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異世界にて、我、最強を目指す。  作者: たま ささみ
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魔法W杯 全日本編  第30章

これで俺たち1年生の出場する新人戦は、4日後のプラチナチェイスを残すのみとなった。

 今のところ、アシストボールが初戦敗退しただけで、他の競技は軒並み優勝している。新人戦の優勝もあり得るかもしれない。

 そういえば、八雲くんはプラチナチェイス出るんだっけ・・・。彼さえいなければ、何とかなるような気がするんだが。


 そういえば、俺如きが今更生徒会役員室に顔を出すのも気恥ずかしいし、如何なものか。

が、プラチナチェイスに誰が加わるのか、それには興味がある。って、メンバー忘れただけなんだけど。

俺は宿舎の廊下をぶらぶらと歩いていた四月一日くんに声を掛けた。

「四月一日くん、プラチナチェイスって誰がサブで入るんだっけ」

「栗花落くんだよ」

「あー、良かったー」

「あ、それ、問題発言」

「そ、そう?」

「嘘だよーん。八雲なんて出したら負けるに決まってる。見た?アシストボール」

「ベンチで見てたよ・・・災難だったね・・・」

「まったく。自分本位な人間に大会出られると困るんだよ、実力が伴ってないなら、なおさらのこと」

「実力なら、お、いや、僕だってないと思うけど」

 いつも俺は『俺』と言い出しそうになって慌てて『僕』に修正している。

 四月一日くんは俺の言葉遣いの悪さに気が付いていないようだけど。

「君はこれからズンズン伸びていくと思うよ。特に、デバイスを必要としない魔法で」

「例えば?」

「飛行魔法」

 四月一日くんは、にまっと笑って、その場で若干浮き上がる。

「君の才能は、デバイスだけで計れるものじゃない。君に自覚はないだろうけど」

「まーた、冗談ばっかり」

「僕はね、冗談は好きだけど嘘は嫌いなんだ」


 四月一日くんは一瞬苦々しげな表情に変わったと思ったら、地上に軽々とした足取りでトン、と舞い降りると、スタスタと廊下の奥へ歩き出す。そちらには、俺たちの部屋と階段がある。でも、部屋の前を通り過ぎる四月一日くん。

もしかして、生徒会役員室を兼ねた601に行くのか?

 でも、俺がついて行ったところで、何も言うこともなければ聞きたいこともない。

 2年の先輩方は、ほとんどの種目で優勝していたし、1年だって今の段階でアシストボール以外は優勝している。

 あとは明日から始まる3年の競技と各学年のプラチナチェイスを残すのみだ。


 俺は四月一日くんの背中をノックして声をかけた。

「じゃあ、ここで。僕は部屋に帰るよ」

 四月一日くんはちょっと不機嫌そうな口元で俺を誘う。

「今から601に行くんだ。君もこないか」

「邪魔になるよ」

「いや、君がいた方が沢渡会長も機嫌が良い。今年の第3Gは大活躍だからね」

「ということは、沢渡会長の機嫌が悪くなることを言いに行くんだ」

「当たり」

「何かあったのか」


 四月一日くんは後ろを振り返り、俺と目を合わせた。

「沢渡会長がなぜ八雲を目に掛けるのか聞きに行くのさ。一応、サブで栗花落くんが入ることに決まったのは確かだけど、いつ八雲がおべんちゃらを使ってスタメンに入り込むか。僕たちスタメンだって、試合当日に八雲と交代させられるかもしれない」

