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異世界にて、我、最強を目指す。  作者: たま ささみ
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魔法W杯 全日本編  第23章

5階まで一段ぬかしで階段を上がる俺。

 たぶん、サブから選抜する選手を俺たちに知らせるのだろう。

 俺の心は少しだけいていた。


 四月一日くんと俺、501の前に二人が揃ったところで四月一日くんがドアをノックする。


「入れ」

 沢渡会長の声が聞こえた。


「失礼します」

 四月一日くんは強心臓だから、相手が誰であろうと緊張しないようだ。

 俺に先だって四月一日くんが部屋に入る。

 そこには、三枝副会長、六月一日くさか副会長、南園さんと瀬戸さんが揃っていた。


 皆、立っている。

 議論が白熱したのだろうなと俺は解釈した。


 沢渡先輩が、その重い口を開いた。

「国分のことは残念だ。彼の言い分ももっともではあるが、薬物の陽性反応が出た以上、俺たちがすべきは彼の擁護ようごではない。競技に穴が開かないよう、調整をすることだ」


 こうして言われてしまうと身もふたもないのだが、事実はそのとおりだった。

 四月一日くんが沢渡会長の前に進み出る。

「それでは、国分くんはやはり競技には出場できないのですね」

「そうだ」

「では、誰が」

「選手を決める前に、大会事務局とのやりとりを掻い摘んで(かいつまんで)話す。国分は体調を崩し、自分から病院に行って薬物反応が出た。病院から事務局に知らせがあった」

 

俺は何も知らなかったので驚いた。

やはり、彼は自分から薬物摂取をしていない。どこの世界に自分で薬物摂取しといて病院にいくバカがいるってんだ。

落ち着いた口調で四月一日くんが返事をする。

「そうだったのですか」

「国分は今でも無実を訴えている。大会直前ということもあり、事務局では大幅に譲歩してくれた」

 四月一日くんが不思議そうに首を捻って沢渡会長に尋ねる。

「というと」

「今回エントリーしていない生徒でも、種目ごとにエントリーを認めてくれるそうだ」


 瀬戸さんが俺たちの方に近づいてきた。

「デッドクライミングには五月七日さんを推薦して、OKを得たわ」

 なおも四月一日くんは沢渡会長の方を向いている。

「ラナウェイは誰が」

「1年魔法技術科の栗花落譲司つゆりじょうじ

「プラチナチェイスですが、エントリーしている者の中から出しますか?」

「いや。これも栗花落が適役だろう。遊撃に入れば大丈夫だ。南園を後陣に回せ」

「では、アシストボールは」

「同じく1年魔法技術科の八雲駿皇やくもしゅんこうだ」


 四月一日くんは一瞬サッと顔つきが変わり、驚いたような表情になった。

「栗花落くんはサブとしてエントリーされていた種目もあったと記憶していますが、なぜ、サブに登録している岩泉くんではなく、八雲くんがサブ外からエントリーされるのですか」

「気に入らないか」

「いえ、エントリーされている岩泉くんとエントリー外の八雲くんとの違いをはっきり伺いたいだけです」


 沢渡会長は、四月一日くんの前に立った。

「岩泉の噂は知っているな。この大会に置いて、そういった噂がある者は即刻除外した」

「アシストボールなら、八朔くんがエントリーされていたはず」

 

 沢渡会長は、言葉に詰まったようだ。俺の方を向きながら迷っているように見えた。

 それでも言うと決めたのだろう。

 いつもにも増して、口が重い。

「八朔は、向こうの世界との境界がアンバランスになっている。最悪、試合中に消えるかもしれない」


 え?そうなの?

 ああ、だからさっきリアルの世界に戻ったんだ。

 そうか、いつ戻るか分らない状態なんだ、俺・・・。


「アシストボールはぶつかり合いになることもあるから、女子にはキツイ。かといって、八朔以外にエントリーしていた奴はいない。エントリーもせず練習もしていないなら、栗花落では厳しいだろう」

 四月一日くんはそれでも食い下がる。

「栗花落くんを指名しない理由ではなく、八雲くんを指名する理由をお聞きしています」

 沢渡会長が少し怒ったように眉を吊り上げた。

 怖いです・・・。

「八雲は当初魔法科に入る予定だったが、諸般の事情で魔法技術科に入学した」

 四月一日くんがもう一度、首を捻った。

「諸般の事情とは」

 沢渡会長はイライラしているのが見て取れる。

「お前たちの知る所ではない」


 沢渡会長と同じくらい、四月一日くんもイライラしていた。見るからに不愉快そうな表情に変わった。

「ほう、実技でコケましたか。僕としては、魔法科にいる岩泉くんが適役かと思われますが」

 吐き捨てるように言葉を繰り出す沢渡会長。

「岩泉の件は、さきほど話した。決定事項だ」

 四月一日くんは、不愉快そうな顔をしたまま、それを隠そうともしない。

「それなら、サブとして岩泉くんをエントリーするべきではありませんでした。彼が気の毒です。もうひとつあります。アシストボールはチームワークが大事な競技です。八雲くんひとりでやるわけではありません」

