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異世界にて、我、最強を目指す。  作者: たま ささみ
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魔法W杯 全日本編  第26章

さあ、明日からは、いよいよ新人戦だ。

 俺は明日、2試合に出る。ロストラビリンスとマジックガンショットだ。


 今は身体の状態もすこぶる良好。

 あとは境界線のバランスが崩れてリアル世界に戻ってしまうなどという最悪の事態が起こらないことを祈るばかりだ。


 実はリアル世界に戻ってからというもの、夜、寝るのが怖かった。

 またあの世界に戻って、母さんと確執を繰り広げるのは嫌だった。

 


 翌朝。

 スマホの目覚まし音が辺りに鳴り響く。

「う、うるさい」

 アラームで俺は目が覚めた。

 ただ、怖くて目はまだ開けていない。

 ここがどこなのか、すごく気になった。

 宿舎なのか、はたまた境界から吹っ飛んで本来の世界に戻っているのか。


目は開けないで、寝ながら、深く、一度だけ大きく息を吸い込む。

 そして静かに息を吐き出して、俺は目を開けた。


 天井が高い。

 ああ、ここは宿舎だ。


 なんだか少し安心した。

 自分がいるべきリアル世界ではなく、異世界にいるのに安心するだなど、噴飯ふんぱんものと笑われても仕方がないのだが、できることなら今は、リアル世界に居たくなかった。

 そう。俺は現在、この世界に逃げ込んでいる。



◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇



 303の部屋でシャワーを浴びて一旦歯を磨いてから食堂に行くと、四月一日くんと南園さん、瀬戸さんがもう朝食を食べに食堂入りしていた。

「こっちこっち」

 瀬戸さんが俺に気付いて手招きしてくれた。

 俺は朝の挨拶すら忘れている。朝はかなり弱い俺。

「みんな早いんだね」

 瀬戸さんが豪快に笑う。

「八朔くんが遅いのよ。今日は試合あるんだから早起きしなきゃ」

 四月一日くんも頷きながら周りを眺める。

「今日試合がある人で、一番ここにくるのが遅かったのは八朔くんだと思う」

 俺はきょろきょろと辺りを見回した。

 先輩たちもいたが、皆、試合に出場するため早めの朝食を摂って調整するらしい。

「そうなんだ、気付かなかったよ」

 慌ててトレーと皿を取って、バイキング形式のおかずを取りに向かう。


 実は俺、朝は食べない主義というか、朝起きるのが遅いためいつも朝食を抜いていた。

 腹も空かないし、目の前に美味しそうな料理があったとしても、食欲が湧かない。

 どうしようか迷っていると、南園さんが隣に寄ってきた。

「八朔さん、もしかしたら、いつも朝食べてないとか?寮でも起きたらすぐ学校に来てるみたいですし」

「実は・・・御名答。朝は食欲ないんだよね」

「じゃ、ヘンに食べるとお腹の調子を崩すかもしれないし、パンと野菜ジュースくらいにしてみますか?」

「そうしようかな」

 俺は南園さんに連れられ、何種類かのパンが置いてある場所から食パンを2枚にイチゴジャムを取って、次に野菜ジュースを選び席に戻った。

 