 四月一日くんは、どうやら八雲くんのことを心の底から嫌っているふしがある。

 ああ、そうだよね、あの感じじゃなー。

 俺も以前、501の沢渡会長の部屋を透視したことを思い出した。

「いいよ、僕も一緒に行く」

「ありがとう、心強い」


 かといって、俺は沢渡会長がとても怖い。

 威圧感というか、存在感というか。

 こう、会長の前に出ると蛇に睨まれたカエルみたいに。

 でも、俺の存在が四月一日くんにとっての盾になるなら、傍にいてあげようと思う。


 俺たちは6階まで階段で上がり、601の目の前に立つ。

 生徒会役員室。

 2年の生徒会副会長は六月一日くさか先輩に代わった。

入間川先輩の話はどこにも出てこない。普通科に転科して、退学したのだろうか。それともまだ、何か再浮上するための秘策を練っているのだろうか。


 俺の心の準備が整わないうちに、ドアをノックする四月一日くん。

「入れ」

 沢渡会長の声だ。今は若干落ち着いているようにも聞こえるが、バトルとなると、会長は物凄く怖くなる。


「四月一日か、どうした、こんな時間に」

 沢渡会長を中心に、六月一日副会長、三枝副会長、南園書記、弥皇企画広報部長が揃い踏みだった。


 四月一日くんは、迷っているようにも見えたが、その実、効果的なフレーズを頭の中でシミュレーションしているのだろう。

「沢渡会長、夜分に失礼かとは存じましたが、性急なお願いがあり伺いました」

「今、明日から始まる3年の策戦会議を行っている。用件を手短に言え」

「4日後のプラチナチェイスの1年出場組のことです」

「それが何か」

「スタメンは僕、四月一日とこちらの八朔くん、南園さん、瀬戸さん、栗花落くんで間違いないでしょうか」

「そのつもりだが。栗花落の状態を見て、八雲と交代させることは考えていたが」

 四月一日くんは少しムキになってきたのが見て取れる。

「サブメンバーから、八雲くんを除いてください」

 でた。直球勝負。

 沢渡会長は鋭い目つきで四月一日くんと俺を睨む(ように見えた)。

「理由を言ってみろ」

「アシストボールでの惨敗は、ひとえに彼の暴走に寄るものでした。ベンチにいらした会長ならお気付きになられたかと思います」

「確かに。だが、お前と瀬戸にも問題があったのではないか」

「僕と瀬戸さんがどんなに声をかけても、八雲くんは応じませんでした。それ以上、何をどうしろと仰るのですか」

 四月一日くんは暴走一歩手前だ。俺が何とかしないと、会長から雷が落ちそうな予感がする。

 と、沢渡会長の隣にいた六月一日くさか副会長が、会長に声をかけた。

「会長、この二人の言うことも一理あります。会長もご覧になっていたように、アシストボールの結果は散々なものでした。戦犯が誰であったとしても、策戦を練り直さなければならないのは確かです」


 沢渡会長は、六月一日くさか副会長を信頼しているのだろう。少し雷雨顔ではなくなった。

「六月一日。お前ならどうする」

「プラチナチェイスは学校の威信をかける競技。八雲くんの能力では、プラチナチェイスを勝ち残るのは難しいでしょう。アシストボールを見る限り、団体戦に強いフィジカルの持ち主では無さそうなので、ここは外してはいかがでしょうか」

「団体戦か、なるほど、そうだな。では、マジックガンショットやラナウェイならどうだ?」

 六月一日副会長は首を横に振ったまま、数秒黙り込んだままだったが、少し困ったような顔をしながら沢渡会長の問いに答える。

「マジックガンショットはまだしも、ラナウェイは3人が相互協力しなければなりません。2年生の結果もご覧になられたはず」

「そうだったな、それなら、薔薇6でマジックガンショットにでも出してはどうだ」


 四月一日くんが、沢渡会長に向かって吠えた。

「ああいう人をスタメンとして出されたのでは、1年全体の士気が下がります。今後一切の競技から外してください」

 六月一日副会長と話していた沢渡会長は、溜息をつきながら四月一日くんに目を向けた。

「よほど1年から嫌われているようだが、なぜだ」

「単純な答えです。彼には実力がありません」

「八朔よりは実力があると思うが。そうだとしても、お前たちは八朔を選ぶのか」

「もちろんです」


いやー、会長に言われちゃったよ、八雲くんより実力ないってさ。

 ちょっとがっかり。

 俺をこっちの世界に引っ張ったのは会長、あんたでしょうが。


 沢渡会長VS四月一日くんのバトルは続く。

「四月一日、なぜそう思う」

「八朔くんはこちらに来てまだひと月ほど。その間の上達は目を見張るほどです。八雲くんとは比べ物になりません。その上に、八朔くんには仲間を大事にする心が備わっています」

「仲間を大事にする心、か」

 

 何を考えているのか、沢渡会長は真下に目線を落とし、それ以上言葉を発しようとはしなかった。

 とってつけたように、六月一日副会長から説明がある。

「もうサブメンバーは事務局に出してある。今更変更はできないが、プラチナチェイスに出るかどうかは、僕に任せてくれないか。今、3年の競技について最終判断をしているところなんだ。ここはもう収めてくれ」


 四月一日くんはようやく引き下がるような態度を見せた。

「お忙しいところ失礼しました」

 俺は何も喋る気もないし、これで帰れる。

 

 生徒会役員室という伏魔殿を、俺は逃げだしたい気分になった。

「帰ろう、四月一日くん」


 四月一日くんの腕をとる。

俺たち二人は、601を後にした。


◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 二人とも無口のまま3階に降りて、301の部屋の前に差し掛かったところだった。

「ちょっと僕の部屋で話さないか。南園さんは601に居るから無理として、瀬戸さんや栗花落くんも呼んでプラチナチェイスの攻撃耐性について話しあおう」


 え。この上、まだやんの?