 沢渡会長が、代案を出す。

「その点については、我々が相手になって3日間特訓しよう、それでどうだ」


なおも不愉快そうな顔だったが、四月一日くんはほこを収めた。

俺たち1年生は、501の部屋を出て、一旦301の四月一日くんの部屋に集まった。

国分くんをのぞいた4人の1年生。


瀬戸さんは岩泉くんのことを嫌っているから、そんなに怒っていない。

「先輩たちは、岩泉くんが今回の犯人と思っているのね」

 

俺は、ただひとつ、真実が知りたかった。

「岩泉くんに聞いても話しはしないだろうけど、国分くんに聞けば分るはずだよ」

四月一日くんは、悔しそうな顔に変わった。

「五月七日さんと栗花落くんはわかる。でも、なんで八雲なんだろう。何か先輩たちの間に八雲ありきの空気が見え隠れしていたように思う」


南園さんは時計を気にしながら301にいた。

「確かにそうですね。アシストボールのスタメンは八朔くんにして、途中交代が必要なら八雲くんでもいいはずですが」

四月一日くんは俺を見ながら南園さんに返答した。

「そうなんだ、不思議で仕方がない」


 俺は、国分くんから話が聞きたかった。

 ちょうど、開会式は午前で終わる。その後は各人調整となる。俺たちは4日目までフリーになるのだ。


「僕、やっぱり国分くんに会ってくる。明日の開会式が終わったら行ってくる」

「僕も一緒に行こう」

 四月一日くん、亜里沙と同じく俺が方向音痴なのを、果たして君は知っていたのか・・・。

 南園さんが、部屋から出ていく間際に皆を見る。

「ごめんなさい、時間が無くて。生徒会がどう動くか見てきます」


 南園さんが去った後、俺たちはある生徒の噂話にシフトする。

なんと、四月一日くんは100m先ですら透視ができるらしい。天井に向かって右手をくるくると回した四月一日くん。

「1年魔法技術科の八雲駿皇やくもしゅんこうか。今501に呼ばれたようだ。何をどうやって取り入ったのやら」

俺も透視してみようと思うが、501まで届くかどうか。

 指先にありったけの力を込めて、天井に右手の人さし指で丸を書いた。


 あ、届いた。

 でも、話声までは聞こえない。

 礼儀正しく頭を下げている。こいつが八雲だろう。

「四月一日くん、この人が八雲くんじゃないか?」

「そのようだね。どれ、何を話しているのかな」

 瀬戸さんは透視が苦手だから、俺たちの会話についてくることができない。

「岩泉に直接アタックしてみるしかないか、あたし行ってくる」

 そういって、瀬戸さんは部屋を出た。でも岩泉くんは部屋に居なかったらしく、すぐに301に戻ってきた。

 

 しばらくすると、501の部屋の中を透視していた四月一日くんは、くっくっくと人を馬鹿にしたよう笑いを洩らした。

「こいつ、どうやら自分から選手に名乗り出たらしいよ。まったく。栗花落くんとは格が違うのに」

 俺も必死に何を話してるか読唇術を試みるのだが、如何せん、力が足りない。

「そうなの?魔法科にいる生徒より出来がいいってこと?」

「本人はそう力説してるね」

「ふうん。で、明日以降の特訓で力を試すというわけか」


 四月一日くんは、もう一度501の方に指を向けてバツ印を書くような仕草をして透視を止め、大きな声で笑い出した。

「犯人捜しはめなくちゃと思ってたけど、犯人はどうやらこいつだね」

 僕と瀬戸さんは目が丸くなる。

「どうしてわかるの」

「目つきが悪い」

 瀬戸さんが呆れたように四月一日くんの方に向き直って笑う。

「顔だけで判断していいの?」

「こいつ、自前でデバイス用意してるんだよ?一介の魔法技術科の生徒がどうしてそこまでする?」

「それもそうね」

 急に真面目な顔になる四月一日くん。

「僕たちが何を言っても、もう、国分くんは試合に出られない。それだけは確かだ。彼は退学するかもしれない。でも、犯人が誰であれ、彼の仇はいつか討ってやる」


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