 四月一日くんが驚いたように俺を見る。

「それだけで足りるの?」

「うん、いつも食べてないからね」


 俺がパンにイチゴジャムをぬっていると、ゆっくりとした動作で1年生のサブ組が食堂に現れた。

岩泉くん、八雲くん、栗花落くん、五月七日さん。

 たぶんこの中に、国分くんを追い落とした犯人がいる。

 おはようと挨拶をしながら、俺の脳裏には国分くんの泣く顔が浮かんだ。


 試合のある4日間は、それを気にしてはいけないと分っているけど、俺の魂が「はやく国分くんの仇をとれ」と叫んでるような気分になる。


 なるべく彼らに目を向けないよう、一生懸命パンを食べ、ジュースを腹に流し込む。

 俺が挙動不審であることに気が付いたのだろう、四月一日くんが俺に目配せして、椅子から立ち上がった。

「それじゃみんな行こうか。今日の試合について、最後のミーティングを行おう」

南園さんも席を立つ。

「そうですね、策戦を今一度、確認しましょう」

 瀬戸さんはまだゆっくりしていたかったらしいが、四月一日くんと南園さんを見て、仕方ないか、という表情で俺に声を掛けた。

「八朔くん。食べてすぐ動くと胃が痛くならない?大丈夫?」

「大丈夫だよ、僕らも行こう」


 いつも朝には何も腹に入れない俺だから、ちょっとその気があったけど、ここにいるよりはマシだ。俺も皆と同じように食器を下げるため席を立った。

午前に行われるロストラビリンスは、制限時間こそあるものの走ったりしないので胃が痛くても何とかなると思う、たぶん。

いや・・・迷路の中だからこそ、もしかしたら走り回るかもしれない。

ま、いいか。


「じゃ、お先に」

 俺はサブ組に挨拶したあと、食堂を出た。廊下では、四月一日くんたちが待っていてくれた。

 四月一日くんから早速注意された。

「君は顔に出やすいね、八朔くん。ああいうときは涼しい顔してやり過ごさないと」

「ごめん」

「謝ることではないさ。さあ、あとはロビーで待ち合わせよう」


 

 303に戻り、吊り下げていた紅薔薇高校のユニフォームをまじまじと眺めた。

 とうとう来た。

俺の初戦。


 よし。頑張れ、俺。


◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 今日の午前に行われるロストラビリンスの相手は聖バーバラ学園高校だ。


 迷路の中に入ると、頭の中に、目の前にした迷路の3次元イメージが構築されるという面白特技をもつ俺は、結構有利に迷路を進んでいけるらしいことに気がついた。

 それは授業でも証明済み。

 そこにもって、俺の透視術と瀬戸さんがいるのだから鬼に金棒。

俺的には、鬼が瀬戸さんで俺は金棒ならず、すりこぎ程度の物なのだが。


他学校ほかでは、ロストラビリンスはほとんど女子。

俺のように男子がいるチームは珍しい。


ある意味背中に悲哀を漂わせつつ、俺の第1戦が始まった。


南園さんが初めに迷路にアタックした。俺と瀬戸さんは、俺の頭に浮かぶ3次元イメージを辿りながら、右へ左へと進む。

相手の北上東高校もかなりレベルは高かったが、俺の3次元イメージと透視には勝てなかったようで、10分もしないうちに俺たち3人は迷路を抜けていた。


ベスト4を争う準々決勝では、紫薔薇高校と激突。

紫薔薇は、どちらかというと透視に長けたところはあったが、俺の透視が勝っていたらしく、先程と同じ開始から10分程度で南園さん、俺と瀬戸さんは迷路を脱出、号笛が鳴る。


準決勝の相手は京都嵐山高校。

目を瞑り3次元イメージを描くものの、ちょっと今回は上手く3次元イメージが働かなくて、迷路を抜け出るのに20分もかかってしまった。京都嵐山高校も同じくらいのタイム。

南園さんが10分で抜け出ていたので、辛くも俺たちの勝利と相成った。


決勝は、紅薔薇高校VS白薔薇高校。

姉妹校同士、因縁の対決だと瀬戸さんが言う。

今回は俺の頭が冴えまくり、出口まで透視できたため10分以内にクリア。

先程の準決勝が嘘のようだった。


そして、京都嵐山高校が迷路に対し魔法を重ね掛けしていたことが明らかになり、京都嵐山高校は没収試合となり俺たちの優勝が確定した。



◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇



 昼食をはさんで、午後の試合はマジックガンショット。

 四月一日くんと南園さんと昼食を食べながら、午後の部の動向を占う。

「僕は10分で上限を目指してる。南園さんは?」

「私も10分かな」

 2人の会話を聞くと、口にチャックしたくなる俺。


 四月一日&南園半端ないって!!10分で100個撃つなんて、普通1年生でできひんやん!と言いたくもなる。


「八朔くんの目標は?」

「言わないとダメ?」

「目標なかったらリズムとれないよ」

「じゃあ、20分で50個」

「もう少し撃てるでしょ」

「30分で100個」

「もう一声」

「えー、20分で100個。これが限界、これ以上は無理」

 そんな目標を立てさせられて、俺のマジックガンショットは始まった。



ベスト8をかけて争う相手は、青薔薇高校。

逍遥と南園さんは、10分しないうちに100個の上限を撃ち抜いた。俺はといえば、少し緊張してしまい、レギュラー魔法陣を見分けられず終了まで25分もかかってしまった。