 そう思ったものの、四月一日くんの真顔を見ているとごめんなさい、俺は寝ます、とは言えなかった。

「もう寝る時間だよ。他の人に声掛けするのは明日でもいいだろう?僕が付き合ってあげるから。ほら、君の部屋に入ろう」

 鍵を回してドアを開けながら、歯ぎしりしてる四月一日くん。

「済まない。八雲のことを考えただけで頭が沸騰しそうになるんだ」

「随分とまた目の敵にしてるね」

「おべっか使われると皆騙されるのかね、僕は嘘つきが嫌いだ。あいつのような嘘つきは最低だ」


 かなり怒りを増幅させている。

 普段は、本当に本当に冷静な四月一日くん。

 何が彼をここまで駆り立てるのか。


 ああ、国分くんの犯人は、まだ見つかっていなかった。

「もしかして、国分くんのこともあるの?」

「僕は奴が犯人だと信じて疑わない。学校の食堂が犯行場所だとするならば、奴は知らないふりをして犯行に及ぶことができる」

「でも、例えば岩泉くんとか五月七日つゆりさんとか栗花落つゆりくんだって、サブからスタメンになりたくて犯行を思い立つ、ってのはあり得る話じゃないか」

「そうだね。犯人は誰が薬物検査で引っ掛かろうが、どうでも良かった節はあるから」

「まあ、それは今考えるには時間と証拠がないからだけど。僕も八雲くんがあそこまで先輩に媚を売るなんて思ってもみなかったのは確かだ」


 珍しく、四月一日くんの目がつりあがってる。これは、かなりご立腹と見た。

「僕はね、八朔くん。嘘つきも嫌いだけど、媚を売る奴が世の中で一番嫌いなんだ」


 うーん、これを言ってもいいものかどうか悩んだ俺。

 四月一日くんは誰よりも魔法が自在に使いこなせるから、魔法力が半端ないから、媚を売って自分をアピールする輩を許せないのだと思う。魔法力が無い人間と同等の考えに至らないということは往々にしてあり得る。

でも、俺は四月一日くんの裏側を知らない。もしかしたら、そこには人に言えない努力が隠れているのかもしれない。決して天才ではないのかもしれない。

 そう考えると、むやみやたらに四月一日くんを刺激してもなあ、と感じる。


「もし変な動きがあっても、六月一日副会長が沢渡会長を止めてくれるだろうさ。僕たちにできることは、プラチナチェイスで優勝することだけだ」

 四月一日くんは、やっと怒りを収めつつあるように見えたが、まだ、吠える吠える。

「そうだね、あいつが出てきたとしても、遊撃しかやらせない。チェイサーやりたいなんて言い出しかねない奴だから。でもやっぱり嫌だ。あいつとは二度と一緒に競技をやりたくない。この4日間で栗花落くんが怪我でもしたら、次は岩泉くんか五月七日さんを投入してもらうよう直訴する」


 遊撃しか・・・って、俺も遊撃だよ。

 遊撃のポジションを下に見るのは止めてくれ。

 そんな簡単なことに気が回らない程、八雲くんの卑劣なやり方に憤怒しているのだろうか。


 なんか、段々面倒になってきた。


 俺は、どちらかといえば自己肯定の度合いが低い。

 沢渡会長といい、四月一日くんといい、彼らの言動で元々高くない俺の自己肯定感を木端微塵に砕かれたような気分になったのは確かだ。

 疲れた。

「今日はもう寝ないか。明日皆で集まって、攻撃耐性を話し合おう」

 俺の言葉を聞き、四月一日くんは、やっと大人しくなった。

「そうだね、引き留めて悪かった」


 やっと自分の部屋に戻ることのできた俺。リアル世界の俺の部屋鍵を使って303の部屋に入ると、すぐさまベッドに身体を投げ出した。


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