が開かれた。

 2年は準優勝、1年新人戦と3年は優勝。総合優勝に向けて幸先の良い一歩を切ったと先輩たちも喜んでいた。

 皆でジュースを持って乾杯をする。乾杯の音頭は、沢渡会長が務めた。

「ラナウェイの競技が終了した。選手、サポーター、生徒会役員のみんなが一体となって掴んだ結果だ。今晩はこの余韻に浸り、明日から気持ちを切り替えてまた頑張ろう、乾杯!」

「乾杯!!!」


 俺は食堂の隅で1人ひっそりとたたずんでいた。

 逍遥や譲司は2,3年生の先輩に呼ばれ輪の中に入っていった。南園さんや瀬戸さんも五月七日さんと女子連中で固まって食事を摂っている。


 まさか、ここでアンフェタミンを食事や飲み物にいれる馬鹿もおるまい。

 八雲くんは相変わらず3年生の先輩たちに媚を売って、笑いながら話している。

 岩泉くんは自分が沢渡会長に嫌われていることを誰からか聞いたのだろうか、食堂には姿を見せなかった。

 

 姿が見えないと言えば、1年サポーターの3人、絢人、亜里沙、明は、明後日のプラチナチェイスしか競技が残っていないにも関わらず姿が見えない。3年生の競技に駆り出されているのだろうか。

なんとまあ、人使いの荒いこと。


 というわけで、俺はのんびりと夜食になる物を近くのテーブルから取って食べていた。別に、1人でいても気にならなくなった。

 成長したのか、なんなのか分らないが。


 そのときだ。

また、刺すような視線が俺の背中に突き刺さった。慌てて周囲を見渡すが、誰も俺の方を向いているものはいない。

 気のせいか?

 いや、違う。

 以前朝に食堂で感じたものと同じ。

 たぶん、視線の主も、同じ。


 俺は身震いがして、気持ちが悪くなった。

 今ならこっそりと自分の部屋に帰っても大丈夫だろう。

 食堂を出ようとした俺。

 すると、ぬっと誰かの腕が伸びてきて、俺は右腕を掴まれた。

「ぎゃっ!」

「ギャッはないだろう、前を見て歩け」

 それは沢渡会長だった。

「どうした。帰るのか」

 俺は本当のことを言っていいものかどうか悩んだ。折角の祝勝会。

 

・・・事実をいうのは止めた。

めでたい席で辛気臭いことをいうのははばかられた。辛気臭いと言うのは方言なんだろうか。そんなどうでもいいことが頭の中を駆け巡る。

「少し疲れたので。部屋に戻ってもいいでしょうか、」

「そうか、ゆっくり休め」

「はい、ありがとうございます。では、失礼します」


 もう、あの視線は感じない。

 俺は早々に食堂を抜け、303の部屋に戻った。

 ユニフォームからジャージに着替えると、ベッドに倒れ込む。

 もう、気持ち悪さはない。


 俺が今考えるのは、あの視線の主。

 誰だ。

 1年生だとばかり思っていたが、違うのか。

 しかし、2,3年生に恨まれる理由が見つからない。入間川先輩ならまだしも。

 八雲くんなら俺を恨む理由もあるが、彼はずっと先輩方の中で談笑していた。

 女子たちは俺を恨むもくそもないだろう。

 逍遥や譲司。仲良くなるふりをして・・・というのはあり得ても、あの2人は当てはまらないような気がする。

 残るは岩泉くん。もしかしたら、一度食堂に来たのかもしれない。それなら話は早いんだが。


 考えても仕方ない。

 国分くんを陥れた犯人は、次に俺か譲司あたりを狙いたいのだろうか。

逍遥はレベルが余りに違い過ぎる。近づけば、逆に返り討ちに遭うに決まっている。

 

 こんなとき、どうすれば・・・。

あ。

透視を使えばいいのか。

岩泉くん、悪いが君の部屋を透視させてもらうよ。

俺は308の彼の部屋を目掛けて右手で丸を描いた。

 頭の中に、岩泉くんの様子が浮かぶ。

 岩泉くんは失意のどん底にいるように見えた。目はうつろで、覇気はきがない。

 それもそうだ、サブとして名を連ねたはずなのに、実力は逍遥よりは劣るものの一定水準を上回っているはずなのに、試合には一切出してもらえなかった。サブ以外の八雲くんまで試合に出場したというのに。

 自分で馬鹿な真似をしたことを反省しているのだろうか。それとも・・・。

「岩泉くん」

 俺は自分でも知らないうちに、彼に向かい語りかけていた。

「誰?どうして声が聞こえるの?幻聴?僕はどうかしてしまったの?」

「違うよ、岩泉くん。八朔だよ」

「八朔くん?どうして君の声が聞こえるの」

「僕にもよくわからない。離れた人と会話できるようになったみたい」

「離話できるの?君」

「どうやらそうらしい。君も離話できるんだね」

「僕の得意魔法だから。離話してるということは、透視してるんでしょう?」

「ああ、そうだ。君に聞きたいことがあるんだ」

「何?サブなのに試合に出れなかったこと?」

「違う。それ以前の問題だ。君は本当に薬物入りのドリンクやサプリを用意して他の1年の子に渡していたの?」

 

 岩泉くんは、はっとした表情で俺の方を見たが、質問に対する答えは無かった。

 それは罪を認めたも同然だった。

 俺としては、岩泉くんを責めるつもりは毛頭ない。

「そうか。なぜそんな真似をしたんだい」

 おどおどとした目を、こちらに向ける岩泉くん。

「試合に出たかった。僕ならスタメンになれると思っていたから、魔法力の強い人を排除したかった」

「排除、か。君の愚かな行為が、今は君の首を絞めている。君はこんなに力があるのだから、正々堂々としていればいいんだよ」

 俺は優しくいったつもりだったが、言葉にとげがあるように感じたらしい。

「どうせやったってやんなくたって、沢渡会長は僕を嫌っているんだ。だから試合に出れない」

「そんなことはない。会長の前で全て話し謝罪したうえで、もうあんな真似は止めるんだ。そして魔法に磨きをかけることだけに専念すると約束して」


 俺の言葉にやっと素直に反応した岩泉くん。

「・・・君はどうしてそんなに優しいの。皆、僕を嫌っているのに」

「第3Gだから。皆のことを平等に見れるんだよ」

 やっと、岩泉くんの目に希望の灯りが灯ったように感じた。

「今からでも間に合うかな、皆、僕のことを信じてくれるかな」

「やってみないとわからない。でも、君には実力がある。これだけは確かだ。だから、もう周りに気を遣うのも排除するのも止めて、自分のことだけ考えなよ」

「どうすれば自分のことだけ考えられるの。僕にはわからない」

「魔法力を強化することだけに集中すればいい。きっと実を結ぶから」


 しばらくの間、岩泉くんは黙ったまま、前を向いていた。

 そして、コクンと頷いた。

「うん、君を信じてやってみる」

「岩泉くん。1人になる怖さを克服するんだ。1人でも歩いて行けるように」

「君はどうしてそう強いの」

「1人になる怖さを克服したのは確かだ」

「そうなの?もし、僕が不安を感じたら離話していい?」

「もちろん。今日はゆっくり休もう。陽はまた昇るから」

 

 俺は岩泉くんとの離話を終わらせ、またベッドに転がった。


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