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異世界にて、我、最強を目指す。  作者: たま ささみ
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魔法W杯 全日本編  第32章

俺と逍遥の2人は、そこそこに朝食を食べて食堂を出た。

「あー、怖かった―」

 怖がる俺に比べ、逍遥は全然動じていない。

「上級生と下級生の示しをきちんとつけろ、ましてや命令に従えという考え方には賛成できないね、僕は」

「俺は今も膝が笑ってる」

「海斗はヘタレだ」

「まあ、そんなところだ。ところで、南園さんたちを呼びに行くか」

「海斗は女子をお願い。僕は栗花落くんの部屋に行くから」

「OK」

 俺は逍遥と別れ階段を上がって4階に行く。4階は女子の部屋が並んでいる。

 だがうっかりしたことに、南園さんや瀬戸さんの部屋番号を聞いていなかった。仕方なく、部屋に記されている名前を頼りに4階をうろうろしていた。

 しかし、なんというか、恥ずかしい。

 女子だらけの階に男がいるって、違和感ない?


「海斗!」

 突然後ろから響く、亜里沙の声。俺は飛び上がらんばかりに驚いた。

「亜里沙。お願いだから吠えるのは勘弁してくれ。そういや、しばらくぶりってやつだな。この階にいる南園さんと瀬戸さんの部屋、一緒に探してくれよ」

「いいよー。なんか今日はいつもの海斗だね」

「なんだ、その『いつもの海斗』ってのは」

「リアル世界のあんた、ってこと。こっちにきてからずっと仮面つけてたじゃない」

「突然知らないところに放り込まれて『いつもの俺』は、なかなか難しいさ」

「そうかなあ。あんたヘタレだもんねえ」

「それはまたあとにしてくれ、亜里沙。頼むから一緒に探してくれよ」

「南園さんは407、瀬戸さんは410よ」

「すげっ、なんですぐ出てくんの」

「デバイス調整を各部屋でしてたから覚えてんのよ。あたしが呼んできてあげようか?」

「・・・頼む。女子の部屋ノックする勇気は俺には無い」

「まったく。ヘタレは治んないんだから」

「頼むよー」

「はいはい、ここで待ってて」


 階段の踊り場に降りて、亜里沙たちが来るのを待った。

 2,3分して、まず亜里沙が顔を出す。

「2人ともユニフォームに着替えてから来るって。301に集まるんでしょ?話しといたから、最初に301に行ってなよ」

「いつにも増して鋭いな」

「あんたの考えることは、ほとんどお見通しよ」

「13年くらい一緒にいるんだっけ」

「12年じゃない?保育園デビュー、あたしの方が遅かったはずよ」

「俺は1歳には預けられてたからな。母さん直ぐ学校に復帰したし」

「3年の休暇取るのもアリなんだけどね、今じゃほとんどの先生が3年休暇もらってるよ」

「わかんないな、母さんの考えてることは」

「ま、そのお蔭で早々に、あたしとあんたと明は出逢ったわけだ」

「そういうことになる」


 亜里沙と話すのも久しぶりな気がする。

 飛行魔法のデバイスは俺用にチューンナップされたものを以前明から受け取っていたし、ショットガンは絢人から受け取った。マルチミラーは先輩から受け取ったし。

 マジックガンショットやロストラビリンス、ラナウェイはギャラリーなしの試合だった。もちろんセコンドにサポート役がつくこともなかった。

「そういえば、絢人とお前が話してたショットガン、あれって何かミスあったのか?」

「ううん、違う人のを持ってきただけ」

「なんだ、結構意味深だったから何かあるのかなーって思ったのに」

「考え過ぎよ。あんたの悪い癖」

「確かに」


 亜里沙とのお喋りは、一旦休止となった。南園さんと瀬戸さんが相次いで階段を下りてきたからだ。

 2人の登場とともに、亜里沙はどこかに姿を消した。

「お待たせしてごめんなさい、八朔さん」

「こっちもごめん。着替えるのに手間取っちゃって」

「いや、構わないよ。亜里沙と話してたから」