反省しながら準決勝に進む。


準々決勝は市川学院高校。

ここでも四月一日くんと南園さんは腕が冴え、10分を切って上限に達した。俺も徐々に調子を取戻し、15分以内に100個撃ち落とすことができ、目標に届いたので一安心といったところだ。


準決勝の相手は札幌学院高校。

さすがベスト4に残っただけある学校で、平均射撃数が全員15分台。うちは四月一日くんたちが10分を切っているからだけど、俺が足を引っ張ってはならない。

必死にレギュラー魔法陣を探した結果、俺も15分台に乗ったので俺たちの完勝。


決勝で相見あいまみえたのは、開星学院高校。チームワークが良いことで有名な学校だ。

ここは3人の平均が20分。準決勝の札幌学院よりも与しやすかったのは事実だが、今回は四月一日くんの調子が今一つで、15分以上もかかってしまった。南園さんは相変わらず冷静で、10分で競技を終えた。

そして、アクシデントが起きた。俺のデバイス、ショットガンがなぜか1つが使い物にならなくなってしまい、俺は腰にぶら下げた予備のショットガンを持って試合に臨まなければならなかった。

大丈夫かなあと、かなり心配したんだが、予備のショットガンは絢人が調整してくれていたから、とても手に馴染んでいた。

お蔭様で15分台をキープすることができた。


紅薔薇高校の完勝で、大会4日目が無事に終わった。



◇・・・・・・・・・・◇・・・・・・・・・・◇


 大会5日目。

午前の第1種目は、デッドクライミング。

 南園さんと瀬戸さん、国分くんの代役として五月七日さんが出場する。

 我が校のデッドクライミングは下馬評でも優勝候補といわれているようだし、きっといい成績で勝ち残ってくれるだろう。


 南園さんは、運動の能力が人一倍高い。

 スルスルと登りながら相手のホールドを消しては、自分がまたスルスルと登っていく。元々の運動能力が高いから、自分の前にホールドを作る作業を省いていたのだ。

 瀬戸さんはどちらかといえば相手のホールドには目がいかず、自分の壁を早く昇るかに特化しているように見受けられた。なんとなく、瀬戸さんらしい。

 驚いたのが五月七日さんで、速さなら瀬戸さんにも負けない程。

 ただ、ホールドを消したり作ったりするのに気を取られていたようで、最終的には南園さん、瀬戸さん、五月七日さんの順番で我が校のデッドクライミングは終了し、優勝という結果を残した。



 大会5日目の午後。

第2種目はアシストボール。

 国分くんの後釜となった八雲くんの動きが勝敗を決するのではないかと感じていた俺。

 どちらかといえば良くない予感がしていたのだが、それは現実のものとなり、紅薔薇高校は、新人戦において重要な位置に据えていた種目で早々に敗退を喫してしまった。


 まずもって、八雲くんは自分一人でゴールしようと無理をして、敵にインターセプトを許す場面が何度も見受けられ、四月一日くんたちと声掛けさえもしようとしない。

 逆に四月一日くんがボールを持つと、顔を歪めて唾を吐く。

 瀬戸さんもこの有り様には腹が立ったようで、完全に身内の中で2つに割れてしまっていた。四月一日~瀬戸ペアでゴールするしか、点の取りようがなかったのだ。


 憤懣遣る方無い(ふんまんやるかたない)といった表情の四月一日くん。

試合は終始、普段なら負けるはずのない黄薔薇高校のペースで進み、我が校はいとも簡単に破れてしまった。


 俺はベンチにいたんだけど、隣に座っていた沢渡会長も、すごく渋い表情だった。

 誰も話しかけられないといった風体で、休憩で4人がベンチに戻ってきても、誰も何も話さず、空気は重苦しいまま。

 走れない俺を指名しても四月一日くんや瀬戸さんに負荷がかかるだけなのだが、それでも南園さんを合わせた4人が一体となり同じベクトルで競技ができる方が、精神衛生上、良かったのではと思わせる程だった。


アシストボールで敗退が決定し、魔法W杯全日本高校選手権新人戦の優勝がほとんど潰えたという結果で競技が終了した瞬間、沢渡会長はうつむき、がっくりと肩を落とした。


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