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異世界にて、我、最強を目指す。  作者: たま ささみ
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魔法W杯 全日本編  第29章

早いもので、2時間などあっという間だった。

 ベスト8が出揃い、ベスト4を決定するための準々決勝が始まった。

 俺たちが戦う場所は、先程と同じ第1アリーナ周辺。

 試合相手は、稲尾高校。


 建物など障害物のあり処は頭の中に入っている。右脳が発達している(と思われる)俺は、一度見たら右脳にその景色が3Dで蓄積されるという不思議な特技を持っている。


 開始寸前、まだ皆が一緒にかたまっている時に、四月一日くんが俺と栗花落くんに向けて囁いた。

「ゲリラ戦にはゲリラ戦を」

 そうして、右目でウインクする。

 いつでも四月一日くんは強心臓だ。


 稲尾高校との試合が始まった。

 相手は、隠れたり姿を見せたりと、ゲリラそのもの。

 しかし、俺は建物の構図が頭に入っているので、隠れやすい場所を四月一日くんたちに教えつつ魔法陣を使いながら敵に寄っていく。

 四月一日くんや栗花落くんも、魔法陣で止ったり走りだしたりしながら、俺が敵をほぼ一カ所に集める戦法を取る。


 そのときマルチミラーがキラキラと光った。四月一日くんからの合図。

 俺と栗花落くんは、逃げようとする稲尾高校の選手を次々にショットガンで撃つ。

 相手は一気に3人とも落ちた。

 

ゲリラ戦にはゲリラ戦を。

 俺の特技が活きた形で、さほど苦労もなく勝敗を決することができた。

 頭の中に建物の3Dイメージが構築されることは大事だ。地図みたいな2次元では、高さと影という大事な要素が右脳に蓄積されない。


 でも、なぜか俺は方向音痴だ。

 地理が右脳に蓄積されるならば道に迷うはずもなかろうに。

 なぜなぜ時間に突入しそうなので、考えるのは止めるとするか。

 1時間後には準決勝があるのだから。


◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 準決勝の相手は札幌学院高校。

 昨年の決勝カードだという。

 でも、新人戦は全くもって相手の力が違うわけで、昨年のカードをどうこういってみても、今年度相手が強いとは限らない。何しろ、中学生から高校生になったばかりなんだから。

 準決勝まで残るくらいだから、相当手強い相手であることに変わりはないのだが。


 今回の場所は、第2アリーナ周辺。

 先程までとは景色が違う。

 俺の右脳特技は使えない。


 3人が揃った状態で試合が始まる。

 そこから分れ、俺はアリーナ脇にある街路樹に挟まれた通路で、マルチミラーを覗き込んでいた。

 もちろん、俺自身、魔法陣を自分の足に掛けている。


 相手は常に走り回っているように感じた。くみしやすいと言えば与しやすい。

ミラーに映った相手の影は誰一人魔法陣を使わずに、こちらへの攻撃は枚挙まいきょいとまが無い。ショットガンでの攻撃がものすごい数だ。下手に姿を見せると、蜂の巣になりかねない。

 こちらが魔法陣で耐えているからこそ、成り立つ戦法だった。


 どう攻略するべきか。

 すれ違いざまに四月一日くんが囁いた。

「試合を引き伸ばして、相手の魔法力を削っていこう。栗花落くんには知らせてある」

 試合は30分で決着がつく。この種目は引き分けがあり、30分経過と同時に勝敗が決まる。引き分けは両者に半分のポイントが入る仕組み。

「了解」

 俺たちはとにかく逃げることに徹して、相手の魔法力を削ぐ決断をした。

 試合開始後29分。

 相手の攻撃が心なしか減ってきたような気がする。


 よし。

 俺は魔法陣から飛び出して相手の背後に回り込み、足下目掛けて瞬時にショットガンを命中させた。相手が背後を振り返った時にはもう遅い。

 その時、試合終了を知らせる号笛が鳴り響いた。


あー、今回はまさに辛うじて勝利したといったところか。

 別に俺たちの策戦が間違っていたわけではない。

 俺は若干、ポジション取りに難儀していたが。

 四月一日くんと栗花落くんが反対方向に陣取っていたのが功を奏した。

 最後、俺が身を挺して遊撃にシフトしたから、楽に相手を視認できたと四月一日くんも栗花落くんもいうのだが、果たしてそうなのか、俺には分らなかった。

 


◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


20分の休憩の後、第2アリーナ近辺で決勝戦が始まる予定だ。

相手は京都嵐山高校。

新人では群を抜いているという噂の学校だ。


 決勝戦前の休憩中、俺は右足がってしまった。20分の間に治ればいいが。まだ少し違和感がある。

 栗花落くんが、ふくらはぎの辺りをマッサージしてくれている。

 あー、気持ちいい。

魔法技術科ではサポーターの役目を果たすことが多いため、デバイスだけではなく選手身体せんしゅしんたいのサポートについても授業で教えるらしい。



 決勝戦が始まった。


 四月一日くんが、試合直前、俺たちに告げていた。

「今度の相手は手強いよ。先読みとポジション取りにけている。マルチミラーを存分に使って、相手の背後に回り込もう」

「了解」

「2人とも、決して相手に背中を見せないようにね」

「わかった」


 試合開始後、再び第2アリーナ脇の街路樹で魔法陣を張る俺。

 相手は、さすが決勝戦まで残ったチームだと思った。敵チーム全体として、先読みとポジション取りは俺が思った以上の出来で、危うく背中を獲られそうになったことも数知れず。

 そのたびに、魔法陣を張りカウンターで足下を狙ってみたりしたが、相手の足が速くて追いかけられない。


 そんな時だった。なぜか知らないが、俺は突然、以前先輩たちのとの練習で一度だけ使った魔法を思い出した。

 そうだ、あれを使えば壁際に隠れている敵を見つけることができるかも。

 早速、口笛を吹き、辺りに右手を水平に翳す。すると、建物の陰に隠れている人が浮き出て見えた。

 味方も敵も、姿が丸見え。

 そうなれば、敵を一々(いちいち)マルチミラーで確認する段取りも必要ない。マルチミラーは自己の魔法陣を作るのみに限定できる。


 ただし、そこから動いて相手の足を撃つとなるとちょっとした問題が生じる。

 相手の足を目視するということは、相手からもこちらが見えるということだ。

 俺はなるべく相手の背後に回ることを目的とし、音を立てないように歩き、ときには小走りになりながら近づき、足を狙うが、相手もマルチミラーを持っているから俺が近づくと逃げてしまう。

  

 別に引き分けでも構わないと生徒会役員室では考えていたらしいが、俺たち3人はどうあっても勝利への執念を捨てなかった。

 

残り1分。

 また口笛を吹き右手を肩の高さで水平に翳す。すると敵が隠れているのを見つけた。場所は、俺が隠れている建物外壁の角。

 ちょっと距離が長かったが、最後のプレーにするため、俺はショットガンに魔法力をいつもの2倍注入し、瞬間、自ら壁から身を乗り出し這い蹲る(はいつくばる)ような格好で足だけを隠して、相手の手元を撃った。

 見事射撃は成功し、相手はショットガンを手元から落とした。

落としたショットガンを拾うため、きょろきょろと辺りを見回しながら相手が建物から出てくるのが見えた。

 相手の魔法陣が消えた。

 よし。


 俺はもう一度、今度は足元を狙ってショットガンをぶっ放した。

 相手は歩けなくなり、勝敗は決した。


 号笛が辺り一帯に鳴り響いた。

 

 四月一日くんや栗花落くんが建物の陰から出て来ると同時に、京都嵐山高校の選手3人も姿を現した。

 四月一日くんが満面の笑みで俺の肩を叩く。

「よく頑張った、八朔くん」


 京都嵐山高校の1年生も握手を求めてきた。

「俺は神藤、こっちは玉城と逢坂だ。見事な試合運びだった。第3Gとは思えないほど魔法力が高いのだね」


 まさかー。俺は決して魔法力は高くありません。デバイスのお蔭です。

 ・・・とは初対面の彼らに言えず、にっこり笑った。そして求められるままに3人と握手を交わした。

「ありがとうございます」


 京都嵐山高校の選手と別れ、紅薔薇高校の生徒会役員室に向かった俺たち。

 一応、結果の報告をするらしく、四月一日くんが先頭に立ちながら後ろを向く。

「それにしても見事な射撃だったね、八朔くん」

「ありがとう」

 栗花落くんは驚いたように俺の周りを飛び跳ねる。

「あの魔法、ほら、手を翳すやつ。どこで覚えたの?」

「先輩たちと特訓してるときにテキトーに使ってみたら巧くいってさ。さっきそれを思い出したんだ」

「すごかったよ、ああ、こういう魔法もあるんだ、って」

「そんなすごいもんじゃないよ。僕が使える魔法はまだまだ弱いさ。四月一日くんの方が断然強い」

 四月一日くんがお茶目な目をして、その口元には笑みが浮かぶ。

「小さな頃から、魔法を習っていたからね、僕の場合。八朔くんはこっちに来てから間もないのに、あれだけできるなんて素晴らしいよ」


 俺は妙に気恥ずかしくなって俯いた。


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