 南園さんは俺の言葉をさえぎるように自分の言葉をかぶせた。

「301で四月一日さんたちが待っているから行きましょう」


 俺たち3人は301の部屋の前に並んで、南園さんがドアをノックする。

 中から逍遥の声が聞こえた。

「どうぞ」

 部屋に飛び込む3人。

 中には逍遥と栗花落くんがいた。

 逍遥は本当に攻撃耐性の話をするつもりだったのか。俺はまた、先輩方に対するあてこすり、とまではいかないが、アリバイ作りなのだとばかり思っていた。

「ようこそ。ラナウェイのPVは9時からだろう?それまでここで策戦会議といこうじゃないか」

「遊撃の栗花落くんと海斗はとにかく運動量が半端ないから、魔法が途切れないようにしてくれ」


 栗花落くんが初めに気がついた。

「四月一日くん、海斗って、もしかしたら八朔くんのこと?」

「そうだよ、僕は逍遥」

「なら、僕も仲間に入れて。譲司って呼んでよ」

「OK、譲司。海斗もOK?」

「もちろん」


 女子が目を輝かせている。

 瀬戸さんが特に。

「なんか男の友情みたいな感じ!」

 俺たち男子勢は、恥ずかしさも手伝ってか、あははと大口を開けて笑った。

「あたしは?綾乃、って呼び捨てにしてもらってもいいけど、ダメ?」

 逍遥は断り方もスマートだ。

「女子を呼び捨てにするのはちょっと、ね。なにか前時代的な支配みたいなものを感じるんだ。名字で呼ぶことで尊敬の念を表したい」

「瀬戸さんは呼びやすいけど、私は南園なんて呼びにくい名字だから、遥でもいいですよ」

「うーん。尊敬の念は平等であるべきだから」


 瀬戸さんはただでは引き下がらない。

「でも、あたしたちが逍遥くんとか海斗くんとか譲司くん、って呼ぶ分には構わない?」

「それはもう。呼び捨てで構わないくらいだ。特にプラチナチェイスでは余程強い魔法を使える人しか離話ができないから、叫ぶしかない」


 俺は離話という言葉を初めて聞いた。

 たぶん、沢渡会長が601から話しかけてきた、アレだ。

「離話って、透視したときに話したりできるやつ?」

「そう。よく知ってるね、海斗。海斗の力があれば、離話も夢じゃない」

 俺は首を左右にブンブンと振る。

「遊撃の動きが激しかったら、話す暇も精神力もないよ」

「問題はそこだけさ」


前にも説明したかな。陣形とは、先陣と後陣を水平垂直に見て菱形の部分を指す。

 遊撃に出る俺と譲司は魔法が途切れないようにすることが第一の課題。魔法を常時注入すれば特に問題なく飛んでいられるという。

 後陣の南園さんは(俺としては遥さんと呼んでもいいんだが)、敵の先陣を退けることが最大の任務だが、同時に俺たちの陣形が崩れないようにバランスを取らなくてはならない。

 どちらに重きを置くかといえば先陣を退ける任務なのだろうが、陣形のバランスは非常に重要で、陣形を崩すとチェイサーの動きが止められてしまう。

 攻撃耐性について、影響を受けやすいのは先陣。先陣はベストポジションに仲間を率いていく頭領だ。プラチナボールを誰よりも早く見つける技術も必要になる。

 チェイサーは陣形を把握しその中でのみラケットでプラチナボールを捉まえることができる。

 プラチナボールを陣形から出さないようにするのは遊撃の仕事だが、チェイサーは捕まえなくてはならない。これがまた重労働で、俺なんぞ、チェイサーは100年かかっても務まらないと思う。

 

 簡単なようでいて、30分の制限時間内に捕まらないこともしばしばだ。

 だからこそ、六月一日先輩の言った「学校の威信をかけた競技」になり得るのだろう。

 メインスタジアムで行われる競技なのでギャラリーも多い。

 飛行しながら行う競技ゆえにセコンドの意見は聞けない。

 まったく。

 スタメン5人全員参加というのが、俺にとっては一番辛いことだ。

 八雲くん以外なら、誰かに変わってほしいくらいだ。


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